午後5時30分 開会
- 佐々木補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第4回石綿による健康被害に係る医学的事項に関する検討会を開催いたします。
メンバーの皆様におかれましては、ご多忙中のところをご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
会議を始めるに当たりまして、事務局の方から、本日お配りしています資料について確認をさせていただきます。
資料でございますが、座席表、それから議事次第、あと開催要綱とメンバー表、これを除きまして、まず資料1、第1回の検討会の議事概要(案)でございます。それから資料2、症例検証の結果についてでございます。資料3、第1回検討会を踏まえた論点(案)でございます。それから資料4は、各種調査研究事業の関連の資料でございますけれども、3点ございます。1点は、本年度の文献調査事業についてという一枚紙。それから、パワーポイントをハンドアウトしたものでございますけれども、諸外国における中皮腫診断という、井内先生のプレゼンテーションの資料。それからあと一つは、A3判で大きな表になってございますけれども、諸外国におけます石綿健康被害救済制度の医学的判定に特化した比較表でございます。それと第1回検討会と同様でございますけれども、基本資料集というのをお手元にお配りさせていただいております。資料の欠落等ございましたら、お申出いただけたらと思います。よろしいですか。
本日は、神山先生からは、所用のため、後ほどご出席いただくということでご連絡をいただいているところでございます。
それから、この会議場所での検討会は久方ぶりでございますけれども、マイクの使用方法でございますが、目の前にございますマイクの下、ボタンを押していただいて、この赤いランプがついていることをご確認いただいてご発言いただき、ご発言が終了しましたら、またボタンを押していただければと思っています。
それでは最初に、環境省総合環境政策局環境保健部長の原よりごあいさつ申し上げます。 - 原部長 環境保健部長の原でございます。年度末のお忙しいときでございますが、お集まりいただきました。本当にありがとうございます。一言ごあいさつを申し上げます。
石綿健康被害救済制度の創設から、今月でちょうど3年になるわけでございます。この間、運用面では先生方にいろいろなご助言をいただきまして、おかげさまで現在では、業務を円滑に遂行することができていると考えているところでございます。
こうした中で、救済制度そのものにつきましては、国会やその他の場面におきまして、いろいろな見直しに係るご指摘をいただいております。それを受けまして、昨年10月、石綿による健康影響について、改めて検討を行うということで、この検討会を立ち上げさせていただきました。
第1回の検討会では、具体的な症例をもとに検証を深めるべきだというご提言もございましたので、第2回及び第3回の検討会においては、先生方に140症例近くのものにつきまして、画像所見等の確認をいただいたところでございました。本日はその結果もまとめておりますので、後ほど事務局より報告をさせていただきます。
また、石綿関連疾患、特に石綿肺につきましては、現行の救済制度との関係を整理した場合の幾つかの課題がございます。これにつきましてご提示をいただきましたが、これらについて、先ほどの症例検証結果と同様に、これまでの医学的知見をもとに、より突っ込んだ議論を本日はお願いしたいと考えております。
また、議事の最後には、年度末ということもございますので、本検討会の内容に関連のある環境省の調査事業につきまして、簡単にご報告を申し上げたいと思います。また、この調査事業には、先生方にもいろいろとご協力いただきましたことを、この場をお借りして、改めて御礼を申し上げます。
以上、いろいろと盛りだくさんでございますが、来年度に向けて、どのように検討を進めていくべきか、ご指導を賜ればと存じます。よろしくお願い申し上げます。 - 佐々木補佐 それでは、以降の議事運営を、森永座長にお願いいたします。
- 森永座長 それでは、検討会の開催要領に書いてありますが、座長を務めさせていただきますので、私の方から進めさせていただきたいと思います。
それでは、まず、議事に入る前に、第1回目の検討会の議事の概要を取りまとめたものがございます。確認をしたいと思いますので、事務局の方から説明をお願いします。 - 佐々木補佐 それでは、お手元資料1に基づきましてご説明申し上げます。
前回、第1回、10月21日に開催されました検討会の議事概要(案)でございます。先生方からこれまでいろいろとご議論いただきました内容を、そのときもお示ししました論点メモ(案)、項目に従いましておまとめしたものでございます。
最初1.石綿肺の取り扱いでございます。(1)総論的事項でございますけれども、疾病の概念や発生し得る集団については、じん肺法に基づく胸部単純X線写真による定義(1型以上のもの)を適用させることでよいのではないか。それから、軽症の石綿肺も含めますと、家内工業や一人親方といった方々が発生し得る集団として考えられるのではないかと。それから、石綿肺を含め、じん肺は一般に進行が非常に緩やかであるといったご意見をいただきました。
それから、[2]の特発性間質性肺炎などとの鑑別につきましては、画像だけでは鑑別は困難でございますということ。そういうことで、やはり職業曝露の有無を確認することが必要になるのではないかということ。あと、石綿肺の診断で最も重要になってくるのは、職業曝露、一定量以上の曝露という意味でございますけれども、その有無であるということ。そして、特発性間質性肺炎の中で急激に進行する例があるといった点についてもご意見をいただいたかと思います。
(2)の石綿肺を指定疾病に加えた場合の判定基準に係る課題でございますけれども、まず、[1]の線維化、重症度の評価方法でございますが、ちょっと割愛しまして、石綿肺は非常に軽いものから重症のものまでありますと。どこから救済の対象にするかといった問題も考慮する必要があるといったご意見がございました。あと、画像でございますけれども、高分解能CT(HRCT)の出現によりまして、比較的早期の石綿肺の特徴がある程度明らかにされつつあるということで、単純X線写真との併用についてご意見をいただきました。
次、ちょっと番号が間違っておりますけれども、石綿肺の判定基準でございますが、これにつきましては、職歴と画像という手法に加えまして、臨床経過の観点を加えるという線が妥当か。これは先ほど申し上げました特発性間質性肺炎などとの対比で、このようなコメントをいただきました。あと、中皮腫については、低濃度曝露でも起こり得るが、石綿肺は一定量以上の吸入により生じるといったご意見もいただいております。
2.その他の石綿関連疾患の取り扱いにまいります。[1]の良性石綿胸水でございますけれども、疫学的にどの程度発生しているものか不明であり、職業曝露が判明して初めて診断できる疾患であるといったこと。それから、一般に、良性石綿胸水は療養が長期間続くことは考えにくい。そういった以上のことから、症例を収集して詳細な検討を行うことが大切といったご意見をいただきました。
[2]のびまん性胸膜肥厚については、先ほどの良性石綿胸水とほぼ同様のご意見をいただいておりまして、あと、鑑別としては、結核性胸膜炎や、リウマチあるいはパーキンソン病治療薬の副作用が挙げられると。また、類似の症例、これはX線や証明画像で、こういった類似の症例が見られるといったようなご意見があったと思うんですけれども、慎重な検討が必要であるといったコメントをいただいております。
その次、3.の胸膜プラーク有所見者の取り扱いでございますけれども、こちらにつきましては、労働衛生で交付されてございます、離職者等の健康管理手帳、こちらの中で対象とされているといったご意見がございました。
それから4.現在の指定疾病の医学的判定基準の見直しの必要性というところでございますが、まず[1]の中皮腫でございますけれども、これにつきましては、欧米と我が国との病気に対する姿勢の異なっているさま。そういったことだとか、それから石綿の救済制度でも最近ぽつぽつ見られるんですけれども、若い女性の症例など、石綿の曝露とはおよそ関係がないとされるものもあるというようなことから、今後、中皮腫の分類や概念について整理していく必要があるといったコメントをいただいております。
それから、臨床現場で、1人のドクターに中皮腫の診断を任せている現状について疑問が提示されまして、救済制度も労災制度も、中皮腫の最終診断を専門機関に委ねるようなシステムを検討すべきではないかといったご意見。それから、あわせて、中皮腫についての医学的判断、非常に難しいのだと。この困難な部分を何とか反映できるような評価方法というのが必要ではないかといったご意見もいただいております。
あと、[2]の肺がんにつきましては、手軽に石綿小体や石綿繊維の計測を行えるよう、気管支肺胞洗浄(BAL)を普及させていく取り組みが必要なのではないかといったご提言をいただいております。
以上でございます。 - 森永座長 第1回の議事録のまとめですので、皆様方の発言が大きく違うようなところがございましたら、それは事務局の方にすぐに言っていただきたいんですけれども、よろしいですか。
これはもう、あと細かいところは別にして、ほぼ大体確定版というか、(案)をそろそろとらないといけないわけですね。それで年度内に委員の先生方で意見がありましたら、年度内に意見をいただいて、一応確定するということにしたいと思います。よろしいですか。
