環境省大気環境・自動車対策大気汚染状況・常時監視関係光化学オキシダント関連情報光化学オキシダント調査検討会(平成27年度)

平成27年度第1回光化学オキシダント調査検討会会議録

1.日時 平成28年3月25日(金)10:30~12:30

2.場所 一般財団法人 商工会館 6FG会議室

3.出席者(五十音順敬称略)

(委員)
秋元 肇   板野 泰之  井上 和也  指宿 堯嗣  浦野 紘平
大原 利眞  小野 和則  紫竹 益吉  竹内 庸夫  星  純也
若松 伸司 司
(欠席者)
岩崎 好陽  金谷 有剛  坂本 和彦  橋本 光正  向井 人史
環境省水・大気環境局大気環境課
是澤課長、伊藤課長補佐、小林課長補佐、水島係員
(事務局)
一般財団法人 日本気象協会

4.議題

(1)これまでの検討内容と対応状況について
(2)シミュレーションモデルを用いた解析結果について
(3)その他

5.配付資料

資料1
これまでの検討内容と対応状況について
資料2
シミュレーションモデルを用いた解析結果について

参考資料1
平成27年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱
参考資料2
平成27年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録
参考資料3
平成27年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録要旨
参考資料4
これまでの検討内容と対応状況に関する参考資料
参考資料5
シミュレーションモデルを用いた解析に関する参考資料
参考資料6
「光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示すための指標に係る測定値
の取り扱いについて」及び全国の光化学オキシダントの計算結果

6.議事

事務局 定刻になりましたので、ただいまから「第3回平成27年度光化学オキシダント調査検討会」を開会いたします。委員の皆様にはお忙しいところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、坂本委員、金谷委員、向井委員、岩崎委員、橋本委員から所用によりご欠席との連絡をいただいておりますのでご承知ください。
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 議事次第
 座席表
 資料1  これまでの検討内容と対応状況について
 資料2  シミュレーションモデルを用いた解析結果について
 参考資料1 平成27年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱
 参考資料2 平成27年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)―議事録
 参考資料3 平成27年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)―議事録要旨
 参考資料4 これまでの検討内容と対応状況に関する参考資料
 参考資料5 シミュレーションモデルを用いた解析に関する参考資料
 参考資料6 「光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示すための指標に係る測定値の取り扱いについて」及び全国の光化学オキシダント濃度の計算結果
 以上でございます。過不足等ございましたらお申し出ください。よろしいでしょうか。
 プレス関係の方にお願いいたします。冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これ以降の議事進行は秋元座長にお願いいたします。

秋元座長おはようございます。今回は本年度最終回の検討会ということでよろしくお願いいたします。
 今年度の最後の検討会でございますが、最終的なシミュレーションによる結論を出すことは来年度に延ばすということを前回確認しております。今年度ここまでやりたいということの結果を、今日まとめて報告いただくことになります。主に資料1と2が本日の議題でございます。
 それでは早速ですが、議題(1)のご説明をお願いいたします。

議題(1)これまでの検討内容と対応状況について(資料1)

