6 自然と人間との共生の確保

 わが国の自然環境の状況を見ると、植生については、自然林、二次林は減少し、植林地、市街地、造成地等は増加傾向にあります。干潟、藻場の面積や自然湖岸・海岸の延長については、いずれも減少する傾向にあります。また、わが国に生息する絶滅のおそれのある種として、哺乳類2種類、鳥類39種類をはじめとする計57種が国内希少野生動植物種に指定されており、存続が脅かされている種の数は、わが国に生息する哺乳類、両生類、汽水・淡水魚類の2割強、爬虫類、維管束植物の2割弱、鳥類の1割強に及んでいます。

全国の植生の植生自然度別に見たメッシュ数と出現頻度

地方別に見る植生自然度の構成比

わが国における絶滅のおそれのある野生生物の種類


 こうした状況も踏まえ、平成14年3月に、生物多様性国家戦略が改定されました。新しい国家戦略においては、生物多様性の危機の現状やそれらに対する国民意識の向上・成熟を踏まえ、1)種の絶滅、湿地の減少、移入種問題などへの対応としての「保全強化」、2)保全に加えて失われた自然をより積極的に再生、修復していく「自然再生」の提案、3)里地里山など多義的な空間における「持続可能な利用」、すなわち地域の生物多様性保全を進めることの3つを大きな柱とする今後の生物多様性保全施策に関する基本方針が提示されました。
 また、わが国の原生的な自然やすぐれた自然の保全も課題となっています。このため、自然環境が人の活動によって影響を受けることなく原生の状態を維持している地域を原生自然環境保全地域等に指定し保全を図っています。なお、屋久島や白神山地は世界自然遺産地域に登録されています。また、わが国を代表するに足りる傑出した自然の風景地を国立公園等の自然公園に指定し、保全を進めています。自然公園は、自然環境の保全に資するだけでなく、野生体験、自然観察や野外レクリエーション等の自然とふれあう場として重要な役割を果たしており、近年、自然に親しむことに対する国民の欲求の高まりに対応して、自然公園を訪れる人々は9億人を超えています。

自然公園利用者数の推移

国立公園及び国定公園配置図

 このほか、野生生物の保護管理施策の一環として、トキやイリオモテヤマネコ等の絶滅のおそれのある野生動植物種の保護増殖事業を行うだけでなく、シカやイノシシなど特定の鳥獣による農林水産業や自然生態系への被害の深刻化に対応して、被害防止施設の設置や野生鳥獣との共存を目指した多様な森林の整備等を行う事業等を実施しています。

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