それでは、議事に入っていきたいと思いますけれども、まず、この第1回の議論で、今までいろいろ石綿肺らしきものとか、環境リスク調査で上がってきたわけですけれども、それを2回にわたって、画像を中心に検討しましたので、そのまとめができあがっておりますので、事務局の方から報告をお願いします。 - 佐々木補佐 続きまして、お手元資料の2に基づきましてご説明申し上げます。タイトルは「症例検証の結果について」という資料でございますが、1の目的にございますように、これは第1回の検討会でいろいろご議論をいただいた中で、実際、具体的なその症例を精査、検証しようといったご意見をいただきました。それを踏まえまして、主として労災制度の対象とならない方々におけます石綿関連疾患の発生状況について、知見を収集しようと試みたものでございます。
ちょうど環境省の方では、その2.のところで少し触れてございますけれども、平成18年度と19年度と、現在もやっているんですけれども、いわゆる健康リスク調査というのをやってございます。こちらはその下、小さい字で恐縮でございますけれども、(注)でございますように、一般環境を経由した石綿曝露による健康被害の可能性があった6地域におきまして、石綿曝露の可能性があったという申し出をもとに、問診、胸部単純X線検査、胸部CT検査を実施してきているというものでございます。ちょうどこのような知見といいますか、データがございますので、こちらを受診していただきました1,978人、約2,000人の方々のうち、肺の線維化、胸水、びまん性胸膜肥厚のいずれかの所見が各地域で疑われた、そういった症例、計138症例でございますけれども、これを取り寄せまして、今回の検証の対象とさせていただいたところでございます。
具体的な内訳は、その下の表にあるとおりでございまして、まず、所見別の内訳は表aでございます。検証対象者138、これは一部に複数の所見が疑われた方もいらっしゃるので、この右側を足したものと必ずしも一致していないんですけれども、内訳は、線維化が125、胸水が5、びまん性胸膜肥厚が21となってございます。それから、地域別の内訳はb表のようになっているというところでございます。
3.の方でございますけれども、こちら検討会のメンバーの皆様方にお集まりいただきまして、画像所見を中心に、職歴も含めて、総合的に精査をいただいたところでございます。その結果が次のページ、それからまたその次のページと、2ページにわたっているところでございます。
簡単にご説明申し上げますと、まず(1)の線維化でございますが、検証対象となった全138症例のうち、肺の線維化について、石綿による可能性が否定できないとされたものについては、この表の中に掲載されている19症例であったと。他方、ほかの119症例につきましては、石綿肺の可能性が否定的とされたというところでございます。この中には、線維化所見自体が認められなかったものもございました。
なお、参考までに、この138の中で、胸膜プラークはあるものの線維化所見が認められなかったものは33例ございまして、このうちの1例は、同一症例の複数枚の胸部単純フィルムを取り寄せた結果、吸気不良により不整形陰影像を呈したものと判断されたところでございます。
この表、マトリクスの見方でございますけれども、石綿肺との関連といいますか、可能性との関係で、線維化がどの程度あったかといったところで、上段・下段と分かれてございまして、上が石綿肺の可能性が考えられる線維化所見あり。それから下が、石綿肺との鑑別が不可能な線維化所見あり。石綿肺であることを否定まではいかないといったところで、上段と下段と分けてございます。それぞれ数につきましては、太い文字、6症例、9症例、3症例、1症例と記載させていただいているところでございます。
あと、それぞれ石綿への曝露の経路でございますけれども、そちらで右側に分けてございまして、一つは、職場で石綿に曝露した可能性あり。それから真ん中でございますけれども、家庭内で石綿に曝露した可能性あり。あと、その他という形で大きく分類させていただいております。
それぞれの症例につきまして、石綿への曝露のヒストリーを括弧の中に記載させていただいております。
あと、注釈でございますけれども、括弧の中、数字で例えば2/2とか書いてございますが、これは脚注にございますように、じん肺法に基づきます「じん肺標準X線フィルム」に従いまして、じん肺X線写真像小陰影を分類してみたものでございます。
あと、あわせて、この検診を受けられたご本人が記入した問診票から、それぞれの呼吸困難の有無につきましても確認したところでございますけれども、この線維化につきましては、1症例、これは左下の9症例の中の一番上のタイヤ製造47年、労作性呼吸困難ありという症例でございますけれども、これを除きまして、すべて呼吸困難なしということでございました。
では、次に進めさせていただきます。3ページ目でございますけれども、(2)胸水でございます。これにつきましては、非特異的な所見でございますけれども、検証対象となりました全138症例のうち、「胸水あり」とされたものにつきましては、以下のとおり5症例であるということでございまして、4症例が職場で石綿に曝露した可能性あり、1症例がその他となってございます。
それから(3)びまん性胸膜肥厚でございます。これも同じく非特異的な所見でございますけれども、同様にびまん性胸膜肥厚ありとされた方々につきましては11症例、それからびまん性胸膜肥厚の可能性ありとされたものは2症例となっておりまして、表のような分布になってございます。
以上、簡単でございますけれども、事務局からの説明とさせていただきます。 - 森永座長 ありがとうございます。まず、線維化の結果からですけれども、ちょっと、わかりにくいところがあるんですけれども。まず、胸膜プラークはあるものの、線維化所見が認められなかったという例が33例あったということなんですが、これをもう少しわかりやすく言うと、岸本先生、どうなりますか。読影した先生方、ちょっと記憶を呼び起こしていただきたいんですけれども、何かコメントはございませんか。三浦先生、どうぞ。
- 三浦委員 私と酒井先生が読影会に参加しましたけれども、これ、胸膜プラークはあるけれど、線維化所見がないというのが33名という、そういう分類ですよね。ですから、よくある話でして、胸膜プラークを、ある班の先生方は、じん肺と仮に判断されたと。だけれども、実際に読影してみたら、胸膜プラークだけで線維化所見はなかったと。要するに、線維化所見125の中に入っていたのが、結果的にプラークだけで、線維化はなかったというのが33例ありましたと、こういう解釈だと。分類したのは私ではないんですけれども、集計されたのは環境省の方ですけれども、私はそういうふうに解釈しております。酒井先生、いかがですか。
- 森永座長 ありがとうございます。酒井先生、それで。
- 酒井委員 特に追加することはございませんけれども。
- 森永座長 それから、この吸気不良の話なんですが、じん肺法では、一応、条件とかいろいろ決めてやっていますよね。岸本先生、それをちょっと説明していただけますか。
- 岸本委員 やはりじん肺法は、電圧とか、ほか、条件を定めて、いい写真を撮って、それで判断するというふうにしております。しばしばじん肺に似た所見が出るのは吸気不良のこともありますので、吸気不良のようなよくない写真でじん肺があるかどうかというのは判断しないということになっております。適切な写真を出していただいて、診断をするということではないかと思いますけれども。
- 森永座長 坂谷先生、コメントはございますか。
- 坂谷委員 いや、同じことでありまして、今回の全国の調査というのは、それぞれの地域で思ったとおり撮影されているわけでありまして、労災の認定の場合のようなきちんとした基準に基づいて撮影されたものでないというのは確かなことであります。
それから、先ほどのことに戻りますけれど、プラークはあるものの線維化所見が認められなかったものも、今回の検診で、権威ある判定のチームで、我々じゃなくて、その現場でのですけれど、線維化ありというふうに読まれたものが33例もあったということで、そのような判断がなされるような現在のこの検診のシステムになっているということを強調したいと、こういうふうに思います。 - 森永座長 ありがとうございます。結局、この一覧表を見ていただきますと、やはり職歴も、それからCTの所見、それから先ほど言った胸部レントゲンの撮影条件等も全部加味をして、総合判定でやっとこの程度という、そういう理解でよろしいですか。なかなか難しいということですよね。
それから、これだけの曝露に関する情報だと、恐らく累積曝露量の推定にまでは至らないですよね。そこのところが非常に難しいですね。
ほかにこの結果について、何かご感想なり、ご意見ございますでしょうか。実際に読影をされた先生方の方から、ご意見を出していただければありがたいんですけれども。 - 坂谷委員 まさしく資料2の1枚目で書かれていますように、線維化等のみ書かれていて、これを石綿肺であるというふうには書いていないのでありまして、石綿粉じんの曝露が職業性であろうが、近隣曝露であろうが、曝露歴があるという人に線維化像が見られたからといって石綿肺というわけではないということを、またこれを強調したいと思います。それで、申しわけない、資料1の第1回の会議の議事概要のところで、総論的事項で、疾病の概念、特発性間質性肺炎[1]、[2]がありますが、石綿粉じん曝露歴のある労働者でありましても、その労働者に特発性肺線維症が生じることもあると。非常にまれということではなくて、そういうものを経験することは、この種のものを見ておりますと、割合あるものだということを私はこの会議のときに言ったつもりなんですけれど、後ほど事務局へお伝えくださいという話でありましたが、ちょっとこの場で申し上げておきたいと、こういうふうに思います。
- 森永座長 それは、そうすると、もう一度、第1回の検討会を踏まえた論点のところに、ちょっと盛り込みたいと思いますので、そういう対応でよろしいですか。
- 坂谷委員 そうお願いしたいと思います。
