平成21年度 環境の状況

平成21年度 循環型社会の形成の状況

平成21年度 生物の多様性の状況

第1部 総合的な施策等に関する報告

序章 地球の行方−世界はどこに向かっているのか、日本はどういう状況か−

1 地球に生まれた人類

 多くの生物種は、長い時間をかけて環境の変化に身体の形態を変えて適応させてきました。しかし、後に見る人類による環境の改変は、こうした適応に必要な速度をはるかに上回って行われています。人類も一生物種であり、自ら急速に改変しつつある環境に身体の形態を変化させるという方法によって適応できないことは、ほかの生物と全く同様です。

 人類は、進化とともに生活状態を改善させ豊かな生活を実現してきたのです。特に産業革命以降、1人当たりの環境負荷は増大し、爆発的に増加した人口との相乗的な効果によりに環境への負荷が増大します。人類の活動は飛躍的に拡大し、これに伴って環境は改変され、環境への負荷も著しく増えていくことになります。


世界人口の推移と推計:紀元前〜2050年

2 世界のトレンド概観

(1)人口及び都市化:人口増加と都市への集中

 私たちの行う生産・消費活動は、資源採取、温室効果ガスや廃棄物の排出などを通じて、環境に負荷を与えています。一般に、人口の増加に伴って生産・消費活動は増加し、環境に与える影響もこれに伴って増加していくものと考えられます。したがって、人口動向を地域別に見ていくことで、今後、どの地域で環境への影響が増大していくと見込まれるのかを推測するてがかりが得られます。

 アジアやアフリカの人口増加に牽引される形で世界人口が近年一貫して増加傾向にある中で、居住地については、急速に都市化が進んでいます。

 日本では、人口減少の影響が地方に大きく現れることが分かります。このため、地方において、里地里山の保全・管理の担い手不足を通じた環境保全上の問題や、高齢化による限界集落の問題などが、より一層深刻化することが懸念されます。


世界及び各地域の人口推移


世界の都市及び地方の人口予測及び都市人口割合


日本の都市及び地方の人口予測並びに都市人口割合

(2)水:偏在する水資源

 水は人間が生存する上で欠かせません。世界自然保護基金(WWF)のレポートによると、世界で使われている水のおよそ7割が農業用に、2割が工業用に、1割が家庭用に、使用されています。また、1960年から2000年にかけて、世界の水使用量は約2倍に増えていますが、この期間に人口もおよそ2倍に増えており、人間1人当たりの水使用量は、ほぼ一定であることが分かります。したがって、今後も世界人口の増加に伴って、世界の水使用量も増えていくことが予想されます。

 このように水資源の使用量は世界的に高まると予測されますが、水資源は偏在し、不足してきています。

 また、1人当たり水資源量と人口の関係を見ると、水資源の偏在性がより明らかになります。

  わが国の年間1人当たり水資源量を見てみると、約3,400m3であり、上述したような「水ストレス」状態にはないものの、近年は少雨の年と多雨の年の年降水量の開きが大きく、10年に1度程度の割合で発生する少雨時の利用可能な水資源量が減少する傾向にあり、利水安全度が低下してきています。


世界における年間1人当たりの水の資源量

(3)食料:食料需要の増加と需給のひっ迫

 ア 穀物の需給動向 

 穀物の地域別貿易量(純輸出量及び純輸入量)の見通しによると、2007年から2019年にかけて、アフリカ、アジア及び中東の地域で純輸入量が増大する一方、欧州やオセアニアでは、純輸出量が増大することが予測されています。また、北米は、1995年から2019年にかけて純輸出量が減少するものの、依然として世界の主な穀物の純輸出地域であり続けることが予測されています。グローバル化により食料の生産・輸出国の偏在化が進んでいるため、何らかの需給変化が生じると国際価格への影響が大きく、不安心理による輸出規制、投機資金の流入が生じやすく価格高騰がより増幅されやすくなっていることが懸念されます。


穀物の地域別貿易量(純輸出入量)の見通し

 次に、日本の食料自給率について見てみると、過去数十年にわたって減少傾向にあることが分かります。カロリーベースで見た場合の食料自給率は、昭和36年度(1961年度)の78%から近年は約40%前後へと低下しており、日本の食の欧米化などが影響しているといわれています。一方、イギリスでは、日本とは対照的に、食料自給率が上昇しています。イギリスのカロリーベースでみた食料自給率は、近年低下傾向にあるものの、昭和36年の42%から平成5年の70%へと上昇しており、これは、イギリスの土地が平坦で効率的な農業生産が可能なことや、EC加盟による農業補助の恩恵を受けて小麦等の生産が伸びたことなどが理由として挙げられています。

