環境省大気環境・自動車対策大気汚染状況・常時監視関係光化学オキシダント関連情報光化学オキシダント調査検討会(平成25年度)

平成25年度第3回光化学オキシダント調査検討会会議録

1.日時 平成26年1月22日(水)15:00~17:28

2.場所 一般財団法人日本気象協会 第一・第二会議室

3.出席者(五十音順敬称略)

(委員)
秋元 肇  板野 泰之  井上 和也  浦野 紘平  大原 利眞
坂本 和彦  紫竹 益吉  下原 孝章  竹内 庸夫  橋本 光正
八田 拓士  星  純也  向井 人史  若松 伸司
(欠席者)
指宿 堯嗣  岩崎 好陽  金谷 有剛
(事務局)
環境省水・大気環境局大気環境課 難波課長、後藤課長補佐、山口係員
一般財団法人 日本気象協会

4.議題

(1)データの多角的解析について
(2)シミュレーションモデルを活用した検討について
(3)その他

5.配付資料

資料1
光化学オキシダント調査検討会 報告書(素案)
~光化学オキシダントの解析と対策へ向けた指標の提言~
資料2
シミュレーションモデルを活用した調査フレームの作成
参考資料1
平成25年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱
参考資料2
平成25年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事要旨
参考資料3
平成25年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録

6.議事

後藤課長補佐定刻になりましたので、平成25年度光化学オキシダント調査検討会(第3回)を開催いたします。委員の皆様にはお忙しい中をご出席いただきありがとうございます。
それでは検討会に先立ちまして、環境省水・大気環境局大気環境課の難波課長からご挨拶を申し上げます。

難波課長環境省の難波と申します。9月と11月、2回開催されていましたけれども、出席できませんで大変失礼いたしました。申しわけございませんでした。
光化学オキシダントにつきましては、環境基準の達成率が低いということと、越境大気汚染の影響等も示唆されておりまして、メカニズムの解明、対策の推進ということが求められているテーマであります。
本検討会は平成23年度からさまざまな検討を行っていただいておりますけれど、本年度につきましては、特にデータ解析の結果について報告書を取りまとめていただくとともに、シミュレーションのフレーム検討も行っていただく予定でございます。
こういった内容をもとに、中環審の中に新しい専門委員会を立ち上げますけれど、そういった中での議論にも十分に活用させていただくような内容になるという、役割の大きい検討会であると認識しております。先生方におかれましても、大所高所からさまざまな議論をいただけるようよろしくお願い申し上げます。

後藤課長補佐引き続き、本日の出席状況でございます。本日は指宿委員、岩崎委員、金谷委員がご欠席でございます。
続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第
座席表
資料1「光化学オキシダント調査検討会 報告書(素案)
~光化学オキシダントの解析と対策へ向けた指標の提言~」
資料2「シミュレーションモデルを活用した調査フレームの作成」
参考資料1「平成25年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱」
参考資料2「平成25年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事要旨」
参考資料3「平成25年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録」
また、委員の皆様の机上には、平成23年度検討会の検討会報告書、平成24年度の請負業務の報告書を前回同様に置かせていただいております。以上でございますが、委員の皆様、資料はおそろいでしょうか。
今日はプレスの方も見えておられると聞いておりますけれども、冒頭のカメラ撮りがもしありましたらここまでとさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
これ以降の議事進行につきましては秋元座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

議題(1)-1 データの多角的解析について(資料1)

秋元座長引き続き座長をやらせていただいております秋元です。この検討会も本年度3回目になります。本年度は業務報告ではなくて検討会としての報告書をまとめるということで、本日も含めて今後3回の開催を予定しております。今日これから説明いただく資料1が報告書のたたき台として出てきましたので、この資料を中心にご議論いただくことになると思います。
全体の位置づけとして最初に委員の方々にも思い出しておいていただきたいのですが、平成23年度の報告書が委員の方の机の上にあると思います。平成24年3月に、この検討会の報告書として出た『光化学オキシダント調査検討会 報告書 ―今後の対策を見すえた調査研究のあり方について―』では、今後どういうふうな解析ないし研究調査をやっていったらいいかが最後のほうにまとめてあります。本年度の作業はこれに沿ったものとご理解いただけるといいと思います。
この報告書(平成23年度検討会報告書)の164ページをごらんいただけますか。「6.2 今後の調査研究のあり方」というセクションがあります。その中に、「6.2.1 優先解析地域」ということで、関東地域・東海地域・阪神地域・九州地域の4カ所を優先的に解析したほうがいいのではないかという提言があります。今年度の作業も大体それに沿って、この4地域についてのデータをまとめていただいております。
その次に166ページ、「6.2.2 モニタリングについて」ということで、「光化学オキシダント濃度に関する現象解明のためのデータの多角的解析」という欄があります。これはモニタリングそのものの議論ではなくて、モニタリングによって得られたデータの解析、つまりシミュレーションとかを特に介さないで観測データから何が言えるかという解析をやりましょうという内容です。本年度の作業はまさにそこに集中しております。後でシミュレーションの話も出てきますけれど、これは来年度の作業のための準備とお考えください。
その中で、特に前の検討会の発足の経緯ですが、VOCは規制して下がっていて、現実に大気の濃度も下がっている。NOxも下がっています。にもかかわらず、オゾンが増えてきているというトレンドが見えてきた。それがなぜかということが検討会での議論の始まりだったわけです。
その中で特に、越境の影響があるのではないか。もう一つは、NOタイトレーションの影響があるのではないか。という2点がクローズアップされて、その二つと国内の前駆物質の減少トレンドとの組み合わせで今のようなことが説明できるのかというところに議論が収束してまいりました。今年度の報告書の整理も、大体その線に沿った整理になっているかと思います。後で中身の説明をいただくことになります。
ということで、23年度の報告書のうちモニタリングデータの解析というところに今年度の報告書は絞られていると、まずご理解いただきたいと思います。
前置きはそのぐらいにいたしまして、資料1についてのご説明を、30分から40分ぐらいでしょうか、全体をまとめて事務局からお願いしたいと思います。