- 森永座長 参考までに、基本資料集もお手元に置いていただいていますが、8ページの方に、石綿関連疾患等の死亡数の人口動態の一覧推移が載っておりますが、ちょっと事務局の方から、数字がアップデートされているので、説明していただけますか。
- 佐々木補佐 こちら、前回は平成18年までお示ししてございましたけれども、厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態調査」に平成19年度分の数字が出ましたので、こちらをアップデートさせていただきました。すみません、先ほどその点について触れておらず、申しわけございませんでした。
数字はこのとおりでございまして、中皮腫は平成18年よりやや増という格好になっております。それから、気管、気管支及び肺の悪性新生物、いわゆるがんでございますけれども、こちらの方も増加となっております。それから、石綿(アスベスト)及びその他の無機質線維によるじん肺症、これは石綿肺だけでないということになりますけれども、これらについても増加と。それから、そのほかのじん肺関係、J60及びJ62~J65となってございまして、詳しくはまた脚注のところで列記させていただいておりますけれども、こちらの方も増加という格好になってございます。あと、ご参考までに、その他の間質性肺疾患を掲載させていただいております。
あと、この基本資料集でございますけれども、そのほか更新をしているところを、ついでながら、申し上げさせていただきますと、同じ資料の39ページ、40ページ及び41ページ。これは我が石綿健康被害救済制度の認定条件につきまして、昨年の10月より更新してございますので、それぞれアップデートさせていただいております。
特にこの間、法改正も行われまして、未申請死亡に係りますデータを新しくつけ加えさせていただいております。
以上でございます。 - 森永座長 ありがとうございます。基本資料集の8ページの人口動態統計の死亡数を見ていただきますとわかりますように、中皮腫は平成18年から、1,000を上回るようになったということですね。それから、石綿肺が中心だと思いますけれども、J61というのは、死亡統計では2桁だということ。じん肺の死亡数、この中には一部石綿肺も混ざっている可能性もありますけれども、平成14年からは1,000を下回っていると。それに比べて間質性肺疾患というのは、年々増加してまいりまして、平成15年度からは1万人を超えるということになるわけでありまして、間質性肺炎様の陰影というのは、なかなか石綿肺よりは、どちらかというと間質性肺炎の方が圧倒的に多いのだということになると思いますが、臨床の場で、どうでしょうか、こういう印象は大体当たっている、死亡統計はそのままそういう印象なんでしょうか。岸本先生、三浦先生、どうなんですか。
- 三浦委員 確かにそうでして、私は横須賀に長いんですけれども、もうほとんどじん肺の、特に石綿肺の重症な方というのは、非常に少なくなっています。そのかわり、ほとんど日常茶飯事に、間質性肺炎で重症化されている方というのは、ほとんど毎日のようにおいでになります。それが私たちの実感です。
- 岸本委員 私も三浦委員と全く同様でございまして、原因不明の間質性肺炎でも、患者さんの数が増えていることは、この死亡統計を待つまでもなく明らかであろうというふうに思います。
それから、石綿肺というのは、私も過去にはかなり診ておりましたが、亡くなられた患者さんが非常に多うございます。肺がんの合併が非常に多いという印象を持っております。先ほど、坂谷委員がおっしゃられましたように、職業性の曝露があっても石綿肺ではない方がいらっしゃいます。現在、石綿肺というじん肺で管理区分を受けた方で、解剖させていただいた方々を、肺内の石綿小体数だとか、病理学的に検討をしておりますけれども、意外に職業性曝露がありながら、石綿肺ではなかったという症例も、最近経験をしております。鑑別診断が非常に難しい疾患であるということは、私も痛感しているところでございます。 - 森永座長 ありがとうございます。過去には、中には本当に石綿肺であっただろうにもかかわらず、職歴をきちんと聞き取れなくて間質性肺炎にされた例もなきにしもあらずだということも言えると思うんですけれど、今では圧倒的に間質性肺炎の方が多いという臨床の先生方のご意見だと思います。
資料2について、ほかに何かご意見ございますでしょうか。 - 坂谷委員 一つ確認ですけれど、このヘッディングが、石綿関連疾患による死亡数・粗死亡率と書かれてございまして、それで、左側に五つの項目があります。一番下に参考となって、今話題になった間質性肺疾患、これは石綿とは関係ないのも含めた数ですよね。
- 佐々木補佐 そのとおりでございます。
- 坂谷委員 ところで、2行目の気管、気管支及び肺の悪性新生、C33、C34、4万人、4万8,000人、4万9,000人、この数は、我が国における肺がん全体の発生数ではありませんか。
- 佐々木補佐 おっしゃるとおりでございます。石綿による肺がんという形の分類はございませんので、このような形でひっくるめて掲載させていただきました。
- 坂谷委員 ですから、これをごらんになった方が、これは石綿肺がんがこれだけ出ているというふうに誤解されるおそれがある表だと、こういうふうに思うんです。
- 森永座長 そうですね。タイトルをもう少し厳密にした方がいいということですね。どうしましょうか。難しいですね。石綿の関連のある……、難しいな。
- 坂谷委員 ヘッディングはこのままで、欄外の(注)のところに、気管、気管支及び肺の悪性新生物はどういうものを挙げたかということで、石綿関連の肺がんのみにあらずということをコメントで書けばいいんじゃないですか。
- 佐々木補佐 すみません、この点につきましては、工夫させていただきまして、次回にはきちんと整理して、また提示させていただきたいと思っておりますけれども、よろしいでしょうか。
- 森永座長 死亡統計から見た主な関連疾患の年次推移というぐらいの意味ですね。
- 坂谷委員 中身はそうなんですけれど、もう一度言いますけれど、読む人が、うっかりなんですけれど、これを頭に石綿関連疾患と書いてあるものですから、これは石綿肺がんのことのみを言っているんだというふうに間違われる可能性があると、そう申し上げたいだけなんですけれど。
- 森永座長 だから、死亡統計で見たということを頭につけておけば、それがすべてが石綿関連疾患ではないという意味で、だから、死亡統計から見た主な疾患の年次推移ということで。
- 佐々木補佐 そこは、例えば間質性肺炎はこのように参考に書かせていただいていますので、段を変えるなり、もしくは注釈をつけるなり、少しちょっと工夫して、また先生方にこれはご相談させていただきたいというふうに考えておりますが、それでよろしいでしょうか。
- 森永座長 まあ、相談するほどのことでもないとは思うんですけれど。死亡統計だということですよね。
よろしければ、次の今日のメインの課題であります第1回の検討会、それから資料2も踏まえたところで、議論を一歩進めていきたいと思うんですが、資料3に沿って話を進めていきたいと思います。
事務局の方から、それぞれの項目についてご紹介いただいて、議論を進めていくというふうにしたいと思います。よろしくお願いします。 - 佐々木補佐 では、資料3、第1会検討会を踏まえた論点(案)を読み上げさせていただきます。
最初の項目でございますが、1.石綿肺の取り扱いの(1)総論的事項、[1]でございます。疾病の概念、発生し得る集団。本件検討会で議論する石綿肺の疾病の定義としては、大量の石綿への曝露があって、じん肺法に基づく胸部単純X線写真像(石綿肺)の分類が1/0以上のものとしてはどうか。
石綿肺が今後発生し得るのは、過去に職業的に大量の石綿を取り扱った人であり、近隣曝露や家庭内曝露は考えにくいのではないか。
職業的に石綿を取り扱っていた人のうち、労災の対象とならない者として、家内工業、一人親方、事業主があるのではないか。 - 森永座長 この点について議論を進めたいと思うのですが、一番上のじん肺法に基づく胸部単純X線写真像の分類を一応採用してはどうかということなんですが、これは病理の診断でもってするのは現実的ではないと、こういう解釈ですね。井内先生、何か意見がありますか。
- 井内委員 あまねく患者さんたちに、侵襲的な組織検査をするということは、事実上不可能ですので、統一的な何か基準をつくるとすれば、やはり画像診断に頼らざるを得ないというのはやむを得ないところだろうというふうに考えます。以上です。
- 森永座長 ほかにご意見ございませんでしょうか。だけど、本当の意味での確定診断というのは、病理でないとできないということは言えるんじゃないですか。井内先生、その辺はどうなんですか。
- 井内委員 たとえ病理検査があったとしても、それが難しいというのが今の欧米を含めた病理学的な考え方じゃないかなと。ヘルシンキ・クライテリアでは、組織切片状アスベスト小体、外形5センチで2本以上あればというふうなクライテリアがありますけれども、日本の症例を少し見せていただく機会が増えているんですけれども、必ずしも臨床的に画像上、これは石綿肺かもしれないと言われても、組織切片状の所見と合わないんですね。それは、恐らく病理検査をした部位が、画像での所見が出ている部位と一致しないとか、数々の問題点があるわけですね、組織検査で診断をつけるということになりますと。ですから、そういういろんな意味ではバイアスというのですか、我々がいつも悩む、とられた場所が適切であるか、あるいは標本のつくり方が適切であるかということも含めて考えると、なかなかこういう所見があったら石綿肺でありますというふうに病理学的に決めていくこと自身は、大変困難であるというふうに言わざるを得ません。古典的な石綿肺というのは、例えば南アフリカの鉱山労働者の所見というのは大変有名でありますけれども、そのような所見が典型的に見られるものは、非常に日本では少ないというふうに今考えております。以上です。
