(1)目的
本調査は、企業において環境に配慮した行動が定着し、環境保全に向けた取組が効果的に進められるよう、その実態を的確かつ継続的に把握し、これを評価し、その成果を普及させていくことを目的とする。
(2)実施状況
平成8年12月に、東京証券取引所、大阪証券取引所、名古屋証券取引所の1部、2部上場企業2,310社及び従業員数500人以上の非上場企業等4,044社を対象とし、郵送によるアンケート調査を実施した。
有効回答数は、上場企業973社、従業員数500人以上の非上場企業等1,593社、有効回収率は、上場企業42.1%、非上場企業等39.4%であった。
(注:従業員500人以上の非上場企業及び事業所には、生協、農協、学校法人、医療法人、公益法人等が含まれるが、昨年度対象とした学校法人、宗教法人、一部の組合(企業組合、商工組合等)は今年度から対象から外した。)
上場企業における平成3年度からの有効回収数及び有効回収率の推移については以下のとおり。
*表:有効回収数と有効回収率の推移 [GIFファイル 49KB]
(3)調査項目
[1] |
環境管理等への取組状況(経営方針、目標、具体的行動計画、監査、報告書) |
[2] |
環境保全や環境負荷低減のための具体的取組 |
[3] |
ISOに関する今後の対応 |
[4] |
エコビジネスの動向 |
[5] |
環境保全に係る支出(投資額・経費)の把握状況 |
[6] |
地球温暖化問題に対する意識 |
(4)調査実施体制
調査内容及び結果について検討を行うため、財団法人地球・人間環境フォーラムに有識者からなる「環境保全経費の把握に関する検討会」を設置した。検討会委員は以下のとおり。
[検討会委員] |
(敬称略、委員の肩書は調査実施時点のもの) |
◎ |
河野 正男 |
横浜国立大学経営学部教授 |
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倉阪 智子 |
環境監査研究会代表幹事、公認会計士 |
|
郡嶌 孝 |
同志社大学経済学部教授 |
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鈴木 敏央 |
(株)日本環境認証機構 取締役 環境技術部長 |
|
久野 武 |
関西学院大学 総合政策学部教授 |
|
森島 彰 |
環境事業団 企業立地課長 |
|
矢部 浩祥 |
中央大学商学部教授 |
(◎印は座長)
|
|
(1)環境管理への取組状況
環境管理とは、企業等が規制基準を遵守するだけでなく、自主的、積極的に環境保全のための行動を、組織内で体系化した形で計画・実行・評価することを指し、そのために[1]環境保全に関する方針、目標、計画等の策定、[2]それらに基づく実行及び記録、[3]その実行状況の点検、方針等の見直し等を実際に行う組織内システムを環境マネジメントシステムと呼んでいる。 |
環境管理への取組状況について見ると、上場企業では、 |
・ |
環境保全に関する経営方針 |
「制定している」 48.3%(平成7年度 48.3%) |
・ |
具体的目標 |
「設定している」 37.9%(平成7年度 41.8%) |
・ |
具体的行動計画 |
「作成している」 34.4%(平成7年度 35.6%) |
・ |
環境保全活動に対する監査の実施 |
「実施している」 30.8%(平成7年度 33.5%) |
となっており、平成7年度と比べると、概ね横ばいとなっている。 |
しかしながら、過去6年間(具体的な行動計画の作成については4年間)の推移を見ると、環境管理に対する取組は着実に広がってきている。 |
|
*表:環境管理の取組状況 [GIFファイル 24KB]
また、上場企業について業種別に見ると、製造業、電気・ガス等供給業では、環境管理に取り組んでいる企業の割合が高く、例えば、経営方針の制定状況を見ると、電気・ガス等供給業は88.8%、製造業は56.6%となっており、他の業種と比べ経営方針を制定している企業の割合が高い。 |
*表:経営方針の有無 [GIFファイル 41KB]
従業員500人以上の非上場企業等においては、 |
・ |
環境保全に関する経営方針 |
「制定している」 27.3%(平成7年度 30.0%) |
・ |
具体的目標 |
「設定している」 20.1%(平成7年度 22.1%) |
・ |
具体的行動計画 |
「作成している」 21.3%(平成7年度 23.1%) |
・ |
環境マネジメントシステムの監査 |
「実施している」 15.9%(平成7年度 18.9%) |
となっており、平成7年度と比べて概ね横ばいであり、また上場企業に比べて割合は低いものの、非上場企業等においても取組が進められてきている。 |