事務局資料1「光化学オキシダント調査検討会 報告書(素案)」、赤字で(平成26年1月22日検討会資料)と書いた資料に基づきましてご紹介させていただきます。内容も160ページ程度になりますので、全体の流れと要点をかいつまんでご説明させていただければと思います。
資料の目次のところで全体の構成についてご紹介させていただきます。大項目といたしまして1から9まで用意させていただいております。
1 検討会の目的
2 解析の条件設定
3 光化学オキシダントの解析結果
4 光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示す指標の検討
5 光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示す指標の提言
6 まとめ
7 参考文献
8 光化学オキシダント調査検討会名簿
9 検討会の開催状況
という形で構成させていただいております。全体的な流れや構成についてもご意見をいただければありがたいと思っています。
「1 検討会の目的」は、細かなセクションに分けておりますが、先ほど座長からご紹介いただきましたように平成23年度の検討会報告の位置づけやその成果について記載しております。平均的な濃度の状況や高濃度の経年変化の状況、前駆物質の状況などについて、目的のところで整理しております。解析の方針と概要を1.4のところに記載しております。
「2 解析の条件設定」では、先ほどの優先解析地域や期間・季節、物質、使用したデータ、算定の手順についての項目を設定し、解析結果の留意点というところで幾つか考えられる留意点について入れております。
「3 光化学オキシダントの解析結果」が、昨年から今年度にかけていろいろ解析させていただいたものの取りまとめでございます。一つは、経年的に平均的な濃度が上昇していることについての要因の検討という部分。高濃度については、改善の傾向が示唆されたというのが平成23年度の報告にございましたので、それがなぜ改善につながってきたのかという、何かヒントになるものを書ければと思っております。
あと関係として3.3のところでは、8時間値についてどういう傾向があるのかをまとめております。これ以外のところで3.4では、基準値以上になった時間数と積算濃度といった観点での資料について入れております。最後に3.5にまとめを入れさせていただきました。
4章が指標の検討になります。4章までの解析の結果で、ある程度指標になりそうなものを整理して、こういう傾向が見られますというところを整理させていただきました。その中で8時間値というのがよさそうだと判断して、8時間値をどう扱っていくか、外れ値をどう扱うのかを4.2のところで記載しております。
8時間値である程度外れ値を除ければいいだろうということで、4.3で8時間値と既存指標の関係、8時間値の特徴というところで閾値以上となる局数についても4.4のところでまとめて、最後に提言という形にさせていただきました。これが全体的な流れになります。
これから中身のほうに入っていきます。目次の次に、略語と化学式を今は赤字で示していますが、これから見直そうというところです。今回入っている用語などは更新しておりませんので、今後見直していく予定でございます。
まとめとしてサマリーも入れさせていただこうと思っていますけれど、全体の概要がまとまってから検討しようと思っていますので、今は空欄になっています。
本体に入っていきます。本編の1ページからご紹介させていただきます。初めに、「検討会の目的」というタイトルで入れております。
1ページの「はじめに」では、環境省が取りまとめました「光化学オキシダント及びPM2.5の総合的な対策の推進」というものがございまして、3ページに図を入れております。そこの中での位置づけを、1ページから5ページのあたりで整理しております。
4ページに、「平成23年度検討会報告」での位置づけということで抜粋を入れさせていただきました。この中で、23年度検討会報告の中で今後のオキシダント対策調査フローが示されているのですが、そこの部分についても昨年度検討会の中でモニタリングデータとの連携が必要であるという点と、そこに附属するような項目もありましたので、それを6ページに入れております。
7ページからは、平成23年度検討会報告の概要的なところを入れております。7ページの表は、平成23年度報告にあった解析結果についての傾向を表にしております。
それに基づきまして、長期的な平均的な濃度の上昇と高濃度の改善が23年度の報告の中でありましたので、それについて期間を延ばしてもう一度確認したのが8~9ページあたりになります。8ページは、3年移動平均ではなく、単年度の平均濃度の推移。9ページは高濃度になりますので、1時間値の年間98パーセンタイル値の域内での最高値を取ったものになります。こうした中で、左側の平均値は上昇傾向があって、右側の高濃度はここ数年下がってきているという傾向が何となく見てとれるというのが成果でございました。
その要因として、10ページにあるような形でまとめられています。上昇要因としては、前駆物質排出量の減少に伴う光化学オキシダント生成の変化、タイトレーションの低下、越境汚染の影響の増大が考えられるというようなことが示されていたかと思います。あとは光化学オキシダントの高濃度の改善という点について、従来から進められてきたNOx排出規制に加え、VOC排出抑制制度等の前駆物質の排出削減対策が進められたことにより高濃度域の光化学オキシダントが改善している可能性が示唆される、というまとめがされております。このあたりについてもう少し詳しく解析したのが今回の報告書になります。
前駆物質の状況についても今回整理させていただきました。11ページは規制の状況です。主に、自動車とVOCに関係する規制を整理させていただいたものです。12ページには排出量の経年変化を入れております。昨年の検討会では、GIOのデータなどをいろいろ操作して補正して使って経年変化をお示ししたのですが、REAS2.1が出ましたので、それの日本の排出量の整理結果を入れるように変えております。
濃度の経年変化については13~14ページです。14ページには、NOxと非メタン炭化水素(NMHC)について、それぞれ22年間の経年変化を地域別に入れております。
このような状況を踏まえて今回解析を行うということで、15ページに解析の方針と概要を入れております。
現象解明に係る解析ということで、濃度上昇の要因検討として、先ほどのOxの生成変化、タイトレーション効果の低下および越境汚染の増大に着目して検討したという点と、高濃度域のOxの改善ということで前駆物質との関係について整理しています。また、国際的な指標の一つである8時間値というものがございますので、8時間値を国内に適用した場合にはどういう状況になるのかを整理しております。積算濃度についても課題があると思いますので積算濃度についても整理したのが、現象解明に係る解析ということにさせていただきました。
もう一つ、指標づくりの話があるかと思います。それを16ページの(2)のところに整理させていただきました。従来1時間値で評価していたものは年々変動や変化が大きいということもございますので、それをもう少し頑健性のある安定的な指標にしていきたいというところをこのあたりで記載しております。
これらを踏まえて解析を行っておりますので、その概要を17~18ページのところで表にまとめさせていただきました。ここまでが前提条件になります。
19ページから解析の条件設定に移ります。今回の解析の条件設定について整理したものになります。今回、先ほどもお話がありましたように優先解析地域を設定したというところが19ページ。時間、期間や季節区分を設定したのが21ページ、平成2年から23年度を対象にしております。解析対象物質が22ページでオキシダント(Ox)、ポテンシャルオゾン(PO)、NOx、非メタン炭化水素(NMHC)としています。23ページに使用したデータということで、国環研で整理されているデータベースを利用させていただいたということを示しております。
今回統計をいろいろ行っていますが、その手順を整理させていただいたのが24~26ページになります。
27ページは、解析結果についての留意点を入れております。ここについてはどこまで記載するかこれからご検討いただければと思います。一点目は27ページあたりの校正法の変更の話、二点目はPOやNOxの扱いについてで、30ページのあたりに入れております。特にNOxは、一次排出NO2の扱いや窒素酸化物の測定値のトレーサビリティの話。NO2の測定法が以前と今では吸光光度法と化学発光法に変更があったというところで、そのあたりの影響を留意事項として入れております。
もう一つ、8時間値の観点での留意事項として32ページに入れております。2.6.3の「8時間平均値」の算出というところで、今回ここでの解析は日本国内での1時間値の測定が前1時間の平均値を扱っているので、それに準じる形で8時間値についても前8時間の平均値という形で算出しております。
例として米国EPAですと1時間値については後1時間、つまり3時の場合3時から4時までの1時間値を3時の1時間値、8時間値については3時からそれ以降8時間分の平均値が8時間値になります。前8時間なのか後8時間なのかは、解析の国によって違うところもあるというのを一つ留意点として入れさせていただきました。
あと、前回の検討会でお示ししましたが、8時間値と1時間値の関係で、通常は8時間平均値が1時間値を上回ることはあまりあり得ないですが、前8時間の設定の仕方によってはあるというのも入れさせていただきました。ここまでが解析の前提条件です。
34ページからが解析結果になります。このあたりは、これまでの解析結果をまとめさせていただいたものです。流れとしましては、34~43ページは、先ほどの平均濃度が上がるという話を、3年平均を取ることによって割となめらかにすることができて解析しやすくなるという話を入れているのと、高濃度についても同じような操作によって見やすくなっているという話をこのあたりに入れています。
それに基づいて、44ページから平均的濃度の上昇要因の検討を入れております。先ほどのオキシダント生成の変化、タイトレーションおよび越境汚染の増大に着目して、順次解析をしています。
45ページから上昇要因の話です。上昇させるためには、地域全体の濃度が上がる場合、高濃度だけ上がる場合、低濃度だけが上がる場合などいろいろなパターンが考えられますので、実際の上昇が何によって起きているのかを整理させていただきました。その中で濃度ランク別の測定局数を整理しているのが46ページからで、49ページあたりは検討会でよくお示しさせていただいた度数分布になります。
特徴的なのは関東と九州で、関東は濃度の上位側の濃度があまり変わらないけれど低濃度側が徐々に中濃度のほうにシフトしていくという傾向があり、九州は高濃度も低濃度のほうも濃度が高いほうに全体がシフトしていく様子が見られます。地域によって、濃度を上昇させている背景がどうも違うようだというのをお示ししております。
より細かくみるためにPOで解析してみたらどうだろうかというところを入れさせていただいたのが52ページからになります。
平成23年度の検討会で、ΔOxとΔPOの関係について整理することによって、タイトレーション効果の影響や、内部生成や移流等によって実質的にOxが増加しているという話が整理されていましたので、同じような解析を今回させていただいたのが55ページのグラフになります。ΔOxとΔPOを計算してみると、赤い棒グラフと青い棒グラフになります。対象としては平成11~13年度をベースにして、それに対して平成19~21年度がどれぐらい上がったかを整理した図になります。ΔOxの上がり方は九州地域で大きいという点、ΔPOについても同じようなところが見られますが、その差は九州のほうが若干小さめになっているという傾向が見られました。
Oxの局別の変化を調べたものが57ページからの資料になります。これも前回までよくお示しした図ですが、60ページはOxに対する度数分布の変化ということで、関東は特にそうですが、高濃度域は若干出現頻度が減っています。低濃度のところも少し変わってはいますけれど基本的に度数分布はあまり変わりません。九州になると、若干高いところのほうにシフトする傾向が見てとれます。
では、この裾野の濃度がどうなっているかを見ると、61ページのような形になります。関東の裾野の高い側の濃度、域内の98パーセンタイル値、域内の測定局で上位2%に当たる濃度は赤い線で書いてあるのですが、高濃度側は下がってきている、低濃度側は横ばいか少し上がるぐらいの傾向が見られます。一方、九州については高濃度側も低濃度側もともに上昇する傾向が見られるということで、POについても変化が違って見てとれるというのがお示しできているかと思います。
ここまではOxをベースにした解析で、それが前駆物質とどうかかわりがあるのかを整理したものが64ページからになります。これは一昨年の資料でお示ししたものになりますけれど、それを整理し直しました。
65ページの資料は、点線で書いてあるものが前駆物質の濃度です。オレンジ色の点線がNOxを、青色の点線がNMHCを表しております。その比が緑色の点線です。あと、赤色の実線がOx、青色の実線がPOを表わしています。これらは一番左側の平成2~4年度からの濃度差という形で表しております。
こうして見てきますと、平均値については、関東の場合、NOxの濃度が平成8~10年あたりを境に横ばいから低下に切りかわるんですが、そのあたりからOx濃度は上昇が見られ、POとOx濃度については差が見られ始めるというのが特徴になります。同じ傾向が阪神にも見られて、この二つの地域とも自動車NOx法の規制地域になりますので、割と全国の中では早目に自動車対策が進んだ地域になります。
東海については、平成13~15年あたりを境にNOxの濃度の変化が見られるんですけれど、東海についてはそのころに自動車NOx・PM法が改正されて総量削減地域になったということで、自動車対策がそこから急激に進んでくるという傾向がございます。ちょうどそのころからOxは上昇が始まり、POとの差も見られるようになり始めるという傾向がございます。
九州は自動車対策については全国平均的なところがございますので、なだらかにNOxは減っています。それに対してOxについては平成12~14あたりから上昇が始まります。ただ、ほかの地域と同様に、POとの差も若干見られるようにはなってきますが、その差はほかの地域に比べて少ないというのが特徴になります。
このあたりを地域別に見ると、66~67ページのところに示したように、関東で東京・埼玉・栃木を選定して図にしてみました。67ページには大阪・京都、福岡という形で入れています。関東の中でも、東京と埼玉は削減地域の対象になりますので先ほどと同じように早目の低下傾向が見られますし、栃木県については総量削減地域ではないので少し違った傾向が出ています。ということで、POの低下が関東については見えてきます。
では、季節別に見たらどうかということを示したのが68ページからになります。これは、昨年度季節別に整理した中で特徴的な春と夏について入れさせていただきました。69ページは春期の平均濃度で、上段がOx、下段がPOになります。こうして見ますと、西日本、特に九州はPOの濃度の上昇も顕著でありますし、Oxについても同じように顕著であるということ。関東については、若干横ばいから上昇する傾向が見られるというのが特徴になります。
70ページは、夏場の7月から8月に同じような統計を行ったものです。夏場の平均濃度としては関東では頭打ちしているようで、それほど上昇傾向は見られなくなっているのが特徴で、POにすると低下する傾向が見てとれるのが特徴になります。
73ページにまとめという形で入れております。タイトレーション効果の低下が相対的に大きくなったことが、東日本での上昇要因の大きなものの一つだろうということ、西日本では越境汚染の増大が相対的に大きくなったのが、大きな要因の一つだろうということを入れさせていただきました。あと前回の議論にありましたけれど、生成反応の変化は今回は解析するのが困難であるということを最後に入れております。ここまでが平均濃度のお話です。
74ページからは高濃度の改善のお話になります。先ほどもお示ししたように高濃度のところが改善してきているというのを、75ページの資料として入れております。上段は、1時間値の年間98パーセンタイル値で域内の最高値をプロットしたものになります。関東は平成12~14年あたりから下がってきていますけれど、ほかの地域についても平成17~19年あたりから下がってきています。ただ、九州だけは上昇から最近は横ばいという傾向が見てとれるのが特徴になります。下段は98パーセンタイル値の域内の平均値で、域内の平均値を見ると、関東と関西はやや低下する傾向がありますけれど、東海は上昇する傾向、九州も上昇する傾向が見てとれます。
この原因について整理したのが76ページからになります。先ほどの平均値と同じように、整理しました。特徴として見られるのは80ページあたりの度数分布になります。
80ページ、関東の例でいきますと高濃度側の局数は減っていて、低濃度は若干上がっているというのが特色になります。九州については、上側の濃度は若干下がってはいますけれどあまり変わっていないにもかかわらず、下位から中間がだんだん高濃度側にシフトしていく経過が見られます。
この裾野の部分の変化を見るために、域内の測定局の中で上位2%、下位2%の濃度変化がどうなっているかを見たのが81ページになります。関東でいくと高濃度域のところでも低下する傾向が見られます。東海については、平均濃度は上がっているんですが、高濃度域だけ見ると下がっているという傾向がきちんと出ています。ただ、低濃度域は濃度が上がっているので、トータルすると全体的には上がっているということになります。阪神については高濃度域は下がっていますが、低濃度域は上がる傾向があって、相殺されて横ばいから少し下がるという傾向です。九州は、高濃度域は少し頭打ちしていますが低濃度域は上がってきているので、全体的に上がる傾向が見てとれたということになります。
これがOxになるのですが、POで解析してみるとどうなるか示しているのが83ページからになります。84~85ページはPOをお示ししていますが、あまりOxと変わりはない、上位側の濃度なのであまり影響を受けないという傾向がみられます。
その要因について、POについて測定局数などを見たのが90ページからになります。先ほどと同じような傾向が見られました。
93ページから、先ほどと同じように前駆物質との関係について整理させていただきました。今回は98パーセンタイル値の域内の平均値についてお示ししているんですけれど、関東および阪神は平成18年度前後からNMVOC濃度の低下が見られているという傾向がみられます。地域内の県別に見たものを95ページあたりに入れさせていただいております。
97ページのまとめは改善要因ということで、NOxの削減が始まって、さらにVOCの削減が始まったことによって、低下する傾向が示唆されるようになったということをまとめております。
98ページから8時間値について整理させていただきました。8時間値で今までの傾向を見るとどうなっていくのかを入れさせていただきました。8時間値については何パーセンタイル値で見るかという話が初めの議論ではなかったので、103ページにありますように、年間99、98、97と複数のパーセンタイル値を設定し傾向を見てみました。それに伴う度数分布を整理したのが109ページになります。
同じようにPOで8時間値を解析したものが112ページからになります。どちらかというと、高濃度を見ていますので高濃度側の傾向に近い変化をしているというのが特徴になります。
最後に8時間値のまとめを122ページに入れております。
積算濃度について議論させていただいたのが123ページからになります。これは昨年の資料そのままにしているのですが、1時間値がある基準値を超える時間数をトータルした場合にどれぐらいになるかを入れたのが124ページになります。特に120ppb以上の時間数が減っているというのが、関東から阪神について見られます。
次に、ある閾値以上になる濃度の積算値がどうなるかを示させていただいたのが125~126ページ。これについては、高い濃度のところは改善が見られるというのが特徴になります。ここまでが主な解析になります。
これを指標に生かしていくにはどうすればいいか、128ページから入れております。指標の検討としまして、前段までの統計値はこういうことを統計していますというのをまとめたのが128ページの表でございます。129ページは、それを3年平均することで割となめらかな指標にすることができるということを入れさせていただきました。
130ページからは、前段までのグラフで代表的なものを整理した結果になります。138ページではそのあたりを整理して、8時間値で何か代表させることができないだろうかというのをまとめの中で入れております。8時間値を基礎として上位数%を除外すればいいだろう、安定的にするには3年の移動平均が必要でしょうというのをまとめの中で入れています。また、上位数%をどう決めるかという点に関して、139ページでは外れ値の議論を入れております。
外れ値のところは前回検討会まででいろいろさせていただいて、何%にすればどれぐらい外れ値の局が該当するかについて整理しています。その結果が148ページになります。各年度で外れ値となる局数の比率を見ると、暖候期だけの98パーセンタイル値であれば大体5%までにおさまるというところが整理されたかと思います。
もう一つは、前段までの解析が年間統計値でしたので、年間統計値と暖候期の関係を整理するために150ページの整理を入れております。暖候期の98パーセンタイル値と年間の99パーセンタイル値がほぼ一致するというのをお示ししました。
もう一つ、これは時間的な外れ値でしたので、空間的な外れ値について評価したのが151ページになります。ただ、空間的な外れ値を見ていくと、ほとんど外れ値になることはなくて、1~3%ぐらいの間ということで、空間的なところは特に除外する必要はないだろうという結論にさせていただきました。
152ページにまとめとして、適切に示す指標として、8時間濃度を基礎として年間1%を除外した年間99パーセンタイル値を採用する。それを3年移動平均したものが指標としていいだろうということをまとめさせていただきました。
その結果を踏まえて、それが既存の指標とどう関係するのかを整理したのが153ページからです。前回と前々回の検討会でもお示ししたような指標になります。横軸は8時間値、縦軸は1時間値で散布図を描いていって、どういう傾向が見られるかをお示ししております。
156ページは都県別の散布図になります。それぞれ散布図を描いて回帰式を入れますと赤色の線になります。赤色の線に沿って、1時間値が60ppbのときに8時間値はどれぐらいの値になるのか、100ppbのときには8時間値はどうなるのかを整理したのが157ページになります。
もう一つは、8時間値が60ppbだったときに1時間値は何ppbに相当するのかというのを、逆を見たということになりますが158ページに整理いたしました。
8時間値の月別変動がどうなるのかを整理したものが159~161ページ。8時間値がある一定の基準値以上になる局数がどう変化するかを見たのが、162~163ページになります。
以上を踏まえまして、指標の提言を164ページに入れて、最後にまとめを入れさせていただく形にしました。あとは、これまでの検討会の開催状況等を入れた形で整理しております。以上でございます。