- 森永座長 ありがとうございます。次の点なんですけれども、どうでしょうか。少なくとも資料2にありますように、資料2の検証の結果では、近隣曝露の例はなかったと、こういう判断でよろしいですよね。
それから、3番目の点ですが、これが石綿肺を入れた場合の対象になり得る人たちだという、そういう考えで、これも別に議論はございませんでしょうね。
では、[2]の方をお願いします。 - 佐々木補佐 [2]特発性間質性肺炎、特発性肺線維症などとの鑑別。
石綿肺と特発性間質性肺炎などとの鑑別は、臨床像、病理所見、画像所見からでは非常に困難であり、鑑別には大量の石綿への曝露の確認が重要である。
特発性間質性肺炎などは一般に比較的速やかに進行する点が石綿肺と異なるが、経過のみで石綿肺と鑑別診断することは困難。 - 森永座長 この点について、画像からはどうでしょうか。特に審良先生、酒井先生、追加のコメントはございますでしょうか。
- 審良委員 画像的には、特発性間質性肺炎が一番難しいと思うんですが、それ以外にも、慢性の過敏性肺臓炎とかもかなり鑑別が困難じゃないかと思います。間質性肺炎全体が鑑別に入るんじゃないかなと。やっぱり、結局、もっと総合的に、曝露歴以外にも膠原病肺とかの除外のためには、血液のマーカーとかも総合して判断しないと、ちょっと不可能じゃないかなと思うんですけれど。
- 酒井委員 基本的には、間質性肺炎、肺線維症の診断というのは、画像だけでも無理ですし、病理だけでも難しいですし。それから、今、審良先生がおっしゃられたように、総合的に相当詰めていかないと、原因までつかまえるということはほとんど不可能ですので、基本的には画像所見だけで、それが石綿によるものということは画像だけで決めることはできません。ですので、吸入歴というのは石綿の場合には非常に大事な、一番大きなファクターになってくると思います。
- 森永座長 そうしますと、特発性間質性肺炎等というふうに書いてありますけれども、特発性をとってもいいわけですね。
- 酒井委員 ええ。その他の膠原病肺とか、いろんなことで間質性肺炎は起きてきますので。
- 森永座長 ですから、むしろ間質性肺炎の中から石綿肺を見出すのが難しいと。
- 酒井委員 そう思います。画像だけで判断するのは難しいと思います。
- 森永座長 そういうふうに言った方がいいんですか。間質性肺炎の中から石綿肺を見つけるのが難しいと。やっぱり鑑別という言い方の方が正しいのですか。
- 岸本委員 そのとおりだと思います。鑑別が難しいということではないかと、私も思います。ここには「特発性間質性肺炎は比較的速やかに進行するが」と書いてありますが、石綿肺でも速やかに悪くなる症例を最近私も経験しておりますので、臨床経過が亜急性だから石綿肺でないということも言えないということです。今、審良先生や酒井先生がおっしゃられましたように、総合的に判断をしなきゃいけないということになると思います。となると、やはり石綿肺というじん肺は、高濃度の石綿曝露があったというエビデンスが一番大切になるのではないかということになります。先ほどの家内工業だとか、一人親方だとか、こういう方々でなければ石綿肺にならないのではないかというふうに私は思っております。
- 森永座長 先ほど、吸気不良の問題がありましたので、その話もきちんと入れなければだめじゃないんですか。どこに入れたらいいですか。
- 岸本委員 ですから、基本的に石綿肺かどうかというのは、じん肺法で言うPR1/0というのを参考にすればいいのですが、参考資料として胸部CT、HRCTの画像も十分参考にすれば、吸気不良のような読影には適切でない写真はルールアウトすることができます。胸部CT所見と照合すれば、明らかにこれは吸気が不良だということがわかりますから、基本的に診断基準には、じん肺法で言うPR1/0というのを参考にして、必ずHRCTを含めた胸部CTを参考に診断をするというふうにしてはどうでしょうか。
- 森永座長 わかりました。そして、それは(2)の[3]の方に改めて出てきますので、そこでもう一度議論することにしましょう。
それから、たばこの肺の問題もあるんですけれども、酒井先生、一言お願いします。 - 酒井委員 たばこはご存じのとおり、肺気腫とか、いわゆるCOPDもつくりますけれども、最近だんだん、たばこそのものが肺の線維化を起こすのではないかという議論が強くなってきまして、たばこそのもので肺気腫も起こすし、線維化も起こすということがだんだんわかってきました。最近こういう喫煙者に見られる間質性疾患自体を、喫煙関連間質性疾患としてとらえようということがいろいろ議論されております。線維化に関してもたばこの影響はかなり大きい可能性が高いというふうに今は考えられていると思います。
- 森永座長 ありがとうございます。ほかに何かございますか。
- 坂谷委員 放射線科の先生に、審良委員、酒井委員に確認ですけれど、職歴とか曝露歴は隠してあって、正面像とCTのデータだけで、我々でも肺線維症があるということはわかる程度のCTで、これはかなりの確率をもって石綿肺であると言えるというふうな所見というか、ありますか。
- 酒井委員 いわゆる気道中心性に起きてくる線維化というのは、石綿肺を疑う根拠になりますけれど、それはあくまで気道吸入物質に対して反応を起こしてきたというだけで、原因が石綿であると診断するということはなかなか困難な例が多いと思います。審良先生、いかがでしょうか。
- 審良委員 同感です。
- 森永座長 ありがとうございます。要するに、なかなか石綿肺というのは、診断は非常に難しいと。先ほどもございましたように、プラークがあると石綿肺というふうにオーバーにとりがちだということもありますし、非常に難しいということだと思います。
そういう現実が一方であるということを踏まえて、(2)の方に次の議論を進めたいと思います。事務局、よろしくお願いします。 - 佐々木補佐 (2)石綿肺を指定疾病に加えた場合の判定基準に係る課題。
[1]基本的な考え方。現行の指定疾病である中皮腫、石綿による肺がんについては、悪性腫瘍であり、予後が非常に悪いことが迅速な救済を要する理由の一つであった。石綿肺はこれらと異なり、予後の悪い疾病でないことをどう考えるか。
ページ変わりまして、石綿肺であるか否かとその重症度の判定については、少なくとも大量の石綿への曝露、画像所見、呼吸機能検査所見が必要になるのではないか。
この際、一時点のみの所見では判断困難であり、例えば複数時点の画像所見等により経過を確認することも必要ではないか。 - 森永座長 なかなか難しい問題が次から次へ出てくるんですけれども、この点、どうかご意見をお願いします。皆さんの呼吸機能検査が必要だという意見、これは皆さん、賛成になりますよね。ですけれども、呼吸機能検査、これはどういうやり方でという何か提案はございますでしょうか。難しいですね。
- 坂谷委員 旧労働省の方、今の厚生労働省の方の仕事になりますけれど、管理区分の判定には、呼吸機能検査が使用されます。スパイロメトリーによる一次検査と、血液ガスによる二次検査がございますけれど、一次検査のスパイロメトリーは、その検査を受ける人の意思によって、そのときそのときでデータが違うことがあり得る検査ですし、わざとその患者さんが低く一次検査機能結果を悪く出そうと思うと、できる検査であります。でありますから、行政的にそれをもって判断するということになっていますけれど、私個人的には、非常に問題であるなと。それを金科玉条のように、その値でもって、特に1回だけの検査でもって判断するのは危険であると。二次検査である血液ガスの値の方がまだましかなと、こういうふうに思っております。三浦先生、どうでしょうか。
- 三浦委員 一次検査の換気機能ですね、これは非常に、検査する側もトレーニングが必要なんです。それから、繰り返し同じデータが出るということが大前提なんですけれども、患者さんによっては苦しい検査なものですから、やっぱり繰り返しやるというのも苦痛を伴う場合もあります。ですから、これは非常に難しいのですが、ほかにないので、やはりこれが一番どうしても必要ですけれども、じゃあ、その検査はやっぱりどこでやってもいいかというと、やはりトレーニングを積んだ検査する方がおられるところで、きれいなデータが、再現性のあるデータが得られるというのは、まず一つ大事だと思います。
それからもう一つは、肺機能、二次検査で今、血液ガスだけなんですけれども、最近は、特発性間質性肺炎のグレード分けのときに使われるデータとして、6分歩行、要するに歩いていただいて、要するにヘモグロビンという赤い色素の、酸素は何%くっついているかとか、正常は100%に近いのですが、それが歩きますと下がってきますので、それが下がる場合には、安静時の血液ガスのデータがそんなに悪くなくても、1ランク上げましょうというような判断基準がありますので、その辺をあわせて使えば、もうちょっと客観的な指標になるのではないかと、私自身は考えております。むしろこちらの方は、患者さんの意思とは無関係にやっぱり悪くなりますので、これはかなりいい指標になるのではないかと私自身は今考えています。 - 森永座長 ちょっと日本呼吸器学会の肺機能の方は、今どういう状況になっているんですか、呼吸器学会の先生方にお尋ねします。マニュアルが出ていますよね。
- 三浦委員 今までの肺機能検査の正常値といいますか、比較対象は、日本人ではなかったですね。ですから、日本人とかなりかけ離れたデータ結果があったんですけれど、今、日本呼吸器学会で出している標準値というのは、これは日本人のデータをもとにしてつくられたものですので、かなり日本人に合っています。割合新しい機械は、それを標準値としてコンピュータに組み込んでいる機械があるんですけれど、昔の機械は、それはコンピュータに組み込まれてないので、今、両方、二重に進行しているというのが現実だと思います。
- 森永座長 肺機能検査のマニュアルも出ていますよね。そこに今までのじん肺法で言うところの肺機能検査のやり方の細かいマニュアルも書かれているんじゃないんですか。実際は、そういう形でやられているんですか。
