環境省>大気環境・自動車対策>大気汚染状況・常時監視関係>光化学オキシダント関連情報>光化学オキシダント調査検討会(平成23年度)
第2回 光化学オキシダント調査検討会 議事要旨
1.日時 平成23年10月26日(水)13:30~16:30
2.場所 経済産業省別館 10F 1028会議室
3.出席者(五十音順 敬称略)
- (委員)
- 秋元 肇 安藤 研司 石井康一郎 板野 泰之
井上 和也 指宿 堯嗣 岩崎 好陽 浦野 紘平
大原 利眞 金谷 有剛 坂本 和彦 下原 孝章
竹内 庸夫 土屋 徳之 橋本 光正 若松 伸司
- (欠席)
- 向井 人史
- (環境省)
- 山本大気環境課長 山本大気環境課長補佐 栗林大気環境課長補佐
小林大気環境課長補佐 吉崎大気環境課長補佐 芳川係長
4.議題
- (1)シミュレーションモデルの概要等について
- [1]予測モデルの概要、開発の経緯について
[2]排出インベントリの設定について
[3]予測モデルの精度検証について
- (2)科学的知見の収集について
- [1]都市域における大気光化学反応について(首都大学東京 梶井教授)
[2]日本における過去10年間の地表オゾンのトレンド((独)国立環境研究所 谷本室長)
- (3)今後の審議の進め方について
5.配付資料
- 資料1-1
- 予測モデルの概要、開発の経緯
- 資料1-2
- 排出インベントリの設定
- 資料1-3
- 予測モデルの精度検証について
- 資料2-1
- 都市域における大気光化学反応について
- 未同定VOCのOH反応性寄与推定 -
- 資料2-2
- 日本における過去10年間の地表オゾンのトレンド:
観測とモデルの比較・欧米の観測との比較・国際的な研究活動
- 資料3
- 今後の審議の進め方(案)
- 参考資料1
- 光化学オキシダント調査検討会委員名簿
- 参考資料2
- 光化学オキシダント生成シミュレーション
(第1回検討会資料2-4)
- 参考資料3
- 光化学オキシダント調査検討会(第1回)における主な意見
6.議事内容
議題(1)[1][2][3]
- 大原委員より、シミュレーションモデルの概要等について説明があり、その後事務局より第1回検討会で出たシミュレーションに関する質問の回答の説明があった。その後、議論が行われた。主な質問・意見と回答は以下のとおり。
- (意見)この検討会の役割は、今後のオキシダント対策の政策を考える上で何を調査研究する必要があるかをはっきりさせることであり、この観点から考えると、例えば60ppb以上の日数を減らす、あるいは120ppb以上の日数を減らすなど、どういうことを目標にして政策をとるのかということを委員会で決め、その上でこの目標の部分を精度良く計算できるシミュレーションとする必要があり、少なくとも2倍は違わないような結果がほしい。また、発生源の把握についてはオキシダント濃度との関連の面からメリハリを付け、重要な部分の信頼性を高めていくことが重要。
現在のシミュレーションは概ね合っているとの説明であったが、例えば注意報発生日数など計算と実測が2倍くらい違う部分もある。決定した目標について、合わない理由や精度に大きく影響する因子などをリストアップし、データ収集が必要で行政へ提言すべき事項も含め一覧表の形で整理し、これを踏まえた議論や検討が必要。
- (意見)120ppb超過日数を指標にしていいかどうかというのは非常に大きな問題である。この指標でのみ評価を行った場合、シミュレーション結果と合う合わないの振れが大きくなる可能性がある。また健康影響という観点では、本来はどの濃度範囲の時にどのような影響を与えるかという最近の疫学的知見も踏まえ、どこをターゲットにするかという話になるがこれについてはある程度の期間が必要。この検討会では、当面のターゲットについて、次々回くらいまでに検討してほしい。
また不確実性に関して、3ヵ年のデータを比較すると、比較的合う月と合わない月が存在する。その原因として気象条件が考えられるが、どのような気象条件のときに合わなくなるかといったことを精査することで、原因がはっきりし、次のステップへ進むことができると考える。そして不確実性の原因となるもう一点として、実際に排出されているVOCを正しく把握し、どの程度モデルに組み込まれているかということであり、この点についてはOHラジカルのような中間体に視点を置くことで確認することができるので、この検討会でできる範囲でやっていきたい。
- (質問)FAMIKAで観測結果とモデリングにおけるNOx、オゾンの比較をしたということだが、VOCやNMHCなどの行政の観測データとシミュレーションとの比較はされているか、大小関係はどんな感じだったか。
- (回答)研究ベースでFAMIKAの解析を行う際、埼玉で測定された約20成分の時間値データを比較したところ、合う成分もあれば合わない成分もあった。特徴としては芳香族系は比較的合っていたと記憶している。