事務局それでは資料1「これまでの検討内容と対応状況について」をごらんいただければと思います。
 はじめにですが、第1回検討会において、シミュレーションモデルを用いた解析によって、これまでの大気汚染物質排出対策による光化学オキシダント削減効果の検証及び、今後の光化学オキシダント対策の検討のための感度解析の実施方法等の基本方針が了承されました。
 作業部会においては、その基本方針に基づき、シミュレーションモデルの改善、精度レベルの確認及び結果の確認を行ったものであります。
 2といたしまして、2015年度の調査検討項目及び検討状況について説明いたします。2015年度の調査検討項目は以下に示した[1]~[3]の3項目からなります。[1]といたしまして、シミュレーションモデルの構築・改善。これにはシミュレーションモデルの精度レベルの確認を含みます。[2]として、シミュレーションモデルを用いた国内の光化学オキシダント濃度に影響を与えると推測された主な要因の解析。[3]がNOx及びVOC排出量の削減効果の検討になります。
 また、今回の第3回検討会の議題は2つあります。(1)はこれまでの検討内容と対応状況について、(2)はシミュレーションモデルを用いた解析結果についてということでございます。
 2ページ目ですが、今年度行いました検討項目及び2014年度、昨年度からも含めてどういう流れで解析を行ったかを示しております。本検討会で議題といたしますのは、フロー図の右に書きました議題(1)シミュレーションモデルの構築・改善とシミュレーションモデルの精度レベルの確認の部分。議題(2)といたしまして、シミュレーションモデルを用いた解析になります。
 2016年度といたしまして、今後の光化学オキシダント対策の方針の検討、及び対策の提案を考えております。
 続いて図2-2ですが、第1回検討会から第5回解析作業部会までの議題とそれぞれの会における確認結果及び決定事項をまとめております。前回第2回検討会は2016年1月15日に開催いたしましたが、その後今回までの間の解析作業部会は第5回目を2月16日に開催しております。
 第1回検討会からの決定事項についてご説明いたします。第1回検討会決定事項として、まず、シミュレーションモデルの精度レベルを設定いたしました。その中で気象モデルの改善項目、化学輸送モデルの改善項目等についてどのように行うかというのを決定しました。また、排出インベントリの改善項目についても、植物起源VOCについて計算方法を変更することを検討することを決めました。また、シミュレーションモデルを用いた解析について基本方針が了承されておりまして、具体的な解析方法については作業部会において検討することといたしました。
 その後、第1回・第2回作業部会においては、主にシミュレーションモデルの改善について作業を行いまして、東アジア領域の境界値データや排出インベントリの改善について確認しております。
 第3回作業部会において、植物起源VOC排出量の新たな計算方法について確認して適切であると判断されましたので、当計算方法を用いることを確認しております。
 第4回作業部会・第2回検討会における確認結果・決定事項については、主に精度レベルの確認を行っております。今年度改善したモデルの精度レベルを確認した結果、O3、NO2、NMHCについて、2001~2010年のトレンドを概ね再現していることを確認いたしました。また、研究で用いられているモデルについてO3、NO2と精度比較を行った結果、今回改善したモデルと同等の精度を有していることが確認されました。これらのことから、当モデルを解析に使用することといたしました。
 また、シミュレーションモデルを用いた解析ですが、改善したシミュレーションの精度レベルの確認結果等を踏まえ、今年度の解析項目として、前駆物質濃度(VOC)の影響の解析、越境大気汚染の増加の影響の解析及びNOx・VOC排出量削減効果の検討(感度解析)を実施することとしました。
 第5回作業部会において、シミュレーションモデルを用いた解析結果について精査した結果、妥当であると判断しております。ただし、越境大気汚染の増加の影響の解析結果については、気象場の年変動の影響を受けている可能性が考えられたため、気象場の影響について解析を実施することとしました。この結果については、本議題の2番目の議事でご説明いたします。
 4ページは、指摘事項及び対応状況についてです。第4回、第5回作業部会及び第2回検討会における指摘項目とそれに対する対応状況について5ページの表4-1に示しております。
 表4-1の項目といたしましてシミュレーションモデルの構築・改善については、第4回作業部会で金谷委員、永島委員から指摘事項が出ております。
 金谷委員から、タイトレーション効果及びNO、NO2の排出量についてモデルで比較検討してはどうかというご指摘がございました。
 検討した結果、2009年の10km計算結果において夜間のO3濃度の極端な低下がないことを確認、及び10km格子と60km格子で排出量を比較した結果、NOxとVOCで大きな差がないことを確認しております。
 永島委員から、前駆物質NO、NO2、O3について濃度の日変化図及びエミッションの濃度の日変化図を作成して確認してはどうかというご指摘がございました。
 これは参考資料4にまとめておりますが、ご指摘事項について確認しました結果、O3計算値は夜間に濃度がゼロ近くに低下する現象は見られなくなったが、濃度が全体的に上昇し、測定値と比べると過大になっていました。NO・NO2計算値の濃度は全体的に低下し、測定値と比べると過小となりましたが、時間変化については昨年度行ったモデルと比べまして測定値の傾向に近づいていたことが明らかになっております。
 続きまして、シミュレーションモデルの精度レベルの確認については、第2回検討会と第4回作業部会でご指摘をいただいております。
 大原委員から、2008年の九州地域のO3新指標相当値が測定値と比べて極端に小さい理由について確認してはどうかというご指摘がございました。
 これに関して黒川委員から、2008年の春季に関しては気象的にO3濃度が高くなりにくい年であったというご意見がございました。
 これについては、新指標相当値は高濃度域ですので夏に出現するということもあり、春季はO3濃度が高くなりにくいことは明らかになっているが、夏季についても海洋からの気流が入りやすく、O3濃度にその影響が強く出すぎている可能性があるため、今後の検討課題ではありますが、気象の観点から確認したいと考えております。
 6ページです。シミュレーションモデルの精度レベルの確認について。大原委員から、98パーセンタイル値算出方法について、現在行っている方法と異なる方法で算出して、値がどのように変わるか確認してはどうかというご指摘がございました。
 これについては参考資料4で対応しておりますが、現在の統計方法とは異なる方法を設定しまして、その方法を用いて九州及び関東地域において両者を比較した結果、測定値については算出方法が異なったとしても大きな差は見られなかったのですが、計算値については関東地域で差が見られました。また、越境汚染の増大の影響の解析に関して算出方法が異なった場合の解析を行った結果、両手法とも傾向については変わらないことを確認しております。
 続いて、シミュレーションモデルの構築・改善(VOCの精度検証)について。
 第2回検討会において大原委員から、VOCの精度について追加解析を行い、主要成分について計算値が過小である傾向が見られた場合、該当成分と排出インベントリの関係について確認してはどうかというご指摘がございました。
 坂本委員と金谷委員から、人為起源VOCと植物起源VOCの精度の特徴や両者のバランスについて評価することが望ましいというご意見がございました。
 竹内委員から、測定値と計算値の比較を行うために、NMHCを測定している測定局を対象とした評価を実施すべきだというご意見がございました。
 第5回作業部会において大原委員から、VOCの検証として東京都環境局で測ったデータを提供していただいて検証を行っているが、東京都の測定物質は埼玉県の測定物質と比較すると少ないため、モデルVOC成分別に東京都測定物質の濃度和と埼玉県測定物質の濃度和を比較してはどうかというご意見がございました。
 大原委員のご指摘に対しては参考資料4で対応しております。東京都環境局が実施したVOC測定値を対象に解析を実施し、さらに埼玉県の解析結果と併せて検討しています。その結果、VOC成分についてモデルのARO1については計算値が過小である傾向は共通して見られましたが、別のARO2という物質についてはそういう傾向は見られませんでした。排出インベントリとの関係については今後の検討課題としたいと思っております。
 竹内委員のご意見に対しては、今後、測定局を対象とした精度評価においてはNMHCを測定している測定局を対象としたいと思っております。
 大原委員の意見についても、参考資料4のほうで対応しております。
 7ページに参ります。シミュレーションモデルの構築・改善(他モデルとの比較)について、大原委員、秋元委員からご意見をいただいております。
 大原委員から、現在は他モデルとの比較をO3の月平均値とNO2の月平均値を行っているが、98パーセンタイル値やVOCを対象に行ってはどうかというご意見がございました。
 秋元委員から、現在は気象場のモデルはWRF、化学物質輸送モデルはCMAQを使っているが、本解析と同様の課題が見られるか、ほかのモデルを用いて検討してはどうかというご意見がございました。
 これらは今後の検討課題としたいと考えております。
 シミュレーションモデルを用いた解析について、浦野委員からご意見をいただきました。第2回検討会で精度レベルの確認をした結果、O3濃度の測定値と計算値には差が見られたが、2001年から2010年にかけてのトレンドは概ね再現していることが明らかになったので、モデルを用いた解析においては濃度比による評価をしたほうがよいのではないか。
 これについては、資料2において濃度比による評価を行っております。
 金谷委員から、気象場が異なることで、越境大気汚染の増加の影響の解析結果、具体的には関東地域よりも九州地域のほうが大きいことが変化しないか確認してはどうかというご意見がございました。
 これは資料2で対応しております。これまで基準年は2009年と定めておりましたが、2001年を基準年とした場合、2009年を基準年とした解析結果と同様な解析結果になるかどうか確認したところ、越境汚染増加の影響は、関東地域よりも九州地域のほうが多いことが確認されました。
 最後の項目はシミュレーションモデルを用いた解析に関して。
 金谷委員から、モデルでは過小である傾向が出ているARO1とARO2を実際の濃度と等しくなる条件で感度解析を行うことを次年度の課題に挙げてはどうかというご意見がございました。
 これに対しては、シミュレーションモデルを用いた解析を行うにあたっては、本シミュレーションモデルの課題を考慮した解析方法を設定して対応していきたいと考えております。
 大原委員から、高濃度域ということで日最高8時間値の暖候期98パーセンタイル値といったレンジを対象に解析を行っているが、平均的な濃度(50パーセンタイル値)の出現状況を把握してはどうかというご意見がございました。
 これについては資料2で対応しております。感度解析のO3計算値について、日最高8時間値の暖候期98パーセンタイル値のほかに50パーセンタイル値を対象とした評価を行いました。その結果、NOx・VOCの削減割合が異なると、濃度レンジによって感度が異なることが確認されております。具体的には、高濃度域のほうが感度は大きい結果になっております。
 黒川委員から、固定蒸発起源VOCを削減した場合とVOCを一律に削減した場合のO3の感度を比較してはどうかというご意見がございました。
 これについては資料2で対応しております。関東領域の固定蒸発起源VOCを2009年度排出量から50%削減したケースを設定し計算を行い、VOC全体一律に50%削減した場合との結果を比べております。
 坂本委員から、反応性の大きいVOCを削減した場合のO3の感度を比較してはどうかというご意見がございました。
 これについては今後の検討課題としたいと考えております。
 4ページに戻ります。「4.シミュレーションモデルの精度レベルについて」にまとめております。今年度改善したモデルの精度レベルを確認した結果、O3、NO2等の再現性の一部に課題はあるものの、10年間(2001~2010年)のトレンドは概ね再現していることを確認しました。また、O3、NO2の月平均値の再現性について、現在、研究で用いられているモデルと今年度改善したモデルの精度比較を行った結果、同等の精度であることが確認されております。
 以上で説明を終わります。

秋元座長ありがとうございました。それでは、これまでの検討課題についてご議論いただきたいと思います。参考資料4が何回かリファーされていますので、参考資料4をお開きいただきたいと思います。資料2で対応したものは、この後の議題でご説明があると思いますので、そこで見ていただければいいですが、参考資料4は後の説明に出てこない可能性があるので大事な点だけご確認いただきたいと思います。
 参考資料4の4ページで、先ほどの指摘事項の中で大原委員から指摘された98パーセンタイル値の算出方法に関わる部分ですが、図1-4の測定値に関しては算出方法①と②に差がない。これはこの通りでよろしいですが、計算値は特に関東地方の場合に①の青の線と②の赤の線では相当開きがあります。②のほうが実測値に近いし、上がり下がりの相関もいいような気がしますが、4ページの上の文章に今後は①でやっていくと書かれています。これは、②をとったほうがいいということではないんですか。

事務局算出方法①と②の違いについては、参考資料4の3ページに経過図で示しました。算出方法①の場合、関東の60kmの計算は9つのメッシュを対象にしております。具体的には資料2の3ページに載せています。算出方法①は、それぞれのメッシュについて98パーセンタイル値を算出して、その後平均していています。9つのメッシュについて統計値が算出され、大体7月あたりに各メッシュの98パーセンタイル値が出ています。
 今回設定した算出方法②は、最初に9つのメッシュの平均値をとって1つのデータにしたうえで98パーセンタイル値をとります。算出方法②の場合、6月あたりに出て高濃度の発生しやすい時期から外れたところに出てくることも考えられます。
 指標がオゾンの高濃度域を対象としていることを考えますと、算出方法①のほうがいいのではないかと判断しています。

秋元座長大原委員、いかがですか。図1-4から得られることと最高値がどう違うかという話は違うような気がしますが、今後どちらでやったらいいかご指摘いただけますか。

大原委員3ページ目の算出方法①と②を比べてみますと、算出方法②ですと、実際の高濃度の状況を適切に反映した指標にはなっていない。そういう意味においては、算出方法①のほうが、モデルの再現性はともあれ指標の出し方としては、より適切ではないだろうかと結論付けたということです。
 作業部会で指摘したときには明確な結論は出しませんでしたが、算出方法②に近い考え方で、すべてのメッシュの時間データを平均化しないで、全部並べて日最高8時間値の98パーセンタイル値を出すという方法もあるのか検討した経緯があります。この点については、もう少し考えたいというのが正直なところです。

