第2部 環境・循環型社会の形成の状況と政府が環境の保全・循環型社会の形成に関して講じた施策

 環境・循環型社会白書では、環境・循環型社会の形成の状況と平成19年度に実施した環境の保全・循環型社会の形成に関して講じた施策を、次のような章立てで報告しています

 第1章 地球環境の保全

 第2章 大気環境の保全

 第3章 水環境、土壌環境、地盤環境の保全

 第4章 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に係る施策

 第5章 化学物質の環境リスクの評価・管理に係る施策

 第6章 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進

 第7章 各種施策の基盤、各主体の参加及び国際協力に係る施策

1 地球環境の保全

(1) 地球温暖化

 近年、人間活動の拡大に伴って二酸化炭素やメタン等の温室効果ガスが大量に大気中に排出されることで、温室効果が強まって地球が過度に温暖化するおそれが生じています。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年(平成19年)に取りまとめた第4次評価報告書によると、世界平均地上気温は1906~2005年の間に0.74(0.56~0.92)℃上昇し、20世紀を通じて平均海面水位が17(12~22)cm上昇しました。同報告では、気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高いとしています。

 また、同報告では、世界全体の経済成長や人口、技術開発、経済・エネルギー構造等の動向について複数のシナリオに基づく将来予測を行っており、1980年から1999年までに比べ、21世紀末(2090年から2099年)の平均気温の上昇幅を1.1~6.4℃と予測しています。さらに、同報告では、温暖化により、大気中の二酸化炭素の陸地と海洋への取り込みが減少するため、温暖化が一層進行し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴い既に海面が平均でpH0.1酸性化し、21世紀中に更にpHで0.14~0.35の酸性化が進行すると予測されています。


地球温暖化の現状

 日本では20世紀中に平均気温が約1℃上昇し、気候の変動が生態系、農業、社会基盤、人の健康などに多大な影響を与えることが予想されます。

 日本の2006年度(平成18年度)の温室効果ガス総排出量は、13億4,000万トン*(注:以下「*」は二酸化炭素換算)でした。京都議定書の規定による基準年(1990年度。ただし、HFC、PFC及びSF6については1995年。)の総排出量(12億6,100万トン*)と比べ、6.2%上回っています。また、前年度と比べると1.3%の減少となっています。


日本の温室効果ガス排出量

 温室効果ガスごとにみると、2006年度の二酸化炭素排出量は12億7,400万トン(1990年度比11.3%増加)、1人当たりでは9.97トン/人(同7.7%増加)でした。部門別にみると、産業部門からの排出量は4億6,000万トン(同4.6%減少)でした。また、運輸部門からの排出量は2億5,400万トン(同16.7%増加)でした。業務その他部門からの排出量は2億2,900万トン(同39.5%増加)でした。家庭部門からの排出量は1億6,600万トン(同30.0%増加)でした。


二酸化炭素排出量の部門別内訳

 2006年度における二酸化炭素以外の温室効果ガス排出量については、メタン排出量は2,360万トン*(同29.2%減少)、一酸化二窒素排出量は 2,560万トン*(同21.7%減少)となりました。また、HFC排出量は660万トン*(1995年比67.3%減少)、PFC排出量は630万トン*(同55.0%減少)、SF6排出量は430万トン*(同74.3%減少)となりました。


各種温室効果ガス(エネルギー起源二酸化炭素以外)の排出量


部門別エネルギー起源二酸化炭素排出量の推移と2010年目標


(2) オゾン層の破壊

 CFC、HCFC、ハロン、臭化メチル等の物質によりオゾン層が破壊されており、その結果、地上に到達する有害な紫外線(UV-B)が増加し、皮膚ガンや白内障等の健康被害の発生や、植物やプランクトンの生育の阻害等を引き起こすことが懸念されています。これらのオゾン層破壊物質の多くは強力な温室効果ガスでもあり、地球温暖化も促進しています。

 オゾン層破壊物質は1989年(平成元年)以降、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という。)に基づき規制が行われました。その結果、代表的なオゾン層破壊物質であるCFC-12の大気(対流圏)中濃度は、北半球中緯度において1990年代後半以降ほぼ横ばいになっており、成層圏におけるオゾン層破壊物質の総濃度は減少傾向にあります。