- (意見)モデルと測定データの比較した結果については見れば分かるが、そのようになった原因が何かという指摘がない。それをこれから議論すべきと考える。120ppb以上の日数が7月ではモデルと計算が合うが、それ以外の月では非常に違っており、それは7月と6月でインベントリの出し方が違っていたりとか、そういう問題があるのかもしれない。また低濃度の時にNOによるタイトレーションでオゾンが減るが、ここでNO濃度を実測と合わせるチューニングを行うと、逆にオゾンのピークの方が合わなくなることもある。つまりオゾンの最高濃度をあわせることにフォーカスすると他のデータの説明がつかなくなる可能性もある。また、VOCの現実の濃度とモデルで計算した濃度がどういう風に合うのか合わないのかという検証や比較が非常に重要であり、それがVOCについて対策を取るときの大きな判断基準になると考える。
- (回答)ご指摘のとおりで、この検討会でどういった体制でどういった検討を行っていくのかに対して、必要性があるということならば、議論していただきたいと思う。しかしこれまでの調査結果を取りまとめたものがご報告したものであり、必ずしもきめ細かい解析まで踏み込んだ点についてまですべて実施されている訳ではない。よってここで出された課題についてはこれからその視点で解析をする必要があり、どういった体制でどういう検討を行うということを環境省を含めて議論する必要がある。また、シミュレーションが実測と合わなかった原因に関し、問題点の検討はこれまで基本的には行っている。
- (意見)VOCについての比較では、VOCのモニタリングデータというのがほとんど入手できないというのが最大の問題で、モデルとの比較を行うためにはVOCモニタリングをまず行わなければならない。そのようなこともこの検討会の中で一つの結論に入れたい。
- (質問)VOCについて植物の影響が非常に大きく、植物からの発生量が170万tという数字が前回の資料にも出ていた。モデルでは毎年同じ排出量で計算しているのではなく、気温と日射量で補正した記載があるが、日射量や季節変化に伴う変動も捉えられているのか。
- (回答)捉えられているかの評価は非常に難しく、いまのところ生物起源のVOCの放出量が正しいかを検証する術は世界的にも確立されておらず、それ自体が非常に難しい課題となっている。そのため、現在のモデルでは生物起源VOCのインベントリは日射量、気温のパラメータとして推計しているので、季節変動、気象の変化に伴う放出量の変化は入っているが、それが現状と合っているかどうかは分からない。
- (意見)結果の不確実性については様々な要因があると思われるが、影響要因として一番大きいのは、気象条件とVOCの種類別発生源(発生地点、発生時間)で、あとはNOxと思われる。これらを正確に検証するのは困難ではあるが、例えば森林由来のVOCを日照や気温で補正する場合、どういう根拠のもと、どのような仮定で、どのような補正を行ったのか、またそれがもしずれたらどのくらい影響があるか、ということをちゃんと示して欲しい。また他のVOCでも同様で、VOCは非常に種類が多くまた発生源も様々であるが、主要発生源というものがある程度存在し、特に森林由来だと人為起源由来のものとまったく違うものが発生するので、VOC発生の主要な部分が何かということと、算定した根拠が妥当なのかどうかについて解析結果とともに示していただき、気象条件をモデルに入れるときのやり方が妥当なのかどうかという点に絞って議論すればかなり解明が進むのではないかと考える。
- (意見)資料1-3のスライド12枚目にあるように東京と埼玉と群馬を比較すると東京で合っているが埼玉や群馬では合っていない。合わない要因は植物由来であるのか、気象的な要因か、あるいはエアロゾルかガスの反応によるのかは分からないが、何か補正することで合わせることもできるのではないか。まずはそういう小さい範囲で合わせていくというのが大事なのではないかと思われる。
- (質問)東アジア領域の80kmメッシュのモデルの再現性について、例えば局所的にはNOのタイトレーションの問題があるかと思うが、上空で比較などは行っているか。
- (回答)こちらは行っており、論文も多数出している。結果は論文を見れば結構合っていることが分かるかと思う。
- (質問)モデルと実測の比較を行い、トルエンは結構合っているとのことであるが、反応性の強いイソプレンなどの比較結果はあるか。またOHラジカルについて梶井教授のデータと比較したことはあるか。
- (回答)イソプレンについては濃度の変動パターンといった意味での再現性は良かったが、ここで見ているものはローカルなイソプレンであることから、この結果が良好だからといって、関東の山岳域のイソプレンの放出量を再現できているとはいえず、植物由来VOCの放出量の再現性を評価することは難しい。またOHラジカルの比較は行っていない。