秋元座長わかりました。今回はこういうことで、来年度また指標値をとるときにもう一回検討していただければと思います。
 もう1点、参考資料4の14~15ページに、O3、NO、NO2の日変化の実測と計算の比較があります。これは非常に重要で、今使っているモデルが実測をうまく再現してくれないという1つの点があります。14ページでは、緑が実測値、一番上がO3、2番目がNO、一番下がNO2の暖候期の平均の日変化。それに対して青のカーブは2014年の計算結果、赤が2015年の計算結果。その主な違いはエミッションが非常に違っています。
 15ページに排出量の時間別平均値があります。2014年は、NO2の青の実線が上のほうで平らになっている。つまり、日変化を入れないで1日にこれだけ排出しているという排出量を使った計算が2014年。夜間にはあまり出ないで昼間に排出されるというのを入れたのが2015年で、これは非常に大きな影響があったという報告を前回受けたと思います。
 それを頭に置いて見ていただきますと、O3に関しては2015年のほうが逆にオーバーエスティメートになっている。ただ、NOとNO2については確かに2015年のほうが、実測の日変化のバターンはある程度よく再現しています。特に一番下の左側のNO2は、さいたまの例ですが日変化が出ている。O3は逆にオーバーエスティメートになっていて解決にはなっていないけれども、そういう大きな変化があります。この辺は来年度どうするかということです。これが本当にCMAQだけの話なのか、ほかのモデルでも同じようなことになるのかという辺りも含めて、来年度チェックしていただきたいと思っています。
 ここで私が気になっているのは15ページの図です。この前確かめたところ、2014年と2015年で日変化パターンは入ったけれど、1日の総量の排出量は変わっていないというご説明だったと記憶しています。この図を見る限り、2014年のほうが非常に高いですよね。2015年は昼間が2014年と同じぐらいで、夜間はゼロ近くに下がっているので、絶対量として半分ぐらいになっているような感じがしますが、ここはいかがですか。

事務局地点で排出量を確認すると、座長がおっしゃるとおり昨年のモデルの設定の排出量が多いことが分かりました。排出量が同じというのは関東領域全体の排出量を確認した結果です。地点で見るとこのような差があったことがわかった次第です。

秋元座長これは、先ほどのNOやNOxなどの日変化パターンの絶対値に相当影響がありますよね。さいたまのところが2015年で5割増したとすれば、14ページの左側に5割上がりますので実測に合うようになるとか、相当大きな影響があると思うけれど、地域分布の違いは必ずしも実態を表していないということですか。エミッションの件はどなたかコメントありますか。

指宿委員図3-2は右側がNO2で左側はNOじゃないですか。

事務局凡例が間違っています。丸がついていますのがNO2、線がNOになります。

秋元座長そうですね。NOの排出量がそれだけずれているということですね。
 特にコメントがなければ、来年度もう一回、ほかのモデルでも同じかどうかも含めてここのところはどうするか、絶対値に影響が大きいところだと思いますのでご検討ください。  それ以外でご意見、コメントはございますでしょうか。

浦野委員全体についてですけれど、シミュレーションモデルはあくまでも仮定と近似のもとに計算されるもので、その仮定と近似が現実に合っていないところはたくさんあるわけです。絶対値を比較してこの地域のエミッションといっても、空気は全部動くわけですから周辺の影響は当然受けていますので、こういうものですぐにどうこうという議論をするのは無理だと思うんです。
 シミュレーションモデルは将来予想をする際に絶対に必要なものですが、あまり細かいところで議論しても合いっこない。その辺は注意しながら議論する必要があるのではないかと思います。

秋元座長ありがとうございます。おっしゃる通り、合う、合わないのところで、NO2を半分にしたらどうなるかというような議論に影響のある部分と、あまりこだわる必要がない部分とあると思います。その辺は来年度、特にどこに注目してどこかは目をつぶるかという辺りを決めていければと思います。
 ほかによろしいでしょうか。

大原委員資料の確認です。先ほどご説明いただいた資料1の6ページ目の一番下のカラムで私が指摘させていただいた点で、東京都のVOCと埼玉県のVOCで測っている成分が違うというところです。それへの対応として、参考資料4の8~9ページ目辺りに書かれていると思いますが、具体的にどこでそれをやっていただいたのかわからないのでご説明いただけますか。

事務局VOCについて参考資料4で対応いたしましたのは、東京都観測局の測定値を対象に解析を行っております。それに関連して資料1の6ページの一番下、大原委員からのご指摘で東京都の測定物質と埼玉県の測定物質の比較というのは、参考資料4の8ページの図2-1で行っております。
 ARO1とARO2を対象にいたしまして、東京都測定値と埼玉県測定値を比較しております。これで見ますと、モデルVOC成分に含まれる物質は東京都の測定のほうが少ない。具体的には参考資料4の7ページ、表2-1を見ていただくと、東京都の測定物質でモデルVOC成分のARO1に含まれるのはトルエン、エチルベンゼン、ベンゼンの3物質。ARO2ではm-キシレン、p-キシレン、o-キシレン。埼玉の測定物質については8ページで、ARO1はトルエンから5物質含まれていて、ARO2についてはm-キシレン、p-キシレン、o-キシレンを含めてp-ジエチルベンゼンまでの物質。
 埼玉県のほうが含まれる物質は多いですが、測定値は東京都のほうが多いという確認をしております。

大原委員東京都のほうが全体的に成分数は少ないけれども濃度レベルは高いので、埼玉に比べて高くなっているということだと思いますが、これだと私がコメントしたことに対する対応にはなっていないと思います。
 趣旨としては、埼玉県のほうが成分が多いので埼玉県の測定値に対して、東京都で測定している成分について合計したものがどのくらいの割合を占めているかを見ていただきたかったということです。私のコメントの仕方が悪かったのかもしれないですが、意味はわかっていただけましたか。

事務局ご指摘は、共通した成分だけを積み上げて比較したらどうかということでしょうか。

若松委員測っていないものを考慮してあるファクターを掛けるとか、そういったことが必要じゃないかという話ですよね。

大原委員まずやっていただきたいのは、埼玉県の測定値のうち東京都で測っている成分についての測定値が出ますよね。それが何%なのかということを知りたい。そのうえで、若松委員がおっしゃったように、ファクターを掛けて云々ができるのかどうか検討してはどうかという趣旨です。違う地点で比較してもそれが何をやっているのかわからないので、よろしくお願いします。

秋元座長それはお願いします。特にVOCについては、まとめの中でARO1はアンダーエスティメートだけれど、ARO2はまあまあいいではないかという書き方になっているけれど、図を見るとARO2も相当アンダーですよね。
 それについて金谷委員からの指摘では、モデルでは過小であるARO1とARO2を実際の濃度に等しくなるような条件で感度解析を行うことを次年度の課題に挙げてはどうかと書かれています。これはVOC削減効果にいろいろな意味で非常に影響があるので、前から時々出てきているOHリアクティビティでミッシングになっている部分を付け加えるとか、アンサータンティの幅を付け加えるとか、そういうことと一緒に来年度の作業の中でやっていただければと思います。

秋元座長それでは、資料1と参考資料4はこれでよろしいでしょうか。では次に議題(2)、資料2について説明をお願いします。

議題(2)シミュレーションモデルを用いた解析結果について(資料2)

