第2節 循環型社会を形成する基盤整備


1. 財政措置等

 循環型社会基本法では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、循環型社会の形成を推進するための経費は、平成16年度当初予算額で4,245億1,600万円(下水道事業費補助等、内数で計上している経費は除く。)となっています。
 また、日本政策投資銀行等の財政投融資対象機関においてリデュース、リユース、リサイクル事業、廃棄物処理施設の整備等に関する政策融資を実施しました。
 さらに、廃棄物・リサイクル対策及び廃棄物の適正処理、自動車リサイクルの推進を図るための再商品化設備等の特別償却制度、PFI選定事業者が設置する一般廃棄物処理施設の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税並びに家屋に係る都市計画税及び不動産取得税の課税標準の特例措置に関して税制上の優遇措置を講じました。

2. 循環型社会ビジネスの振興

(1) 循環型社会ビジネスの市場規模
 循環型社会の形成が進み成長が見込まれる環境ビジネスのうち廃棄物・リサイクル分野(循環型社会ビジネス)の市場・雇用規模は、平成15年に環境省が行った調査では、平成12年で約21兆円、約57万人と推計されました。平成12年における市場規模や雇用規模の主な内訳としては機械・家具等修理、住宅リフォーム・修繕などいわゆるリペア(修理)産業に関する分野が約9兆円、雇用規模で約15万人、次いでプラスチック・鉄・古紙などの再生素材に関する分野が約8兆円、雇用規模で約20万人、廃棄物処理、資源回収、リサイクル、リース・レンタルなどのサービスの提供に関する分野が市場規模で約3兆円、雇用規模で約20万人と推計されます。循環型社会基本計画では、こうした循環ビジネスの市場規模及び雇用規模を平成22年度までに平成9年度比でそれぞれ2倍にすることを目標として掲げています。(2-2-1表

2-2-1表 日本の循環型社会ビジネス市場規模の現状について


(2) 循環型社会ビジネスの振興へ向けた取組
 事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進するとともに、再生資源やリサイクル製品が初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進しました。平成15年度における国等の機関の特定調達品目(国等の機関が重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類)の調達実績については、平成15年度に新たに追加された品目を含め、大半の品目において判断の基準を満たす物品等が95%以上の高い割合で調達されました。
 また、循環型社会の形成の礎となる産業廃棄物処理業の優良化を推進するための事業を実施しました。
 その他、いわゆる地域コミュニティ・ビジネスの成育を図るための事業の実施等を行いました。

3. 経済的手法の活用

 多くの人の日常的な活動によって引き起こされている廃棄物問題については、大規模な発生源やある行為の規制を中心とする従来の規制的手法による対応では限界がある面もあります。このため、その対策に当たっては、規制的手法、経済的手法、自主的取組などの多様な政策手段を組み合わせ、適切な活用を図っていくことが必要です。
 平成12年4月施行の地方分権一括法によって、課税自主権を尊重する観点から法定外目的税の制度が創設されたことなどを受け、廃棄物に関する税の導入を検討する動きが各地で見られます。
 環境省の調査によると、平成16年11月現在、47都道府県中21府県(三重、鳥取、岡山、広島、青森、岩手、秋田、滋賀、新潟、奈良、山口、宮城、京都、島根、福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島、宮崎、熊本)及び保健所設置市57市中1市(北九州)において、産業廃棄物に係る法定外目的税の条例が制定されています。また、3県(福島、愛知、沖縄)で条例案の検討、作成などを行い、導入を目指しています。

