環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第1章>第2節 気候変動の影響への適応の推進

第2節 気候変動の影響への適応の推進

1 気候変動の影響等に関する科学的知見の集積

気候変動の影響に対処するため、温室効果ガスの排出の抑制等を行う緩和だけではなく、既に現れている影響や中長期的に避けられない影響を回避・軽減する適応を進めることが求められています。この適応を適切に実施していくためには、科学的な知見に基づいて取組を進めていくことが重要となります。

2018年に施行された気候変動適応法(平成30年法律第50号)では、環境大臣は、おおむね5年ごとに気候変動影響の総合的な評価についての報告書を作成しなければならないとされています。次期気候変動影響評価は、2015年に策定された「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について(中央環境審議会意見具申)」から5年となる2020年をめどに行うこととしており、2020年内の報告書作成・公表に向けて2020年3月より中央環境審議会気候変動影響等小委員会において、審査を開始しました。また、2016年に構築された「気候変動適応情報プラットフォーム」において、気候変動及びその影響に関する科学的知見、地方公共団体の適応に関する計画や具体的な取組事例、民間事業者の適応ビジネス等の情報の収集・発信を行います。さらに、2020年より環境研究総合推進費による、2025年の気候変動影響評価に向けた「気候変動影響予測・適応評価の総合的研究」を開始します。

2 国における適応の取組の推進

2018年12月に施行された気候変動適応法及び2018年11月に閣議決定された気候変動適応計画に基づき、あらゆる関連施策に適応の観点を組み込み各分野で適応の取組を推進します。また、気候変動適応計画に記載されている各施策の進捗管理を行うとともに、世界的にも確立されていない気候変動適応に関する評価手法開発のための検討を進めていきます。また、これらの取組を進めるに当たって、環境大臣が議長である「気候変動適応推進会議」の枠組みを活用することなどにより関係府省庁が連携していきます。

気候変動の影響に脆(ぜい)弱である開発途上国において、アジア太平洋地域を中心に適応に関する二国間協力を行い、各国のニーズに応じた気候変動の影響評価や適応計画の策定等の支援を行います。さらに、アジア太平洋地域の途上国が科学的知見に基づき気候変動適応に関する計画を策定し、実施できるよう、国立研究開発法人国立環境研究所と連携し、2019年6月に軽井沢で開催したG20関係閣僚会合において立ち上げを宣言した、国際的な適応に関する情報基盤であるアジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)の取組を強化します。

また、気候変動への適応のひとつである熱中症対策については、東京オリンピック・パラリンピック競技大会も見据えた訪日外国人の方々に対する普及啓発の強化や、イベント・シンポジウムの開催等を実施します。

3 地域等における適応の取組の推進

地方公共団体の科学的知見に基づく適応策の立案・実施を支援するため、気候変動適応情報プラットフォームにおける知見の充実や、将来の気候変動を加味した台風の影響評価の実施、国立研究開発法人国立環境研究所による地方公共団体及び地域気候変動適応センターへの技術的支援等を行います。また、全国7ブロック(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州・沖縄)で気候変動適応広域協議会を開催し、気候変動適応に関する施策や取組についての情報交換・共有や、地域における気候変動影響に関する科学的知見の整理等を行います。さらに、地方公共団体の境界を超えた広域の気候変動影響など、個々の地方公共団体等では解決しきれない課題について「気候変動適応における広域アクションプラン策定」事業により関係者が連携した適応策の推進を検討します。

事業者の適応の取組を促進するため、セミナー等の機会を通じて事業者の適応の取組を促進していきます。また、事業者の適応ビジネスを促進するため、国内での気候変動適応情報プラットフォームやAP-PLATも活用しつつ、事業者の有する気候変動適応に関連する技術・製品・サービス等の優良事例を発掘し、国内外に積極的に情報提供を行います。

国民の適応に関する理解を深めるため、広報活動や啓発活動を行います。また、住民参加型の「国民参加による気候変動情報収集・分析」事業により、国民の関心と理解を深めます。