平成22年度 環境の状況

平成22年度 循環型社会の形成の状況

平成22年度 生物の多様性の状況

第1部 総合的な施策等に関する報告

第1章 持続可能性と豊かさ

第1節 持続可能性と豊かさをめぐる動き

1 地球の資源の起源

 宇宙のちりやガスから誕生した原始の太陽は、やがてその中心で水素からヘリウムが合成される核融合反応を起こし、光を放出するようになったとされます。一方で、太陽を取り巻いていた塵の一部は、集合しながら微惑星をつくり、それらが合体・成長して原始の地球を含む惑星へと進化していきました。

 原始の地球が誕生する過程で地球に衝突した無数の小惑星や隕石には、様々な原子が含まれており、これに起源を有する鉱物資源が、現在の私たちの社会経済活動を支えています。

 また、植物が陸上に進出して太古の森を創り、動物もその環境の中に上陸することで、陸上でも複雑な生態系が形成され始めました。

 これらの動植物が生み出した有機物から肥沃な土壌が生まれることになります。また、こうした有機物の一部は、地殻変動などで地中深くに埋まり、強力な圧力と膨大な熱が加わることで、長い歳月を経て石油や石炭など、現在の私たちの人間活動を支える化石燃料になったとされています。

 現在、私たちが地球から得ている様々な資源は、地球が誕生してから長い年月をかけて作り上げてきた限りあるものであり、人間の時間的なスケールでは再生不可能な地下資源と、持続可能な利用をしなければ永久に損失してしまう生物由来の資源で成り立っています。

2 私たちの豊かな生活と持続可能性

 人間活動の中には、環境に対して負荷をほとんど与えないものもあれば、汚染物質等の排出のように環境に著しい負荷を与えるものもあります。しかし、今日、私たちが日々営む活動の過程で、多くの資源を使って大量生産を行い、生産した製品等を大量に流通させ、消費し、不用物を大量に排出するという側面が大きくなり、様々な環境負荷を与えるようになっています。


主な資源の流通量と潜在的な環境負荷

3 持続可能性と豊かさに関する国際的な認識の進展

(1)持続可能な社会の実現に向けた世界の潮流

 1972年(昭和47年)にストックホルムで、国連人間環境会議が開催され、ストックホルム宣言によって環境保全を進めて行くための合意と行動の枠組みが形成されました。 

 こうした中、「持続可能な開発」という用語を一般的に定着させるきっかけとなったのは、1987年(昭和62年)、我が国の提唱によって国連に設置された環境と開発に関する世界委員会の報告「我ら共有の未来(Our Common Future)」でした。

 これらの動きを踏まえ、1992年(平成4年)6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」において、「持続可能な開発」という概念が全世界の行動原則へと具体化されました。

 その後、地球温暖化に対する国際的な議論が進み、1997年(平成9年)には、京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会合において京都議定書が採択されました。

 2002年(平成14年)には、南アフリカのヨハネスブルグで開催されたヨハネスブルグ・サミットにおいて、「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」が政治宣言されるとともに、生物多様性条約第6回締約国会議(COP6)がオランダのハーグで開催され、生物多様性の損失速度を2010年までに減少させるという2010年目標が決定されました。

 この目標の達成年にあたる2010年(平成22年)10月、愛知県名古屋市において、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催され、生物多様性の保全に関する新たな世界目標となる「愛知目標」や遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する「名古屋議定書」が採択されました。

(2)豊かさや持続可能性の評価に向けた世界の取り組み

 持続可能性に関する懸念が高まると、真の豊かさや発展とは何かを改めて考えることが重要となります。持続可能な開発については様々な考え方がありますが、前述の「我ら共有の未来」で示された「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」との定義が広く受け入れられている考え方の一つです。

 先に見たような持続可能な社会の実現に向けた取り組みに併せて、経済協力開発機構(OECD)や国連などの国際機関等において、持続可能性や豊かさを評価するための指標の開発に関する議論や提言が進められてきており、国際的な潮流となっています。


環境・経済・社会の状況を計測するための国際機関による指標等



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