事務局資料2「シミュレーションモデルを用いた解析結果について」の説明をいたします。
 はじめにですが、今年度、改善作業を行ったシミュレーションモデルを用いて、国内の光化学オキシダント濃度に影響を及ぼすと推測された主な要因のうち、「光化学オキシダント前駆物質排出量の減少」及び「越境大気汚染の増加」の影響の解析を実施しました。また、「NOx及びVOC排出量の削減効果の検討(感度解析の実施)」を実施しております。以下に解析方法と解析結果を示しました。
 「2.シミュレーションを用いた解析」では、シミュレーションを用いた解析項目及びモデルの設定条件を示しております。シミュレーションを用いた解析項目とその目的について表2-1及び表2-2に整理いたしました。また、解析対象地域として関東地域及び九州地域について、格子間隔60kmにおける解析対象メッシュとその中心位置を図2-2に、関東領域(10km格子)におけるメッシュの中心位置と測定局を図2-3に示しております。関東領域(10km格子)の計算では、測定局を含めメッシュを解析対象メッシュとしております。
 2ページは、シミュレーションを用いた解析項目を表2-1と表2-2に分けて示しております。
 表2-1は、国内の光化学オキシダント濃度に影響を与えると推測された主な要因の解析になります。解析項目は2つございます。光化学オキシダント前駆物質(VOC)排出量減少の影響の解析と越境大気汚染の増加の影響の解析になります。
 解析の目的といたしまして1つ目は、これまでの大気汚染物質排出削減対策として、関東地域の固定蒸発VOC排出量削減対策を対象とし、当対策が関東の光化学オキシダント濃度にどのような影響を与えたか明らかにすることを目的としております。基準年は2009年暖候期(4~9月)を対象としております。計算格子間隔は10km。解析対象地域は関東地域になります。
 次に、越境大気汚染の増加の影響の解析の目的は2つ設けております。1つ目は、2001年から2009年までの東アジア大陸の大気汚染物質排出量の変化が国内光化学オキシダント濃度に及ぼす影響の程度を明らかにすることを目的としております。東アジア大陸の排出量を変化させた地域については、3ページの図2-1で色をつけた部分になります。基準年は2009年暖候期(4~9月)。越境大気汚染は広域の現象でありますので、計算格子間隔は60km。解析対象地域は関東と九州を設定しております。
 越境大気汚染の増加の影響の解析の2つ目は、気象場が異なることで、越境大気汚染の増加の影響の解析結果が変化しないか確認する。関東地域よりも九州地域のほうが大きいという結果が1つ目の解析で得られましたので、気象場を変えたとしてもこの結果が見られるかどうかの確認を行うことが目的になります。基準年は2001年暖候期(4~9月)。計算格子間隔及び解析対象地域は1つ目の設定と同じになります。
 越境大気汚染については60kmの計算格子で行っていますが、その解析に用いたメッシュは3ページ目の図2-2に示しております。九州地域は福岡、山口の5メッシュ、関東地域は9メッシュを対象にデータを解析しております。
 2ページに戻りまして表2-2のシミュレーションを用いた解析項目では、NOx及びVOC排出量の削減効果の解析(感度解析)になります。今後の関東地域の光化学オキシダント対策を検討するうえで、NOx削減とVOC削減の光化学オキシダント濃度に対するそれぞれの感度を明らかにすることを目的としております。基準年は2009年暖候期(4~9月)を対象としております。計算格子間隔は10km。解析対象地域は関東。計算のケースは、関東のNOx及びVOC排出量をそれぞれ変化させた5ケースを設定して、それぞれ比較しております。
 10kmメッシュの位置について3ページの図2-3に示しております。10km格子ですと、中心位置として赤い点で描いたようなメッシュの配分になりまして、測定局を含むメッシュを解析対象メッシュとしております。
 4ページでは、設定ケースの一覧を示しております。網掛けは、各解析で設定した基準ケースと異なる設定を行った部分になります。
 表2-3は、光化学オキシダント前駆物質排出量減少の影響の解析の設定ケースですが、ケースA、ケースBを設定しております。比較するのはケースA、ケースBですが、変化させた部分が関東固定蒸発VOCについて2009年に設定したもの、2001年に設定したものという排出量を設定しております。その他東アジア大陸と関東固定蒸発VOC以外の大気汚染物質排出量及び気象場については、2009年で一定になっております。
 表2-4は越境大気汚染の増加の影響の解析です。これはケースA、ケースCと設定しております。ここで変化させていますのは、東アジア大陸からの大気汚染物質排出量の設定年を2009年と2001年にしております。A'、C'というふうに設けておりますのは、気象場が異なる場合の結果の確認ということで、東アジア大陸の排出量を2009年、2001年としておりますが、基準ケースとしてここでは2001年に設定しております。それがC'のケースに関係いたします。
 表2-5は感度解析の設定ケースです。基準ケースはケースA。すべて2009年の設定になりますがD、E、F、Gを設定しております。D、E、Fについては、関東人為起源VOC及び関東NOxの排出量を2009年排出量で50%にしているのをVOCだけに適用したものがケースD、NOxだけに適用したものがケースE、VOCとNOxともに適用したものがケースFになります。ケースGについては、表2-3で解析を行った固定蒸発VOCに着目しまして、人為起源VOCのうち固定蒸発VOCのみ2009年の排出量の半分、50%に設定したケースになります。
 このケースGと関東人為起源VOC一律で50%に設定してケースDとの比較で、削減量とO3の変化の関係を見たいと思って設定しております。
 具体的な解析の結果に移りたいと思います。5ページでは、光化学オキシダント前駆物質(VOC)排出量減少の影響の解析。
 解析の目的は、先ほど説明しましたように関東の高濃度域の光化学オキシダント濃度の変化に対して、これまでの大気汚染物質排出抑制対策がどのような影響を与えたか明らかにする。具体的には、平成18年度(2006年度)より施行された「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制制度」による関東地域における固定蒸発VOC排出量削減の影響の程度を把握することを目的としております。
 シミュレーションの設定条件は、先ほどご説明しました表2-6に示した設定で行っております。モデル内において2001年及び2009年の関東領域における人為起源VOC排出量の比を算出したところ、0.73程度でありました。また、光化学オキシダント反応性を考慮した場合も算出したところ、同じく0.73程度でありました。2001年に比較して2009年は7割ぐらいの排出量になっているという位置付けになります。
 6ページに移ります。解析結果ですが、O3の日最高8時間値の暖候期98パーセンタイル値の高濃度域においてどのような変化があったかに着目して解析しております。関東領域のO3計算値について計算メッシュごとに日最高8時間値の暖候期98パーセンタイル値(以下、O3新指標相当値と記述)を算出しました。図2-4にそれぞれの分布状況を示しております。また、図2-5に「すべての大気汚染物質排出量を2009年に設定」した場合と「関東の固定蒸発VOC排出量を2001年に設定」した場合の新指標相当値の濃度比を示しております。
 図2-5の濃度比で見ますと、ケースA/ケースBということで、この値が100%より小さくなっているということで、「すべての大気汚染物質排出量を2009年に設定」した場合、「関東の固定蒸発VOC排出量を2001年に設定」した場合よりもO3の新指標相当値が小さくなっております。東京都東部から埼玉県東部にかけて特に濃度比が小さくなっていることがわかります。
 これまでの固定蒸発VOC排出量の削減対策により、関東地域ではO3新指標相当値が低下したことが確認されました。特に東京都東部から埼玉県東部における地域で削減効果が大きいことが確認されております。
 7ページは越境大気汚染の増加の解析の影響の解析です。2001年から2009年までの東アジア大陸からの排出量の変化が国内の光化学オキシダント濃度に及ぼす影響の程度を把握することを目的としております。
 シミュレーションの設定条件としては、表2-7に示した設定で行いました。この解析においても、2001年と2009年における東アジア大陸におけるNOx排出量の比を求めたところ1.48程度、VOC排出量の比は1.19程度でありました。
 先に説明しましたように、本解析は、広域スケールを対象としていることから、60km格子における計算結果を対象に解析を行っております。
 8ページでは、先ほどと同様に、計算メッシュごとにO3の新指標相当値を算出しております。それぞれの濃度分布を図2-6に示しました。
 9ページでは、図2-7にO3新指標相当値の濃度比を示しております。図2-7の分布図より、O3新指標相当値の濃度比は、「すべての大気汚物質染排出量を2009年に設定」したケースAの濃度比が大きくなっている傾向が見られ、それは沖縄から九州といった東アジア大陸に近いほど大きくなっていることがわかりました。濃度比が大きい地域は、九州地方、中国地方西部、中国地方内陸部等から北海道にかけての一部であります。ただし、東北地方や北海道にかけては、濃度比は大きいですが、O3新指標相当値の絶対値が小さいことに留意する必要があります。
 図2-8は、九州地域及び関東地域のO3新指標相当値から濃度比を算出しました。これは先ほど説明しました、九州及び関東地域の60kmのメッシュに対応する統計値の平均をとったものになります。ケースAとケースCの濃度比について比較しますと、九州地域のほうが関東地域よりも大きい傾向が見られます。
 以上のことより、これまでの東アジア大陸からの大気汚染物質排出量増大によって、日本国内の広い範囲でO3新指標相当値が増加したことが確認されました。この増加割合は、関東地域よりも九州地域のほうが大きいことが確認されました。
 10ページでは、O3新指標相当値に加えてO3の日最高8時間値の月平均値を求めております。O3新指標相当値の算出と同様に、日最高8時間値の月平均値を算出いたしまして、それぞれ図示したものが図2-9になります。図2-9の一番右に濃度比(A/C)の値を示しております。
 図2-9の濃度比の分布図より、日本の沖縄から九州地域に着目すると、4~7月にかけての濃度比が比較的大きいことがわかります。また、O3新指標相当値と同様、東アジア大陸に近いほど濃度比が大きくなる傾向が見られます。
 12ページでは、九州地域、関東地域を含むメッシュについて月ごとに濃度比を算出しております。図2-10により、九州地域における日最高8時間値の月平均値の濃度比は、6~7月にかけて特に大きくなり1.07程度でありました。一方、関東地域における日最高8時間値の月平均値の濃度は、九州地域と同様、6~7月にかけて大きくなりましたが1.04程度であり、九州地域よりも小さい結果となっております。
 以上のことから、東アジア大陸からの大気汚染物質排出量が増大したことによるO3の日最高8時間値の月平均値に及ぼす影響は、関東地域よりも九州地域のほうが大きいことが確認されました。また、両地域とも6~7月にかけてその影響が大きくなる傾向が見られました。
 13ページに参ります。解析の目的は、先に行いました解析の気象場は2009年に設定いたしましたが、それが異なることで越境大気汚染の増加の影響の解析結果、具体的に言いますと、増加の影響は関東よりも九州のほうが大きいことが変化しないか確認することとしております。
 シミュレーションの設定条件として、A'、C'を設定いたしました。基準ケースとして2001年(ケースC')に対して、東アジア大陸からの排出量を2009年に設定したケースA'を比較することによって、基準ケースが2001年の場合の解析結果を確認します。その後、基準ケースを2009年と設定した場合の結果と同様の傾向であるか評価しております。
 14ページでは、気象場を2001年に設定した場合の計算結果を図2-11に示しております。先ほどと同様に図2-12にそれぞれの濃度比をとりました。図2-12の分布図より、日本付近のO3新指標相当値の濃度比は東アジア大陸に近いほど大きくなっており、基準ケースを2009年にした場合と同様の傾向が見られることがわかります。
 図2-13は、九州及び関東地域についてO3新指標相当値を算出し濃度比を示しております。図2-13から、濃度比は九州地域で1.03、関東地域で1.01ということで、濃度比としては2009年を基準年とした場合よりも小さいですが、2009年と同様の傾向が見られることを確認しております。
 以上のことから、気象場を2001年に設定した場合でも、越境大気汚染の増加の影響の傾向に変化は見られないことを確認いたしました。
 16ページでは、基準ケースを2001年にした場合のO3の日最高8時間値の月平均値を先の解析と同様に求めております。
 図2-14を見ていただきますと、九州地域において月平均値の濃度比は5~6月にかけて大きくなっています。一方、関東地域においては6月に大きくなり、値としては1.04で、九州地域と比較するとやや小さい結果となっております。
 以上のことから、東アジア大陸からの大気汚染物質排出量が増大したことによるO3の日最高8時間値の月平均値に及ぼす影響は、関東地域よりも九州地域のほうが大きいことが確認されております。また、両地域とも6月にその影響が大きくなる傾向が見られております。この傾向は、気象場が異なっても同様であることが確認されました。
 17ページは、NOx及びVOC排出量の削減効果の検討(感度解析の実施)になります。目的といたしましては、今後の光化学オキシダント対策を検討するうえで、関東地域を対象にNOx削減とVOC削減の光化学オキシダント濃度に対するそれぞれの感度を明らかにすることとしております。また、VOC削減対策の効果について、VOC削減量とO3新指標相当値の変化の大きさとの関係から評価しております。
 シミュレーションの設定条件は表2-9に示した条件になります。これは先ほど説明いたしましたので割愛しますが、ケースGについては、関東領域における人為起源VOC排出量のケースAに対する比は、光化学反応性を考慮しない場合、した場合ともに、0.7程度であることを確認しております。
 本解析は、気象場の設定を2009年とし、地域的なスケールを対象としていることから、関東領域10kmにおける計算結果を対象に解析を行っております。
 18ページが解析結果になります。これまでの解析方法と同様、関東領域のO3計算値について、計算メッシュごとにO3新指標相当値を算出いたしました。20ページの図2-16に分布状況を示しております。また、図2-17に基準ケースAのすべてを2009年に設定した場合の結果に対する濃度比を示しております。
 図2-17は、「VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合」、ケースDですが、関東地域全域でO3新指標相当値は小さくなっております。一方、「NOx排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合は、東京湾を中心とした地域でO3新指標相当値が大きくなる傾向が見られております。他の地域では、O3新指標相当値は現状通りもしくは小さくなっています。「VOC及びNOx排出量ともに2009年排出量の50%に設定」した場合、O3新指標相当値は、東京湾を中心とする地域ではほとんど変化がないか、やや大きくなる傾向が見られましたが、埼玉県西部や東京都西部などの郊外ではO3新指標相当値は「VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合よりも濃度比としては小さくなっております。
 以上のことより、関東地域では、「VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合、O3新指標相当値が関東全域で低減することが示唆されました。一部地域では、「VOC及びNOx排出量ともに2009年排出量の50%に設定」した場合、最も低減割合が大きくなることが示唆されております。一方、「NOx排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合は、東京湾周辺を中心にO3新指標相当値は増大するが、その他の地域では現状通りもしくは低減する可能性が示唆されております。
 続きまして、VOC排出量とO3新指標相当値の関係についてです。「VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合と「固定蒸発VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合で、関東地域におけるVOC排出量比とO3新指標相当値の濃度比を比較しております。比較した結果は19ページの図2-15になります。ケースD、ケースGのVOC排出量の大きさとO3新指標相当値の濃度比の大きさを比較すると、関東地域においては「固定蒸発VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」したほうが、O3新指標相当値の濃度を低下させる効果が大きいことが、図2-15から示唆されております。
 21ページでは、O3の濃度レンジによる感度の違いについて解析しております。解析の目的は、2.3の解析項目について、O3の高濃度レンジを代表する日最高8時間値の暖候期98パーセンタイル値のほかに、O3の中濃度(平均濃度)を代表する日最高8時間値の暖候期50パーセンタイル値を算出し、それぞれの感度に差があるか確認することを目的としております。
 解析方法としては、高濃度レンジの代表値として、日最高8時間値の暖候期98パーセンタイル値を算出しました。中濃度レンジの代表値として、暖候期50パーセンタイル値を算出しております。22ページの図2-18に結果を示しております。
 図2-18の左図は、関東地域におけるO3の高濃度レンジの計算値と中濃度レンジの計算値を載せております。図2-18の右図は、基準ケースであるAに対する濃度の比を載せております。図2-18の右図を見ますと、50パーセンタイル値、中濃度域、高濃度域ともに濃度の比の変化としては、高濃度域98パーセンタイル値のほうが大きいことが明らかになっております。青色で示したケースD、オレンジ色のケースF、あずき色のケースGです。ただ、ケースEのNOx排出量を2009年排出量の半分に設定した場合については、増加傾向ということで濃度比が1以上であることと、濃度レンジによって感度に大きな差は見られない結果になっております。それについては、表2-10に一覧として整理しております。