 しかしながら、大気中のオゾンは、1980年代から1990年代前半にかけて大きく減少した後、現在も減少した状態が続いています。

 また、2007年(平成19年)の南極域上空のオゾンホールは、この10年間(1998年以降)では2002年、2004年に次いで小規模でしたが、現時点ではオゾンホールに縮小の兆しがあるとは判断できず、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にあります。モントリオール議定書科学アセスメントパネルの2006年(平成18年)の報告によると、オゾンホールは今後数十年間発生し続けると考えられ、南極地域のオゾンが1980年(昭和55年)以前の値に戻るのは今世紀中頃と予測されています。

 なお、国際的にCFCからの代替が進むHCFC及びオゾン層を破壊しないものの温室効果の高いガスであるHFCの大気中濃度は増加の傾向にあります。


南極上空のオゾンホールの面積の推移


(3) 酸性雨及び黄砂

 酸性雨により、湖沼や河川の酸性化による魚類等への影響、土壌の酸性化による森林への影響、建造物や文化財への影響等が懸念されています。酸性雨は、原因物質の発生源から数千kmも離れた地域にも影響を及ぼす性質があり、国境を越えた広域的な現象です。

 日本では、昭和58年度から酸性雨のモニタリングやその影響に関する調査研究を実施しています。現時点では日本における酸性雨による影響は明らかになっていませんが、一般に酸性雨による影響は長い期間を経て現れると考えられているため、現在のような酸性雨が今後も降り続けば、将来、酸性雨による影響が顕在化するおそれがあります。

 また、近年、中国、モンゴルからの黄砂の飛来が大規模化しており、中国、韓国、日本等でその対策が共通の関心事となっています。従来、黄砂は自然現象と考えられていましたが、近年の現象には、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響しているとの指摘もあり、越境する環境問題としても注目が高まりつつあります。


降水中のpH分布図


(4) 海洋環境

 日本周辺の海洋環境の経年的変化を捉え、総合的な評価を行うため、水質、底質等の海洋環境モニタリング調査を実施しており、調査結果のデータについては、(独)国立環境研究所が整備した「環境GIS」で公表しています。(http://www-gis4.nies.go.jp/kaiyo/)

 また、平成19年の日本周辺海域における廃油ボールの漂流・漂着に関する調査の結果、漂流調査ではほとんど採取されず、漂着調査では平均採取量は前年に比べ若干増加しました。日本周辺海域を除いた北西太平洋海域においては、昭和57年以降低いレベルで推移しており、19年はほとんど採取されませんでした。同年の海上漂流物の調査の結果、プラスチック等の海面漂流物は、夏期の日本周辺海域に多く分布しています。 


(5) 森林、砂漠化

 世界の森林は、陸地の約30%を占め、面積は約40億haに及びますが、2000年(平成12年)から2005年(平成17年)にかけて、年平均730万haの割合で減少しました。特に、熱帯林が分布するアフリカ地域、南アメリカ地域及び東南アジアで森林の減少が続いています。その原因として農地への転用、非伝統的な焼畑農業の増加、燃料用木材の過剰採取、森林火災等が挙げられます。

 砂漠化の影響を受けている土地は、世界の陸地の4分の1に当たる36億haに達し、2億5千万人以上の人々が砂漠化の影響下にあり、約10億人の人々が砂漠化の影響を受ける危険性があると言われています。その背景には、開発途上国における人口増加、貧困、市場経済の進展等の社会的・経済的要因が関係しています。


世界の森林面積の年当たりの変化率(2000~2005年)


2 大気環境の保全

(1) 光化学オキシダント

 光化学オキシダントは、眼やのどへの刺激や呼吸器に影響を及ぼす光化学スモッグの原因となっており、依然として、全国ほとんどの地域で環境基準(1時間値が0.06ppm以下であること)を越えています。

 都道府県では、大気汚染防止法に基づき、光化学オキシダントの濃度が高くなり、被害が生ずる恐れがある場合に、光化学オキシダント注意報等を発令しています。

 また、「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめ君)」により、都道府県等が測定している全国の大気環境データや光化学オキシダント注意報等発令情報をリアルタイムで収集し、インターネット等で公開しています。


光化学オキシダント濃度レベル毎の測定局数の推移(一般局と自排局の合計)(平成14年度~18年度)


(2) 窒素酸化物

 窒素酸化物の主な発生源には工場等の固定発生源と自動車等の移動発生源があります。窒素酸化物は光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、酸性雨の原因物質となるほか、二酸化窒素は高濃度で呼吸器を刺激し、好ましくない影響を及ぼすおそれがあります。