 イ 魚介類の需給動向

 魚介類の生産(供給)量は、1990年代以降は、漁獲量が9,000万トン程度で頭打ちとなる一方、主に養殖量の増加に支えられて、需要量の増加に対応する形で増加してきています。平成19年の生産量1億5,600万トンのうち、4割を養殖業が占めています。漁業生産量についてOECD加盟国と非OECD加盟国とを比べると、OECD加盟国の漁業生産量が減少する一方、非OECD加盟国のそれは増加しており、特に、非OECD加盟国加盟国の養殖業の生産量が近年著しく増大していることが分かります。漁獲生産量を国別でみると、中国が世界最大の魚介類生産国となっており、平成17年の生産量は6,063万トンと世界の生産量の4割を占めています。また、中国の生産量の7割が養殖業によるものとなっており、干潟の開発・転用などを伴う内水面養殖が増加しています。

 水産資源の利用について、FAOによれば、約半分が満限利用、4分の1が乱獲などによる過剰漁獲の状況にあります。今後、漁業は漁獲量の停滞が続くと見込まれることから、生産量の増加は、養殖業に頼らざるを得ない状況になると考えられます。


水産資源の利用状況(2005年)

(4)エネルギー:エネルギー需要の増加と加速する再生可能エネルギーの導入

 世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)は、1971年の55億TOE(原油換算トン)から、2007年には120億TOEと40年弱の間に2倍以上に増加しています。今後も新興国を中心に経済発展が見込まれる中で、エネルギー消費量の増加傾向は続くと考えられますが、エネルギー消費量をエネルギー源別に見た場合、石油が約1/3を占めており、また、IEAの見通しでは、各国政府が既存の政策や対策を全く変えなかった場合、依然として化石燃料が世界の一次エネルギー源の大部分を占め、2007〜2030年のエネルギー消費増加分の4分の3以上は化石燃料によるものと予測しています。さらにIEAの同見通しでは、化石燃料の中でも、石炭の需要が発電用需要の増大に牽引され今後大きく伸びていくと予想されており、ほかのエネルギー源と比較して二酸化炭素排出量が大きいことを併せ考えると、化石燃料の利用の高度化等の取組が世界規模で積極的にされない場合、環境負荷が一層増大することが懸念されます。

 世界全体のエネルギー消費量が今後も増加していくことが見込まれる中、化石燃料に比べ二酸化炭素の排出が少ない再生可能エネルギーの重要性は増しています。世界の再生可能エネルギーの需要量は2008年の15.2億TOE(石油換算トン)から2030年の23.8億TOEへと増大することが見込まれています。また、世界の国々では、エネルギーの消費量や供給量に占める再生可能エネルギーの割合について目標を掲げ、同エネルギーの積極的な導入に向けた動きが出てきています。

 日本の一次エネルギー国内供給は、昭和40年(1965年)から平成19年(2007年)にかけて約3.6倍に増加しています。一次エネルギー国内供給のエネルギー源別構成割合をみると、近年、石油に対する依存の割合が減少するとともに、天然ガスによるエネルギー供給が高まってきていることが分かります。また、再生可能エネルギーを主な内容とする水力及び新エネルギー・地熱等(1,000kw以下の自家発電は未計上)の構成割合についてみると、1990年以降大きな変化は見られないことがわかります。


世界の一次エネルギー需要の見通し


各国における2020年の再生可能エネルギーの導入目標一覧

(5)土地:進む森林消失と砂漠化

 UNEPによると、現代のような気候となって以降、人間の影響が広がる以前から現存していた森林は、主に人間の活動により、およそ半分が消失したとされています。

 砂漠化も、土地に関する環境問題として挙げられます。砂漠化は、気候的な要因としては地球的規模での気候変動、干ばつ、乾燥化などが、また、人為的要因としては過放牧、森林の過伐採(薪炭材の過剰採取)、過耕作など乾燥地域の脆弱な生態系の中で、その許容限度を超えて行われる人間活動が原因といわれています。

 砂漠化は食料の供給不安、水不足、貧困の原因にもなっており、今後の世界人口の増加や都市化の進展、市場経済の発展を通じて砂漠化が進行することで、社会不安の一層の悪化が懸念されます。

 わが国の国土利用の動向をみると、「農用地」面積が減少する一方で、「宅地」及び「道路」面積が増加していることが分かります。


乾燥地域の世界分布


原森林の残存地域の世界分布

(6)生物多様性:進む生物多様性の喪失

 生物多様性の損失を平均生物種豊富度(MSA: Mean Species Abundance)という指標によって計測し、1970、2000、2010、2050年の変化を見ると、アフリカ、インド、中国、ヨーロッパで、顕著な影響があらわれると予測されています。


