第4節 身近にある対策技術


1 我が国の二酸化炭素排出状況

我が国における二酸化炭素の排出状況を、京都議定書の基準年である1990年(平成2年)から排出部門別に見てみます。

日本の二酸化炭素排出量の推移

産業部門では依然として二酸化炭素の排出量の割合は大きく、京都議定書の部門別目標値には及ばないため引き続き取組の推進が必要です。しかし様々な省エネルギー対策技術の導入など取組が進んでおり、基準年である1990年との比較では排出量は減少しています。
民生部門(業務その他、家庭)、運輸部門の二酸化炭素排出量は、基準年である1990年と比較して全体として大幅な増加(業務その他44.6%、家庭36.7%、運輸18.1%)となり、かつ、2005年現在57%と相当の排出割合を占めていることが分かります。逆に見れば、これらの部門に関わる多くの人々が取組を進めることにより、削減効果は非常に大きくなるものと期待できます。このため、特にこれらの部門を中心に、実用段階にある技術の普及による二酸化炭素排出量の削減について見ていくこととします。

2 製品やシステムに具体化された各種の技術の状況

各種の技術の要素は、製品やシステムに実際に取り入れられ、それが普及し使用されることによって初めて、二酸化炭素排出削減効果を発揮します。以下では、製品やシステムで使われている技術のうち今後広く普及が期待されるものについて、エネルギーを使う側(需要側)の技術とエネルギーを供給する側の技術とに分けて見ていくこととします。

対策技術を活用した機器等を導入した家庭のイメージ


(1)需要側での省エネルギー技術
家庭や業務用ビル等の民生部門からの排出の内訳を見ると、給湯や冷暖房、動力他(冷蔵庫、照明等)などが、二酸化炭素排出の大きな割合を占めています。また、運輸部門に関しては、二酸化炭素排出量の約9割を自動車が、特に約5割を自家用乗用車が占めています。これらの機器等に係る排出量の削減は大きな効果を生むので、積極的に排出量を減らすことが重要です。以下では、これらの機器等を中心に、技術の活用による二酸化炭素排出量の削減可能性について見ていきます。

民生家庭部門の二酸化炭素排出の内訳


民生業務部門の排出の内訳


運輸部門における二酸化炭素排出量の割合

ア 熱、ヒートポンプ関連技術
大気、地中、下水など周囲の熱を取り込んで別の場所へ移動させて放出するヒートポンプ技術は、通常では利用しにくい低い温度の熱エネルギーを利用することができ、高効率でエネルギーを活用することが可能です。各種技術の向上により、大きく性能が向上しています。

ヒートポンプの仕組み


(ア)高効率なエアコンディショナー
エアコンは、家庭内における消費電力の大きな部分を占めているので、効率性の向上が特に期待される分野です。高性能のヒートポンプ技術、新たな制御技術など様々な技術の開発・導入により、エアコンの効率は非常に良くなっており、消費電力1kW当たりの冷暖房能力(kW)の推移を見ると、この10年ほどで急速に効率が上がっています。
エアコンの家庭内ストック台数は1億2000万台以上あり、長期に使用されているものも少なくないため、代替の余地は相当にあると考えられます。さらに、近年の高性能機種では、内部の清掃が自動になっている(埃がつまることによる効率の低下が起きにくい。)等、利便性と経済性と環境性能が一体となって向上していると言えます。

エアコンの冷暖房COP推移


(イ)自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯器、潜熱回収型高効率ガス給湯器
自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯器は、電気と大気中の熱を使ってお湯を沸かす給湯器です(「エコキュート」という名称で知られています。)。大気中の熱を使うため効率が高く、従来の燃焼式給湯器と比較して一次エネルギー使用量を約3割、二酸化炭素排出量を約半分削減できます。このため従来の給湯器と比較して大幅な光熱費の削減も図ることができます。
また、従来の約80%に対して約95%という高効率を達成した潜熱回収型高効率ガス給湯器(「エコジョーズ」という名称で知られています。)も開発され、普及が進んでいます。

自然冷媒ヒートポンプ給湯器の仕組み


(ウ)冷蔵庫
冷蔵庫も、冷却技術、断熱技術、制御技術などに関する様々な技術によって省エネルギー性能が大幅に向上しています。その結果、この20年の間に、内容積1リットル当たりの消費電力量は3分の1以下になり、この数年だけでも消費電力量は3割以上低下しました。

冷蔵庫(450Lクラス)の実使用時年間電力消費量の推移

イ 照明の省エネルギー技術
照明は、素材・デバイス技術により大幅な省エネルギー化が進んでいます。
照明用電球については、インバータ式蛍光灯機具、高周波点灯専用形蛍光灯(Hfランプ)などに代替されることにより大幅に消費効率が上がっています。これらの製品はすぐに点灯する、ちらつかないといった利点も併せ持っています。電球形蛍光ランプは白熱電球と比較して4〜5倍の高いエネルギー効率となっています。ランプの価格は白熱電球より高いですが寿命も長く電気代も安いため結局経済的です。
また、低消費電力に加え長寿命、小型化などの特徴があるLED(発光ダイオード)や、低消費電力であるとともに薄く作ることができ折り曲げ可能な有機EL(エレクトロルミネッセンス)は、照明分野での実用化・普及も期待されます。

電球形蛍光ランプと白熱電球の消費電力の比較

ウ その他の家電製品の省エネルギー技術
テレビは、画面の大型化に伴って消費電力の増加につながりやすいという問題がありますが、省エネルギー化が進んでおり、中型以下では液晶テレビの電力消費量がプラズマテレビやブラウン管テレビに比して少ないといった傾向があります。
その他、温水洗浄便座や真空断熱型電気ジャーポットなどにおいても、各種の技術の活用により消費電力の削減が進んでいます。