秋元座長ありがとうございました。全体的な説明をいただきました。今年度やってきたことのまとめなので、皆さん頭に大体入っておられるかと思います。今日は、あまり細かいところより、全体の流れ、結論、全体の構成、その辺のところを中心に皆さんのご意見をいただきたいと思います。
今後のまとめ方ですが、今日これを全部見せていただいてすぐに、ここがどうのこうのと必ずしも全部理解しきれないところがあります。最後にまたお話があると思いますが、期限を切ってそれまでの間に委員の方々から、ここをこう修正したほうがいいのではないかという意見をいただきたいと思います。
ということで、今日初めてこれを見ていただいた段階でご意見をお願いしたいと思います。

大原委員どこからでもよろしいですか。

秋元座長どこからでも結構です。

大原委員必ずしも大きな指摘だけではなくて、細かい疑問もあるんですが、それも含めて幾つかコメントさせていただきます。
まず30ページのαの設定のところで、POに関する議論は、今回の報告書の取りまとめにおいてある意味では非常に重要な位置を占めていると思います。そうなると、このαの不確実性が気になるところ、留意しなくてはいけないところだと思うのです。αの設定については、私たちの「光化学オキシダント等に関するC型共同研究」云々と書いてありますが、実はあまり客観的な根拠があるわけではなくて、これまでよく使われている値ということで0.1を使ったという背景があります。この0.1の妥当性等に関する検討・議論が、一定必要なのではないかと思います。
よく覚えてはいないのですが、例えばαを少し振らせた場合の感度解析を過去にやっていただいたような記憶もあるのですが、私の勘違いかもしれません。もしやっていないのでしたら、αが多少動いた場合に結果が大きくぶれないかどうかというあたりの検討や、αに対する最新の知見情報がないかどうか、あるいは、きれいに結果が出るかどうかはわかりませんが、自排局のデータを使って、自排局におけるNOxとNO2の比率、NOとNO2の比率でもいいですが、それが一般局と比べて大きく経年変化していないかどうか。そういったような検討をする必要があるのではないだろうかというのが、まず一つ感じたところです。

秋元座長今のご指摘は非常に重要です。もう一つついでにコメントしておきたいのは、POの扱いでオゾンが増えている原因の一つとして、NOもしくはNOxの排出が減ったためにオゾンが増えてしまったという結論になるわけですね。これはある種、非常にいろいろなところに影響のある話になってくるおそれがあるので、それを見せるためにPOを取り上げた。これが前面に出てきているというのが今回の報告書の特徴で、大原委員のご指摘のあったとおりです。
そうなると、定性的な話はいいと思うのですが、Oxの増加とPOの増加の差がどのぐらいだとか、片一方は増えているけれど片一方は減っているとか、そういう定量的な話になってくるとまだ危ういところがある。これは研究ではないのであまりきちんと詰めていない。そのうちの一つが大原委員のご指摘になった、αの取り方によってPOの影響がどの程度変わってくるのかという、その感度解析が欲しいというご意見で非常に重要かと思います。作業的にどこまでできるか、後で事務局にお答えいただきたいのですが。
もう一つは、30ページに入れていただいているのですが「窒素酸化物の測定法のトレーサビリティ」「二酸化窒素の測定法と測定値について」、これは大原委員ご指摘の式においてNO2を足し合わせています。このNO2は日本の場合には、昔はザルツマンだったと思うのですが最近はケミルミの機械で測ったNOx-NO=NO2とした、その値で足し込んでいるんです。
ただ、ケミルミのNO2というのは、都市部の本当に排出のソースのところではNOx=NO+NO2でいいけれど、ルーラルからリモートになるに従ってNO2以外のものがたくさん引っかかってくる。だからNO2がオーバーエスティメートになっている。それをここへみんな足しているので、POがある意味過大評価というのでしょうか、そういうバイアスを受けているというのを(2)と(3)で言及しているのですが、それをもう少しわかりやすい形に書き直す必要があると思います。
その2点があるので、今ここへ出てきたのが、定性的にはNOが減ったことによってオゾンが増えているという傾向が見えているというのは間違いないと思うのですが、Oxの差ですね。例えば一番わかりやすい図でいうと55ページの図3-13、ΔOxとΔPOで、関東地方だとΔPOはマイナスになっていますよね。九州はプラスになっている。このマイナスになっているというのは、本当はオゾンが増えていないということになるわけですが、これが本当にマイナスなのかという定量的な話になると非常に危ういところがある。
関東と九州の違いはOxとPOの差が出るというのは間違いないと思うのですが、定量的にどれだけNOが効いているのかは、この図をそのまま信じるとおかしいのではないかという、その辺のかなり重要な問題がある。だけど今年度の作業としては、特に後のほうのNOx計の問題は日本の測定法がそういうふうになってしまっているので今はどうしようもないところがあります。
大原委員のご指摘の、αを振らせてみたときにどういう影響があるかというのは、事務局、今からでもある程度対応できますか。

事務局まず、αを振った解析自身はうちのほうではやっていないはずです。αの問題はあるけれど、とりあえず23年度報告を参考にしてこれにしましたという形で進んでいます。

秋元座長今まではやっていないんですね。やるとすれば、新たにやらなければいけないけれど。

事務局αを振る場合にどれぐらい、今は0.1ですけれども0.2や0.05、そのあたりで振るという話ですか。

坂本委員まさに今の話でソースとレセプタで相当違う。その場合に測定局としてCOが測定されているところがある。そういったところでの今のトータルNOxとCOの比がどうかという大きさを見ていけば、よりソースに近いところとレセプタに近いところが出て、どのくらい振ればいいかという情報が出てこないかなと思います。ただし、COが一般環境局のところにはないので、そういう形でどこまでできる局があるかなと思っています。

秋元座長今までのご経験から言って、ざくっと、例えば0.1か0.2ぐらいに振ったらいいのではないかとか、そういうご意見は出ませんか。

坂本委員いや、わからないです。

大原委員多分0.05から0.2ぐらいまでに振ればいいと思いますが、先ほども申し上げましたが、常時測定局のNOxとNO2の解析をもう少しされてはどうでしょうか。例えば横軸にNOxを取って縦軸にNO2とNOxの比率をとれば、NOxの濃度が高くなればどこかで収束していく可能性があると思うんです。もし収束するならば、そこからαが求まると思うので、何かもう少し解析等をやったほうがいいのではないかという気がします。

浦野委員これは一次排出の比率なので、大気から導くのはかなり難しいです。実際、排出源そのものでNOx規制されているわけで、そこでNO2を測っているところもあるので、むしろ排出源のデータを使うと。
その場合、NOxの発生源の主なものは、燃料やその他の燃焼に伴うもの、工場や自動車。それから、例えば硝酸を使っているところや造っているところはまた全然別なんですね。そういうところは量的には多くないけれど、地域的にはそういうところもある。それらを重みづけした平均をつくるのか、地域ごとに色をつけるのかわかりませんけれど、基本的にはおっしゃるとおり0.05から0.2ぐらいの範囲には入ると思いますが、硝酸に係る場所だと全然違う。例えば硝酸で金属を洗うとか、硝酸ガスでNOxを除去するときに湿式の除去をしているとかで全然違う。
排出源の幾つかの事例でそれなりには出るけれど、大部分は燃焼由来です。自動車と工場とで少し違うので、その辺を見れば大体合うのではないですか。

秋元座長実際の作業としてはだいたい0.05から0.2という、それぐらいのところで振らせてみればいいのではないかと思う。なぜそういうふうに振らせるかという理屈づけには、浦野委員が言われたように、排出源のデータを見れば恐らくその辺の範囲には入っていると思うのですが、そのぐらいの作業をするのは可能ですか。

事務局ほかのところのボリュームによりますけれど、できるとは思います。先ほどの排出側の比率だと、自動車でいくとJATOPの報告書で割と整理されているものもあるので、その辺を参考にしてやればいけるかなと思います。

浦野委員工場では脱硝技術がいろいろあって、触媒を使用したりアンモニアを吹き込んだりいろいろある。そのような技術で、例えば公害防止管理者の試験などにも出ている数字があるはずです。工場の燃焼由来のところの脱硝技術には、NOやNO2の比率がどういう状態だというのがいろいろな情報がありますので、そういうほうから考えたらいいのではないか。