秋元座長ありがとうございます。時間が押していますので、23ページは今までのまとめなので結構だと思います。
 それでは、いろいろ大事な結果が報告されましたので、資料2について委員の方々からご意見、ご質問などをいただきたいと思います。
 順番に、2.3辺りから行きたいと思います。VOC排出量が2001~2009年までの10年間で0.73に下がったことによって、O3に対してこれだけ影響が出ましたという5~6ページの部分でご質問なりコメントはございますか。
 98パーセンタイル値の高濃度域においてO3が6ページの下の図にあるように、90%ぐらいに下がったということでしょうか。VOCを下げればO3が下がるという、定性的にはそれを反映して、特に高濃度域でちゃんと出てくるということで非常にわかりやすいと思いますが、よろしいでしょうか。
 次の2.4の越境汚染の影響ですが、2.4と2.5は気象場を変えてみたというだけでほとんど同じなので、まとめてご議論いただければいいと思います。2.4と2.5と2つ横並びで分けるほどのこともなかったと思いますが、2001年と2009年で気象場はものすごく違うんですか。

事務局気象場については、2001年も異常年検定を行って異常年ではない年ではございますが、2001年と2009年で具体的にどれぐらい違うかは確かめていません。

秋元座長極端に違う年を比べてみるのはそれなりに意味がある。本当だったら、3年平均ぐらいとって気象場をある程度ならしたところで一発でやるほうが説得力はあると思うんです。2001年と2009年の結果はあまり違わないけれど、それほど特に異常年を取り出したわけではないとご理解いただければいいかと思います。
 実質的には、2.4の2009年の気象場の結果をご議論いただければいいかと思いますが、いかがでしょうか。

竹内委員2.4と2.5は気象場の差による検討ということで、国内の排出量も2001年と2009年で変えていますが、気象場だけ変えればいいような気がしますけれど、いかがでしょうか。

秋元座長趣旨はそういうご説明だった気がするけれど、国内のエミッションも変えているんですか。「気象場の影響の検討」と2.5に書かれているけれど、そうすると意味が違ってきますね。

事務局基準ケースを2001年に設定しておりまして、現実の2001年をベースにして東アジア大陸の排出量を2009年に変えたときにどうなるかという考えの下になっています。