 二酸化窒素に係る環境基準達成状況は、平成18年度には一般環境大気測定局(一般局)で100%、自動車排出ガス測定局(自排局)で90.7%であり、自排局では前年度に比べてほぼ横ばいでした。


二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(平成14年度~18年度)


(3) 浮遊粒子状物質(SPM)

 大気中に浮遊する粒径が10μm以下の浮遊粒子状物質は、工場等から排出されるばいじんやディーゼル自動車から排出されるディーゼル排気粒子、土壌の巻き上げ等の一次粒子と、窒素酸化物等のガス状物質が大気中で粒子状物質に変化する二次生成粒子からなります。微小なため大気中に長時間滞留し、肺や気管等に沈着して高濃度で呼吸器に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 浮遊粒子状物質に係る環境基準達成状況は、平成18年度には、一般局は前年度に比べやや低下し、自排局はほぼ横ばいでした。微小粒子物質(PM2.5)については、PM2.5の健康影響に係る疫学研究、動物実験、曝露調査に関する調査研究を実施し、その成果を取りまとめました。また、諸外国における知見の情報収集を実施し、これらの国内外の科学的知見を踏まえ、学識経験者により構成される検討会を開催し、健康影響に関する評価を進めました。


浮遊粒子状物質の環境基準達成状況の推移(平成14年度~平成18年度)


(4) 有害大気汚染物質

 近年、多種多様な有害大気汚染物質が、低濃度ながら大気中から検出されており、これらの物質に長期間にわたってばく露することによる健康影響が懸念されています。環境基準が設定されている4物質のうち、ベンゼンは2.9%、ジクロロメタンは0.3%の地点で環境基準を超過していましたが、テトラクロロエチレン及びトリクロロエチレンについては、すべての地点で環境基準を満たしていました。指針値が設定されている7物質のうち、ニッケル化合物は1.6%、1,2-ジクロロエタンは0.5%の地点で指針値を超過しており、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物、クロロホルム、1,3-ブタジエンは、すべての地点で指針値を下回っていました。


(5) 石綿対策

 大気汚染防止法では、石綿製品等を製造する施設について排出規制等を行っています。また、吹付け石綿や石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材を使用するすべての建築物その他の工作物の解体等作業について作業基準等を定め、石綿の大気環境への飛散防止対策に取り組んでいます。


(6) 騒音・振動、悪臭

 騒音・振動の苦情件数は、ここ数年増加しており、平成18年度はそれぞれ17,192件、3,615件でした。悪臭苦情の件数は、18年度は18,805件で3年連続で減少しました。


騒音・振動・悪臭に係る苦情件数の推移(昭和49年度~平成18年度)

 平成18年度の道路に面する地域における騒音に係る環境基準の達成状況は、全国3,292千戸の住居等について、昼間または夜間で環境基準を超過していたのは480千戸(15%)、このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある1,404千戸のうち昼間または夜間で環境基準を超過していたのは335千戸(24%)でした。17年度の航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、測定地点の約72%の地点で達成しました。


平成18年度道路に面する地域における環境基準の達成状況


(7) ヒートアイランド現象

 ヒートアイランド現象は、都市部の気温が郊外に比べて高くなる現象です。この現象により、夏季においては、熱帯夜の日数が増加しています。また、冷房等による排熱が気温を上昇させることにより、さらなる冷房のためのエネルギー消費が生ずるという悪循環が発生しています。

 ヒートアイランド対策大綱に基づき、人工排熱の低減、地表面被覆の改善、都市形態の改善、ライフスタイルの改善の4つを柱とするヒートアイランド対策の推進を図りました。また、関連する調査研究として、ヒートアイランド現象の実態や環境への影響に関する調査・観測や、熱中症の予防情報の提供とモニタリングを継続的に実施しました。

3 水環境、土壌環境、地盤環境の保全

(1) 水環境

 水質汚濁に係る環境基準のうち、人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)については、平成18年度の公共用水域における環境基準達成率が99.3%ですが、生活環境の保全に関する項目(生活環境項目)のうち、有機汚濁の代表的な水質指標であるBOD又はCODの環境基準の達成率は、平成18年度は86.3%となっています。水域別では、河川91.2%、湖沼55.6%、海域74.5%となり、湖沼では依然として達成率が低くなっています。平成18年度の広域的な閉鎖性海域の環境基準達成率は、東京湾は68.4%、伊勢湾は43.8%、大阪湾は66.7%、大阪湾を除く瀬戸内海は70.7%となっています。