事務局できるだけ対応するようにしたいと思います。

秋元座長今年度の作業として本当にベストな数字を出すのは難しいと思います。それを目的でやっていないから。ただ、今までのそういう発生源のデータをもとに、この辺の振れ幅で動かしたときにその結論がどういうふうに変わってくるか。それを見せていただけると、今後の判断のためにありがたいのではないかと思うんですが。

事務局わかりました。頑張ってみます。

秋元座長よろしくお願いします。

板野委員関連するところで、POの経年変化を解析するときにαの問題が重要だというのはもちろんその通りですが、αの値が変化している可能性がある。我々のC型共同研究のときには、αを0.1の場合と0にした場合の2パターンでやってみて、結果を出しているということを一つお伝えします。

秋元座長その結果はどのぐらい違いましたか。

板野委員年平均値の変動の傾向においては全然違いはなく、どちらを使ってもよいだろうみたいな定性的な結果になりました。
それが一つと、僕がより重要だと思うのは、NOxの測定法の問題点については31ページに書かれているとおりですけれど、Ox計のKI法に対してはNOxが正に干渉するので、古いOxのデータではOxが過大評価されているはずなんです。NOxの濃度の5%ぐらいがOxとしてカウントされてしまうということが、現にあります。最近のデータについてはOx計は乾式に変わってきているので、そういった干渉はなくなっています。トレンドを解析するときには、それもやってみた限りではかなり問題だと思っています。
なので、NOxの注意事項として書くのと同じように、Oxについても、古いデータについてはNOxが干渉するんだということを明らかにしておく必要があるのではないかと思います。

秋元座長ただ、以前に湿式から乾式に変えるときに整合性の問題はだいぶ議論されたと思うんです。あまり影響ないというか、考慮しなくてもいいという結論になったような記憶があるんだけれど、向井委員、その辺の経緯はご存じないですか。

向井委員経緯は板野委員が言われたとおりで、実際にNOxの干渉はあります。でも、現場で何が起こるかというと、また別のことが起こって、吸収率の低下や感度の低下がある。たくさんの並行運転などをされていて、時期や期間、どこでやっているかなど東京都がかなり整理されたと思うんですけれど、ざっくり言うと、よくわからないと思うんです。

秋元座長私の理解も、向井委員がざっくりと言われたとおりだと思っています。要するに精度が違っていて、以前のOx計の精度はそんなに高くない。だからその差を問題にするほどにはならない。
というのは、もしもOx計が正確に測られているのであれば、常にOxのほうがオゾンより高くなければ変なんです。だけどそれが逆転しているデータがたくさんある。Ox計のデータのプラスマイナスの幅をつけると相当大きい。それで、今の板野委員の提起されたような問題は議論するに値しないというのが結論だったかと思うんです。
だから理屈の上ではそのとおりだけれど、現実にいろいろなものの誤差を考えたときには、そういうものを反映するだけの精度がないということだと私は理解しているんですが。

向井委員そういう意味ではこれは精度が書かれていないので、エラーバーみたいなものを議論したほうが本当はいいのかもしれないと私は思っています。平均されていますけれど、これの測定精度プラス3年の移動平均ですけれど、その精度がエラーバーか何かで反映されていると、議論しやすいかなと思います。
今、必要ないとおっしゃいましたけれど、そうではなくて、本当はやらないといけないけれど、できないというのが正確な言い方だと思うんです。だから本当は、昔のデータはエラーバーがこうあって、だんだん新しくなるとエラーバーが小さくなるみたいな記述がされているとうれしい、という感想はあります。

秋元座長ただ、そのエラーバーというのは現実に出せますか。

向井委員非常に難しいです。

秋元座長確かに、板野委員のおっしゃったことも含めてメンションしておくのは必要かと思いますね。そういうことがあるので問題ではあるけれど、エラーバーの問題があって今はできないのでここでは入れていませんというような、断り書きを入れるといい。そのセクションを一つ設けてください。
ほかの問題でどうぞ。

浦野委員これはモニタリングデータをもとにして、どういう特徴があるか、地域や期間によって違いがあるかというのはよく解析できていると思います。本来この会合の最終的な目的は、Ox対策をどうするかという議論につなげなければいけないわけで、そのときに当然シミュレーションもいろいろやってみることが必要です。
ただ、そのときにシミュレーションに入れるべき数値が、炭化水素類やNOxやそれぞれどういう情報があってどうなのかというのは問題があります。今年度より前の前のあたりで議論したときもそうですし、前回もお話がありましたけれど、炭化水素とNOxの比が非常に重要なファクターになっていると言われている。それは、私も幾つかのシミュレーションを見てそういうふうに理解していますが、今回のPOのところは当然NOxの問題が絡んできます。
それから、例えば65ページでNMHCの経年変化とNOxの変化、それからNMHCとNOxの比の変化。こういう図が何カ所か出てくるんですけれど、これがシミュレーションや何かにつながってくるのか、定性的にどうもよくわからない。65ページの点線が三つあるうちで、赤いのと青いのが一致していれば3番目の草色は一定になるんですけれど、一致していないにもかかわらず一定っぽく見えるんですね。これはどういうことか。
もう一つ、縦軸が比をとるときに、この軸だと見えないぐらいの差しか出ないのか。どういうためにこういう数字が出ていて、どう解釈していいのか。これがシミュレーションの場合、先ほども言いましたように、VOC規制はしたけれどNOxも減ったから効果が出ないという話がどうしても出てくる。シミュレーションとやりとりするとき、あるいはPOとやりとりするときに、それと関連してこういうデータがどう活かされてくるのか、何故こういう数字が出てくるのかがよく理解できないので、説明をもう一度お願いします。

事務局去年までの資料は濃度比で全部表していて、0~1ぐらいの幅である基準年に対する比でグラフをつくっていました。今回濃度差という形でつくって軸をそのままにしていました。本来、NMHCとNOxの比はもう少しスケールを拡大して書かないと見えにくいので、軸を変えてもう少し見やすくします。

浦野委員NMHCとNOxの比をとるのは、NMHCの差とNOxの差の比ですか。それとも、両方を割り算したものの差ですか。差をとったもの同士の比なのか、全体をとってから差をとったのか。

事務局先に比をとって、ある基準年から差をとるという形です。

浦野委員そうすると、当然傾向は一致しないわけですね。

大原委員単位は何になるんですか。

秋元座長この図は左軸が濃度差になっていてppbになっていて0から出発しているけれど、比を議論するのにこの軸というのは変なので。

事務局おかしい図なので軸を右側に振ってつくり直します。

浦野委員何を意味しているのかね。こういう図があちこちにたくさん出てくる。これがどうでもよければいいんだけれど、POやVOC規制やNOx規制との絡みが出てくる話なので、ここはあまりいいかげんにしてほしくないので、もう少ししっかり議論してほしい。それと一緒でないと、シミュレーションにもつながってこないのではないかという心配をしているんです。

事務局おっしゃるとおりなので、NMHCとNOxの比については軸をきちんと改めて書くようにします。

秋元座長図の意味をはっきりさせるというのは重要なので、ぜひやってください。
ただ、浦野委員に私のほうからお答えすると、この問題は来年度以降のシミュレーションのところでは非常に重要になってきます。ただ、観測データからVOCがより早く落ちているからとか、NOxのほうが先に落ちているからというふうなことにうまく結びつくかどうかは、あまり明確には出てこないかもしれない。
ただ、事務局のほうの結論としては、65ページの図でNOxがあるところから地域によって急に下がり出しますよね。それとオゾンが増えてきているのがちょうど対応しているというのを言いたいんですか。

事務局そうです。その点と、OxとPOの変化に差が見られるようになった時点が一致するというところでです。

秋元座長この議論は、むしろタイトレーションに効いているというほうの議論ですよね。だからフォトケミカルフォーメーションのほうにNOx、VOCの比がどうかということは、今までの我々の経験からいっても、シミュレーションをかませないとデータ解析からだけでは無理なんですね。両方の比率がどう効くかというのは来年度のシミュレーションでやりますというような、何かそういうコメントにつなげればいいのではないでしょうか。

浦野委員観測データは、発生源からある程度反応して、平衡になっているかどうかは別として、途中も含めて変化したものを見ているわけなので、当然今おっしゃるように排出規制と直につながるわけではない。しかし、シミュレーションする場合も、観測データをある程度生かしてシミュレーションするのか、本当に発生源データや気象条件だけでやるのか。あるいは、それがどういう条件になったときに観測データと合う合わないという議論をしますよね。
ですから、その辺の観測データと発生源とのかかわりはどうしてもシミュレーションでやらざるを得なくなる。そこのところをある程度意識して観測データの解析なりをしていかないと、観測データは観測データですとやって、シミュレーションあるいは発生源とつながらないようだと孤立して、現状解析だけはできましたけれど、対策の効果は何となく減っていますねとか、ポテンシャルはこうですねというのが今年出ているわけですけれど、ここで終わってしまう気がするんです。だから、その辺は少し意識をしっかりしてほしいという要望だけです。

秋元座長事務局として今年度作業ではOxを中心に置いたので、前駆物質が発生源対策とどういうふうにリンクしているかという解析にはあまり力を入れていないですよね。それで、今の浦野委員のご指摘になってしまったかと思うんです。来年度以降のシミュレーションのところではそういうことが必ず表に出てくるので、そこにつながるような記述をしていただければと思います。
ほかのことでどうぞ。

下原委員65ページでもいいですけれど、ここ3年ぐらい九州・阪神・東海でOx濃度が少し下がっている感じがありますね。そこに興味があるんですが、14ページで見ると、ここに間違いがあって図1-9はNOxではなくてNMHCですね。

秋元座長そうですね。

下原委員NMHCも下がっていて、経年的にNOx濃度も下がっているのに、なぜこの3年間ぐらいで下がってくるのかなというのは興味深いです。NMHCの経年的な変化というときには、もちろんVOCは一部測れていないのがありますよね。だからそういうのが効いてくるのか、気象的なもっとほかのものが効いてきているのか、その辺がもし詰められたら興味があります。

事務局特にここ3年ぐらい、Ox注意報の発令は減っています。今年は去年よりは多かったんですけれど、それでも減っている傾向はあって、その点が疑問ではあります。答えは持ち合わせていないですけれど、その辺でもし委員の方でヒントがあれば、いただけるとありがたいです。

秋元座長どなたかご意見はありますか。全体の流れとしては今回、過去20年間のトレンドを見るというのに主力を置いたんですね。だから、直近のところが下がってきたのがどうかというのは。これは3年平均で下がっているからある程度意味はあると思うんですが、あまり短期間で上がった下がったという議論は実りがないので。

事務局14ページは3年平均をとっていないです。

秋元座長14ページはNOxとVOCですよね。NOxとVOCはほぼ下がってきているので、Oxの下がりが。

事務局8~9ページは3年平均をとる前のものになります。

秋元座長3年間平均をとったのが先ほど話題になった65ページですが、ここでも九州や阪神は下がっている傾向が見られなくはない。そういうのが細かいところにはあるんだけれど、今年度の検討会の作業としては直近のところで下がったのが何かということは問題にしない。20年間の長期トレンドの傾向が何で説明できるのかということに眼目を置いたので、その辺はもう少したってこの辺が本当にずっと下がり続けるのかどうかが見えたところで、はっきりとした結論が出てくるのかなという気がするんですが。