- 三浦委員 要するに、肺機能検査の仕方については書いてありますけれど、じん肺法のあのデータが入っていた記憶は余りないですけれど、ちょっとこの二、三年は余り見ていないですね。出たのが、今からちょうど3年半ぐらいですよね、たしか。たしか3年だかちょっとで出たので、その最初のときに、私見たんですが、そのときには、じん肺ハンドブックに載っかっているあのデータはなかったと思います。
- 森永座長 呼吸機能検査の成績を使うにしても、いろいろ課題があるというお話だと思います。
次の[2]の方をお願いします。 - 佐々木補佐 [2]石綿曝露の証明方法。鑑別のため、大量の石綿への曝露を確認することが必要となるのではないか。
BAL(気管支肺胞洗浄)やVATS(胸腔鏡下肺切除術)による石綿小体などの医学的資料があれば、これを評価してよいのではないか。一方で、検査や手術には一定のリスクがあることから、標準的な方法として全例に求めるのは困難ではないか。 - 森永座長 この点については、ご意見ございますでしょうか。
- 神山委員 BALとかVATSで石綿小体を見るというのは、文献などでも幾つかありますけれども、それから曝露の証明というので、職業歴、これも非常に大事で、石綿肺が高濃度の曝露によって起きるということで、余り低濃度では起きないという、そういう定性的な言い方では大体の人が認めると思うんですけれども、まず、職歴をこの場合、どのように客観的に証明していくかという、あるいはご本人か家族の方の職歴申請で、職業歴ありとする。あるいは何年ありとするか、どういう職業で、どのくらいの曝露のレベルがあるかという、大ざっぱなことは大体わかるかもしれませんが、それを客観的に証明せよというと、なかなか難しい面もあると思います。そういう問題をはらんでいるのが一つあります。
それから、BALやVATSで石綿小体というのも、外国及び日本でも過去にかなり例が少数ながらあると思うんですが、一般的には、石綿肺であれば、一定面積当たりに石綿小体が幾つあるという、普通、そういうことを言いますけれども、それはそれでいいんですが、逆に、どこのレベルまで下がっていったときに、この場合、救済法で石綿肺とそのデータだけで認定するのかというと、それもなかなかカテゴリーをつくるのは非常に難しい面があると思いますので、先ほど言いましたように、職業歴であるとか、あるいは今まで議論されたと思いますけれども、画像所見であるとか、肺機能、そういうものと組み合わせた上での石綿小体の扱い方というふうにしていかないと、石綿小体1個だけで、例えば肺がんのリスク2倍を証明するような形で、ばしっと線が切れるかどうか、そこまでのデータの現在積み上げが、外国も含めてあるかどうかということを聞かれます。ちょっとデータ不足のような感じもあるかなというのが現状だと思います。 - 森永座長 BALの普及の問題も、後でまた議論をしなければならないとは思うんですけれども、少なくとも臨床の現場で、このBALの問題というのは、どういうふうにあるんですか。ちょっと臨床の先生方から発言をお願いしたいんですけれど。
- 坂谷委員 また学会の話に戻りますけれど、これが関係ありますのは、今のテーマに関してでは、石綿肺に関しては、産業衛生学会であるとか、そういうところになると思いますけれど、BALそのもの、肺胞洗浄という単語では、一番関係あるのは日本呼吸器学会だと思います。今度の学会の折りに、BALの標準的な方法、それからその中に含まれる液性成分、可溶性成分、それから非可溶性成分、固形成分についての分析の仕方、それには石綿小体も加わるわけですけれど、そういうものをどういうふうにして検出するかという標準的なマニュアル、方法を定めましょうということになってきております。それで、余計なことですけれど、それをまとめていく役をやっております。今は当院のびまん性肺疾患のチーフである井上君が、その学会の中での委員長というふうな役目になっておって、ここ1年の間に取りまとめをしないといけないと、こういうことになっておるはずであります。以上です。
- 森永座長 じゃあ、今マニュアルは作成中であると、こういう理解でいいわけですね。
- 坂谷委員 そうです。
- 森永座長 これがなかなか普及しないという理由は、どうなんですか。
- 坂谷委員 一つは、すべての人に簡単にできるものではなくて、気管支鏡をやりながら、それにプラスアルファで生理的食塩水を指定の量を肺胞内に注入をして、回収をしてという作業がありますから、患者さんに対して、ある種の負担をかけるわけですから、納得をいただかないといけませんし、もちろんそれによる副反応といいますか、副作用があっては困るということでありまして、それを安全にやる方法を含めて検討が必要なステージにあると、こういうふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
それから、呼吸器学会でありますけれど、井上先生に言ってありますのは、産業衛生学会であるとか、石綿肺、それから中皮腫云々をやっておるグループと密接に意見を聞きながら、そのテクニック的なことは、マニュアルは決めるようにというふうに申し入れはしてあります。 - 森永座長 要するに、重症の患者さんにはなかなかできにくいということですか。ちょっとその辺のことを、臨床の先生方、もう少し発言をお願いします。
- 岸本委員 石綿肺は肺線維症でありまして、肺線維症の方に気管支肺胞洗浄をやっても鑑別診断等にはならないということと、今、坂谷委員がおっしゃられましたように、これをやることによって、間質性肺炎が急性に増悪したり、その肺胞洗浄をやった後に合併症として肺炎が起こったりということで、もとの病気が悪化する可能性がございますので、やはり患者さんにとってメリットがあるかどうかを考えてやらないといけない検査ではないかと私は思っております。石綿肺かどうかという鑑別に、気管支肺胞洗浄を行うことによって、果たして診断できるかどうかというところに問題があるかと思います。
肺がんの場合は、肺がんのリスクを2倍にする基準として、BAL液1ミリリッター当たり5本というのがございますけれども、先ほど神山先生がおっしゃいましたように、石綿肺については、肺内の石綿小体数が何本あれば、石綿肺であるという基準になるデータが出ておりません。実際、私どもも剖検肺を使いまして、肺内の石綿小体の定量を行っています。多い例では237万本あった方もいらっしゃれば、少ない方でありますと8,000本というような方まで出ていまして、非常に幅が広いということができます。けれども、たったの25例で物を言うことはできません。BALをやって石綿小体が一体何本出ればいいのかという、その基準がない現実を十分に考慮して考えておいた方がいいのではないかなと思います。それと危険性がある検査であるということも、十分認識をしておいた方がいいのではないかと思います。 - 森永座長 三浦委員も同じような意見ですか。
- 坂谷委員 ただし、石綿肺の診断において、画像、それから病理所見であろうとも、難しい点があるということは、今までの議論で出たわけです。しかも、それが画像は特にそうですけれど、物的証拠がどうかということになるわけで、私個人的には、この石綿小体がすべてではないですけれど、石綿に高濃度に曝露したという物的証拠の一つであろうと、こういうふうに考えます。だから、岸本委員がおっしゃったように、現状でこれを即刻診断に簡単に使えるというものではないですけれど、石綿小体の計測を正規にやって、これでもって判断ができるようにしていくという視点で考えるのがよかろうかと、こういうふうに思うんですけれど。
- 森永座長 早期の石綿肺の患者さんにやる場合は、それほど危険性はないと考えていいんですか。岸本先生、どうですか。
- 岸本委員 早期というのを、どれを早期にするとかというのが、これは難しいんですよね。病理学的に石綿肺は、ステージI~IVまでありますが、顕微鏡的な石綿肺なのか、画像でいう、例えばPR0/1という石綿肺なのか1/0なのか。
- 森永座長 いや、一応、1/0と考えて、1/0、1/1。
- 岸本委員 やはり1/0といえば、十分線維化がありますから、私はそれは決して安全だというふうには言えないのではないかと、個人的には思っております。
- 三浦委員 やっぱりBALをやって怖いのは、ごく最近、大体定説になってきた、この数年ですよね。一、二年の間に定説になってきたんですけれども、やはり特発性間質性肺炎に代表されるような急性増悪というのが起きるきっかけになり得ると。それは、ですけれど、やっぱり軽いやつは、そこまでは来ないと思うんですよね。だから、やっぱりBALをやるときには、ある程度のリスクがありますという説明をした上で、またやるということを前提としますと、やはり、これである程度の石綿小体が得られれば、これは一つの証拠として使えるのではないかと、逆に。すべての患者さんにやるということではなくて、これをやった患者さんについては、これが石綿曝露を、大量の曝露をどこに線を引くかはまだデータはないので別ですけれども、大量に出てくれば、これは石綿曝露の証拠となることは事実ですし、ヨーロッパを中心に、かなりBALをやられていますから、そこでそんなに日常茶飯事に急性増悪があるという話は聞いていませんので、ある程度参考に私はなると思います。
- 森永座長 問題は、一人親方の方とか、家内工業の方というのは、毎年検診を受けておればいいんですけれど、受けていなければ、進行してからでないとお医者さんにかからないですよね。そこのところが労働者で石綿を扱ってきた人は、ある程度早期にはつかまえられるけれども、こういう方たちは、そういう早期に把握ができないわけですから、そこのところから考えないと、これはどうしようもないんじゃないかなと思うんですけれど、どうなんでしょうか。