環境基準達成率の推移(BOD又はCOD)


三海域の環境基準達成率の推移(COD)

 地下水については、平成18年度の地下水質の概況調査結果によると、調査対象井戸の6.8%において環境基準を超過する項目が見られ、施肥、家畜排せつ物、生活排水等が原因と見られる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の環境基準超過率が、4.3%と最も高くなっており、これらに係る対策が緊急の課題となっています。


地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過率(概況調査)の推移


(2) 土壌汚染

 土壌は、一旦汚染されると汚染状態が長期にわたるという特徴を持っています。市街地等の土壌汚染については、近年、土壌汚染対策法に基づく調査や対策が進められているとともに、自主的な汚染調査を行う事業者の増加に伴い土壌汚染が判明する事例が増加しています。このような状況を踏まえ、「土壌環境施策に関するあり方懇談会」を開催して、土壌汚染に関する課題を整理し、土壌汚染対策の新たな施策のあり方について検討しました。


年度別の土壌汚染判明事例件数


(3) 地盤沈下

 地盤沈下は、工業用、水道用、農業用等のための地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、粘土層が収縮するために生じます。平成18年度までに、地盤沈下が認められている主な地域は37都道府県61地域となっています。かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市などでは、地下水採取規制等の対策の結果、地盤沈下の進行は鈍化あるいはほとんど停止しています。

 しかし、新潟県南魚沼地域や茨城県関東平野など一部地域では依然として地盤沈下が認められています。また、地盤沈下した海抜ゼロメートル地域などでは洪水、高潮、津波などによる甚大な災害の危険性のある地域も少なくありません。

4 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に係る施策

(1) 我が国の物質フロー

 循環型社会を構築するためには、私たちがどれだけの資源を採取、消費、廃棄しているかを知ることが第一歩となります。

 我が国の物質フロー(平成17年度)を概観すると、18.7億トンの総物質投入量があり、その半分程度の8.2億トンが建物や社会インフラなどの形で蓄積されています。また1.6億トンが製品等の形で輸出され、5.0億トンがエネルギー消費及び工業プロセス排出、5.8億トンが廃棄物等という状況です。このうち循環利用されるのは2.3億トンで、これは、総物質投入量の12.2%に当たります。廃棄物の処理に起因する温室効果ガスの排出量は大幅に増加しており、循環型社会の形成に向けた取組と、低炭素社会に向けた取組との統合が重要となります。

 以前の物質フロー図に明示していなかった水分に関して、含水等として表しました。これは、天然資源等投入量や循環利用量には含まれていない、社会経済活動の過程において取り込まれる水分について推計しています。


我が国における物質フロー(平成17年度)

 平成20年3月に閣議決定した循環型社会基本計画では、発生抑制、再使用、再生利用、処分等の各対策がバランス良く進展した循環型社会の形成を図るために、この物質フロー(ものの流れ)の異なる断面である「入口」、「出口」、「循環」に関する指標に新たな目標を設定しました。それぞれの指標についての目標年次は平成27年度としています。


 目標年次:平成27年度

指標 資源生産性 循環利用率 最終処分量
目標 約42万円/トン 約14%~約15% 約23百万トン


・資源生産性(=GDP/天然資源投入量)

 より少ない資源でどれだけの大きな豊かさを生み出しているか総合的に表す指標。

・循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量))

 社会に投入される資源のうち、どれだけ循環利用された資源が投入されているかを示す指標。

・最終処分量

 廃棄物の埋め立て量。廃棄物の最終処分場のひっ迫という喫緊の課題にも直結した指標。


 各指標について、最新の達成状況をみますと、資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)は、平成17年度は約33.0万円/トンであり、平成2年度[約21万円/トン]から概ね60%、平成12年度[約26万円/トン]から概ね25%向上しました。

 循環利用率は、平成17年度は約12.2%であり、平成2年度[約8%]から概ね50%向上、平成12年度[約10%]から概ね40%向上しました。

 最終処分量は、平成17年度は約32百万トンで、平成2年度[約110百万トン]から概ね70%減、平成12年度[約56百万トン]から概ね40%減となりました。

 我が国で発生する循環資源がどのように循環利用されているか、その特徴をまとめると

 バイオマス系循環資源は、家畜排せつ物、下水道事業や製造業などにおいて水処理の際に発生する有機性汚泥、建設現場や木製品製造業の製造工程から発生する木くず、家庭から発生する厨芥類(生ごみ)などがあります。主な用途としては、農業でのたい肥、飼料としての利用が挙げられます。このほかには、汚泥をレンガ等の原料として利用している場合や、木くずを再生木質ボード等として利用する場合などがあります。