星委員 今の関連で、情報として20年はわからないですけれど平成15年ぐらいからずっとVOCを測っていた感じだと、組成が大きく変わっている感じがします。総量よりも組成の変化が結構大きくて、そういうのが効いてきているような感じがします。ほかの県はわかりませんけれど東京でいうと、例えば含酸素系が増えてきている、トルエンは全体の減りに比べて大きく減っている、そういったことが影響しているのかなという気はします。
それとは別に、この検討会の目的として指標をつくっていくということで、検討をされて指標はこんなのがいいのではないかということができてきたと思うんですが、行政で使うときにこの指標をどうやって使うのかということについての提言がもう少しあってもいい。例えば、この後で中環審で議論するんですよという形でも構わないですが、このままだと、どういうふうに使って、どういうふうに改善効果を判断していいのか、あるいは誰かが判断してくれるのかということがよくわからないので、その部分をつけ加えられたらと思いました。

秋元座長 最後に、これの使い方というか今後どういう意味があるかということは、今おっしゃったようなことをつけ加えると思います。基本的にこの検討会は、Oxの1時間値で、しかもその最高値が120を超えた日数というのでは統計的に堅牢性がない。それでOxが増えた、あるいは減ったのという議論はおかしいのではないかというところから出発している。もう少し統計的なロバストネスを持ったものを考えてみましょうということでやってきたら、結論的にはアメリカの環境基準の指標に非常に近くなったんですね。3年平均の8時間平均値、アメリカの場合には上位4位、年間でいうと99パーセンタイル。アメリカは当然十分議論してエアクオリティスタンダードと決めているだろうから、こちらもやってみるとそれに近いところが統計解析の指標としていいのではないかという結論になった。
今は大体そこまでなんですね。これを今後行政のほうで、環境基準そのものなり、行政の目標なりにどういうふうに使っていくかというのは、中環審なりほかでご議論いただく。自治体の中でも、それを使ったらどういう傾向がそれぞれの自治体で見えるのかというようなことに使っていただいた上で、どの程度使えるかというのをやっていただく。
この検討会としてはそんなことになると思うんです。だから、ポッシビリティを最後に述べることは可能かと思いますけれど、どういうふうに使うべきとか、そういうことまで立ち入ることはしないほうがいいと思っていますが。

坂本委員 星委員の話に関連して。自動車NOx法、有害化学物質でハロゲン系の溶剤からアルコール系の溶剤に変わった時期、PRTRでトルエンがかなり減っているような形、そういうものが少しわかるような表で整理してもらえるとありがたいです。
自動車NOx法なりの施行が関東・関西・中京で少しずつずれているわけですよね。そういうものがまさに変化の変曲点みたいなところと対応する。PRTRで出ているのを東京とか大阪など、ある地域についてまとめて、先ほど星委員が言ったような形で測定をしているものと、反応性で見てどう変わっていったかというような情報が整理されていけば、次年度以降のときに非常に役に立つデータになるかなという気がします。

秋元座長この辺はどう考えますか。この検討会の最初のほうの議論ではVOCの議論を随分やったわけですね。浦野さんにいろいろ意見をいただいたりして。有害廃棄物の枠組みで規制した何種類かのものとOxで光化学に効いてくるものとは違うのではないかとか、実際の日本の典型的なVOC濃度はどうなのかというような議論をしたんですが、今回の報告書の中にはその辺は出てこない。オゾンないしOxそのもののトレンドの解析になって、そこから先にVOCの組成がどう変わったかというような、その辺の細かい各論には入らなかった。
ただ、来年度、もし、シミュレーションをやるのであれば、当然その辺がベースになる。シミュレーションを始める前にはVOCのデータをきちんとまとめて、組成が変わったなら変わったというのを入れていかないといけないですが、それは来年度の作業も含めてどういうふうにお考えですか。

事務局 まず、VOCとNOxの排出実績については、一つは23年度の報告の中で31ページあたりから一応整理がされていたので、今回そこの部分は入れませんでした。別途、この報告書に入れる予定はないですけれど、検討会のほうには、いま収集しているデータ、VOCのモニタリングデータや東京都や埼玉県から別途ご提供いただくようなデータを整理はしているところなので、それを検討会のほうではお出ししようかと思っていました。

秋元座長 検討会のほうではというのは。

事務局 次の検討会のときに。

秋元座長 次回にということですか。

事務局 はい。

秋元座長 この報告書には今回無理ですよね。

後藤課長補佐 この報告書の中にはデータの解析は入れていませんけれど、業務の中ではVOCの調査も環境省はやっていますし、過去の分もいろいろ調べていますので、その辺の資料については第4回の検討会でお示しする予定です。

秋元座長 前からの議論で、特にBVOC(生物起源VOC)のデータが足りないのではないかというので、環境省で測定を今やっておられるということです。それも含めてBVOCのことと星委員の言われるような一般的な都市大気の組成変化、その辺は来年度のシミュレーションの入力で重要になってきます。次回にできる範囲のところでまとめてください。

下原委員 20年間の経年変化という中で一つ私が気にしているのは、前に私が6時間ごとの4分割がいいと言って、8時間ごととなった点です。昼間の8時間値や8時間最高値はもちろん出ているんですが、夜中から明け方の8時間あるいは夜から夜間の8時間で経年的な変化を見て、もし変化があれば濃度が低くても越境や上層からのOxの落ち込みが見えるのかなと思うんですが、どうでしょうか。

秋元座長 これは夜間でなくとも、はっきり見えていると思います。いずれにしても、この観測データからは定量的に越境の分が何ppbというのは難しい。それが特に九州では効いているというのは明らかに出てきたので、今年度の検討会としてはその辺の相対的な結論が非常に重要だと思っています。昼間と夜間とで違うかというのは、シミュレーションをやれば当然一日を通じてずっとやっているので、そこから切り出して測定データと合うかというところは来年度に見させていただけるとありがたいですが。

井上委員 こういう報告書ではまとめのところが一番大事で、みんなまとめのところしか見ないと思うので確認していたんですけれど、97ページに高濃度の改善の要因のまとめがあります。その下ポツの三つぐらいが中心的なことかと思うんですが、この三つが私はどうもすべて納得できません。
まず下から二つ目のポツからいきますと、「高濃度の出現状況を確認したところ、VOC排出抑制対策が始まった18年頃より関東・東海・阪神で年間98パーセンタイル値の改善が見られるようになった」という記述があります。それに関するデータは94ページが一番それに近いのかなと思うんですが、確かに関東では赤色のOx昼間の最高値の年間98パーセンタイル値、これは域内平均ですが、18年度ぐらいから下がっているのが見られます。一方、東海・阪神は、特に東海は18年度からどんどん上がっていっていますので、明らかに記述が誤解を与えると思いました。
97ページの上のポツでは、先ほどから議論になっていましたけれど、前駆物質の濃度とOxの濃度の関係だけを見ていてもあまり何も言えないということですが、この書き方ではVOC排出抑制対策という言葉も出てきていまして。

秋元座長 どのポツですか。

井上委員 下から3番目のポツです。対策のことが、濃度との関係でなくて排出抑制という言葉が出てくるので誤解を与える。
12ページに実は排出量のデータはあるんですね。12ページのデータではNOxの排出量が上で、下がVOCです。そうすると、NOxのほうが下がっているのが遅いですよね。VOCはそれよりずっと前から下がっているということで、排出量で見ると、97ページの下から三つ目のポツの記述は明らかに矛盾したような印象を受けます。
最後のポツは、前回に板野委員がおっしゃっていたとおり、ここまで言ってしまっていいのかなと。要するに、排出量比が変化したことによって域内の生成量が大きくなったことでPOとして上昇しているということも考えられるので、ここまで言ってしまっていいものかなと思いました。
さらに、高濃度というのは従前から気象要因が非常に重要ということが言われていると思うんです。この解析には気象要因の検討があまり載っていなかったような気がするんですが、それはどういうふうにお考えの上で気象要因の検討が省かれているのか。

事務局 まず、97ページの下から2番目の点は、書き方も悪かったのですが、参照したのは、91ページの年間98パーセンタイル値の域内での上位局の濃度変化を見ていると、一番高い濃度は赤い点線になるんですけれど、上位局は東海でも阪神でも低下する傾向が見てとれます。平成18年前後から勾配が始まっているようだということを根拠にこの点を書きました。どこを根拠にまとめたか分かりやすく表現するように変えたいと思います。

浦野委員 これだけデータを出しているので、図によればこういうふうな傾向が見られるとか、そう書いてくれるとはっきりする。それが正しいかどうかは別として、事務局の確認のためにもいいと思います。

事務局 わかりました。すみませんでした。
下から三つ目の点ですけれど、実は23年度の検討会報告で、従前より進められてきたNOxの排出規制に加えてVOC排出抑制制度の前駆物質の排出削減対策が進められたことにより高濃度域のOxが改善している可能性が示唆されるという結論が一つありました。それを追従するような形で入れましたが誤解を与えるかもしれないので、検討させていただこうかと思います。

井上委員 12ページの図があると、どうしてもVOCのほうが先に減っているように見えますよね。

事務局 そうですね。自動車だけお示しすると経年的に減っているような気はするんですけれど、ほかの物質が入ると全体的な傾向としてこういう傾向が出るのかもしれないので、この辺の見え方も再検討いたします。

秋元座長 非常に重要なご指摘で、確かに皆さんが読むのはまとめのところだというのはあるので、ここは少なくとも検討会の皆さんが納得する形で仕上げなければいけない。これは事務局に書いていただいたので私も見るのは初めてなので、これをもう一回見て私なりに納得する形に書き直してもらうなりして、次回にお見せできると思うんですが。

浦野委員 最後の黒丸は誤解を与えます。ある程度相殺されていることは事実だと思うんですよ。だけど何となくこれとこれが対応して、一生懸命努力しているけれど海外から来るからしょうがない、それで全部打ち消されてしますといった話にとられてしまう。

秋元座長 表現の問題もあるし、今書かれているのは非常にプリミティブなところがあるので、次回はもう少し検討したうえでお出ししたいと思います。委員の方でも、特にこれを言いたい、こういう結論が言えるのではないかなど、ここの書き直しの案でもいいですし、そういうコメントがあったらいただけると次回の案がもう少し皆さんが納得する案にできるのではないかと思うんです。私もそれなりに努力しますが、皆さんから何かいただけるとありがたいです。

大原委員 まとめのところで、今、座長が指摘されたような方向に沿ったコメントをしたいと思います。
73ページの「平均的な濃度上昇の要因(まとめ)」についてです。この一部が全体のまとめにも反映されていますが、私が懸念しておりますのは、「越境汚染の影響の増大」という言葉が2~3カ所見られます。こう言い切って大丈夫なのかという懸念があります。「越境汚染の影響の増大」と言った場合に、具体的に何を根拠にこういうふうに言えるのかということを、明示的に示す必要があるだろう。この報告書ではそこまで明示していないので、もう少し回りくどい表現にしておいたほうがいいのではないか。

秋元座長 これをまとめるときに、今回モニタリングデータの解析で言う結論が、今までにシミュレーションや何かでされた大原委員の論文なども含めた日本の学術論文で理論的に言えることと矛盾しないというのが非常に重要です。そういう、もとになっているものを引用するかどうかは今回問題だけれど、その辺を頭に入れた上で記述を、ここまでは言っても大丈夫だというような書きぶりにするといいと思うんです。
確かに、解析データだけだと本当かなという、増えているのは間違いないけれど越境の成果や何々の成果だと言い切るのは難しい。ただ、シミュレーションで今までされている論文も幾つかあるので、そういうものを踏まえたときには定性的にはこういうふうに言ってもいいのではないかという書きぶりにするとか、その辺の工夫をしていただいたほうがいいでしょうね。

事務局 一つの案というか23年度の報告の中では、「東アジアなどからの広域汚染の影響」というような書き方があるので、そういう書き方か、もう一つは今言われた根拠を示すような形になるかと思います。