4. 教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成

 平成13年に内閣府が実施した「循環型社会の形成に関する世論調査」では、国民の間に製品の長期間使用や再生品の使用、ごみの排出抑制、分別回収への協力、事業者への引渡しなどを定着させるためには、国等が「子どもの頃からごみ問題について環境教育を行い、国民の意識を高める」ことを行うべきとの回答が最も多数(約7割)を占めました。
 このような環境教育の推進の重要性にかんがみ、国民各界各層の環境保全について理解を深め、環境保全活動に取り組む意欲を高めていくため、環境教育の推進、体験機会の提供等の措置を盛り込んだ「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が平成15年7月に成立し、その後同法に基づく基本方針の閣議決定、人材認定等事業に係る登録に関する省令の公布を経て、平成16年10月1日に完全施行されました。
 環境省では、環境教育の一層の推進を図るため、小中学生の環境保全活動を支援する「こどもエコクラブ事業」、環境保全についての助言・指導を行う人材を確保する「環境カウンセラー事業」等を実施しました。また、NGO等による環境保全活動を活性化するために、地球環境パートナーシッププラザにおいて情報提供等様々な支援を行うとともに、この取組を全国に拡大するため、その拠点となる「地方環境パートナーシップオフィス」を全国に整備していく予定であり、平成16年度は中国、近畿、中部の3か所に設置しました。さらに、環境事業団から独立行政法人環境再生保全機構に移管された「地球環境基金」では、国内外の民間団体が行う環境保全活動に対する助成を行いました。
 内閣府では、国民生活における省資源・省エネルギー政策を総合的・計画的に推進するため、各都道府県における省資源・省エネルギー国民運動地方推進会議の開催等による国民運動の効果的展開を図るとともに、持続可能な循環型経済社会の形成等を目指した環境調和型ライフスタイル形成のための調査を実施しました。
 また、環境に配慮した消費活動の促進のために、日常的な行動である「買い物」に着目し、10月に39都道府県と連携して「環境にやさしい買い物キャンペーン」を実施しました。
 文部科学省では、環境保全などを始めとする現代的課題について、社会教育施設等が中核となり、様々な機関と連携するなどにより様々な事業を実施し、地域における社会教育の活性化を図りました。
 文部科学省では、学校における環境教育の推進を図るため、全国環境学習フェアの開催や環境教育担当教員講習会の開催、環境教育実践モデル地域の指定、環境のための地球学習観測プログラム(GLOBE)モデル校の指定等を行うとともに、環境省と連携・協力し、環境教育リーダー研修基礎講座を行っています。また、平成16年度から、新たに環境省と連携・協力し、情報提供体制の整備を進めるとともに、環境教育リーダー研修基礎講座を行っています。
 環境保全計画の策定や環境測定など地方公共団体や企業の環境保全活動に関して、文部科学省においては、有能な技術者を「技術士(環境部門)」と認定し、活用を促進しています。



コラム 12 イベントのエコ化

 屋外でのお祭り、音楽ライブ等のイベントの開催では、飲食店等の出店や利用に伴い使い捨て容器等が利用される機会が多く、排出されるごみの量は膨大なものになり、環境負荷の低減に向けた対策が必要といえます。そのようなイベントの一つで、来場者約7万人という大規模な音楽ライブイベントである、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2004 in EZOにおいては、主催者がNGO等の協力を得て、ごみの分別をはじめ、様々な取組を通しイベントのエコ化に取り組みました。
 例えば、来場者から発生するごみは14分別と他のイベントでは見られないほどに分別数を多くしました。また、会場内8か所の分別ステーションに合計約200名のボランティアが配置され、多種類の分別に来場者が混乱しないよう、スムーズな分別を促進、誘導しました。
 一方、現場スタッフのために設置された専用の食堂では、リユース・リサイクル食器が使用されました。リユースカップは現場で洗浄を繰り返し何度も使用され、リサイクル食器は使用後回収され、資源として再利用されました。開催準備から片づけまで、約8日間の間に提供される食事の総数から、約1万枚の紙トレイやプラスチックトレイの消費が節約されたと推定されています。さらに、食事から発生した生ごみについては、農家の協力を得て堆肥化されるなど、徹底した取組がなされました。
 主催者のごみの削減の取組や、来場者等の協力により分別がおこなわれても会場から排出されてしまう、約15tのプラスチックごみは、プラスチック油化処理施設で処理され、プラスチックの原料や燃料にリサイクルされました。なおこの施設では、処理の過程で発生するスチームは冬期には工場内の路面凍結を防ぐ熱エネルギーとして、夏期には近隣の工場にて使用されています。