 非金属鉱物系(土石系)循環資源は、建設現場から発生するがれき類や、鉄鋼業、非鉄金属業、鋳物業から発生する鉱さい、建設現場、浄水場などから発生する無機性汚泥、家庭、飲食店などから出るガラスびんなどがあります。主な用途としては、骨材、セメント原料などの建設分野での利用が挙げられます。

 金属系循環資源は、建設現場から発生する解体くず、鉄鋼業、非鉄金属業から発生する金属くず、機械器具製造業から発生する加工金属くず、及び金属缶や家電などの使用済製品などが挙げられます。循環利用の用途としては、電炉による製鉄や、非鉄金属精錬に投入される金属原料としての利用等が挙げられます。

 化石系循環資源は、廃棄物等発生量全体の3%を占めています。その中身を見ると、各種製造業から発生する廃油や、プラスチック製品製造業、機械器具製造業から発生するプラスチック加工くず、家庭や各種産業などから発生する使用済プラスチック製品などが挙げられます。用途としては、建設資材や、鉄鋼業での還元剤としての利用などが挙げられます。また、プラスチックとして再生利用される場合もありますが、現状では再生利用する廃プラスチックに、様々なグレードの樹脂及び添加剤が含まれているため、多くの場合カスケード利用になっています。

 また、自然還元されたものは、家畜排せつ物の一部や稲わら、麦わら、もみがらといった畜産や農業に伴う副産物が排出され、肥料などとして農地等に還元され、リユースされたものの内訳は、ビールびんや牛乳びんなどのリターナブルびんの再使用やタイヤの再使用などとなっています。なお、これらの量には中古品として販売された量は含まれていません。マテリアルリサイクルされたものの代表的なものとして、非金属鉱物系資源の代替原料(再生砕石、再生アスファルト合材)、同じく非金属鉱物系資源の代替原料(セメント原燃料、路盤材等)として利用される鉱さいなどが挙げられます。なお、これらのマテリアルリサイクル量の中には、廃油や廃木材などを燃料として使用する量も含まれています。


(2) 廃棄物の排出量

 ア 一般廃棄物(ごみ)の処理の状況

 平成17年度におけるごみの総排出量*1は5,273万トン(前年度比1.2%減)、1人1日当たりのごみ排出量は1,131グラム(前年度比1.3%減)となっています。

 *1「ごみ総排出量」=「収集ごみ量+直接搬入ごみ量+集団回収量」


ごみ総排出量と1人1日当たりごみ排出量の推移


 イ 産業廃棄物の処理の状況

 平成17年度における全国の産業廃棄物の総排出量は約4億2,168万トンとなっています。

 そのうち再生利用量が約2億1,889万トン(全体の52%)、中間処理による減量化量が約1億856万トン(42%)、最終処分量が約2,423万トン(6%)となっています。再生利用量は、直接再生利用される量と中間処理された後に発生する処理残さのうち再生利用される量を足し合わせた量になります。また、最終処分量は、直接最終処分される量と中間処理後の処理残さのうち処分される量を合わせた量になります。


産業廃棄物の処理の流れ(平成17年度)


(3) 不法投棄の現状

 ア 不法投棄の件数及び投棄量

 平成18年度に新たに確認された産業廃棄物の不法投棄事案は、554件(前年度558件)13.1万トン(同17.2万トン)で、件数・トン数ともに前年度より減少しました。


産業廃棄物の不法投棄件数及び投棄量の推移


(4) 循環型社会の形成に向けた国の取組

 法律の規定により循環型社会基本計画を見直しました。(36ページ参照)。

 各種リサイクルの取組も行っております。主なものとしては、容器包装廃棄物の3Rを推進するため、改正後の容器包装リサイクル法に基づき委嘱した容器包装廃棄物排出抑制推進員(愛称:3R推進マイスター)による消費者等への普及啓発、容器包装廃棄物の3Rに資する優れた製品・取組や消費者自ら製作したマイバッグへの環境大臣賞の授与や、レジ袋有料化導入促進のためのモデル事業を実施しました。