秋元座長 ただ、前に書いてあるからそのまま持ってくればいいというわけではないので、この中で納得していただける書き方にしたほうがいい。それは、大原委員のご指摘に沿った線でできるかと思います。

大原委員 座長がまとめていただいたように合わせ技で、どこまで書けるのかというあたりを少し慎重に検討したほうがよろしいと感じているところです。
一方、高濃度のほうの97ページですが、先ほど既に井上委員からご指摘がございましたが下の三つのポツです。どこまで書けるかはわからないですが、とりわけ下から2番目、3番目のポツに関しては、「これらのことからVOCの排出抑制対策の効果が見られることが示唆されるので、今後シミュレーション等によって検証していく必要がある」といったまとめ方にしてはどうか。書き過ぎかと思いますし、どの程度まで書いたらいいか迷うところではあるんですが、せっかくここまで検討しているので、それくらい書きたいなというのが本音です。いかがでしょうか。

秋元座長 少なくとも定性的に間違えていない線では、今の「示唆」とか、うまい言葉を使ってまとめるといいと思いますね。

坂本委員 今のところでもう少し書いておいてほしいのは、BVOCが別途あるわけですが、「BVOCの発生量が比較的多いと推定されている」ということも加えて、今のVOCの排出抑制対策は多少効果があったということが示唆されるということも、同時に書いておいてもらったほうがいい。
なぜかというと、PM2.5、エアロゾルを考えた場合にもBVOCが非常に重要になってきて、そちらもいろいろ調べていくとBVOCが結構効いている。こちらのほうもBVOCが効いているけれども、人為起源のものを減らしていけば、少なくともPM2.5もある程度減るし、Oxにも効果がありそうだというのが見えてくるということが、今後の対策を進める上で非常に重要です。そういった形でも言えるわけですよね、BVOCは何もいじっていないわけですから。

秋元座長 言えるというか、BVOCと人為起源のVOCとの効き方の比率はまだわからないと言ったほうが。

坂本委員 わからないけれど、BVOCがほぼ同じように出ていると考えていけば、少なくともその状況で今の結果が示唆されているということは、人為起源のものの排出抑制対策が多少なりとも効果があることが示唆されたということですよね。

秋元座長 高濃度の部分が下がってきたということはそういうことでしょうね。

竹内委員 高濃度のところで地域の代表性を見るときに、今は前触れもなく域内最高値と域内平均値を使っているんですけれど、前年度の検討のときは、パーセンタイル値98、97、96で検討して比較したというのがデータとしてあったと思うんです。今回はそれを抜きにして域内最高値というのを。

秋元座長  パーセンタイル値はどこかにあったのではないですか。

事務局 91ページは一応、98と50と2パーセンタイル値を載せています。

竹内委員 これは98と50と2パーセンタイル値ですよね。前回は高濃度側の域内代表性として98や97や96パーセンタイル値を入れていましたよね。

事務局 入れていました。

竹内委員 今回その辺は全然触れていない。その辺の検討があったなら、それを検討した上で域内最高値を基本として使ったとか、そういった手順があってもいいのかなと思ったんですけれど。前回たしか秋元座長も、域内最高値をぽんとやるのは不自然というお話をされたと思うんですけれど。

秋元座長 そういう検討を経て、事務局はされたんですよね。

事務局 そうです。

秋元座長 そこがわかりにくくなっているのであれば、後で補足していただければ。検討はされているはずです。

事務局 もともとはやっていました。図を示すときに本数があまり多くては見にくくなるかなというところもあって、上下と真ん中にまとめましたけれど、参考としてあったほうがいいのであればそのようにします。

浦野委員 データとして詳しいものでなくて、そういうことをやったということ自身を明示しておけばいい。

秋元座長 やった上でこういうふうに選びましたというふうに。

事務局 わかりました。そういう形で入れさせていただきます。

浦野委員 その関係で念のためにですけれど、目次を見ればわかるように「まとめ」という言葉があちこちにたくさんある。それをどの図からというのを出すというのは先ほどお話ししました。それ以外に、例えば昨年度の検討報告書あるいは引用した場所を明示することでもいいと思うんですけれど、そういうものから判断するとこういうことが示唆されたとか、ここまでは言えるとか、あるいは、今後ここについては確認する必要があるとか記述していただきたい。最後の締めの言葉はそれぞれ違うと思いますが、その根拠と締めの言葉を上手につくってやっていただきたい。
最終的な、最後の「6 まとめ」がまたあるわけで、この最後の「6 まとめ」は本来、それまでのまとめをまたまとめた感じになるような気もするけれど、必ずしもそうなっていない。最後のまとめというのは一体どういう位置づけなのか。
それから今年度まだ2回ほど検討会があるようですけれど、この「まとめ」もそうですが、そのときに来年度のシミュレーションその他でやるべきことを想定して、それに必要な方向づけなり基礎データなりをつくって、それをさらに来年度詳しくやりますという、そういうつながりをつけてほしいと思うんです。先ほど座長が来年度、来年度とおっしゃいましたけれど、来年度にそういうことが想定されるのであれば、そういうことにつなげるような言葉を最後につけていただく。あるいは、それにつながることをあとの2回である程度やっていただきたいと思います。

秋元座長 非常に重要な点で大事なところですので、私もそういう方向に持っていきたいと思います。

紫竹委員 73ページの「平均的な濃度上昇(まとめ)」のところです。先ほど来、各委員の方から幾つかお話が出ていますけれど、「高濃度のまとめ」は先ほどの議論のとおりですが、平均濃度の上昇とは、すなわち濃度が低いあるいは中間濃度が上がっていることを示唆しています。前駆物質の排出量減少で光化学オキシダントの生成が変化しているという表現、それとタイトレーション、越境汚染、この三つが要因だというふうに上から4つ目のポツのところに書いてあります。
前駆物質の減少ですから人為的なVOCという形になると思うんですが、坂本委員もおっしゃいましたけれどBVOCの関係ですね。今日は議論されないことになったんですが、送られてきた資料のうち三つ目の資料を見ますとBVOCが入ったグラフがあって、ほかのVOCよりも1.5倍出ているという数字が見られたので気になりました。確かにあまり検討していないのは事実ですが、BVOCのことも触れるべきではないのか。
それと、井上委員からご質問がありました気象要因のところです。確かに、平成23年度の報告を見ますと、あまり関係がなさそうという表現が一言書いてあります。ですが、昨日環境省さんが発表した平成25年の光化学オキシダント注意報のところでも、日照量が多くて気温の高いときには光化学オキシダントの濃度が上がると明確に報道発表されているので、平均的な濃度については関係があるのではないか。
確かにこの2年間あまり検討していないのは事実ですが、この三つの要因だと断定してはよくないのではないか。シミュレーションを行うときは気象要因を入れるのではないかという気がしたので、過去のいろいろな論文でヒートアイランドと光化学オキシダントは関係ないという論文も出ているのは存じ上げているんですが、どうしたものかと疑問を持ちました。

秋元座長 幾つかの問題で整理しなければいけないと思います。まず、気象要因に関しては、もちろん年々のOxが今年は高い、今年は低いというのは気象要因に間違いないです。
ただ、20年間を見たときに気象要因が変わっているかというのは、温暖化の影響や長期の気候変動のトレンドが影響しているかどうかという話ですが、これについては幾つかの解析が既にされています。例えば紫外線の日射量や風の強さや気温、そういうものは一義的には効いていないという結論が、東京都検討会のときにもやりましたし、今までに幾つか出ています。ですので、長期トレンドに関しては気候変動がこの20年ぐらいでそんなに効いているということはないのではないかと判断しています。

浦野委員 おっしゃるとおりですけれど、一般の人やそれこそ自治体の方が市民に対して言うときに、短期的な濃度の話と長期的なトレンドの話を分別して理解しているかというとなかなか難しい。その辺も書くのであれば、これはこういうスタンスですとか、短期的なことについては別途こういうことがありますとか、前書きなり後書きなりではっきりしておかないと話がクロスしますよね。

秋元座長 そうかもしれませんね。特に短期のことに関心のある方にはこれでは不満かもしれない。

浦野委員 その辺は誤解のないように位置づけを明確にして、「これはこういうことです。」「短期のことについては気象要因その他こういうことがあります。」「シミュレーションをやればいろいろなケースができますけれど、今回それはやっていません。」といった位置づけを前書きなり後のところでしっかり書いておかないと、議論がかみ合わないところが出てくる。

秋元座長 わかりました。時間になったので今日のところはこのぐらいにします。そういうことも含めて、それぞれの委員の方は言い足りないことや言いたいことがたくさんおありだと思います。後でいつまでにというお話があると思いますが、ぜひ書き物としてお寄せください。できるだけそれを反映した形にしたいと思います。

事務局 1点だけ。23年度のデータの扱いについてですけれど、一応ここの中では、23年度のデータは校正法の話や震災の影響などがあるかもしれないので参考値として扱って、表示はするけれど解析の対象にはしないという書き方にしています。ただ、整理の中で、23年度はないほうがわかりやすいというご意見もあったのですが、どちらがよろしいですか。

秋元座長 23年度は、地震の影響がどうのこうのみたいな議論は今回の本筋から外れているし先ほどの年々変動の話に近くなるので、そういう意味では外していいのではないかと思いますけれど。

浦野委員 23年度のデータは入れないということですか。

秋元座長 はい。

浦野委員 入れないと、例えば21~23年のまとめというのは。

秋元座長 もし入れないとすると22年までになるのかな。22年までではまずいですか。POの話と越境の話と、今までの結論は大体22年までで導けているんですよね。

浦野委員 ということは、今後さらにもう少し経ったときに、23年度データは使わないようにするという意味ですか。

秋元座長 いや、そうではなくて、23、24、25とその辺が出てきたところで、震災以降どういう変化が起こったかという議論が改めてなされなければならない。中途半端に、23年度は震災の影響だから違うのではといったようなことを書いてもあまり意味がない。

浦野委員 そこが理解できないんですけれど。VOCやほかの物質、PRTRでも何でもそうですけれど、震災の影響がどうかというのはみんなそれぞれ検討しているんですね。でも、実質的には影響が見られないという結論がほとんどなので、あえて震災の影響があり得るから外すという論理には何となく違和感があります。

秋元座長 逆に、そういうのがないデータがあれば入れていいと思うんです。つまり、そこにこだわる人がいると趣旨から外れるということなんです。

若松委員 22年度はすごく暑い年で特殊な年だったんです。だからここで切ってしまうと最後がおかしい形になるので、できる限り23年度は使ったほうがいいかなという気がします。

秋元座長 3年平均という形で使う分にはいいと思うんです。

若松委員 ここで切ってしまうと22年度は特異年ですので、それが最後に来てしまうと解釈がなかなか難しい。そこだけぽんと上がりますので、使ったほうがいいと思います。

秋元座長 では、3年平均として使いましょう。

事務局 資料としてはこのままという形にさせていただきます。

秋元座長 ありがとうございました。時間が押していますので次へ行かせていただきます。先ほど申し上げたように、コメントはぜひ書き物でお送りください。それが一番確かだと思います。
では、シミュレーションの話を次によろしくお願いいたします。

議題(2) シミュレーションモデルを活用した検討について(資料2)