 このように、音楽を楽しむということが共通のテーマのイベントを通して、主催者はもちろん、来場者や出店者、参加アーティストまでもが、環境に対する意識を自然に持つことができるこの取組は、イベントのエコ化の優れたモデルの一つと言えるでしょう。





コラム 13 エコ・コミュニティ事業

 平成15年3月に策定された循環型社会基本計画では、国の取組として、地域におけるNGO・NPOなどの様々な主体による協働の取組で、先駆的な取組について国が支援していくこととされています。
 これを受けて環境省では、NGO・NPOや事業者が地方公共団体と連携して行う循環型社会の形成に向けた取組で、他の地域のモデルとなるような事業を公募してエコ・コミュニティ事業として行うことにより、地域からの取組の展開を促すこととしました。
 平成16年度は、全国から61件の新規事業の応募と4件の継続事業の応募があり、新規事業を3件、継続事業を2件採択しました。採択事業の概要は以下のとおりです。

【新規事業】
○オフィス家具のリファービッシュ実証モデル事業
 持続可能な社会経済システムの実現を目指して神奈川県が中心となって設立されたエコ産業創出協議会のエコデザイン工房分科会では、販売の際にメーカーを問わず混合で回収されて廃棄されることが多いオフィス家具について、リファービッシュ(磨き直し)することにより環境負荷の低減と新たな付加価値をもった商品として市場に投入する仕組みを検討しています。また、メーカーによって異なるねじ穴や取り付け位置等の取付部材の規格の共通化、素材の統一などを図り、メーカー横断での中古部品調達の仕組みの検討を行うことにより、オフィス家具のリユース・リサイクル率を向上させることに取り組んでいます。

写真 リファービッシュ家具展示会

写真 リファービッシュ家具


○不用消火器の回収システム構築及び肥料化事業
 長崎県のNPO法人地域循環研究所は、福岡県椎田町において、町と協力してし尿由来の液肥の町内の希望農家の耕作地への散布を行い、そこで生産された作物の学校給食への導入等、地産地消による地域循環の仕組みの構築を目指しています。
 し尿由来の液肥を肥料として見た場合、窒素とカリウムには富んでいますが、リン酸が不足しているため、散布の前にリン酸肥料の添加が必要となっています。このリン酸肥料の調達コストを下げ、枯渇資源であるリンの消費を抑制するため、粉末(ABC)消火器に使用される消火薬剤の主剤にリン酸アンモニウムが使われていることに着目し、不用となった廃消火器を回収してリサイクルし、リン酸アンモニウムを低コストで調達する仕組みの構築を行っています。

写真 廃消火器の解体実験

写真 液肥の散布


○エコレストランシステム実証モデル事業
 奈良県にあるNPO法人、奈良NPOセンターは、環境にやさしい飲食店を「エコ・レストラン」として認定する仕組みを構築するため、調理方法や素材の工夫による廃棄物の削減、エネルギー消費量の削減及びリサイクルの推進等の飲食店でできる環境負荷低減の取組を検討して「エコ・レストラン」の定義・基準の作成及び取組項目等の検討を進めています。検討結果については、協力店舗を募り、実際に導入することにより取組の実効性を担保する運用方法、取組の効果の検証を実施して「エコ・レストラン認定制度」の創設を目指しています。

