<日時>
平成19年12月11日(火) 13:30~15:30
<場所>
環境省第一会議室
<出席者(敬称略)>
○検討会委員
- 稲垣 真澄
- 国立精神・神経センター精神保健研究所知的障害部診断研究室長
- 内山 巌雄
- 京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境衛生学講座教授
- 香山 不二雄
- 自治医科大学・地域医療学センター環境医学部門教授
- 川本 俊弘
- 産業医科大学医学部衛生学講座教授
- 岸 玲子
- 北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野教授
- 佐藤 洋
- 東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野教授
- 白石 寛明
- 国立環境研究所環境リスク研究センター長
- 仲井 邦彦
- 東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野准教授
- 新田 裕史
- 国立環境研究所環境健康研究領域環境疫学研究室長
- 林 謙治
- 国立保健医療科学院次長
- 水上 尚典
- 北海道大学大学院医学研究科産科生殖医学分野教授
- 森 千里
- 千葉大学大学院医学研究院教授
- 米元 純三
- 国立環境研究所環境リスク研究センター副センター長
*欠席
- 北川 道弘
- 国立成育医療センター周産期診療部長
○オブザーバー
- QUACKENBOSS, James
- 米国環境保護庁、National Children's Study
- 湯浅 資之
- 北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野助教
○環境省
- 石塚 正敏
- 環境保健部長
- 森下 哲
- 環境リスク評価室長
- 長谷川 学
- 同 室長補佐
- 井口 亜美
- 同 健康・生態影響評価係員
○事務局
社団法人環境情報科学センター 村上、間正、蓮沼、渋谷、清水
○配布資料
- 資料1
- 第一回検討会議事要旨
- 資料2
- 欧州小児環境保健調査
- 資料3
- 小児環境保健疫学調査に関する事務局案
- 資料4
- 議論のポイント
- 参考資料1
- 欧州小児出生コホート調査報告(1)先行事例
- 参考資料2
- 欧州小児出生コホート調査報告(2)WHOの小児環境プログラム
<議事>
(1)ヨーロッパの小児疫学調査の視察報告について
自治医科大学・地域医療学センター教授香山不二雄氏がヨーロッパにおける小児疫学調査について報告し、質疑を行った(資料2)。
参考資料2に基づき、環境省からWHOの小児環境プログラムについて報告した。
(2)小児環境保健疫学調査に関する事務局案について
資料3に基づき、環境省から議論の叩き台として小児環境保健疫学調査に関する事務局案を説明した。
(3)フリーディスカッション
議論のポイント
○調査で解明すべき仮説について
- 巨額な費用を投じて行う調査であるから、ある程度の成果が保証できるテーマを採用することが必要。
- 研究者の関心事項のみで調査を実施した結果、モニターするのみに終わってしまったという事態にならないようにしなければならない。
-
成果を担保するため、研究者から提案されたテーマについてメタ分析を行い、一定の成果を得られるものを優先的に採用すべき。それに個々の研究者がテーマを追加していくようにしてはどうか。
-
調査の目的や解明すべき仮説は、全国共通で行う全体調査とそれぞれのブロックごとに行う詳細調査とではかなり違ってくる可能性がある。全体調査では確実に結果が出るような仮設を扱うにしても、ブロックごとに自由度をもって行う詳細調査は、それほどはっきりとした見通しがなくてもできるのではないか。
- 米国National Children's
Studyのように、まずは、子どもの健康問題に対する環境要因の寄与、化学物質の寄与に関する仮説を全体的に検討する必要がある。その上で、環境省として優先すべきものなど、仮説を選択するに当たってのクライテリアを検討すべき。
- 採血できる量が限られているため、何が測れるのかも考えた上で仮説を決めなければならない。
-
調査対象物質によってサンプルの集め方は異なる。コホート調査にどういう仮説を取り入れることができるかについては、検体の集め方という観点からも検討しなければならない。
- 調査に長期間を要する仮説の場合、フィージビリティ・スタディにおいては、プロトコルを確認するだけで終わるのではないか。
○調査対象とする化学物質について
-
対象とする化学物質には、3つのカテゴリーがある。バイオマーカーを測る物質、直接原因物質として測れる物質、そしてケミカルマーカーとなるような物質を測る場合である。
-
詳細調査で子どもの血液サンプルを採取するブロックもあると思うが、数年に一度の間隔でしか測れないとすれば、それがコホート調査スタート時のばく露の影響なのか、その後の蓄積の影響なのかわからなくなってしまう。生まれた時に蓄積されやすい物質というのが一つのカテゴリーであると考えられる。
- 成長過程で蓄積されるものを見るのか、生まれたときのばく露の影響を見るのかというのは大きな課題。
- 事務局案において例示されている物質は、必ずしも仮説との直接的な対応があるものではないので、もう少し検討する必要がある。
○調査対象とする環境要因(エクスポージャー)について
-
社会的要因の一つとして父親の役割について調査を行うかどうか。日本では家庭の中における父親の役割、存在感が諸外国とは違うので、そういう部分もしっかりと押さえておくべきではないか。
○リクルートについて
-
各年に生まれた子どもをそれぞれ12年間追跡するというようにしないと、10万のサンプルを対象にした解析はできない。10年間かけて毎年1万ずつリクルートしたとしても、1万のサブデータを解析することになるだけである。
- 検体を測る予算が毎年1万人分だとすると、3年で10万人ぐらいリクルートしても、すべてを一度にサンプリングできるわけではない。
- すべての検査項目を全員に行うというのは費用的に難しいし、必ずしもそうしなくても、仮説によっては検証可能と思われる。
- エクスポージャーとアウトカムを見るためには、追跡できることが絶対条件となる。
○計画期間について
- 米国National Children's
Studyでは、2000年に調査を計画し2008年から開始するというように、調査の計画づくりにじっくりと時間をかけている。
○既存コホート調査との連携について
- 国内で先行してコホート調査を行っているところ(仙台や北海道)は、米国National Children's Studyで言うFirst wave
of Study
Centerとしての役割を果たすことができるのではないか。こうした先行するコホート調査は、環境省の予算による調査ではないが、省庁の枠を超えた国全体のスタディとするために調整をしてほしい。
○コホート調査における医師等の協力について
-
北海道のコホート調査に参加している産婦人科医はほとんどがボランティアであるが、そのやり方を全国的に当てはめることはできない。全国をブロックに分けて調査を実施するならば、ビジネスライクな方法で進める必要がある。
-
産婦人科医にとって、インフォームドコンセントにかかる労力や分娩時における臍帯血の採取は非常に大変なものである。検体をうまく収集するシステムをどう構築するかについてよく考えておく必要がある。
-
インフォームドコンセントをとる際、助産師の関与が非常に大きいことが産婦人科医より指摘されている。調査に参加する医師のみならず、医師に協力する助産師や看護師、保健師を増やしていくことも必要。
○生体試料バンキングについて
- 後から何かを測ることができるように生体試料バンキングを行うということだが、何ができるのか今のところよくわからない。
- デンマークでの調査の際、メッセンジャーRNAのバンキングができれば将来役に立つという指摘を受けた。
○人材育成について
- 次世代の環境疫学を担う人材を国全体で育てることに結びつくような調査研究とすることが必要。
○最後に(座長から)
-
フィージビリティ・スタディのワーキンググループの中で調査の詳細事項を詰め、それをもとにコホート調査全体を組み立てることが必要。フィージビリティ・スタディの部分に力を入れて、事務局案をバージョンアップしてほしい。