事務局それでは引き続き、シミュレーション関連で、資料2「調査フレームの作成」の説明をいたします。
調査フレームの作成ということで、1ページ目にありますように1.1から1.9それぞれの項目について提案しています。最後に、それぞれ「調査フレームの設定のまとめ」ということで一覧表にしています。
2ページでは調査の目的について示しています。目的といたしまして、多角的解析によって明らかになったオキシダント濃度の経年変化について、シミュレーションの活用により、①越境汚染、②タイトレーション効果の低下および③前駆物質の排出量の減少がオキシダント生成に及ぼす影響を検討するというふうに提示しました。
次に解析対象年度ということで、2点ほど考慮する項目があるかと思って書かせていただきました。まず、濃度変化のトレンドをとらえることのできる期間であること。二つ目、シミュレーション入力データが整備されていることです。
以上のことを考慮して、まず、入力データが2001年3月以降で整備されているということがありますので2001年以降ということ、それから長期にわたるトレンドということで、そこから10年というのを提示いたしました。
その10年間に関して、Oxの濃度がそれぞれどのような推移をしているのかを図1.1から図1.4の四つの図に分けてまとめました。暖候期の4月5月を対象にしようということは、後ほど提示しますが、その図が図1.1です。関東・東海・阪神・九州ともに上昇しています。平成19~21年度以降下がっていく傾向が見られますので、トレンドの変曲点を含んでいるのでふさわしいのではないかと判断できます。
次に図1.2は、関東については平成18~20年に低下傾向、東海・阪神・九州については上昇傾向がみられます。最後の下がっているところは含まれないですが、地域による差は含まれていると判断しました。
次に図1.3は昼間の最高値を対象にした図です。これも地域による差が見られているので、高濃度の点から見てもこの時期はシミュレーション設定として適切ではないかと判断しました。
図1.4も高濃度の推移という同じような図になります。関東・東海・阪神で低下、九州地方では横ばいあるいは上昇ということで、最初に定めた10年というのはOxの日本におけるトレンドを変曲点を含んでいるのではないかと考えました。
平成22年度は、オキシダント自動測定器の校正法が変更になる年度に該当していますが、補正係数等の検討も進んでいるということですので、対象期間に含めてよいと判断しました。
続きまして5ページになります。シミュレーションの対象期間ということで、先ほど少し話に出たのですが、本調査においては、高濃度事例だけでなく平均値に関する評価も行いたいということがあります。よって、平均値を算出するためには対象期間すべての日を対象とする必要があります。シミュレーション対象期間としては、高濃度事例が多く発生する暖候期を対象に、4月、5月、7月、8月の全日を対象とすると定めました。
一方、高濃度事例のみを対象とした計算対象日の選択方法として、EPAで定められた方法がありましたので、紹介という形で表1-1に載せております。シミュレーション等の評価で、平均値ではなく、高濃度事例だけ対象という場合には、表1-1に示したような方法で計算事例を抽出しますと計算の日数を減らすことができる。それはきちんと根拠を持って、1年を計算するのと同様の精度を確保した上で減らせるということが書かれていましたので、記載しております。
続いて6ページになります。解析地域についてです。先ほども掲げましたように、越境汚染、タイトレーション効果の低下、前駆物質排出量の減少という三つの影響を検討するということで、関東地方と九州地方をターゲットに解析を行いたいと提示しております。
関東地方の特徴といたしましては、Oxの域内生成が盛ん、二つ目として成分分析調査等データが多いということが特徴かと思います。九州地方に関しましては移流の影響を強く受けている。関東・阪神・東海と多角的解析で検討してきましたようにほかの地域とは異なる特異性が見られるということで、関東と九州に絞って解析を行いたいと考えております。
7ページは国内の発生源インベントリです。どのインベントリを用いるかという検討で、現在国内を対象にしたインベントリを表1-3に示しております。それぞれ特徴等について8ページに示しております。結論といたしまして、国内の発生源インベントリとして、JATOPで作成しておりますJEI-DBを使うことにしたいと考えております。また、船舶からの排出データは海技研で作成しているインベントリを用いる必要があると思っております。表1-4に構成内容を整理いたしました。
続いて10ページ。9ページでは国内を対象にしたインベントリだったのですが、10ページ以降は海外、アジアの排出インベントリについて整理しました。アジアを対象範囲に含む主なインベントリとしまして、表1-5に整理しています。11ページまで整理しております。
12ページは、自然起源のインベントリということで二つほど整理させていただいています。文献の収集を前回行ったのですが、そこで使われていたインベントリを対象にしております。結論といたしましては1.6.3に書きましたように、アジアの人為起源インベントリについてはREAS2.1、アジアの自然起源インベントリについてはEAGrid2000を用いることと提案しています。
13ページはシミュレーションモデルの検討です。収集文献においてどのようなモデルが使われているか、表1-6にまとめております。結果としましては、MM5、RAMS、WRFが多く用いられていました。WRFはMM5の次世代モデルと考えると、WRFの使用件数が多いのかなと考えられます。また、大気質モデルについてはCMAQを用いるものが多いという結論になっています。
気象モデルの検討はWRFを使用するものとする。理由といたしましては、開発進行中のモデルであること、国内・海外において実績が十分にあること、3点目として、大気質モデルとして採用する予定のCMAQやCAMxとの親和性が高いということで、WRFを使いたいというふうに提案しました。参考に、表1-7にMM5、RAMS、WRFの比較の表を載せております。
15ページは大気質モデルについての検討です。米国におけるSIP策定のためのシミュレーション評価で、CMAQまたはCAMxを用いているという報告があります。イギリスにおいてもDefraという機関において大気質のモデルとしてCMAQを推奨していることもあり、これらを根拠にしてCMAQを用いることとしたいとしております。
また、今回は具体的な検討を提示していませんが、モデルの不確実性の検討ということで、CMAQのほかにCAMxも選択肢として想定しております。
16ページは、Ox生成に大きくかかわるモデルの中のサブモデルについて、気相化学反応モデルについて書かせていただきました。使う予定で掲げていますCMAQ5.0.1ではCB05、SAPRC-07T、SAPRC-99が選択可能ですが、これまでの国内の使用実績等を勘案してSAPRC-99を用いたいと書いております。表1-9には参考として、「SAPRC-99、CB4およびCB05の比較」という論文がありましたので、その結果を載せております。
17ページに移りまして、モデルの領域についてということで、領域および格子間隔の考え方についてまとめました。シミュレーションを実施する上で、対象期間、領域の広さ、格子間隔の細かさは計算時間に大きく影響するということで、適切に設定する必要があります。本調査では、先に提示しましたように10年間の4月、5月、7月、8月という長期間を想定していること、解析地域として関東と九州の2領域を対象としています。格子間隔をどのぐらいにすればいいかという検討が必要であるということから、格子間隔の違いによるOx濃度の再現性について検討した文献がありましたので、それをまとめました。
表1-10に示したように、1列目が地域、2列目が格子間隔、3列目が考察という表で、12km、4km、9km、3km、1kmと格子間隔を定めているんですが、格子間隔4kmとか、そういうふうに小さい格子間隔でなくても、再現性については変わらないという結論になっております。ただ、都市や発生源に近い場合では細かい領域を推奨しているという結果もございます。
本調査では長期間にわたるOx濃度のトレンド変化を検討することが目的ということで、関東及び九州地域のメッシュサイズとしては10kmで行いたいと考えました。ただし、精度比較等を行う際に、1メッシュに対して複数の観測局が含まれることになるので、精度検証等を行うにあたっては配慮が必要になると考えております。
次に領域設定ということで、具体的にどのような範囲で行うかについて案を提示しました。まず、越境汚染の影響を検討する必要がありますので、東アジア領域の計算を行い、その後ネスティングによって関東及び九州領域の計算を行うということで、図1.6から図1.8に示したような範囲で計算を行いたいと思っております。よって、表1-11に示しましたように、関東・九州ともに東アジアで計算して、ネスティングによって出た10km格子の値を評価実施領域としたいと思っております。
19ページに移りましてモデルの精度検証ということです。モデルの評価については、気象と大気質に分けて検討する。なお、モデル精度の評価対象年は平成13年度~平成22年度、先ほど定めた10年のうち3断面(単年度)を設定したいと考えております。案としては平成13年度、17年度、21年度の単年度で精度検証を行うと考えております。
気象に関しては、風向、風速、気温、相対湿度、混合層高さ等を対象に、BIAS、RMSEを設定します。大気質に関しては、Oxについては特にオーソライズされた精度評価指標がありませんので、EPAで定義され、収集した論文でも多く利用されている、表1-12に示したような評価法で行いたいと思っております。精度の基準については収集した文献等を参考にしたいと考えています。
対象とする物質については、Ox、POを考えておりまして、測定値が得られる場合に全硝酸やホルムアルデヒドなども含めたいと思っております。
ここで一旦モデルの精度を確認した上で、特にOxについては表1-13に示すような項目について再現性の確認を行いたいと思っております。項目については経年変化で、具体的な統計値としては、多角的解析で検討してきた指標ということで日最高8時間平均値の暖候期98パーセンタイル値相当値等を軸にした統計値で再現性の確認をする。その他に、週末効果や季節による濃度変化も見ていきたいと思っております。
今まで述べてきたことを20ページ21ページにまとめております。これは第1回から第2回にかけて示した調査フレームを整理したものになります。以上で説明を終わります。

秋元座長ありがとうございました。実際の作業は来年度ですが、こんな方向で考えていますということですが、お聞きになってご意見をどうぞ。

大原委員細かいことは多々あるのですが、それは今日はあえてコメントしないで時間があるときにするとして、大きなところで3点あります。
一つは2ページで、シミュレーションの目的として①、②、③と切り分けると。これをどうやってシミュレーションによって切り分けるのかということが今のご説明にはなかったので、そこはどういうふうに考えられているかが一つ。
2番目は19ページで、対象とする物質がOxとPOと書いてありますが、前駆物質の濃度もバリデートするべきだろうということ。
もう一つは5ページ、これは質問になります。1段落目は2カ月ぐらいの単位で長期シミュレーションをするというイメージだと思うのですけれど、2段落目の「一方、高濃度事例のみを対象とした」云々というのがどういう意味なのかがわからないです。

事務局2ページ目ですけれど、シミュレーションによって①から③をどのように解析していくかは、次回で具体的な手法について提案させていただこうと思っております。今考えているのは、越境汚染ですとアジアのほうの排出インベントリを初年度で固定して、最近の気象場で大気質のモデルを回してみてどのような差が生じるか、そういうふうな方法で効果を推測できるのではないかと考えております。
5ページ目は、直接的に今回のシミュレーションには関係しないですけれど、将来的に高濃度事例日を対象としたシミュレーションを行う際にEPAの手法を用いると、長期間を対象に計算をしなくても、表1-1の一番上は15日計算すると季節においてそのシーズン回したのと同様に評価できますよという、手法の紹介と考えておりますので削除しても特に問題はないところです。いろいろ調べたので載せたいなというのがありまして、すみません。
もう1点、前駆物質のほうは必要な物質を載せていこうと思います。

大原委員必要なというのはどういう意味ですか。

事務局検討物質として加えていくということです。

大原委員これに追加されると。

事務局はい。

秋元座長NOx、VOCを、特にVOCをどういう形で検証するかというのは簡単ではないと思いますけれど、考えておいてください。

若松委員二つあります。大原委員がおっしゃった2番目の点は大事で、今回の報告はOxが中心だったので、モデルの検証という面も兼ねて、ほかの汚染物質についてのモニタリングデータの解析との比較をぜひ計画の中に入れてほしいというのが第1点です。