- 岸本委員 座長のおっしゃるとおりだと思います。ごく早期の方は、結果的には病院にも来ませんし、自覚症状もないわけです。ですから、何かあって、症状が出てということの方が多いのではないかとは思います。ただ、そういう方々を対象にどんどん検診をやって、早期のものを見つけるということであれば、またこれは別ですけれども。早期の方を見つけても、労災と一緒で、この方々を救済するかというと、またこちらの方も問題が出てきます。救済の対象になる方は、どうしてもある程度以上進んだ方が対象となるのではないかなというふうに、私は漠然と思っています。
- 森永座長 難しい話ばっかりで申しわけないんですけれども、これ以上……。議論は次の方の[3]の方へいきましょう。
- 佐々木補佐 [3]線維化、重症度の評価方法。線維化の有無及び程度について、胸部単純X線写真(じん肺法と同等)を基礎としつつ、補助的に胸部CT写真(HRCTを含む。)を活用してはどうか。
重症度の評価の一つとして、呼吸機能障害を評価してはどうか。 - 森永座長 じん肺法と同等というのが、ちょっと意味が理解しにくいところもあるかもわかりませんけれども、じん肺法と同等というのはどういう意味なのか、ちょっと坂谷委員、岸本委員から説明をお願いします。
- 坂谷委員 いや、こういうふうに書かれた理由というのは、ちょっと分からないですけれど、対象者が労災で拾ってさしあげられない職種の方、家内工業的な方、一人親方、事業主であるから、本来は労災でカバーしてさしあげればいいんですけれど、それを環境省の方で拾ってあげようというときには、ダブルスタンダードではいけませんから、じん肺法と同等の基準でもって拾おうということで、その程度、線維化の程度はじん肺の方では、以前は直接撮影でありましたけれど、最近ではデジタル撮影でもよくなりましたが、それも含めて、あくまでも単純X線写真で判断するということになっていますから、それを強調して書かれているのだと思います。ただ、労災の方では、そのCT写真が必ずしも必要であるということにはなっていないんですけれど、単純写真だけでいいということになっているんですけれど、環境省の方では、それよりはより積極的にCT写真を使いましょうということを、補助的に云々というところへ書いたと、こういうことだと理解しますが、いかがでしょうか。
- 森永座長 まだ、もう少し補足があると思うので、岸本先生、先ほどの条件という話も含めて、追加をお願いします。
- 岸本委員 重症度の判定というのは、じん肺法でいうPR1型、2型、3型という、写真の進行度も含めてというふうに私は実は思ったわけです。
それから、先ほどの鑑別のときに申しましたけれども、審良先生がお書きになっていらっしゃるように、ある程度、特徴的な所見がHRCTを見ればわかるということなので、鑑別のときに、HRCTを見るということかなと思います。PR1型と3型と比較した場合、もちろん3型の方が進んでいるんですけれども、重症度を見る場合には、レントゲンだけでは必ずしも呼吸困難を評価できないということで、じん肺の1型、2型、3型と呼吸機能障害、この両方で見ていくというじん肺法でのやり方を踏襲して、どのくらい進行して、呼吸困難度が重症な方を救済するかというふうに考えていくというような、そういうやり方かなというふうに思いました。 - 森永座長 もう少し踏み込んで、意見ございませんか。
- 坂谷委員 じゃあ、こんな話はどうでしょうか。単純レントゲンでもCTでも、肺の線維化があって、石綿肺だと思われると。そこまではいいんですけれど、労災の方では、一定の量以上でないと、標準フィルムというのがあって、1型以上のものを行政的には石綿肺として認めると、こういうことになりますけれど、そういうふうなこの程度以上を、逆に言うと、基準のフィルム、この写真以上のものをそうしようということだろうと思います。
それと、CT写真の使用の仕方ですけれど、岸本委員がおっしゃった以外に、胸部単純のレントゲンで、いかにも1型以上の曇りがあるように見えて、実際、CTを撮ってみますと、線維化はないというふうな症例も実際あるわけでして、そういうふうな困難を解消する意味も、CT写真の利用の中にはあると、こういうふうに思いますけれど。 - 森永座長 じん肺法と同等というのは、要するに、石綿肺については、今までからやられてきているわけですよね、じん肺審査医が。
- 三浦委員 じん肺の場合には、もう最終的に地方じん肺審査医で、最終決定がなされるわけですよね。多数の症例も見ておられますし、ですから、実際に診断に当たっては、最終的にはそこで診断して、そういう審査会があって、そこで診断していただくのが、私はベストだと思うんですね。ちょっとこの重症度の評価方法に当たるかどうかは、ちょっとわかりませんけれども、結構、一番最初に診断される先生の判断というのは、結構まちまちですから。特に日本では余り標準的な訓練をじん肺は受けていないですよね、アメリカみたいに。ですから、逆に経験の豊富な先生方がきちんと最終的に判断していただくと、画像を見て。それが一つ大事なのかなと思います。
- 坂谷委員 もう一つ、中皮腫のときにも議論がありましたけれど、患者さんによっては、厚生労働省と労働基準局と、それから環境省に両方に出す場合がありますよね。それを教訓にして、石綿肺であるということ及びその程度の判断をどこか1カ所でやる方が正しいというか、ダブルスタンダードでなくて済むのではなかろうかということを考えられると、こういうことを思います。すなわち、環境省で最終的に判断をするわけですけれど、それのスクリーニングといいますか、線維化の有無及び程度については、じん肺審査医の方を使ってはどうかと。というのは、労災では拾ってさしあげられないんですけれど、主に職業性の曝露によって起こった障害であって、石綿肺であると。医学的には区別はないわけですから、その判断は統一されておるべきであると、こういう考えもできるかもしれませんし。
- 森永座長 その点については、労働衛生課の方からも来ていますから、よく相談をして考えていただきたいなと、今、私の座長の個人的な意見なんですね。皆さん、どう思いますか。よく相談してもらわないと困りますよね。
- 岸本委員 坂谷委員がおっしゃられているように、一人親方や家内工業の方々も、労働者の方と同じ石綿肺の画像を呈していることは間違いないということです。そういうことになりますけれども、地方で行うのか、中央でやるのか、そういうところも含めて、十分検討されたらどうかなというふうには思います。けれども、こういう方々、そんなに多いわけではないと思いますので、東京で今、中皮腫の審査をやっているわけですけれども、そちらの方で、より専門的な先生が見て診断をするというようなことの方がいいのかなと、私は思います。
- 森永座長 私もそう思うんですけれども、議論、この論点メモは、とりあえず今日は石綿肺については議論はしましたので、それはまたまとめてもらうということで、これからまだ課題がたくさんあると。石綿肺を指定疾病に加えるのであると、非常に課題がいっぱいあると。早くしろという、いろんなご意見もございますけれども、今日議論がありましたように、いや、そう簡単になかなか入れるようなものではないんだということでありまして、迅速な救済にはつながらないのはいたし方がない。むしろ中皮腫と肺がんについては、大変な努力で救済の指定疾病に入りましたけれども、石綿肺については、医学的には非常にたくさんの課題があるんだということであります。
今日は石綿肺の話を中心にしたいと思いますので、環境省の方もいろいろ調査とかをやっておられたり、調査の研究を考えておられるようなので、ちょっと論点のところを外れまして、今年度と来年度の環境省の方の調査のことについて、資料も用意してあるので、お話を聞きたいと思います。
事務局の方、資料説明をよろしくお願いします。 - 佐々木補佐 はい。それでは、資料の4に基づきましてご説明してまいりたいと思います。
本年度のこの検討会に関連の深い調査としまして、いわゆる文献調査事業と、それから海外調査事業と2点ございます。それぞれについて簡単にご説明申し上げます。
まず、文献調査事業でございますけれども、資料4の一番最初の紙でございますが、背景、事業目的は、そこにございますように、石綿曝露による主な健康被害としては、中皮腫や肺がんのほかにも、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚といったものが挙げられると。これらにつきましては、職業性の曝露によって発症すると考えられておりまして、いわゆる一般環境経由の曝露を主な要因として発生するか否かについては、必ずしも明らかでなかった。そういうことから、本調査では、いわゆる一般環境経由の石綿曝露が関与した可能性のあるこれらの疾患について、事例の報告を含めた医学的知見を得ることを目的として調査を行いました。
具体的手法でございますけれども、MEDLINEとか主だった検索のサイトを使いまして、文献検索を通じまして、国内外の文献を網羅的に収集し、現在、取得した情報の解析及び整理を行っているところでございます。
現在、その内容について、先生方に精査をいただいているところでございますので、本日は、その中身までをちょっと紹介できませんけれども、一応、対象となった文献数についてご紹介申し上げますと、その表にあるとおり、石綿肺についてはざっと4,000。それから、喫煙による線維化がざっと800、良性石綿胸水が1万、びまん性胸膜肥厚が500弱といった形で、これらは文献のタイトル、それからアブストラクトまで収集したもの延べ数でございまして、これらをもとに、現在医学的知見をレビューしていただいているとともに、特にいわゆる一般環境経由の石綿曝露が関与した可能性のある、そういった事例報告等につきましては、詳細な記述を先生方にお願いしているところでございます。
お取りまとめいただいている先生方、代表的に、石綿肺については坂谷委員、良性石綿胸水については岸本委員、びまん性胸膜肥厚については三浦委員にお取りまとめいただいております。