秋元座長それだと気象場の影響の検討じゃないですよね。

大原委員この議論は、第5回作業部会で金谷委員から指摘を受けた点に起因すると理解しています。
 今日の資料にはないですけれど、モデルでトレンドがどれだけ再現できているかというのが、こういう解析をする場合のキーポイントになります。前回の検討会の資料に出ていましたが、九州地方では上昇トレンドをモデルで再現していなかったと思うんです。例えば2001年と2009年の計算結果と測定結果を比較してみると、測定結果だと上昇しているけれども、モデルだとそうなっていない。逆に、2009年のほうが低い。
 その結果と感度解析の結果が矛盾するのではないか。要は、もしアジアの排出量の増加が主要なO3の増加トレンドの原因であるならば、ケースAとCの比較で、アジアの排出量の増加によって2009年のほうが2001年よりも増えているという結果が出ているけれども、コントロールケースの計算だとそうなっていない、逆になっている。
 その原因は何だろうか。考えられるのは気象の要因と国内の排出量の要因だろう。2001年をベースにして、東アジアの排出量を2001年、2009年に変えて計算したらどうなるかチェックをしてみようということになり、こういう結果を出していただいたと理解しています。
 今回の結果を見てみますと、2009年をベースにした結果と2001年をベースにした結果で矛盾がないので、少なくとも東アジアの排出量の増加によるO3の増加トレンドは計算できている。でも、コントロールケースで計算した場合との矛盾は生じている。その矛盾を引き起こしている原因としては、国内の排出量による影響なのではないだろうかと予想されるというのが、現時点での1つの結果ではないかと思います。わかりにくい説明で申し訳ありません。

秋元座長わかりにくいけれど、要するに国内のそれも含めて、10年間の変化のうち越境の影響を確かめようということだと。ただ、2.4と何が違うか2.5のタイトルを変えてください。「気象場の影響の検討」とは違うような気がしますので。

星委員2.4の越境の影響と2.3の国内排出量減の効果の関係の評価ができないかと思うんです。パッと見、2.3で3割ぐらいVOCの排出量が減るとO3がこのぐらい減るという図が入っていまして、2.4ではアジアで48%ぐらい増えているというので、関東でこのぐらい影響が出るというのがあります。国内のVOC排出量の削減が越境の増加によって相殺されるか、されないかという評価が、今後対策を立てるうえで必要になってくるのではないかと思うんです。せっかくシミュレーションをやって数値も出ているのだから、そういった評価まで少し突っ込めないかと思いますが、いかがでしょうか。

事務局今年度は時間が限られていたこともあって今お示ししている結果までしかできていないですが、今後の対策を検討する上では、ご指摘いただいた点も含めて、どういった解析するかは環境省と相談のうえ次年度以降実施していきたいと思います。

秋元座長星委員がおっしゃるように、まさにその辺は非常に興味があるところだけれども、前からの議論で、今使っているモデルでは本当の相殺がどうなっているかまで議論するのはやりすぎだろうと。今年度は感度解析ということで、50%NOx・VOCを減らしたらどの程度に動くかというのを、まずは当たりをつけようということでやっておりました。来年度その辺を議論できるように検討できればいいと思っています。
 細かいことで恐縮ですが、9ページの図2-7の色のコードがみんな真っ赤で見にくいような気がします。カラーコードをうまくできないですか。この図で言いたいのは、日本の上のどの辺に茶色い部分がかかっているかを見ればいいということだと思いますが、中国の部分もただ一様に真っ赤というのも変なので、カラーコードのとり方をもう少し工夫できないですか。

事務局ここも正直悩んだところではあるんですが、今回は日本を中心に差が見える形でカラーコードを設定するということで、資料を出させていただいています。

秋元座長日本が見えるのは当然だけれど、日本が見えてほかもある程度差が見えるようなとり方はないですか。
 これも本質ではないですが、図2-8、図2-10、図2-13、図2-14など白黒のバーグラフが、ケースAとCの並べ方や色の濃いほうと薄いほうのとり方が図によってぱらばらになっている。9ページの図は、濃いほうがケースC、薄いほうがケースAで右側にあります。12ページの図では、ケースCが濃いのは同じだけれど並べ方はケースAが左に来ている。16ページの図2-4ではケースC'が薄くなっている。その辺は統一したほうが見やすいので直しておいてください。
 定量的にはともかく、定性的には非常にリーズナブルな結果だと思います。九州のほうが影響は大きいという結果も出ていますし。

指宿委員確認です。VOCの排出量を減らすときに関東だと10kmメッシュですよね。各メッシュに均等に割り振って減らしたということになっている。そうしたときに地域的にO3濃度に変化が起こるというのはなぜなのか。NOxは地域的な濃度を与えるということなんですか。

大原委員反応性が変わります。NOx・VOCの比率が変わります。

指宿委員そこをはっきり明示しないと読み方が難しくなるんじゃないですか。

秋元座長もう一回お願いします。メッシュに?

指宿委員VOCの削減量を一律に与えているのかという質問で、そうだというお話でしたが、メッシュごとに排出インベントリがあるとしたときにそれを入れたら大分変わるのではないかと思ったのですが。その辺をやる必要はないですか。

秋元座長VOCにしてもNOxにしても規制して平均的に何%減るというのがあるけれど、それを場所ごとにここは何%減った、ここは何%減ったというのを入れるという意味ですか。

指宿委員地域的に東京の中心の辺りの減り方が大きいとか小さいとか、そういうふうに結果を議論していますよね。

秋元座長O3についてはそうです。

指宿委員VOCやNOxのインベントリ、特に地域的な差を入れて計算したときにどうなるか。

秋元座長メッシュごとにトレンドを入れたようなインベントリは、現実にはあり得ないんじゃないですか。

指宿委員ただ、関東でO3の減り方の地域差が出ているじゃないですか。

秋元座長O3は当然出ます。

指宿委員それは気象場で説明されるんですか。

大原委員今のご質問に関しては、反応性が変わりますので、NOx固定でVOCを一律減らしたとしても、それぞれのメッシュにおいてNOx・VOCの比率は変わりますよね。反応性が極端に変わるので当然O3の濃度分布も変わる。それはある意味で当たり前の結果だと思います。
 VOCの削減に関して地域分布を入れられないかということに関しては、少なくともケースBでは考慮しています。というのは、ケースBは2001年の固定蒸発VOCのインベントリをそのまま使っていますから、その変化は地域分布も含めて考慮しているという理解です。
 ただ、表2のD、E、F、Gは一律にボンと下げています。

指宿委員感度解析という観点からだと。そこは理解しました。

秋元座長ありがとうございました。

若松委員1つだけ質問です。NOxとVOCの削減計算をしたとき境界条件の削減も同時にしているんですか。それとも境界条件はフィックスしていて、中だけ半分にした?

事務局境界条件はフィックスしています。

若松委員その場合、例えばバックヤード濃度を考えると、NOxは低いけれど、境界から入ってくるVOCはある程度レベルを持っていますよね。相対的に比率というのが何を表しているのか。VOCを半分に減らすということは、発生源のVOCを半分に減らすんだけれど、それと境界濃度を足したときに実績でどのぐらいの減りになっているのか気になったのですが、そこは感度としてあまり影響はなかったのでしょうか。

事務局今年度の解析については関東領域だけの排出を変えていまして、境界部分は変えていないです。これは作業時間との兼ね合いもあって、当然ご指摘の点の境界の影響はどうなのかというのは次年度以降見る必要はあると思います。

若松委員ぜひ報告書の中にそこは記載していただきたいと思います。よろしくお願いいします。

秋元座長ありがとうございます。それでは本年度の作業として1つの要ですが、2.6「NOx及びVOC排出量の削減効果の検討(感度解析の実施)」についてご意見、ご質問はございますか。
 私が読んだ限りでは定性的にはリーズナブルな結果が出ていると思いましたのは、20ページの図2-17で、VOCだけを下げれば全域で、特に東京や埼玉など発生源地域でのO3の下がりが大きい。周辺の風下側に行くと差が小さくなる。NOxだけを下げると都心部では逆にO3が増える。周辺部に行けばO3が下がる。NOxとVOCの両方を下げると、VOCだけ下げたよりも全域でO3が下がる。これは、30年ぐらい前の昔からオキシダント対策として定性的にわかっていることにイメージとして合っていますので、出発点としては非常によかったと思います。

大原委員1点コメントをしたいと思います。この検討会で重要なミッションと考えられていた固定蒸発発生源が減ったことによる効果に関して、今回非常にクリアな結果が出たと理解しております。ケースAとBの比較結果で10%ぐらい減っている。それが参考資料6の一番最後のページに示されています。実測値ベースで指標値が経年的にどう変化しているのか。これまでこの検討会の場でもたびたび議論されていて、新指標値で見てみるとこの10年間ぐらいで関東地方では減っている。
 時期尚早かもしれませんが、実測値で示されたO3の高濃度の減少のかなりの部分を、VOCの固定蒸発発生源の削減によって成し遂げられたというか、それが主因になっていることが考えられるというのは、1つの非常に重要なこの検討会でのコンクルージョンではないかと思います。