 家電リサイクル関係では、中央環境審議会・産業構造審議会の合同会合において、制度の評価・検討が進められた結果、平成20年2月に中央環境審議会・産業構造審議会の合同部会において、「家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討について」の報告書が取りまとめられました。

 その中では、

 ・年間約1160万台もの排出家電を製造業者等が再商品化していること

 ・再商品化率も法定の義務率を大幅に超えた高水準を達成しつつ推移していること

 などにより、同法の仕組みは十分に機能し、着実に成果を上げていると評価された一方、

 ・再商品化費用の透明性が確保されておらず、また、製造業者等が定める料金が一律で高止まりしていること

 ・家電リサイクル法に基づく小売業者の引渡義務違反(横流し)が存在すること

 ・家電不法投棄は、近年減少傾向にありつつも、悪質化しているとの指摘があること

 など、家電リサイクル制度の課題も指摘されました。

 これを踏まえ、家電リサイクル制度に係る個別課題への対策として、

 ・再商品化費用の透明化、再商品化料金の低減化等を通じた適正排出の促進

 ・小売業者の排出家電の引取り・引渡しに係るチェック体制の強化やリユース・リサイクル仕分けガイドラインの策定

 ・市町村の不法投棄対策や離島の収集運搬費用に対するメーカー等の資金面も含めた協力

 ・液晶テレビ・プラズマテレビ及び衣類乾燥機の対象品目への追加

 などを講ずるべきこととされています。


(5) 廃棄物と地球温暖化対策

 温室効果ガスの排出量を削減するためには、各部門間の関係を踏まえて、効果的な対策を立案していく必要があります。廃棄物の発生抑制や再使用、再生利用及び熱回収といった循環資源の利用を促進することは、一般に化石系資源の消費量の減少及び廃棄物の発生量の減少をもたらすものと言えます。

 焼却時に発電等を行う熱回収は、燃やさざるを得ない廃棄物の排熱を有効利用する限りにおいては、その推進により、発電等に必要な重油、石炭等の化石燃料の消費量の削減に寄与します。


(6) 国際的な取組

 2007年(平成19年)10月には第2回3Rイニシアティブ高級事務レベル会合がドイツで開催され、G8をはじめとする各国で3Rに関連する取組が進展していることが確認されました。2008年(平成20年)3月には東京で第2回アジア3R推進会議を開催し、アジアでの3R推進に向けたさらなる国際協力の方向性等について意見交換を行いました。5月のG8環境大臣会合では我が国が議長国となって神戸3R行動計画をとりまとめました。

 また、アジアでの3Rの推進としては、ベトナム、インドネシア等の国において国別の状況に応じた3R計画・戦略の策定を支援するとともに、3Rの制度・技術・経験の情報の共有を通じ、アジア各国の取組を支援するため、アジア開発銀行(ADB)や国連環境計画アジア太平洋地域事務所(UNEP/ROAP)等により構築・運営されている情報拠点「3Rナレッジ・ハブ」へコンテンツを提供しています。

5 化学物質の環境リスクの評価・管理に係る施策

 我が国では数万種に上る化学物質が流通していると言われています。化学物質の製造・流通・使用・廃棄に当たり、化学物質による環境への影響を未然に防止するためには、化学物質の人の健康や生態系に有害な影響及ぼすおそれ(環境リスク)の評価を行い、適切な対策を講じていく必要があります。平成19年度は第6次の取りまとめを行い、生態リスクについて6物質が、「詳細な評価を行う候補」と判定されました。

 化学物質審査規制法においては、新たな化学物質の製造・輸入に際し、その物質の分解性、生物への蓄積性、人や動植物への毒性を事前に審査し、化学物質の性状に応じた規制を行っています。平成19年度は、新規化学物質の製造・輸入について626件(うち低生産量新規化学物質については242件)の届出があり、事前審査を行いました。

 また、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、環境中への排出量や廃棄物に含まれて移動する量を事業者自らが把握、報告し、国は事業者からの報告の集計及び報告以外の排出量の推計を行い、公表する仕組みであるPRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)により、平成20年2月には、第6回目の集計結果が公表されました。


化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律のポイント

 ダイオキシン類については、17年に国の削減計画を変更し新たな目標値として、22年までに15年に比べて約15%の削減をすることとしました。18年の排出総量の推計は、15年から約20%の削減がなされており、順調に削減が進んでいます。