- (意見)モデルにもできない領域が必ずあるので、そのあたりはできるだけ明確に示してもらえば、不必要な議論を行わずにすむ。また、年度によるデータ更新や改善の状況についても整理していただきたい。
議題(2)[1]
- 梶井教授より、都市域における大気光化学反応について説明があり、その後、議論が行われた。主な質問・意見と回答は以下のとおり。
- (質問)都市の場合でも森林の場合でも未知の部分の割合は大体同じくらいの20%だったという理解で良いか。また未知の20%については自動車起源以外のもので未知の部分がそれぐらいあると考えて良いか。
- (回答)未知の部分の割合は2割から5割くらいになる。また全体像をつかむところまでは来ていない。特定の発生源を対象にした調査の提案があれば分析を行いたいと思っている。
- (意見)未知のものを追いかけることは学術的に非常に価値があるが、オキシダント対策の観点から行政・政策面で考えると、不明な点が多々あるということだけは困るので、不明な部分について補正する方法を考えるべき。また補正においては例えばNOx濃度や気温など気象条件ごとに分類して補正を試みたり、またVOCについてはOH反応性に着目し、試行錯誤していきある程度目安がつけばシミュレーションへの適用が可能となるので、情報収集をいろいろな関係者と協力して是非行ってほしい。シミュレーションに完璧なものはなく、いろんな近似や仮定、補正をしてできる限り現実に近い数字がシミュレーションできる方法を考えていき、研究が進んで中身が見えてくれば見えてくるほどそこがより精度が上がってくるという形にすべき。
- (意見)現在、未知のVOCが多くあることが分かったが、未知の部分も何らかの形で加えたモデルを用いてシミュレーションを行うとオゾン生成状況が違ってくる。これはNOxを削減した方が効果があるのか、VOC を削減した方が効果があるのかという議論に大きく影響し、行政的にも重要なことにつながるので、モデルでも未知のVOCを考慮に入れたケース、入れないケースでそれぞれ計算を行うことで不確実性が見えてくるのではと考えれる。
- (意見)VOCについて、インベントリは個別成分で出すが、規制は炭素換算でなされている。政策上、個別成分を見ていくこととトータルカーボンないしはトータル規制をするというのは全然違うので、その辺をシミュレーションを含めて検討してほしい。
議題(2)[2]
- 谷本室長より、日本における過去10年間の地表オゾンのトレンドについて説明があり、その後、議論が行われた。主な意見・質問は以下のとおり。
- (質問)オキシダントはVOCやNOxから、太陽エネルギーによって生成されるが、この10年間のトレンドに関し、太陽の黒点周期との関係からコメントがあるか。
- (回答)特にない。そういった議論があるのは承知しており、大事な点であるが、自分の研究には入っていない。
- (回答)以前、東京都の解析をやったときに紫外線強度の相関を取ってみて、あまり効いていないという結論になったかと思う。
- (質問)磁場はどうなのか。
- (回答)磁場は対象外ではないか。むしろ気候変動との絡みで、成層圏からの流入量が増える可能性はある。
- (質問)測定点によって、北京オリンピックの影響はあるか。
- (回答)春に注目しているので夏は見ていないが、個別のデータを見ていけばあるかもしれない。
- (質問)八方尾根は自由対流圏のデータであるが、他の地点は全部地上のオゾンデータである。それを一緒に議論していいのか。
- (回答)八方尾根は1.8kmなので、そういう意味では自由対流圏と説明したが、境界層との境にあるため、モデルを使うのに不都合はない。ただ鉛直分解能の問題等もあるので注意は必要である。
- (質問)南極だけでなく北極の方にもオゾンホールができているなどの経年変動があり、北海道や北日本の地上まで影響があるという説があるが、そういう点は今は考えていないのか。
- (回答)考えていない。
- (意見)それは別の研究者がグローバルモデルでやっているはずである。まだ論文になっていないだろうが、90年代位からの成層圏オゾンが減少してきていた時期には、ある程度対流圏の方も成層圏からの降下が減少しているので、増加傾向を下げているということが見えていたと思う。
- (意見)北極圏のオゾンホールは最近むしろ拡大している。
議題(3)
- 事務局より、「今後の審議の進め方(案)」について説明があり、議論が行われた。主な質問及び回答は以下のとおり。
- (質問)参考資料3の「VOC排出インベントリに関する主な意見」にある、自動車からのVOC排出量についてはPRTRでかなり詳しく調べており、という記載は、固定発生源の間違いではないか。
- (回答)誤記ではなく、自動車からのVOCは、非常に詳しい解析をして推計されている。PRTRの届出外の推計で書かれている。
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