浦野委員関連してですけれども、いろんな解析をするときに、50パーセンタイル値と資料2では98パーセンタイル値を用いていますね。これはもともと行政の研究なので最終的に98パーセンタイル値を幾つ以下にしたいとか、あるいは過去の何に比べてどのぐらい減らしたいとかをある程度はっきりして、今後検討する必要があると思うんです。
 今ご指摘のあった参考資料6は、99パーセンタイル値になっていますよね。なぜここは99と98がクロスしているのか理解できない。行政的な目的を来年度以降はっきりさせて、それに対してシミュレーションがどれだけ貢献して、それでどういう結論になるというのが見える形にしていただくと非常にいいと思うんです。99パーセンタイル値になったり98パーセンタイル値になったりというのは混乱すると思うのですが、どうですか。

事務局測定値を対象とした解析で、暖候期の98パーセンタイル値と年間の99パーセンタイル値はほぼ等しいという結果が得られています。このことから、シミュレーションでは暖候期(4~9月)ということで98パーセンタイル値、片や参考資料6は年間ですので99パーセンタイル値を求めております。

浦野委員参考資料6の図で各年度の3年以上平均していますけれど、暖候期の図で98パーセンタイル値を出せば、シミュレーションとの対応がとれるという理解でいいですか。

秋元座長そうですね。

浦野委員そうしてもらったほうが大原先生の言うようなこともすっきりする。

秋元座長この検討会としてはそうですね。

浦野委員年平均が出たり99パーセンタイル値が出たり暖候期が出たり、混乱するので。基本的に目標は何に置くかということをベースにして、シミュレーション解析もするし、測定値の解析もする。その辺がふらつくとごちゃごちゃになるので、その辺はぜひ来年度以降しっかりしていただきたい。

小林課長補佐参考資料6に示していますのは全国の常時監視のデータでございまして、大気の常時監視のデータは年度単位で自治体で出していただいています。前にこの検討会で検討していただいた際に、8時間値の日最高値の暖候期98パーセンタイル値を年間に換算すると99パーセンタイル値となり、新指標は年間の99パーセンタイル値ということで策定してございます。
 今回示しましたグラフは、全国の常時監視のデータを集計した結果でございますので、99パーセンタイル値で示しております。浦野先生のご指摘を踏もまえまして、今後、解析に使う場合は全国の暖候期98パーセンタイル値のグラフも示して、測定値とシミュレーションが比較できるように工夫していきたいと思います。ご意見ありがとうございます。

井上委員それに関連して。測定値のデータは域内最高値でやっていますが、シミュレーション結果で出てくるのは98パーセンタイル値の域内平均値で議論されています。実測の域内平均値と域内最高値はかなり差がトレンドにあったと思うので、こういう結果を示す場合、域内最高なら最高、平均なら平均というので測定値と合わせていただいたほうがいいと思います。域内平均の図は前の報告書には出ているんですね。

秋元座長なるべくそういうのはあったほうがいいけれど、前から統計的な定性という議論があって、1時間値の最高値とかそういうものをとるのはやめましょうと。

井上委員はい。ただ、域内平均か域内最高かというのは、今までは98パーセンタイル値の域内最高で議論していたのが、シミュレーションでは域内平均で議論しているという。

秋元座長シミュレーションでも、98パーセンタイル値のとり方はケース1と2があったけれども、基本的に測定値との比較は同じ手法でやっていませんか。

井上委員22ページで結果が出ているのは域内平均ですよね。

大原委員私の理解が間違っていたらご指摘ください。参考資料6で参照させていただいた図は、あくまでも環境省がこういう指標でこれからOxの傾向について把握するための、シミュレーションとは関係なく出された資料がたまたまありましたので、私がそれを使って説明させていただいたということです。
 シミュレーションの再現性を比較するという意味においては、これとは別にもう少し平均的な様子が見えるような指標で、モデルも観測も合わせた指標を使って評価することが必要。そういう意味で、先ほどの2つの指標の議論がなされているということであります。
 ですから、これはあくまでもたまたまここにこういう図がありましたということで、ほかに図がなかったので。

浦野委員今年度はこれでいいですが、来年度以降、シミュレーションと現実の測定値を合わせた図が出るとわかりやすい。

秋元座長来年度、検討会報告書はそういう形にしたいと思います。
 私のほうから1つ質問があります。18ページの(2)に書かれている、「「VOC排出量を2009年の50%に設定」した場合(ケースD)と「固定蒸発VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合(ケースG)で、関東地域におけるVOC排出量比とO3新指標相当値の濃度比を比較した。図2-15より、両ケースのVOC排出量比の大きさとO3新指標相当値の濃度比の大きさを比較すると、関東地域においては、「固定蒸発VOC排出量を2009年排出量の50%に設定」した場合のほうが、O3新指標相当値の濃度を低下させる効果が大きいことが示唆された」。
 これはという意味ですか。この図から何でそれがわかるんですか。固定発生源と移動発生源と大きく分けてありますよね。同じ50%削減するときに、固定発生源を50%削減したほうが移動発生源を50%削減するよりも効果が大きいということを、ここでは言いたいんですか。

事務局そうです。

秋元座長それをこの図からどういうふうに読み取るんですか。

事務局左ですと、ケースDは5割減っていまして、ケースGだと3割減っています。それに対して濃度比としては0.94と0.96ということで、ケースGの3割減らしたほうが濃度を下げる効率がいいという考えです。

秋元座長よくわからない。固定発生源だけを50%下げたのがケースGですよね。それに相当して移動発生源だけを50%下げた図と比べるなら、話はわかるんですよ。

事務局移動発生源だけではなくて固定発生源と移動発生源を一律に下げています。

秋元座長左は一律でしょう。そうなると話が違ってくるんですよね。移動発生源と固定発生源を同じ削減率50%で比較するならどっちが効くという議論ができるけれども、片一方は両方を合わせたものと比較して何%比率が違うというのはおかしい。

事務局ご指摘のとおり、厳密に今回は移動発生源だけを減らした場合の計算はしていないです。ここで言えるのは、人為起源全体を減らすのと固定蒸発を減らす場合で効果としては19ページの右側の図にあるとおり、比としては0.94と0.96で排出量が大分違う割には効果はあまり変わらないことを示しています。

秋元座長それは定量的にもおかしいし、論理としてもよくないです。片一方は両方減らしているわけだから。あえて今回そこまで言う必要はないと思うんです。

事務局ここは検討不足というか材料が少ないので、表現は再検討いたします。

秋元座長これだけではこういうふうに明確に言えないと思います。
 そろそろ時間も来ていますので、ほかの方。

板野委員20ページの図2-17の右上、NOx排出量を50%に設定した図に関して、NOxを削減するとO3が増えた結果になっていて、これはタイトレーションによってそうなっているのでその通りだと思います。
 ただ、O3の生成量が増えたか減ったかというのはこれではわからなくて、NOxの削減がO3をプラスに増やしてしまうということにしか見えなくなる。そのためにも、ポテンシャルオゾン(PO)で見て増えたのか減ったのかというのも併せて見たほうがいいんじゃないかと思っています。要は、POの生成量として増えたのか減ったのかという結果が示されていると、対策としてうまくいっているのかどうかがわかると思います。NOxが絡むシミュレーションの場合は、POも併せて見たほうがいいんじゃないかと思います。

秋元座長来年度はもちろんそれをやらなきゃいけなくて、先ほどコメントにもあったVOCを削減したことによってかなり下がったというのが見えるのだけれど、これはNOxも下がっているんですよね。その辺は両方の複合効果もある。ただ、今年度はそこまで別々に評価できないということで、定性的にこれでよろしいかと思うんです。
 NOxの場合には2つ効果があるんです。1つはタイトレーションでわかりやすいけれど、もう1つはNOxリミット、VOCリミットの話があって、発生源の中心地域ではどうしてもVOCリミットになる。NOxを下げると逆にO3が上がってくる。両方が絡んでいるんじゃないかと思うんです。いずれにしてもPOも見るというのは必要だと思います。

秋元座長どうもありがとうございました。今年度はモデルが不備だということもあってどこまでできるか大分悩んだわけですけれど、感度解析でどの程度感度が合うのかということの試算ができたのは非常によかったかと思います。この辺のところを踏まえて筋はついたので、あとは定量的にどこまでやったらいいか。先ほど浦野委員のご指摘にあった、来年度は環境省のほうから日本の目標値をどこに置くか、8時間値で何ppbを達成するにはNOx・VOCをどれだけ下げたらいいか。そういう形で提示いただけると、検討会として目標がはっきりすると思うのでよろしくお願いします。