写真 エコレストランの定義の検討

写真 メニューの試食会


【継続事業】
○南九州における900ml茶びんの統一リユースシステムモデル事業
 社団法人環境生活文化機構は、九州地域で主に焼酎の販売に利用されている容量900mlの茶びんの規格を統一し、リユースする仕組みを構築することとしています。
 平成15年度は、びん商、焼酎メーカー、小売店組合、日本ガラスびん協会、水俣市等の関係者の協力により実証事業の準備を進め、平成16年3月に水俣市において、事業の発表会を開催して酒造メーカー、小売店、地方公共団体、一般市民に対して実証事業への協力の要請を行いました。その後、実証事業に向けてリターナブルびんであることをわかりやすくするための小変更を加え、焼酎メーカー1社の協力を得て4月下旬からリターナブルびんを使用した商品の販売が開始されました。11月からは新たに焼酎メーカー2社がリターナブルびんを採用し、平成17年3月末現在、3社合計で約137万本が出荷され、約25万本を回収しています。回収されたリターナブルびんは水俣エコタウン内の洗びん施設に集められ、洗浄されてから焼酎メーカーに納入されています。なお、出荷量に比べて回収量が少ないのは、商品の性格上、流通・消費段階での滞留があり、回収されるまでに時間がかかるためです。
 今後は、900mlリターナブルびんを採用する企業の増大と、新びんの供給体制の強化を進めてリターナブルびんの流通量の拡大を図ることとしており、平成17年2月末には焼酎メーカー、小売店等の関係者を集めた事業説明会を水俣市において開催したところです。

写真 リターナブルびんへのびん詰め

写真 回収リターナブルびんの洗浄

写真 事業説明会

写真 リターナブルびん使用商品


○エコマネーを利用した有機性循環資源リサイクル事業
 神奈川県厚木市の厚木なかちょう大通り商店街振興組合は、生ごみの回収、堆肥化、有機野菜の栽培、商店街での有機野菜の販売といった地域循環システムの構築にエコマネーシステムを活用することにより、併せて商店街の活性化を図ることを目指しています。
 平成15年度は、試験的に商店街の近隣住民及び商店街の飲食店から協力者を募り、協力者に生分解性のごみ袋を配布して生ごみの回収及びアンケート調査を行いました。回収された生ごみは堆肥化され、成分分析されて堆肥の安全性等に関するデータを収集しました。平成17年度は、前年度の回収時に問題となった点を改善し、本格的な稼働に向けて効率的な回収を行うための回収方法の実証実験を、50世帯のモニターを募集して平成16年12月から3か月間に渡り実施しました。
 これらの実証試験の結果を踏まえ、平成17年度からは市の協力のもとで事業の本格的な稼働を開始することとしています。

写真 参加者説明会

写真 生ごみ持ち込み(ビニール袋)

写真 生ごみ持ち込み(バケツ)




