第1章

持続可能な社会の構築に向けた
一人ひとりの取組

<第1章の要約>

 今日の環境問題の多くが日常生活や通常の事業活動から生じていることを踏まえると、具体的な対応は生活や活動の隅々まできめ細かなものである必要があります。本章では、一人ひとりの日常生活における取組に着目し、日常生活に係る環境負荷を具体的に示しながら、日常生活における一人ひとりの取組が大きな動きとして広がれば、その他の主体にも影響を与え、持続可能な社会への変革につながることを見ていきます。
第1節 一人ひとりの行動に影響を及ぼす社会経済の変化

1 日本の戦後における社会経済と環境問題の変遷

 戦後の経済復興を優先した昭和30〜40年代、生産活動の拡大、所得の増加に伴い、電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビの「三種の神器」など、さまざまな製品が日常生活へと普及しました。こうした中、公害問題による被害地域が日本全国に広がるとともに、身近な自然の破壊、干潟や浅瀬の埋め立てなど、自然破壊が全国的な規模で進行しました。

 経済が安定成長へと移行した昭和50年代、単身世帯の増加、女性の社会進出に伴い、外食やレトルト食品等の加工食品が増加し、宅配等の新たなサービスも登場しました。この時期、二度にわたる石油危機等を背景とし、省エネルギー化が進んだにもかかわらず、通常の事業活動や日常生活に伴う環境負荷が増大し、都市・生活型公害が顕在化しました。

 バブル経済期の昭和60年代以降、テレビや乗用車など一家に2台目以上の耐久消費財、余暇やレジャーといったサービス分野の支出が大きな伸びを見せています。また、経済活動のグローバル化とともに大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済システムが地球規模で拡大を見せ、地球環境問題が顕在化してきました。

家庭への耐久消費財の普及率
わが国の社会経済とくらしの変遷

2 近年の社会経済、日常生活と環境との関わり

 近年の社会経済の変化は、さまざまな形で環境に正負両面の影響を与えています。  少子高齢化と世帯数の増加は、一つの世帯が生活の最小単位として保有することが必要とされる住宅や台所、風呂等の設備、洗濯機、冷蔵庫等の耐久消費財をその分だけ増加させ、それに伴いエネルギー消費量や水の使用量も増加させることになります。
 また、情報通信技術の革新は、テレワーク、SOHOと呼ばれる勤務形態、適切かつ迅速な環境情報の提供により環境負荷の低減が期待される一方で、情報通信機器の増加や必要以上の情報交換はエネルギー消費の増加につながることになります。  さらに、機器の個人所有化、生活の24時間化などのライフスタイルは、日常生活からの環境負荷を増大させるおそれを有している一方、自然とのふれあいへの志向やボランティア活動への参加志向が強まる傾向は、環境保全のための取組意識を高める可能性を有しています。  このように、社会経済の変化による環境への正負の影響は、多くの場合、日常生活を通じて与えられます。従って今日の環境問題へは、それが社会経済の変化や日常生活の営みと相互に深く関わり合う一連の問題であることを十分認識し、対応する必要があります。

3 日常生活による環境負荷の増大

 社会経済の変化により、特に日常生活からの環境負荷が増大してきています。  地球温暖化の主要な原因物質である二酸化炭素は、私たちの生産活動や消費活動のあらゆる場面から排出されています。わが国の民生(家庭)部門からの排出は2000年度(平成12年度)において1990年度(平成2年度)比で20.4%の増加となっており、前年度比4.1%の増加となっています。  また、平成12年度におけるわが国の物質収支を見ると、投入された約21.3億トンの資源のうち、5割程度がそのまま消費、廃棄され、資源として再利用されているものは約1割程度にすぎません。一般家庭の日常生活から生じる「家庭ごみ」を含む一般廃棄物を見てみると、1人1日当たりのごみの排出量は近年高いレベルで推移しています。  さらに、閉鎖性水域における水質汚濁の原因としては生活排水の占める割合が大きく、特に東京湾においては、CODで見てみると、生活排水が汚濁負荷の7割近くを占めています。

 


小口物品輸送量の推移モバイル通信の契約数の推移世帯数と平均世帯人員の推移(一般世帯)東京湾における発生源別汚濁負荷量

わが国の物質収支

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