世界の平均生物種豊富度(1970年・2000年・2010年・2050年

(7)資源循環と廃棄物:不安定な市場と増大する廃棄物

 平成16年(2004年)時点の年間資源使用総量(ほぼ、採掘される岩石量に相当)は、全世界で約220億トンであり、平成2年(1990年)からの年間増加量5.6億トンは、かつて資源枯渇の危機が叫ばれた1960〜70年代の年間増加量3.8億トンを上回る勢いです。レアメタル資源は特定の地域に偏在しており、資源の安定した確保のため、資源の有効活用をさらに進める必要性があります。(独)物質材料・研究機構の予測によると、世界中が日本と同じレベルの省資源型社会に転換したとしても2050年には埋蔵量を超える資源需要が見込まれています。

 循環型社会を推し進めることは、資源の安定的な確保にもつながります。過去10年間の資源価格の推移を見てみると、資源価格の変動幅の大きさが目立ちます。こうした価格の変動は、輸入価格の高騰や、それに伴う物価の上昇といった形で、経済に大きな影響を与えます。資源の価格変動によるリスクを減らし、資源輸入国である日本の経済的安定性を確保するためにも、循環型社会を推進し、資源の安定的な供給体制の確保を図っていくことが求められます。

 世界の廃棄物総排出量に関する将来予測によれば、2050年の廃棄物総排出量は約270億トンとなる見込みであり、2000年の約127億トンに比べ約2.1倍になるものと見込まれています。同時期の世界人口の増加(約1.5倍)よりも、廃棄物の方が大きな割合で増加するとの見込みです。1人当たり年間廃棄物排出量をみると、2000年において1人当たり年間約2.1トンであった廃棄物排出量、2050年に約2.9トンと、約1.4倍に拡大することが予測されています。1人当たりの廃棄物量が引き続き増加していくことは、有限な資源の非効率な利用や廃棄物の埋立て処分等による環境への負荷を高めることにもつながるため、廃棄物をできる限り少なくし、より効率的な資源利用を目指した循環型社会の構築に向けた取組が、国際的規模で進められる必要があります。


資源利用総量の推移


世界の廃棄物排出量の将来予測(2000年-2050年)

(8)経済活動の動向: 現在の経済システムの不安定性・経済の中心のアジアへのシフト

 2010年以降は、世界経済は再びプラス成長を続けると見込まれています。世界銀行の見通しによると、実質GDPで見た世界経済は、第2次世界大戦後最悪といわれる景気後退を受け、2009年にはマイナス成長となる見込みですが、2010年以降、再びプラス成長に入ると予測されています。さらに世界を高所得国と中・低所得国の二つに分けて経済成長率の動きを見てみると、2000年以降、中・低所得国の経済成長率が高所得国のそれを上回っていることが分かります。また、その傾向は少なくとも2011年まで続くものと見込まれています。

 中・低所得国が大きく経済成長を遂げる中、地域・グループのGDPが世界経済全体に占める割合は大きく変化してきています。中国を含むアジア途上国のグループが世界経済に占める割合を大きく伸ばしてきており、今後も同様の傾向にあると見込まれている一方、主要先進国(G7)、先進国全体、そしてEUといったグループは急速にシェアを落としてきています。このことは、まさに、経済の趨勢がアジアへシフトしつつあることを表しています。これまでの経済発展が環境に負荷をかけつつ行われてきたことを考えると、これらの地域での環境対策の必要性は今後より一層高まるものと言えます。


世界の地域・グループが世界全体に占めるGDPシェアの推移

(9)貧困・格差の動向: 国の発展段階で異なる経済成長の重要性

 国連では2015年においても、依然として10億人もの人が極度の貧困状態にあるものと予測しています。

 先進国においては、相対的な貧困、つまり所得の格差が問題となります。所得の不平等の度合いを表す指標の一つとして、ジニ係数(0から1の間の数値で示され、1に近いほど格差が大きい)があります。1980年代半ばから2000年代半ばにかけてのOECD加盟国のジニ係数の変化を見ると、24か国中19か国についてジニ係数の値が上昇しており、多くの国で不平等の度合いが高まっています。

 日本のジニ係数については、当初所得については年々上昇していますが、再分配所得についてみると、平成11年の調査以降ほぼ横ばいで推移してきています。

 所得で見た場合の格差が広がりつつある中、必ずしも所得といった経済的な指標だけでは「生活の質」を測れないとする考えもあります。EUが2008年に発表した調査結果によると、「生活の質」に影響を与える要素について、EUの人々の84%が経済的な要素が最も大きな影響を与えるとする一方で、環境の状況が「生活の質」に影響を与えるとする人も80%に上ります。また、同調査結果では、3分2以上のEUの人々が、社会の発展度合いの測定において、経済的な側面だけでなく、社会的、環境的指標も等しく扱われるべきだとする調査結果を報告しています。欧州委員会によると、2007年に民間の調査会社が5大陸10か国に対して行った同様の調査においては、さらに高い75%の支持が得られたとしています。 



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