このほかの先生方、ここには掲載してございませんけれども、総勢12名の先生方に、鋭意取りまとめをいただいている、そういう状況でございます。
続きまして、海外調査の方でございます。お手元、ちょっと大きなA3の紙でございますけれども、横表の方をもとにご説明申し上げたいと思います。
これにつきましては、タイトルにございますように、非職業性の曝露による石綿健康被害者救済制度を有すると、そのように我が方が承知しているフランス、オランダ、ベルギー、イギリスについて調査を行ったものでございます。
これまでもある程度調査をしてまいったところでございますけれども、今回特に医学的判定の部分にフォーカスを当てて調査を行いました。そして、現地で制度を所管する担当の方々などへのヒアリングや、署名での確認などを通じて取りまとめしたものでございまして、このヒアリングにつきましては、本検討会の委員でございます井内先生にご同行をお願いしたところでございます。
対象疾病については、表のとおりでございまして、フランスはあらゆる疾患、ベルギーは中皮腫プラス石綿肺、オランダ、イギリスは中皮腫という形になってございます。
それから、表中、申請から補償決定までの手順については、大体、各国ほぼ共通してございまして、申請者が制度を所管する基金等に申請する際には、医師の診断書を添付するといった格好をとってございます。
あと、(2)で、ごく簡単でございますけれども、労災制度との関係。一言で言うと、労災制度で補償されない被害者に対する救済をやっているという、棲み分けについて整理をさせていただいているところでございます。
それから、2枚目の方に入らせていただきまして、こちらでは医学的判定方法について、その実施主体、それから判定方法、これらについて表でまとめさせていただきました。
この医学的判定の実施主体でございますけれども、基本的には制度を所管する組織の担当部門のほか、外部の専門家のグループ、こちらに判定を依頼して、決定しているということが多いようでございます。特に中皮腫につきましては、全国から選ばれました複数の病理の専門医の方々にいきまして、やはり病理学的に診断をするということがメインに置かれているようでございます。
なお、オランダにつきましては、病理学的に資料がそろわない場合には、別の専門家グループ、すなわち呼吸器の専門家の方々でございますけれども、そちらの方で臨床情報だとか曝露歴、それから画像といったものをあわせて、総合的に判定しているようでございます。
それから、ベルギーについては、病理を主体として、臨床や画像も使用しているといったところでございました。最終的な決定は、これらのメンバーによります合意だとか、もしくは投票による多数決方式などをとっているようでございます。
これらを見ますと、中皮腫については、非常に我が国の現行制度と似通っているなという感じを受けております。
あと、中皮腫以外につきましては、フランスでは中皮腫、プラークを除きまして、医学的に因果関係に疑義が生じた場合には、申請者の石綿曝露の状況について別途審査を実施しているようでございます。また、ベルギーは、石綿肺を対象としてございますけれども、これにつきましては、画像、石綿曝露歴、石綿小体数によりまして判定を行っているというところでございます。
詳細は省かせていただきましたけれども、全体としてこのような状況になってございます。いずれにしましても文献調査、それから海外動向調査、本年度でどこまでまとめるか、これからまた精査をして、資料も未定稿となってございますけれども、まとめていきたいとは思いますけれども、来年度も引き続き、知見のフォローをしていきたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。 - 森永座長 ご説明がありました資料について、ご意見ございますでしょうか。資料4ですけれども、私の方から担当の先生方にかわって釈明させていただきますと、文献レビューの委託が今年になってスタートしていますので、なかなか一生懸命やっていただいているんですけれども、取りまとめはそういうことで時間がかかっているということでありますので、今回の検討会には、ちょっとそこまで間に合わなかったと。何分にも契約のスタートが遅れたので、作業も遅れているということでございますので、そういう点をお含みおいていただきたいというふうに思います。
資料4は、私からはそういう釈明の話ですけれども、ほか、この諸外国の状況についても、何かご質問ございますでしょうか。ちょっと私、事務局が、「我が国は諸外国と似ている」という発言がございましたが、「似ていない」というふうに訂正してほしいと思うんですけれども。つまり、中皮腫の診断は専門機関が行っているのであって、行政機関が行っているのではないということが決定的に違いますので、そのところは後で井内委員の方から説明があると思いますけれども、そこはちょっと違うというふうに、私は指摘しておきたいと。
ほかに意見ございませんでしょうか。 - 神山委員 この横長のですけれど、ベルギーで石綿肺、BALとか、あるいは肺組織で、石綿小体も含めて判定を行っているという記載があるんですけれども、そのほかの国では全くないのでしょうか。この辺はちょっとお聞きしたいんですが。
- 佐々木補佐 そうですね。今回対象としましたこの4カ国について調べた限りでは、そもそも石綿肺をいわゆる救済の対象としているという点で、ベルギーと、あとフランスぐらいしかないんですけれども、これについては、ベルギーしか把握できていないところでございます。
- 森永座長 ちょっとそれも私の方から説明を加えさせていただきますと、職業基金がアスベスト基金も兼ねてやっていると、ベルギーは。今のところ、労災でカバーできない人たちの石綿肺を対象にしてるのはベルギーだけだと。ベルギーはご存じのように、BALを積極的にやっているお国柄ですので、そういうのも入っているのと同時に、石綿肺の診断については、やっぱりリライアブル・ヒストリー・オブ・エクスポージャーという言い方で、かなり職業歴も参考にしているし、累積曝露も参考にしているという話です。
ほかに何かご意見、ご質問ございますか。
なければ、井内委員の方から、この間見てきたところの説明を簡単にお願いしたいんですけれど、よろしいですか。 - 井内委員 今日の検討会の主題が石綿肺なので、少し視点がずれてしまうかと思うんですが、今回、4カ国を回ってきまして、私が特に今担当しております中皮腫の病理診断ということがどのようになされているかというのを見てまいりましたし、実際体験してまいりましたので、そのことだけを簡単にご報告しようと思います。
2月にフランス、オランダ、ベルギー、イギリスと、駆け足で回ってまいりました。実は、パネルという実際に行われている診断作業に、フランスとベルギーでは参加することができまして、そこで直接、どのような作業が行われているかということを体験することもできました。
イギリスについては、そういう組織がありませんので、行政的な取り扱いだけを聞いたと。それからオランダに関しては、少し時間が足りなかったので、病理医と話をしたというだけに終わりました。
フランスの場合ですが、これは先ほど森永委員長のお話がありましたように、直接、今、日本でやっているように、環境省の委託を受けた判定会ということではなくて、この判定には、Mesopathグループというのが関与しているわけです。フランスを代表する病理専門医が13人集まりまして、そこで診断を、ディスカッション顕微鏡を用いて直接議論をしながら、病理医だけで決めているという実態を見てくることができました。
それと、病理診断というのは、先ほどもちょっと出てきましたけれども、必ずしもオール・オア・ナッシングではないんですね。これは中皮腫である、ないということを決めてしまうのには大変無理があるわけで、その部分をcertainとかprobableとかuncertain、excludedというふうに程度分けをしているというのが、日本とはちょっと違うと。それで、病理が一応見まして、その病理学的な知見から診断がつかない場合に、臨床グループに委ねるという二段階方式になっていると。あくまで、一番下に書いてありますFIVAという石綿被害者補償基金の委託で、Mesopathグループというのは独自に動いている。その間には協力協定があるというふうな形で運営をされております。
フランスの場合は、そのMesopathグループが診断をした例については、そこのThe French National Mesothelioma Surveillance Program、PNSMという登録制度がありまして、これはフランスの人口の約3分の1をカバーしている、代表的な県を、被害者の多い県が全部カバーされているわけですが、そこの罹患率、死亡率を出しまして、それで全国値を推計するというようなやり方をやっておりますが、そのサーベイランスのプログラムに載っている症例のすべての組織標本というのは、このMesopathグループで確認するというような作業も同時に行われているということであります。
オランダは、中皮腫の発生数というのは、年間四、五百でありますけれども、ここにも一応病理診断パネルというのが、5名で構成されております。ただし、フランスと違いまして、全例を集まって討議するというのではなくて、前もって病理診断のチェックというのが2名の病理医で行われていると。それで、そこで問題のある症例を中心に、集まって合議をするというふうなやり方でありました。病理診断のない例とか、臨床所見しかないというふうな症例は、その下に書いてありますように、NVALTという組織が別にございまして、これはオランダのPulmonary Society、日本で言えば呼吸器学会ですね。大体450人ぐらいの組織ですけれども、そこから選ばれた13名の専門医というのがいまして、その人たちが中皮腫ワーキンググループと呼ばれていて、そこに付託をして診断をしてもらうというふうになっております。ですから、ここでも、まず病理医による診断が先行していて、それが難しい場合には、臨床医の判断に委ねるという二段階方式になっているというふうに理解されます。
