第3節 地域からの循環型社会づくり

1 地域循環圏の構築

(1) 地域循環圏の意義

 循環型社会基本計画では、地域の特性や循環資源の性質等に応じた最適な規模の循環を形成する「地域循環圏」の構築を新たに盛り込みました。これは、廃棄物の適正処理を前提に、温暖化対策や生物多様性の保全などの環境面や、希少性や有用性などの資源面、さらに輸送効率や処理コストなどの経済面の各観点から、循環資源ごとに地域の特性を踏まえて最適な範囲での循環を目指すものです。


(2) 地域循環圏のイメージ

 「地域循環圏」の基本的な考え方は、循環資源の性質と地域の特質に応じて、コミュニティ、地域、ブロック圏、全国規模、そして国際的なレベルに至る最適な規模の「地域循環圏」を構築していくことで、よりきめ細かく、効果的な循環型社会の形成を目指すものであり、地域の自立と共生を基本とした「地域再生」の原動力となることも期待されています。


地域循環圏について


 ア コミュニティ

 例えば、コミュニティ・レベルにおいては、不用になったものを近所で融通したりフリーマーケットを通じたりしてリユースし、また故障したものも修理してできるだけ長く使われます。


 イ 農山漁村

 間伐材、家畜排せつ物、貝殻、分別収集された生ごみ等が循環資源となり、バイオマス系循環資源として肥飼料等に利用され、これらを利用して生産された農畜水産物等が地域内で消費される地産地消の循環が形成されます。


農山漁村における循環


 ウ 中小都市

 都市部から安定的に一定量が排出されるバイオマス系循環資源については、農村部に運搬され肥飼料等として利用され生産された農畜産物が都市部において消費される都市と農村の循環が形成されたり、地域の特性に応じてエネルギーとして利用することが推進されます。工業系廃棄物等については物流網を通じて比較的広域に流通し、再生利用されます。


中小都市における循環


 エ 大都市

 大量の廃棄物等が恒常的に排出・収集され、徹底した資源回収、資源化できないものの焼却施設における減量化及びその際の熱回収等が大規模かつ効率的に行われます。 


大都市における循環


 オ ブロック圏、全国

 ブロック圏や全国的な規模の循環圏においては、その循環の中心の産業集積地において、生産活動に必要な資源投入量の抑制が徹底されるとともに、リサイクル産業等が集積し、陸運・海運も含め広域的に循環資源が収集され、規模の経済性と集積内での相互連携により効率的な循環資源の利用が進みます。 

 また、動脈産業の技術・インフラ・ノウハウ等を応用し、ゼロエミッションに向けた取組が徹底されます。


ブロック圏、全国における循環


 カ 国際的な規模の循環

 国際的な規模の循環圏では、各国の特性を活かした循環資源の利用が推進され、我が国では、他国ではリサイクル困難な、高度なリサイクル技術を要する循環資源が活用されます。


国際的な規模の循環


2 各地域循環圏における資源循環 ~地域再生につながっている例

(1) コミュニティ~地域における資源循環

 ア 菜の花プロジェクト

 全国各地で、農家と一般市民の連携により「菜の花プロジェクト」が進められています。同プロジェクトでは、転作田などで栽培された菜の花から菜種油を搾取して学校給食や飲食店、一般家庭に提供するとともに、油かすは飼料化、肥料化などにより堆肥として菜の花畑に利用され、また、廃食油を回収して、バイオディーゼル燃料として活用しています。


 イ 茂木町

 茂木町では、生ごみの分別収集を実施し、森林の落ち葉や間伐材、家畜排せつ物などとあわせて、有機物リサイクルセンター「美土里館」において、たい肥生産への活用を図っています。たい肥化することで、焼却費用の削減・有害物質の抑制を図るのみならず、たい肥を使った土づくりからはじまる農業本来の姿を復活させ、化学肥料や農薬の使用を抑えた「環境保全型農業」を推進し、安全でおいしい農産物の生産に取り組んでいます。


