報道発表資料本文

(参考)

「今後の化学物質の審査及び規制の在り方について(中央環境審議会答申)」の概要

平成15年2月13日

 
I.検討の背景

 化学物質の審査・規制制度を巡る国際的な動向、昨年1月のOECDによる環境保全成果レビューの勧告等を踏まえ、化学物質の環境中の生物への影響に着目した新たな対応とともに、更にリスクの観点から効果的かつ効率的な化学物質の評価・管理を行うため、昨年9月に、今後の化学物質の審査及び規制の在り方について環境大臣より中央環境審議会に諮問した。その後、関係する3審議会(中央環境審議会、厚生科学審議会及び産業構造審議会)における検討を経て、今般、答申を取りまとめた。
  
  
II.環境中の生物への影響に着目した化学物質の審査・規制について
  1. 生態毒性に関する事前審査の導入
     個別の化学物質が生態系に及ぼす影響の定量的な評価は困難であるものの、特定の生物種を用いた生態毒性試験を活用することにより、生態系への影響の可能性が示唆される化学物質を特定できると考えられることから、化学物質審査規制法の新規化学物質の事前審査において、試験結果を用いて生態毒性の評価を行う。
      
  2. 生態毒性がある化学物質に対する規制の導入
     生態毒性を有する難分解性の化学物質は、回復困難な環境汚染を生じ環境中の生物に影響を及ぼす可能性を否定し得ない。このため、現状における生態系あるいは環境中の生物への影響に関する評価の可能性等を踏まえつつ、生態系への影響の可能性を考慮した適正管理を促す措置及び生活環境に係る動植物への被害を生ずるおそれがある化学物質に対する製造・輸入制限等の規制を導入する。
      
    具体的な措置
      [1] 難分解性で生態毒性を有する化学物質
      難分 解性で生態毒性を有する化学物質(生態影響監視物質(仮称))に関して、製造・輸入実績数量、用途の届出を義務付け、生態毒性等に関する情報提供措置を導入
      さらに、生活環境に係る動植物に被害を生ずるおそれが認められる状況に至った場合、現在の第二種特定化学物質と同様に、管理のための指針の遵守、表示を義務付け、必要な場合に製造・輸入予定数量を制限。
      
      [2] 難分解性に加え高蓄積性を有する化学物質
      生活環境に係る動植物のうち高次捕食動物に対して一定の毒性を持つものについては、現在の第一種特定化学物質と同様に、可能な限り環境中へ放出されることがないよう製造・輸入、使用を制限。
      
  3. 関連事項
    試験実施体制の整備、調査研究の推進の必要性
    良分解性物質への対応(排出段階での取組と官民での毒性データの取得の推進)
      
III.リスクに応じた化学物質の審査・規制制度の見直し等について
  1. 難分解性及び高蓄積性の性状を有する既存化学物質に関する対応
     長期毒性等の有無が明らかになるまでの間も、製造・使用実態等に応じ、法令に基づく一定の管理の下に置く。
      
    具体的な措置
      製造・輸入実績数量、用途等の届出を義務付け
      国が予備的な毒性評価を実施し、一定のリスクが懸念される場合には、事業者に対して環境放出量を抑制するためのリスク低減措置を指導・助言
      リスク低減措置後もリスクが懸念される場合、製造・輸入事業者に長期毒性等に関する調査を指示し、長期毒性等がある場合には速やかに第一種特定化学物質に指定
      
  2. 暴露可能性を考慮した新規化学物質の事前審査制度の見直しについて
     環境汚染を通じた暴露可能性が低い新規化学物質については、事前の確認及び事後の監視によりこれが担保されることを前提として、届出対象から除外したり有害性項目に係る審査を段階的に行うといった柔軟な対応を可能とする。
      
    (1) 暴露の管理による対応
       暴露可能性がない又は極めて低くなるような方法で取り扱われることが確実である以下の場合には、事前審査の対象外とできることとする。
      中間物
      閉鎖系等環境放出の可能性が極めて低い用途で使用される化学物質
      輸出専用品(輸出相手国において事前審査制度が整備されている場合)
      
    (2) 製造・輸入数量の少ない化学物質に対する段階的な審査による対応
       製造・輸入総量が年間1トンを超える新規化学物質については従来どおり事前審査の対象とするが、事前審査の結果、難分解性ではあるものの高蓄積性ではないと判定された新規化学物質については、製造・輸入総量が年間10トン程度までは、広範囲な地域の環境中に残留することによる暴露の可能性が極めて低いと考えられることから、既知見に基づく人及び環境中の生物に対する毒性の評価を経た上で、毒性試験データの提出を求めず、製造・輸入ができることとする。
      
  3. 事業者が入手した有害性情報の取扱いに関する対応
     新規化学物質の判定の見直しや既存化学物質の点検等に活用するとの観点から、化学物質審査規制法の審査項目に係る一定の有害性を示す情報を製造・輸入事業者が入手した場合には、国への報告を義務付ける制度を創設する。
     
  4. 既存化学物質の有害性評価・リスク評価の推進
     化学物質全体のリスク管理を考えれば、既存化学物質の評価に関するこれまでの取組状況を踏まえ、事業者及び国は、相互に十分連携しつつ、それぞれの役割に応じて既存化学物質の有害性評価等を計画的に実施していくべき。
      
IV.その他関連事項
  
 ○ 化学物質管理に係る関連制度間の一層の連携や整合性のある運用
 ○ リスクコミュニケーションの促進のための化学物質に関する情報の整備



 報道発表本文に戻る