大原委員来年度に関わることで作業部会の一員として発言しておきたいと思います。基本的な方向性は、こういったモデルを使って今年度解析されたような対策に資する情報を出していくというのでいいと思います。一方、まだモデルのクリティカルな課題が幾つかあって、そこに関しては見逃すことなく引き続き検討しておく必要があると思います。
 1つは、九州でのO3のトレンドがベースケースで再現できていないのはまずいのではないだろうか。
 もう1つは、関東でO3のプラスのバイアスが強い。先ほどの図で20ppbぐらいでしたでしょうか。それがなぜなのかというのは引き続き検討する必要がある。場合によっては、指標のとり方にも関係してくるかもしれないので、データを解析する際にも、モデルあるいはエミッションを見直す際にも、非常に重要な点かと思っています。
 もう1点は、星委員からご指摘があったことに関係すると思いますが、複数のファクターだから、越境汚染の影響が効いているのか、国内の対策効果が効いているのか、それを相対的な評価をした場合にクリティカルなことの1つは、10kmと60kmでモデルが違うので、それを一緒くたにして異なるファクターについて相対的な評価をするのは非常に厳しい。できれば全部10kmにそろえることが必要だろうけれど、それも時間、コストとの関係もあるので、もう少しその点も含めた検討が必要なのではないかと思います。

秋元座長ありがとうございます。

瀧口課長今年度は作業部会を何回も開いていただいて、モデルの構築、精緻化ということで非常に精力的に活動していただいたと思っております。
 こういうモデルは非常に難しいことを扱っているものですから、不確実性は必ず残ると思います。我々行政側としては、現時点で政策判断に使えるモデルなのかどうかということに関心があり、モデルを構築することが目的ではなく、それを用いて解析して政策に反映していくことがミッションですので、その点は気にせざるを得ないです。
 大原先生がおっしゃった課題は確かにあると思いますが、それらは今年度何回もやっていただいた作業部会を、またさらに広げていけばそんなに時間もかからずに克服できる問題なのか。あるいは、もう少し中長期的な課題なのか。その辺り、ご意見をお聞かせ願えますか。

大原委員短期的にできることとそうでないことが混在していると思っていて、まずその仕分けをするのが必要なのではないかと思います。
 当然、モデルをパーフェクトになんていうのはあり得ないですが、でももうちょっとすれば改善されるのではないだろうかという点がないことはない。当面できることについては引き続き取り組むし、中長期的に取り組む必要があるようなことに関しては課題を提示するということを、来年できるといいという意味であります。
 冒頭で発言しましたように、基本的なスタンスは、今年度モデルをきちんとつくって、それを使って現時点ではその解析結果もまともな結果が出ていると理解しておりますので、これをベースに政策判断に使えるような情報を出していくということに関しては賛成ですし、基本的にそうすべきだと思います。とはいえ、根底の部分で土台が揺らいでしまうようなところに関しては、やはり引き続き見ておく必要があるだろう、検討しておく必要があるだろう。そういったような意味で発言した次第です。

秋元座長それでは、最後に総合的にまたコメントをいただくこともあるかと思いますが、議題(3)その他で参考資料のご説明はございますか。

議題(3)その他

小林課長補佐参考資料6でございますが、先ほど既に話題となりましたので、簡単にご説明いたします。
 各自治体への通知文でございます。この検討会で検討していただき策定した光化学オキシダントの新指標についてでございますが、昨年26年9月に各自治体宛てに新指標を策定しましたということは、既に通知しておりました。その後、有効時間等の測定値の取り扱いを決めてほしいという自治体からの要望等もございましたので、測定の有効時間等を決め、改めて通知したことの報告でございます。
 詳細についての説明は、割愛させていただきます。前回新指標を検討したときは代表的な測定局で解析しておりましたが、今回は、全国47都道府県の過去のデータを遡ってグラフを作りましたので、報告させていただきました。

秋元座長ありがとうございました。検討会で議論したことを踏まえて一歩前へ進めていただいたというのは、検討会としてもありがたいことだと思います。ありがとうございました。
 それでは最後に、来年度のことも含めて、進め方その他で委員の方からご意見がありましたらこの機会にお受けして、来年度の作業に生かしたいと思いますがいかがでしょうか。

板野委員最初のほうで言い掛けたことで、井上委員とも似たような意見ですが、どうしても必ず実測値との比較は避けて通れないと思うのですが、モデルと実測値を比較するときにやり方に難しい問題があります。
 資料2の3ページの図を見ると、房総半島の辺りは測定地点がほとんどないけれども、広い面を60kmメッシュだとカバーしていて、その値と測定地点とを比較するのは非常に難しい。特に高濃度域を比較しようとすると、片や測定値は濃度が高くなりやすいところだけに配置されていて、メッシュはそうでないところの面積割合が広い。逆に細かい10kmメッシュで見ようとすると、モデルは地域的に高濃度域が少しずれているだけで、実測値とモデルとの値がかなり変わってしまう可能性があって、非常に難しい取り扱いがあると思っています。
 実測値とモデルとをどういうふうに比較すればいいのかという辺りも、検討しないといけないという考え方を持っています。

秋元座長はい。ほかによろしいでしょうか。
 では、先ほど課長からもご指摘がありましたように、モデルを使ってどこまで政策対応の答えが出せるのかというのは非常に大きな問題だと思います。この検討会が始まったときに、よく言われるサイエンスポリシーの1つの試金石だというふうに申し上げて進めてまいったわけですけれども、そのときのサイエンス側として、モデルは90年代、2000年代にすごく進歩して、PMは別としてO3に関してはかなりのところまで進歩して、それに基づいたことを言えるような段階になっているのではないかという漠然とした意見を持っていました。
 大きなグローバルな分布の話や越境の話については論文もたくさん出ていますし信頼を置いてもいいと思うのですが、都市域のOxがどれだけ再現して、それの前駆体物質をどれだけコントロールしたらどうなるかという、その辺については意外と研究としてやられていない。その辺をきちんと押さえている論文が非常に少ない。日本でも少ないし、アメリカでもO3は合っているけれどもNOx・VOCはどれだけ合っているかきちんと議論した論文が意外とないです。その辺は、今まで行政側からの要請がないと研究者はそこまで立ち入って自主的に論文を書いてこなかったというのが1つあるのかなと思います。
 本当は、当面の答えを出すことと、5年先ぐらいを見てそういうことに対応できるモデルをつくっておくという、そういうことを2つパラレルに考えていただけると将来的によくなる。特にPM2.5のモデルに関してはまさにそうだと思います。今無理やり答えを出しても恐らく大した答えは出てこない。だけどモデルをきちんとしたものをつくることに対して、推進費なり何なりお金を出してやってもらうというのは非常に意味がある。
 O3はそこまでやらなくてもいいのかなと思ったのだけれど、どうもこの1~2年の結果を見ているとまだ詰めなければいけなきゃいけないことがあるんだなというのが私の実感です。とはいえ、大原委員が言われたように見えるところは見えてきたので、来年度何とか答えを出しましょうというのがスタンスなんですが。

浦野委員こういう解析をするときに考え方をもう少し整理しておかないと、モデルのほうで一生懸命やるのと実測をとって、最終的には先ほどご指摘のあった比較しなくてはいけないですけれども、本質的に平均値的なものを議論すると、当然10kmメッシュにしても測定局も全然ないようなところも全部モデルで計算させてしまう。だから、実測との比較のとき平均値というのはあまり意味がない。測定局がないところを平均しても意味がない、できないわけです。
 ところが先ほども少し話しましたけれども、98パーセンタイル値とか99パーセンタイル値というピークのあるようなところは測定局があるんです。そのことも踏まえて、モデルでの計算と実測を比較するときに、どういう考え方で何をやるかというのを文章化して整理しておかないと、議論が堂々巡りする。できなくてやっているんじゃないかという話になってしまう。
 ですから、モデルはモデルでやることと、実測は実測でとるものであって、それをどういうふうに比較すべきだという考え方を整理して文章化しておく。それと行政目的に対応できるような基本的なところを来年度少ししっかりと。私はイメージを持っているんだけれど、議論があっち行ったりこっち行ったりするので、その辺はもう一度整理して、委員の人に合意してもらうということをもう一度やっていただきたい。

秋元座長ありがとうございます。それでは、この辺でよろしいでしょうか。では、10分ほど時間がオーバーしましたけれども、今日はありがとうございました。事務局のほうにお返しします。

閉会

事務局本日はお忙しい中、長時間にわたりご討議ありがとうございました。本日の検討会をもちまして、今年度の検討会は終了といたします。1年間にわたりましてご指導ありがとうございました。
 議事の内容等については、いつも通り電子メールにて後日お送りいたします。またご確認のほどお願いしたいと思います。
 それでは、本日の検討会はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

以上

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