茂木町の取組


 ウ 志布志市

 志布志市は、市内に焼却炉がなく全量埋立処分することになるため、28品目にわたる分別収集の徹底によりごみの減量化に取り組み、その結果、埋立処分量の8割削減を達成しています。その際に「衛生自治会」が育成され、「面倒くさいのススメ」ということで住民の協力により分別収集を徹底し、また、生ごみについては「サンサンひまわりプラン」ということで、生ごみからひまわり油をつくり出すというプロジェクトを進めるなど、地域における連携のもと、埋め立てごみゼロへの挑戦をさらに進めています。


志布志市の取組


(2) ブロック、全国、国際的な規模での広域的な資源循環

 循環資源の性質や用途、その処理・利用施設の立地などに応じて、より広域的な資源循環の環が形成されています。


 ア 秋田県北部

 秋田県北部地域では、鉱山や製錬所を活用した金属リサイクルが進められています。同地域は、ゼロエミッション構想を基本に、地域の振興を図りながら環境と調和したまちづくりを進めていくためのエコタウン制度の承認を受け、レアメタルを含め、広域的な金属リサイクルの拠点となっています。


秋田県北部エコタウン計画の概要

 また、同地域の民間企業により、バーゼル条約事務局及びアジア各国の協力の下、使用済み携帯電話をアジアから回収し資源回収するプロジェクトの検討が進められています。


 イ 川崎市

 川崎市では、臨海地区において、地域への環境負荷をできるだけ削減し、環境と産業活動が調和した持続可能な社会をめざす「川崎エコタウン」が整備されています。地区内の企業が、生産工程から製品の廃棄時にいたるまであらゆる面で環境負荷要因の削減の努力を行い、さらに、個々の企業の努力に加えて、企業間の連携やリサイクル施設を利用することにより地区内の資源循環を目指しています。


 ウ 北九州市

 北九州市では、アジア地域での環境協力を進めてきています。国際資源循環の仕組みとして、アジアから廃基板を輸入して国内で高度リサイクルを実施し、日本からは廃プラを輸出するICタグによる追跡実証実験も実施しており、検査・手続、トレーサビリティ情報管理等の認証機能など、エコタウンや港を活用した安全・安心のゲート機能の構築についても検討を進めるなど、国際資源循環の拠点としての取組を進めています。


北九州市の取組


3 より効果的な施策展開に向けて

(1) 制度構築と支援施策の有機的実施

 地域循環圏の構築に当たって、最適な循環の範囲は、循環資源の性質により異なります。このため、廃棄物の適正処理を前提に、地球温暖化対策や生物多様性の保全などの環境面や、希少性や有用性などの資源面、さらに輸送効率や処理コストなどの経済面の各観点から、循環資源ごとに、排出実態や必要な処理施設の立地状況など地域の特性を踏まえて最適な循環の範囲の検討を進めていきます。

 また、これらの大前提として、廃棄物の適正処理など、循環資源の適正な利用・処分の確保、生活環境の保全を図ります。さらに、地域によって循環資源の量、施設規模、再生品等の需要が均衡しないことも考えられるため、適切な情報に基づく地域間連携を図ります。


(2) 技術・システムの高度化

 3Rに関する技術・システムを高度化し、製品ライフサイクル全体や、サプライチェーン全体について3Rを目指す取組が進むことで、地域循環圏の構築に寄与します。このため、製品ライフサイクル、サプライチェーンの観点からの3Rの技術・システムの研究開発、実用化、ビジネスモデルの開発及び事業化を積極的に推進していく必要があります。

 さらに、上記の3Rの技術・システムの効果を評価する技術及び個々の技術・システムと社会システムを統合し3R型の生産・消費システムを実践するための設計技術の開発を戦略的に推進します。


循環型社会を支える主な技術


(3) 共通的基盤の整備

 循環資源に共通した基盤を整備する施策を推進します。例えば、循環型の地域づくりの核となる地方自治体、NPOや事業者の優れた取組の共有と全国への普及を目指し、地域における循環型社会に資するモデル的な事業や循環型地域ビジョンづくりの支援を行います。また、地域の廃棄物系バイオマスの利活用を図る施設整備に対して積極的に財政支援を行う等、地域循環圏の形成に係る事業の支援を進めます。



前ページ 目次 次ページ