第2節 環境保全の実績を通じて国際社会に貢献する

 21世紀の最初の10年間は、総合的な環境政策の展開によりわが国の特徴を最大限に引き出し「環の国」日本としての国際的な地歩を固めるための重要な時期と考えられます。こうした面で世界に範を示すことは人類社会の持続的発展にもつながり、わが国の立場にふさわしい国際貢献の仕方といえるでしょう。

1 環境保全の実績から見た日本の特徴
(1)日本の環境を見つめ直す
 ア 日本に与えられた自然環境
 総理府(内閣府)が平成10年に行った「社会意識に関する世論調査」によれば、全体の34.8%の人が「日本の誇りは美しい自然である」と回答しています。わが国は、四季の変化、豊富な森林、多様な生態系など豊かな自然に恵まれています。
 イ 高度成長期の産業公害の経験
 昭和30〜40年代の高度成長期には、深刻な公害被害が社会問題にまで発展しました。これに対し、政府は急速に環境規制を強化することにより、企業の公害防止投資や技術開発を促し、公害問題の収束に効果をあげました。公害は、過去のものとなったわけではありませんが、他国に例をみないわが国の経験を真摯に分析した上で、その試行錯誤によって得られた教訓を効果的に国際社会に還元させていくことは、私たちの責任といえます。

●多様な生物種にも恵まれた日本
生物相の比較

●森林面積の比率の高い日本
各国の森林面積及び国土面積に対する比率

●公害防止投資による迅速な対応
公害防止投資額の推移(支払いベース)

●国土面積当たりの各種指標比較
国土面積当たりの各種指標比較

 ウ 世界から見た日本の環境の現状
 産業公害の深刻な状況は収束してきましたが、自動車排気ガスによる大気汚染や廃棄物処理問題、地球温暖化問題などの新しい環境問題が生じています。
わが国は限られた国土面積の中で活発な経済活動を行っているという特徴があり、そのため、他の国々に比較し、都市における廃棄物対策や大気保全に関する政策について特に先進的な取組や対策技術の積極的な普及が求められているのです。
 例えば、GDPに対する最終エネルギー消費量は、日本は他国より値が小さい状況にある一方、総量は増大する傾向にあります。少ない環境負荷で高い付加価値を生み出す取組や技術は、地球環境問題の改善にも貢献し得るものであるといえます。高い環境効率を可能とする技術を諸外国に広め、各国の環境負荷の低減に資するとともに、わが国自らも環境負荷の総量を削減する努力を続けていかなければなりません。

主要国のGDP当たり最終エネルギー消費量の推移


主要国の最終エネルギー消費量の推移(指数)

(2)日本が国際社会に示すことができるもの
 ア 生産管理手法から発展した環境管理手法の導入実績
1999年12月時点でわが国はISO14001(環境マネジメントシステムの国際規格)認証取得の件数において世界第一位を誇っています。以前から事業所に普及していた品質管理・向上のためのQC活動や公害防止管理者制度などが、環境マネジメントシステムの基礎になっているものと思われます。

ISO14001認証取得数

 イ 環境効率向上を支えてきた技術
 産業技術力や商品開発力も日本が海外に誇ることができる代表的なものです。環境効率を向上させるためには、少ない環境負荷で高い付加価値や機能を実現する技術が必要です。公害防止技術や省エネ技術は、アジア方面への機器輸出の拡大に貢献しており、また最近では廃棄物やリサイクル関連の規制を受けて、独自の技術開発も進んでいます。
 わが国の主要輸出品である資本財や生産財(企業等の生産手段や製品の部品・材料として使用される財)の消費エネルギー効率等を向上させることができれば、国際社会への貢献にとどまらず産業競争力の向上にもつながります。
 ウ 政府における環境政策の枠組みの構築と環境意識の高まり
 平成12年には新しい環境基本計画の策定や「循環型社会形成推進基本法」の成立など、わが国の環境政策の枠組みを整えるための動きが相次ぎ、新しい環境政策への第一歩を踏み出しました。
 また、近年顕著に見られる企業や市民の環境保全への意識の高まりは、経済社会の変革を実現するための力強い推進力となることが期待されます。

リサイクル関連の特許出願件数推移

2 「環の国」日本としての国際貢献を目指して
(1)国際貢献のかたち

環境保全を軸としたわが国の国際貢献のかたち

 ア 国際社会におけるイニシアティブの発揮
 わが国自らが課題提起(アジェンダ・セッティング)を行い議論をリードしていくことが期待されています。他国より先に国内で顕在化、深刻化する環境問題に対し、問題意識や分析研究結果の発信に努めることは、大きな国際貢献につながります。
 イ 国際的取組の国内における推進
 国際社会で定められた環境保全への取組の方向性やルールをどのように実行し、成果をあげるかについては、それぞれの国の施策にゆだねられています。国際的な足並みを揃えつつ、一歩先をゆく政策決定がどの国にも期待されているといってよいでしょう。
 ウ 持続可能な開発支援
 わが国はDAC(開発援助委員会)加盟国の中でもっとも多額のODA援助を行っています。今後も途上国の持続可能な開発支援(環境ODA)を推進するとともに、適切な事業評価などに配慮しながら進めていく必要があります。

主要国の政府開発援助(ODA)支出総額

(2)わが国にふさわしい国際貢献の取組
 ア アジア太平洋地域での連携と協働の推進
 わが国は地域的・経済的に密接な関係を有するアジア太平洋地域と、積極的な連携・協働をしていかなくてはなりません。環境省では「アジア太平洋イノベーション戦略」による総合的な取組を提唱しています。
 イ 企業やNGOによる活動の支援
 企業や環境NGO、地方公共団体など多様な主体による活動が円滑に展開されるよう、国による積極的な側面支援が、今後ますます重要となっています。
 ウ わが国の「強み」を活用した国際支援
 他国より優位なわが国の「強み」(技術、知識と経験)を活かした貢献をすることが期待されます。21世紀においてわが国の「強み」を活用した国際支援をますます有意義なものにするために、一層の技術開発や先進的な環境施策を推進するとともに、他国の範となるようなライフスタイルや事業活動の変革の実績をつくることを目指さなければなりません。新たな環境基本計画に掲げられた「持続可能な社会」の実現に向かって、国民、企業、NGO、地方公共団体、政府、それぞれの主体がそれぞれに課せられた責務を認識し、それぞれの「強み」を活かしながら自律的に変革を進めていくことが重要です。

環境面での「強み」を活用したわが国の国際貢献のあり方
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