それから、ベルギーにはベルギー中皮腫パネルというものが存在いたします。これもAFAとそこに書いてあります石綿被害者補償基金からの依頼によって動いている、ボランティア的な病理医の集まりでありまして、9名の病理医から成っております。9名はどうやって選んでいるかというと、ベルギーには四つの国立大学があるようで、そこの病理学教授の代表病理が1名ずつと、それから主要医療機関、五つのそれぞれの代表病理が5人。9人で集まって、実際の標本を顕微鏡で見ながら、全員で合議をして診断を決めているというところに参加してまいりました。
イギリスの場合は、そういう組織はありませんで、実際には、それぞれの患者さんがかかった医療機関の診断を原則的に信頼しているというような言い方でございましたが、合議制で病理の中皮腫であるかないかの診断をチェックするという組織というのは、イギリスには存在しておりませんでした。
中皮腫だけに限って、ちょっと今日はご報告したということであります。以上です。 - 森永座長 ありがとうございました。何か、今日、井内委員の説明があったところで、せっかくの機会ですから、ご質問がありましたらどうぞ。よろしいですか。
私から一言、コメントを言いますと、イギリスは昔、パネルがあったと思うんですね。それで、イギリスは日本と違いまして、ナショナル・ヘルス・サービスですから、中皮腫の診断は大きな病院でしかつけられませんから、そこのコンサルタントが言えば、それは間違いないという、そういう話だろうと思うんですね。だから、最終的にはコンサルタントが診断をしますので、そこのところは診断は間違いないという、そういう理解でいいと思います。 - 井内委員 他の3カ国では、合議制で、1カ所で最終診断がついているのに比べて、イギリスは大丈夫なのかと、診断のばらつきはないのかと、こういうふうに尋ねたんでありますが、その誤差というか、そのばらつきは許容範囲内であるという答えが返ってきました。
- 森永座長 だから、だれでも診断書が書けるというシステムではないということですね。ちょっと医療制度そのものが違いますから。そこのところをほかの国と同じように考えると、違うということだけ留意する必要があるということです。
- 神山委員 オランダで中皮腫として診断できない、病理診断のないケースを臨床診断で判定しているというのをもう少し詳しく。要するに、マクロ的に見て、解剖なり何なりで見て判断しているのでしょうか。その臨床的に判断しているというところが、ちょっとよく。
- 井内委員 いや、そこは十分、その臨床の判断の現場に立ち会ったわけではないので、何をもって判断しているかというのは詳細に把握しているわけではないんですが、我々の知る範囲内では、やっぱり画像所見と臨床所見ではないかなというふうに思います。
- 森永座長 私の方から説明します。私は会って実際に聞いていますので。要するに、病理所見がないものについては、細胞診もないものについては、その方の生活環境から石綿の曝露の有無から、それから臨床経過すべてを聞き出して、最終的には中皮腫の患者さんをたくさん経験している臨床の先生方が、3人の先生がそれぞれ投票を行うので、これは合議して行うのではなくて、個別に行って、多数決で決めると、こういうやり方です。
- 神山委員 その場合は、病理診断で判定した中皮腫と、何か区別するような統計になるんですか。それとも、もう一緒に統計をとってしまうのですか。
- 森永座長 それはとっていないと思いますけれども、数としては非常に少ないというふうに聞いています。
ほかに何かご意見、質問。どうぞ。 - 坂谷委員 井内先生、この4カ国で病理診断をやっているその基準に微妙に違いがあるとか、そういうことはないですか。典型的な例はいいとして、判断に迷うときに、どっちへ転ばせるかとか、何か微妙に4カ国の間で差があるとか、そういうことはないですか。
- 井内委員 見た感じでは、使っている免疫染色とか、陽性になる判断というのに、それほど大きな差はあるとは思いません。それで、ただ、やり方が少しずつ微妙に違っていまして、例えばフランスですと、13人が同じ標本を同時に顕微鏡で見るんですけれども、それで、お互いにどのカテゴリーにするかというのは手を挙げまして、それをそのまま生データとして残して、最終判断にもっていくというようなやり方です。ところが、ベルギーあたりのパネル、9人は、そこで意見が一致するまでずっと議論しているというふうな状況であるとか、そういう程度ですね。それからオランダの場合は、もうそれぞれ、先ほど言いました指名された5人というのは、もう大変な権威のある人だということで、合議というのは最終的に悩んだ症例だけですから、非常にごく少数だろうというふうに思います。免疫染色の使い方は、もうオランダも同じだったというふうに思いますので、それほど大きな差はありません。
先生のご指摘なのは、例えば浸潤のないやつをどうしているかというようなところにあるんだろうと思うんですが、そういう症例に実際当たりませんでしたので、そこの詳しい判断までは、うまく問いただすことはできませんでした。それは前から申し上げているように、国際中皮腫パネルの方で、今、討議をしていまして、実は3月にボストンであった会議で、一応、クライテリアをつくって、これを少しジュニアの人たちにも普遍的に、試験的に診断のツールとして使ってもらって、統一的な判断ができるかどうかを今実験中でありまして、その結果が出る6月に、アメリカでまた肺病理関係の学会があるんですが、そこで少し意見がまとまれば、ペーパーを書いて、それを世界的な基準にしようというところの話までいっております。そういうのを待っているというのが、それぞれベルギーもフランスも、そのパネルにその代表者は参加しておりますので、そのあたりで国際的な統一基準というのができていくというふうに今考えております。以上です。 - 坂谷委員 ありがとうございます。
- 森永座長 ほかにございませんでしょうか。
- 石川委員 今の論点についてのちょっと追加なんですけれども、早期の中皮腫について、例えば分子生物学的な方法を導入するというような動きは、この4カ国ではあるんでしょうか。
- 井内委員 4カ国では、実際には使っておりません。実は、ボストンの会議で、そのことの議論になりまして、今までは全然HE染色と免疫染色の所見しか使っていなかったところへ、やっぱりp16とGLUT-1の話になりまして、じゃあ試しにやってみようという話になりました。ただし、例えばp16のいわゆるhomozygous deletion(ホモ接合体欠失)をフィッシュで見るとかというような高度なテクニックというのは、世界的に普遍するのは難しいので、それを適切な抗体を使った免疫染色でできるところまでもっていこうというような話にはなりました。それを具体的にフランスとアメリカで、2カ所の施設で同じ標本を染めてみるというところから始めることになりました。近い将来、それも基準に入ると思います。
- 森永座長 もう質問がなければ、時間もまいりましたので、今日の検討会は、一応議論が大分出ましたので、とりあえずこれで、協議案を取りまとめたいというふうに思います。
事務局の方から何か具体的な次のところの案、ございますでしょうか。 - 泉室長 恐れ入ります。その前に、先程、座長の方から、今年度の進行上の研究と来年度についてということでしたので、来年度のことをちょっとだけ触れさせていただきます。
第1回の議論、それからその後の先生方から個別にいただいたご意見なども踏まえまして、石綿肺の症例、国内でこれまでに診断されている症例について、どういう臨床経過で、どういう検査所見で、どういう進行をされているのかというようなところ、少し臨床的な情報を集めたいというふうに思っておりまして、来年度の予算で、各病院にご協力をお願いしまして、症例収集をさせていただきたいと思っておりますので、これにつきまして、ここでご報告をさせていただきます。 - 森永座長 これはお手元の基本資料集の42ページの話ですね。そういうことですね。
まだいろいろ石綿肺を指定疾病に追加するということになりますと、いろんな課題をクリアしないと、なかなか難しいのだということだと思いますので、早くしろという意見はいろいろございますでしょうけれども、いや、本当にそう簡単にできないんだよということをもう少しご理解していただきたいと思います。最後の方では、もう今までやっているところに任せたらどうかという意見もございましたけれども、そういうことも総合的に含めて、次、一応現在の時点で、文献レビューを含めて取りまとめていきたいというふうに私は思っているんですけれども、事務局の方はどういうスケジュールで考えているのか、ちょっと案を出してください。 - 佐々木補佐 ありがとうございます。これまでいただいたご意見を踏まえつつ、本検討会としての取りまとめを進めてまいりたいと思っております。
とりあえず、次回の検討会の日程でございますけれども、連休明けごろを目途に、追って先生方と日程調整をさせていただいた後、またご連絡を差し上げたいと思っております。
以上でございます。 - 森永座長 一応、とりあえずは今年度の文献レビューもまとめると、こういうことですね。
- 佐々木補佐 はい。そうしたいと思っております。
- 森永座長 わかりました。時間になりましたので、大阪から来ている方々もおられますので、ちょっと5分ほど早いですけれども、これで第4回の検討会を終わりたいと思います。それでよろしいでしょうか。事務局の方にお戻ししますけれども。特にないですか。
- 佐々木補佐 はい。
- 森永座長 それでは、これで第4回の検討会を終わりたいと思います。どうも皆さん方、ご参集ありがとうございました。
午後7時25分 閉会