テレビの省エネ要素技術

エ 建物関係の省エネルギー技術
建物の断熱を考える際には、熱を通しやすい窓の断熱対策が重要な点の一つです。単板ガラスと比較すると、複層ガラス、特に高断熱複層ガラスは非常に熱を通しにくく省エネルギー性能に優れています。さらに、窓以外の部分の断熱性能が低い場合には、壁や天井などに断熱材を用いるなどの対策を併せて行うことが重要です。また、建物の放射温度を下げ暑さを和らげる効果のある屋上緑化や壁面緑化も近年普及が進んでおり、土壌の軽量化などの素材開発や、植物への給水システムなどの技術がいかされています。

ガラスとサッシの種類による断熱性能

オ 自動車関係の技術
運輸部門の二酸化炭素排出量の約9割を自動車が占めています。この排出削減のためには、自動車輸送量を抑制・削減するための交通需要マネジメントや都市構造の改善といった様々な施策の組合せが必要ですが、自動車単体の燃費の改善に関する技術の普及は即効的かつ重要なものと言えます。
複数の動力源を組み合わせて作るハイブリッド自動車は、高度の制御技能や電池に関する技術を用いており、省エネルギー性能が非常に高い上、排出ガス低減性能も非常に高いことが特徴です。燃料消費量すなわち二酸化炭素排出量が大幅に削減され、同時に燃料費が大幅に削減されます。
従来型のガソリンエンジン自動車やディーゼルエンジン自動車についても、燃料噴射の方式や制御の改善等により燃費が相当改善しています。

ハイブリッド自動車の仕組み

カ 施設全体の管理システム
近年、BEMS、HEMSが注目されています。BEMSやHEMSは、ビルや住宅全体のエネルギーの供給や需要の状況を一括して総合的に把握した上で、効率的な機器・設備の運転等を行い、総合的に省エネルギーを実現するためのシステムです。

コラム 普及を進めるための仕組み

近年の技術の開発は目覚ましく、省エネルギー効率を大幅に改善するための技術が組み込まれた製品が次々に販売されています。これらが普及し、省エネルギー効果を発揮するためには、消費者や事業者に認識され、使用されなければなりません。そのためには、ハードの技術だけでなく、その技術普及のための知恵や仕組みが必要です。例えば、消費者・利用者が環境性能の良い製品を選択できるようすることは重要です。平成18年10月から、エアコン、冷蔵庫、テレビについて、環境性能を表示する統一省エネラベルが付けられることになりました。統一省エネラベルは、エネルギーの使用の合理化に関する法律に基づく省エネ基準(トップランナー基準)の達成の有無と達成率が5段階の星で多段階評価されているほか、年間消費電力量、1年間使用した場合の目安電気料金などを表示しており、省エネルギー型製品が一層分かりやすくなる工夫がされています。

統一省エネラベル


(2)エネルギー供給側での技術
供給側対応技術としては、発電所における効率化や、発電のエネルギー源を二酸化炭素発生量の少ないものに変えていくといった方法があります。
ここでは、民生部門(業務その他、家庭)又は運輸部門(自動車)のいずれかの消費の場に近く、普及の段階に来ている再生可能エネルギーである、太陽エネルギー、バイオマスエネルギーについて見ていくこととします。
ア 太陽エネルギー関連技術
太陽電池は光のエネルギーを直接電気に変換するもので、二酸化炭素の発生なしに電力を生み出すことができ、近年、一般家庭へも普及し始めました。光を電気に変換するための素子に関する技術や、発電した電力を利用するための制御システムが重要な要素になっています。また、今日では、集熱や蓄熱のための新たな技術も活用して、効率的に太陽の熱も活用することができるようになっています。
イ バイオマスエネルギー関連技術
薪、炭といった伝統的な利用に加え、廃食用油のディーゼル燃料としての利用、家畜排せつ物のメタン発酵、バイオマスを原料としたエタノール発酵などの技術の利用があります。特に、自動車用燃料として注目されているのがバイオエタノールです。近年、建設発生木材や食料生産過程で発生する規格外農産物、さとうきび糖みつ等の副産物等からバイオエタノールを作る技術が実用化の段階にあり、平成19年1月には大阪府で建築廃木材からエタノールを製造する世界で初めての商業用プラントが開所しました。19年度からは、大都市圏や沖縄県の宮古島等で、バイオエタノール等の輸送用バイオマス燃料の大規模導入を目指した地域システムの実証事業などが進められる予定です。

宮古島「バイオエタノール・アイランド」構想

以上のように、様々な技術を用いて、省エネルギー性能に優れた製品やシステム、新エネルギーを利用した二酸化炭素を排出しないエネルギー供給手段等が実用化され、その普及が進みつつあります。これらの技術の普及を拡大し加速化することで、二酸化炭素排出量の削減が大きく前進することが期待されます。

3 国民運動の展開

これらの技術は、人々に広く普及し使用されることによって初めて、二酸化炭素の排出削減効果を発揮するものであり、国民の行動やライフスタイルの転換を促す国民運動の展開が不可欠です。
「チーム・マイナス6%」、夏の「COOL BIZ(クール・ビズ)」、冬の「WARM BIZ(ウォーム・ビズ)」は、それぞれ大きな効果を上げており、また、「うちエコ」の取組も広がっています。
このように、地球温暖化対策において国民運動の展開は重要な役割を果たしています。二酸化炭素排出削減のための技術やそれを活用した製品の普及、それらの適切な使い方の浸透においても、一人一人の意識の改革は重要であり、国民運動の展開は大きな効果をもたらすものと期待されます。ライフスタイルの転換に向けて、大々的な国民運動の展開を、あらゆる主体の力を結集して推進していくことが必要です。


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