届出排出量・届出外排出量上位10物質とその排出量(平成18年度分)

 国内における毒ガス弾等に対する対策については、平成15年6月6日の閣議了解及び同年12月16日の閣議決定を踏まえ、旧軍毒ガス弾等による被害の未然防止を図るための環境調査や処理等を実施しています。また、環境省に設置した毒ガス情報センターにおいて、継続的に情報を収集し、集約した情報や一般的な留意事項の周知を図っています。

6 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進

 平成19年11月、「第三次生物多様性国家戦略」を閣議決定しました。この戦略では、生物多様性の重要性をわかりやすく解説し、地球温暖化による影響について新たに盛り込むとともに、今後5年程度の施策の方向性を4つの「基本戦略」としてまとめました。

 生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)及び同条約カルタヘナ議定書第5回締約国会議を我が国で開催すべく立候補しており、候補地である愛知県名古屋市や関係省庁と連携しながら準備を進めました。

 絶滅のおそれのある野生生物の種を「哺乳類」「鳥類」等の分類群ごとに取りまとめたレッドリストについて、平成14年度より第2次見直しのための検討を行い、平成19年8月までに、全10分類群の新たなレッドリストを作成し、公表しました。

 2007年(平成19年)7月、沖縄県八重山地域では海水温が上昇し、大規模な造礁サンゴ類の白化現象が観察されました。石垣島周辺から西表島の間に広がる石西礁湖海域において、8月の調査で観察された白化現象は、1998年に世界規模で起こった白化現象に劣らない大規模なものでした。現在、白化による死亡率を調査し、2007年の被害状況を分析中です。

 また、農山漁村地域において鳥獣による農林水産業等に係る被害が深刻な状況にあることを背景として、鳥獣による農林水産業等に係る被害防止のための特別措置に関する法律が成立し、平成20年2月から施行されました。

 平成19年6月に開催されたワシントン条約締約国会議における国際取引規制対象種の追加等をふまえ、種の保存法に基づく国際希少野生動植物の追加等を行いました。

 国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)の議長国として、平成19年4月に東京において、国際サンゴ礁年2008に向けた公開シンポジウム「サンゴ礁保全のためのパートナーシップ」及びICRI総会を開催しました。

 平成19年が自然公園法制定50周年であることを機に、昭和34年から開催してきた「自然公園大会」を、エコツーリズムをはじめ、自然とのふれあいにより重点を置いた「自然公園ふれあい全国大会」と改称し、同年11月に瀬戸内海国立公園六甲地域(兵庫県神戸市ほか)において開催しました。

 エコツーリズム推進法に定める政府の基本方針の検討会を開催し、基本方針策定に向けた作業を進めました。

 国民の温泉に対する関心とニーズが増加・多様化する中、温泉利用事業者に対し温泉成分の定期的な分析と分析結果の掲示の義務付けなどを内容とする温泉法の一部を改正する法律が平成19年10月20日に施行されました。

 また、平成19年6月に東京都渋谷区において発生した温泉汲み上げ施設での爆発事故の教訓を踏まえ、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止するため、温泉の採取に係る許可制度の創設などを内容とする温泉法の一部を改正する法律が同年11月に成立・公布されました。

 平成19年3月以降、アメリカで有害な原料を含むペットフードに起因する犬やねこの死亡事故が発生したこと等を受け、ペットフードの安全確保の在り方について検討する有識者による研究会を設置しました。研究会では、ペットフードの安全確保のため法規制を導入すべきとの意見を柱とする中間取りまとめがなされ、これを受け、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案を第169回通常国会に提出しました。

7 各種施策の基盤、各主体の参加及び国際的取組に係る施策

(1) 環境保全経費

 平成20年度予算における環境保全経費の総額は、2兆2,141億円となっています。


事項別環境保全経費一覧


(2) 政府の施策

 21世紀環境立国戦略特別部会を設置し、10回にわたる審議を経て、「21世紀環境立国戦略の策定に向けた提言」をとりまとめました。これを踏まえ「持続可能な社会の『日本モデル』の構築」のため、今後1,2年で重点的に着手すべき8つの戦略を定めた「21世紀環境立国戦略」が閣議決定されました。

 また、第三次環境基本計画の第1回目の点検は、環境基本計画の10の重点分野のうち、「都市における良好な大気環境の確保に関する取組」など、5分野を重点点検分野として実施されました。