秋元座長ほかの物質というのは具体的に言いますと。

若松委員NOxや大気汚染物質。モデルから計算で出てくるものがありますよね。その結果とモニタリングデータが比較できるものはすべて見たほうがいいかなと。
VOCについては、座長がおっしゃるように、出てきた結果をどう積み上げてNMHCと関係づけるかというのは難しいですが、少なくともNOとNO2に関しては最低限必要。特に発生源との関係を見るためには、NOxトータルの量やCOの値なども比べられたら、モデルの検証になるかなという気がします。
2番目は対象年度の設定ですけれど、平成13、17、21でしたか、おっしゃっていましたよね。これを選ぶ根拠とした発生源規制ですね。自動車NOx・PM法は平成13年度ですし、VOC規制は平成18年度、PM2.5の環境基準は平成21年度ですし、発生源の関係がうまく反映できるような対象年を考えて選ばないといけない。どういった規制が行われたかという関係づけで今後評価していかなければいけないので、対象年を選んだ根拠をまず知りたいです。発生源の変化も見据えてこの年度にしたのか、適当にぽっと決めたのか、そこのお考えを聞かせていただければと思いました。

事務局この3年については、10年のうち最初、真ん中、最終年と三つ、トレンドをとらえることを観点に選んでおります。それと発生源の規制がリンクするのであればそちらのほうが設定に対してふさわしいと思いますので、先ほどいただいた意見を反映させたいと思います。

事務局評価年というか細かく精度検証をするのはこの3年ですけれど、モデル自身は10年間回そうと思っています。この3年で不足する分についても、計算は実施しますので、追加していこうと思います。

若松委員発生源の評価に関しては環境省もそれぞれ係が別なので、VOCのときにはVOCだけが中心になっているし、NOx・PM法に関してはまた別のところで検討されているので、両方含めて考えるというのはあまりこれまでなかった。ディーゼル車規制に関係する平成15年以降のさまざまな施策、NOx・PM法関係、VOC規制、その辺を考慮に入れて、発生源の変化がモデルのインプットデータに反映しているかどうかも気にしながらやっていただけると、対策と環境との関連性が具体的に明らかになるかと思いますので、ぜひご検討いただければと思います。

秋元座長今は直近の10年を囲んでいるんですが、もし13年なり15年ぐらいから始まっているのだとすると、レファレンスをとるのだともっとさかのぼった期間を見なければいけないという気もする。長くすると計算量が大変だろうと思うけれど、今までのご経験からいってどうですか。

若松委員95年ごろから急激にNOxは下がっているんですね。1990年代はあまり環境濃度に対策の効果が反映されていなくて、1990年から95年ごろまではちょっと下がってはいるけれど下がり方が緩い。

秋元座長ほとんどフラットですよね。

若松委員95年ごろから急に下がって2000年以降、90年代に自動車NOx法の効果があまりなかった。そこで、NOx・PM法でかなりきちんとした対策をしたので、その効果がすごく出ている。その辺の差がちゃんと出るような結果が環境省のバックデータとして手に入れば、環境省としても対策効果の評価がうまくいくので、おっしゃるとおり前の実施時期の検討も入れたほうがいいかもしれない。

秋元座長本当は、特にOxのトレンド解析は20年というのが常識なんですね。20年やるとはっきりトレンドが言える。1% per yearぐらいの増加率を議論するには、年々変動や何かを入れると大体そのぐらいがサイエンティフィックに言えば必要ですが、委託でやるには非常に大変だというのはよくわかりますので、それを直近の10年でいいと皆さんが考えられるかどうか。大原委員、何かコメントはありませんか。

大原委員ここに示されているシミュレーションのフレームは、来年度1年間でやる仕事についてのフレームですか。前提をまず明らかにしていただきたいのですが、環境省にお聞きしたほうがいいかもしれません。

後藤課長補佐来年度1年間でやるところを考えてです。

大原委員シミュレーションについてはその1年間で終わらせるという。

後藤課長補佐過去の再現にいつまでもという話でもいけませんから、来年度1年間でできる業務量を見据えつつ、できるのはどこまでかを考えられればと思っています。

大原委員過去の再現だけではなくて、これは発生原因の評価、解析まで行うわけですか。

後藤課長補佐そうですけれど、前段のデータのシミュレーションモデルがうまく回ることが確認できるところまでは来年度1年間で。

大原委員作業量との関係がある。10年間のシミュレーションを、しかもネスティングして流すというのは、流すだけでも大変ですし、それを解析することになると相当大変だと思います。もし1年間でやるということであれば、もう少し絞ったほうがよい。同時にもう少し大きなフレームを横で描いておいて、それが可能かどうかは別にして、そういうこともやる必要があるということを提案していくというのがいいような気がします。1年間でしたら10年間が限界ではないかと思います。

秋元座長作業からいうとそうでしょうね。

浦野委員長い期間やるに越したことはないですけれど、頭の中ではそうですけれど、実際はシミュレーションするためのデータがどのぐらい得られるかということも非常に重要。20年前に、NOxはある程度出るとしても、ほかのいろいろなデータがVOCを含めて入れられるのかという議論になります。

秋元座長それは大丈夫だと思います。REASや今までのインベントリのデータベースがあって、それなりに整合性のあるとりまとめとなっている。

浦野委員それは比較的かなり古くから大丈夫だということですか。

大原委員少なくとも1990年からでしたら、ある程度整備されているので流すことはできると思います。気象のほうの不整合が若干起きるかもしれないですけれど、工夫すればできないことはないと思います。

井上委員これも作業量によると思うのですが、関東と九州だけを領域設定されているということですけれども、関西もあったほうがいいのかなと。といいますのは、私は関東や関西やいろいろなところでシミュレーションをやったことがあるんですけれど、排出量の削減効果が地域によって全然違うんですね。関東だとVOCの排出量削減が効くのですが、関西ではあまり効かない。それは観測データからも見られて、ウイークエンドエフェクトの効果が、要するに週末にどれだけ高濃度日が増えるか減るかが関東と関西ではだいぶ様子が違うので、関東だけの結果をもとにして関西もこれでいけというのは若干懸念されます。
これはネスティングの領域を一つ増やすだけなので、手間的にそんなにかからないのではないかと思ったのですけれど、それはどうですか。関西を解析対象とすることによって手間は増えますか。

後藤課長補佐環境省の見込んでいる業務の時間的な量も考えたところでいくと、もともと3年度の平均値で一つのデータができるということに今回はなっていて、その近いところで3年掛ける3の9年間が必要になります。9年間やるのであれば、この2地域でやるという今回気象協会さんから示していただいた現況作業までが、来年度1年では越境汚染の解析などいろいろ突き詰めていくとなると精いっぱいかと思っています。
単年度断面でよければ3年だけでいいので少し先までいけるんですけれど、3年度で一つのデータになるというふうに今はなっているので、そこをやることによって時間がどうしてもかかります。今日お示ししました提案内容で実施すると、現況作業までが、来年度できる時間的にいっぱいのところかと思っております。

秋元座長委託作業でやることの限界が当然あるので、なかなか要望どおりにはいかないと思うんですが。

板野委員タイトレーションの効果のことも検証するということが目的の一つと書かれている以上、NOxをちゃんと再現できないと、タイトレーションの効果は絶対に再現できないと思うんです。そうすると、17ページでメッシュサイズ10kmと書かれているのですが、これできちんとできるのかどうかがそもそもの疑問として上がってくるのです。

大原委員メッシュを細かくして10kmを5kmにしても、モデルではタイトレーションの効果まで表現できないと思います。一般的には、とりわけ都市域のシミュレーションの結果ですと、オゾンは実測に比べて必ずと言っていいぐらい過大評価になる、タイトレーションの効果が見てとれない。そう考えると、原因の2番目について、シミュレーションモデルできれいに出すというのはあまり期待しないほうがいい。ただ、シミュレーションの結果と実測の結果をうまくかみ合わせて解析するという、一工夫は要ると思います。
結論としては、空間分解能によらずに10kmでも5kmでも、それはあまり変わらないのではないか。

秋元座長10km、5kmはあまり変わらないですよね。

若松委員私たちがやった結果でも変わりなかったです。

秋元座長今までの幾つかの経験からいうとそんな感じです。タイトレーション効果はそれなりには出ると思うんです。ただ、絶対値できれいには出ない。日中にオゾンが高くなって夜間にタイトレーションで0に落ちていますよね。だけどそこは0までは落ちないです。NOの排出量の変化によって、多少そこが変わってくるというのは見えるかもしれない。ある程度の効果があるということは言えると思いますが、定量的な絶対値を出すのは難しいかなという気がします。
それでは予定の5時半に近づきましたけれど、シミュレーションに関しては今日のところはこれぐらいでよろしいでしょうか。
次回は、VOCの話がさっき少し出て、シミュレーションに組み込まれるものはこういう整理ができていますというのを次回ご報告いただくということでよろしいですね。それ以外を具体的、こういうシミュレーションは最初のデザインがものすごく重要ですから、何をどこまでどういうふうにやるか決めておかないと、ただまわして思ったような結果が出てこないということもたくさんあると思うので、バリデーションにしても。

浦野委員デザインが大事というのは全くそのとおりです。デザインをやるためには、一体何をどの程度明らかにしたいのかもう少し詰めて考えていただきたい。ここはやるけれどもそれほど期待できないところもあるとか、ある程度は出るだろうとか、ここははっきりさせたいとか、目標をしっかりしてそれに合わせたデザインをしないと、やればやるほどいくらでもきりなくある。逆に言うと、中途半端にやるとまわしただけで何も出てこないという感じもある。

秋元座長まさにおっしゃるとおりで、シミュレーションというのはそういうものですからデザインが非常に重要で、いずれにしても完璧というのはあり得ない。

浦野委員 今日デザインの骨格は示されたので、どういうことが明らかにできるか目的とセットになっていないと、デザインはここら辺がお金でできる範囲ですねという議論になってしまう。そうではなくて、一体何をどの程度明らかにしたいのか。あるいは、これをやればこの程度までなる、ここはできないとか、それを少し整理していただくほうがいい。

秋元座長よろしくお願いします。それでは、今日の審議事項は大体こんなところでしょうか。あとはその他ということで何かございますか。

後藤課長補佐特にありません。

秋元座長では、今後の予定を含めて、あとは後藤補佐にお返しします。

閉会

後藤課長補佐秋元座長、ありがとうございました。最後に幾つか事務連絡をさせていただきます。
まず次回の検討会でございますが、日程調整を先日させていただきまして、第4回は2月28日の15時から、第5回は3月24日の15時から、本日と同じ会場での開催を予定しておりますのでよろしくお願いします。
第4回の検討会では、今日ご審議いただきました資料1を最終的なものに近い形でお示ししたいと考えております。資料1につきましては再度ご一読いただきまして、お気づきの点を今月末の1月31日(金)までにご回答いただければと考えております。回答につきましては、資料1の編集可能な電子ファイルを速やかにメールで送らせていただきます。もしくは、今回の資料の紙のものに書いていただいてもよろしいですし、先生のご負担にならないやり方でご一読いただければ幸いでございます。
いただいた意見を反映した報告書案につきましては、遅くとも第4回検討会の1週間前を目途に再度送付させていただきたいと思っております。第4回の前に時間に余裕を持ってこちらから送らせてもらいたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。私からは以上です。

秋元座長 今月いっぱいで大丈夫ですか。かなりタイトな気がするけれど。

坂本委員 どこどこの解析をした結果を見てこういう解釈をしたというのが、今は書いていない。前にも私は指摘したんだけれど、今までの説明は全般にそういう傾向がある。そういったものが入ってからでないと、手を入れるのにも時間がかかる気がしますけれど。

後藤課長補佐 では、一度こちらで修正させていただきまして、今日の意見を反映したものを早目に送らせてもらって、そのときにもう一回いつまでにというご連絡をさせていただきたいと思います。ご協力をよろしくお願いいたします。

秋元座長 大体そんなところでよろしいですか。
では、今日の会議はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

以上

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