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(2)環境保全や環境負荷低減のための取組
環境保全や環境負荷低減のための取組については、業種ごと、全業種共通に分けてたずねている。製造業では、環境負荷の少ない製品の開発・設計、製品の長寿命化の検討、製品規格の統一化、産業廃棄物の減量化、通い箱の利用等が行われており、建設業では建設廃棄物排出量の削減、金融・保険業では紙使用量の削減、運輸業では車両整備の徹底、流通・サービス業等では店舗等における省資源・省エネルギーなどの取組が多い。また、全業種共通の取組では、紙使用量の削減、廃棄物の減量化、分別の徹底・リサイクル等の推進に取り組む企業が多くなっている。 |
*表:製造業における取組
*表:その他の業種における取組 [GIFファイル 63KB]
*表:全業種共通の取組 [GIFファイル 38KB]
(3)ISO環境マネジメントシステム規格に関する対応状況
IS0(国際標準化機構)において、平成8年9月に環境マネジメントシステム規格(ISO14001)が発行され、これに関する企業の対応状況をたずねた。
上場企業のうち約3割、非上場企業の約2割が認証を取得又は取得予定であり、また、上場企業の約6割以上が環境マネジメントシステムの構築又はそれに関する情報収集を行っている。
上場企業について業種別に見ると、建設業、製造業、電気・ガス等の供給業では、ISO規格の認証を取得又は取得予定と回答した企業の割合は高いが、業種毎に大きな差が見られる。 |
*表:ISO環境マネジメントシステムに対する対応 [GIFファイル 65KB]
(4)エコビジネスの動向
ア.エコビジネスの現状
上場企業及び非上場企業等におけるエコビジネスへの参入状況を見ると、上場企業の約4割、非上場企業等の約2割が「既にサービス・商品等の提供を行い事業展開をしている」、「エコビジネスに関する研究・開発を行っている」という形でエコビジネスに対して積極的に関わっている。 |
*表:エコビジネスの参入状況について [GIFファイル 36KB]
イ.海外への事業展開
上場企業では、約1割が海外での事業展開を行っている又は事業展開予定であり、また、同じく約1割が海外への事業展開を検討している。 |
ウ.売上高の前年度比較について
エコビジネスを行っている上場企業のうち、約2割の企業が前年度に比べ売上高が増加したが、一方、減少した企業はわずか約2%であった。 |
(5)環境保全に関する支出(投資額・経費)の把握状況
上場企業に対して、予算、決算においてそれぞれ環境保全に係る投資額及び経費を他と区別して集計しているか否かをたずねた。どちらについても概ね3割近い企業で投資額、経費のいずれか又は両方を区別して集計している。
環境保全に係る投資額や経費を把握する意義については、「自主的な環境管理における目標実行に伴う支出額の管理」を挙げた企業が最も多く、次いで「規制強化等による環境対策の支出額の管理」となっている。また、上場企業の約2割が「環境報告書等による情報提供」を挙げている。これらの結果は、環境対策を進めていく上でその支出額を管理し、効果的に対策を進めていこうとする考え方に加えて、環境情報を様々な利害関係者に公表するという考え方も増加していることを示している。
しかしながら、このような投資額や経費の集計に当たっては、「定義や範囲がはっきりせず、どの科目をどのように集計すべきかわからない」、「現行の会計システムでは特別な投資額や経費の集計ができるようになっていない」などの問題点も指摘されている。また、上場企業及び非上場企業の5割以上が環境保全支出に関する指針等を必要としている。 |
*表:予算における環境保全支出の把握状況
*表:決算における環境保全支出の把握状況
*表:環境保全支出の把握における問題点 [GIFファイル 48KB]
(6)地球温暖化対策のあり方
地球温暖化問題に対しては、上場企業の約6割、非上場企業の約7割が「産業界をはじめとして国民各層が努力をすることが必要」としており、国内で二酸化炭素排出増加の著しい民生部門や国外で排出量が多い米国、排出増加の著しい途上国など、我が国の産業界以外がまず対策をとるべきとの声は合わせても約2割にとどまった。炭素税の導入については、上場企業の3割以上が賛成又は条件付きで賛成し、また、炭素税よりは規制的措置を望む意見も約3割を占めたが、炭素税及び規制的措置の双方を無用とし、専ら自主的努力のみで対応するとの意見は1割にとどまった。 |
*表:地球温暖化対策のあり方
*表:炭素税について [GIFファイル 52KB]