(3) 環境影響評価等

 平成19年3月に取りまとめられた、戦略的環境アセスメント導入ガイドラインの情報提供を、地方公共団体等に行いました。

 また、環境影響評価に係る技術手法の向上、改善のための検討を行うとともに、環境影響評価における住民等の意見の収集を効果的かつ効率的に行う手法の検討を行いました。

 さらに、事業の種類ごとの主務省令について、事業者及び自治体への周知を図るなど、確実な運用の実施に努めました。

 環境影響評価法に基づき、平成19年度においては、新たに8件の事業で手続が開始され、また、12件で手続が完了し、環境配慮の徹底が図られました。


環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況*1


(4) 水俣病、アスベスト健康被害の救済等

 ア 水俣病

 水俣病の認定は現在公健法に基づき行われており、平成20年3月末までの被認定者は2,960人で、このうち生存者は855人となっており、被認定者は、補償協定に基づき原因企業から直接補償を受けています。

 平成4年度から医療費の自己負担分等を支給する医療事業等を内容とする水俣病総合対策事業が実施されました。また、7年の政治解決を受け、医療事業の申請受付の再開等の施策を実施しました。8年5月には国家賠償請求訴訟について係争中であった計10件が取り下げられ、関西訴訟については、16年10月に最高裁判決が出され、国及び熊本県には、昭和35年1月以降水俣病の発生拡大を防止しなかった責任があるとして、賠償を命じた大阪高裁判決が是認されました。

 平成18年に水俣病公式確認から50年という節目を迎えるに当たり、17年4月に「今後の水俣病対策について」を発表し、医療事業について高齢化の進展等をふまえた拡充、胎児性患者等を始めとする水俣病被害者に対する社会活動支援、地域の再生・振興等の地域づくりの対策等を実施しています。

 水俣病に係る懇談会では、平成18年9月に「いのちの安全」の危機管理体制、「環境・福祉先進モデル地域」の構築等を内容とする提言がとりまとめられました。

 また、新たな救済を求める者の増加を受け、平成18年5月に与党に水俣病問題に関するプロジェクトチームが設置され、検討が進められています。


 イ アスベスト(石綿)健康被害

 石綿による健康被害の救済に関する法律による救済給付に係る申請等については、平成19年度末時点で5,350件を受け付け、うち3,551件が認定、735件が不認定、636件が取り下げられています。


公害健康被害の補償等に関する法律の被認定者数等


公害等調整委員会に係属した事件


(5) 環境教育・環境学習の推進

 環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律及び同法に基づく基本方針に基づき、総合的な学習の時間におけるNPO等の外部人材の活用推進事業等を行うとともに、人材認定等事業の登録を行い、登録した事業についてインターネットによる情報提供を行いました。また、子どもの自主的な環境保全活動を支援する「こどもエコクラブ事業」、環境保全についての専門的な知識・経験を有する人材を確保する「環境カウンセラー活用推進事業」、家庭におけるエコライフを支援する「我が家の環境大臣事業」等を実施しています。


(6) 社会経済のグリーン化の推進に向けた取組

 環境への負荷の低減を図るために経済的負担を課す措置については、その具体的措置について判断するため、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、廃棄物の抑制などその適用分野に応じ、これを講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響及び諸外国の活用事例等につき、調査・研究を進めました。

 「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」は、国等の各機関(国や独立行政法人等の公的機関)による環境物品等(環境への負荷の低減に資する物品又は役務)の調達の推進、情報提供の充実などにより、環境物品等への需要転換を促進することを目的としています。国等の各機関では、基本方針に即して平成19年度の環境物品等の調達方針を定め、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。

 また、企業の社会的責任という観点から環境への取組をとらえる傾向が高まっていることを受けて、金融のグリーン化の促進を目的として、環境に配慮した投融資の実態を把握すべく調査を行い、有識者による検討会を開催し、今後の環境に配慮した投融資の普及のための検討を行いました。

 我が国の平成17年時点での環境ビジネスの市場・雇用規模について推計した結果、市場規模は約44兆1千億円、雇用規模は約102万6千人となっています。また環境保全を考えた消費者の行動が需要を誘発するビジネスも加えた環境誘致型ビジネスの市場・雇用規模については、約58兆1千億円、雇用規模は約137万1千人となっています。


(7) 国際的取組に係る施策

 地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。



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