5. 調査の実施・科学技術の振興

 平成13年3月に閣議決定された第2期科学技術基本計画を踏まえて、平成13年9月に総合科学技術会議において決定された「分野別推進戦略」では、環境分野で今後5年間に重点的に取り組んで行くべき研究分野の一つとして、ゴミゼロ型・資源循環型技術研究が選定されました。また、中央環境審議会では、「環境研究・環境技術開発の推進を総合的・戦略的に行うための方策は、いかにあるべきか」について審議し、循環型社会の創造プログラム、循環型社会を支える技術の開発プログラム等の「重点化プログラム」を明らかにした専門委員会中間報告を平成13年6月に取りまとめました。
 ひっ迫する廃棄物最終処分場の問題、温室効果ガスの削減目標を踏まえた対応等の環境問題を解決しつつ、今後の循環型の経済システムを構築するため、新たなリサイクル等環境関連技術、及び地球温暖化防止に資する地球環境技術の研究開発を推進しています。
 循環型社会形成推進のための環境政策の実施効果を統合マクロ経済モデルを用いてシミュレーションし、循環型社会に向けての展望と政策効果に関する定量的分析を行う研究や、霞ヶ浦流域をモデルとして、環境低負荷型・資源循環型の水環境改善システムを構築するための研究を行っています。
 廃棄物処理等科学研究費においては、競争的資金を活用し広く課題を募集し、平成16年度は51件の研究事業及び12件の技術開発事業を実施しました。
 研究事業については、「循環型社会形成推進のための社会システム分析・評価研究」、「生産・消費段階における廃棄物発生抑制・資源循環システム化技術研究」、「安全、安心のための廃棄物管理技術に関する研究」を重点テーマとし、廃棄物をとりまく諸問題の解決とともに循環型社会の構築に資する研究を推進しました。
 技術開発については、「廃棄物適正処理技術」、「廃棄物リサイクル技術」、「循環型設計・生産技術」を公募分野とし、次世代を担う廃棄物処理等に係る技術の開発を図りました。
 また、地球環境保全等試験研究費のうち公害防止等試験研究費においては、前年度に引き続き「循環型社会形成に資する研究」を重点的強化を図る必要がある事項の一つに掲げ、廃棄物の処理・再利用技術の開発、生分解性プラスチックの適正使用のための研究等、7課題の試験研究を実施しました。
 戦略的創造研究推進事業において、地球温暖化等を抑制するための新しい技術的提案を目指した「資源循環・エネルギーミニマム型システム技術」における基礎研究の推進を図り、植物系循環型高機能材料を生産するシステムをより効率的なものにするための研究を進めています。
 環境、エネルギー等に関連する技術のうち、自然エネルギー活用システム、都市熱源ネットワーク等の都市に関連する技術を複合・総合化し、パイロット事業として現実の都市への適用を先導的に行うことにより新たな都市像・都市生活像を示しました。併せて、都市廃棄物処理新システムを整備することにより、先導的な拠点市街地の形成を図っています。
 科学技術振興調整費を活用して、「廃棄物・新素材による土壌浸透システム開発」や「食品廃棄物処理システム中の微生物群の動態」といった研究開発を実施しました。
 地球環境の保全と人間社会の持続的発展を同時に実現するため、有効利用可能な資源分子を有用な物質・材料に変換する新しい科学技術及び窒素酸化物(NOx)・硫黄酸化物(SOx)等の大気汚染分子や、ダイオキシン類等を分解して、環境低負荷型分子に変換する革新的な環境修復技術の開発を推進しています。
 また、家畜排せつ物、木質系廃棄物等の有機性資源のバイオマス変換等革新的リサイクル技術(メタン化、メタノール化、有用成分抽出、炭化等)の開発を実規模実証研究により実施しています。

6. 施設整備

 地域における資源循環型経済社会の構築を目的に、環境省及び経済産業省が連携して実施している「エコタウン事業」(2-2-1図)において、先進的なリサイクル関連施設整備事業に対して、支援を行いました。

2-2-1図 エコタウン事業の承認地域マップ


 家畜排せつ物、稲わら等の循環的な利用については、畜産農家と耕種農家との連携強化による流通・利用の促進を図るため、たい肥・稲わら等流通利用計画の作成等を行うとともに、たい肥利用促進のための実証ほ等の設置、たい肥化施設等の整備等幅広い取組を推進しました。また、家畜排せつ物等の有効利用を促進するため、たい肥化施設等の環境対策施設の整備を推進しました。
 さらに、下水道事業において発生する汚泥(発生汚泥等)の減量化のための施設整備の支援、新技術開発の促進等を行いました。
 近畿圏においては、「広域臨海環境整備センター法」(昭和56年法律第76号)に基づき大阪湾フェニックス計画が推進されており、神戸沖処分場などにおいて近畿2府4県内の174市町村から排出される廃棄物を受け入れています。
 港湾における廃棄物処理対策として、平成16年度は、29港1湾において廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施しました。また、資源のリサイクルの促進のため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効活用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)を6年度に開始し、16年度は石巻港、中部国際空港関連工事、広島港、粟津港において建設発生土の受入れを実施しました。

7. 生活環境保全上の支障の防止、除去等

 産業廃棄物の不適正処分の防止と支障の除去等を図るため、引き続き、全国9ブロックの地方環境対策調査官事務所の立入検査等の体制を強化するとともに、都道府県等の監視の強化に対する補助を行いました。さらに、硫酸ピッチの不適正処分の防止については、廃棄物処理法を改正し、不適正保管に対する規制を強化するとともに、引き続き関係機関との連携等を図りました。
 また、産業廃棄物適正処理推進センターの基金に対し、産業界の自主的な拠出に併せて国からも補助を行うとともに、産廃特措法に基づく補助も行いました。
 さらに、不法投棄に関する情報を国民から直接受け付ける窓口として、環境省に不法投棄ホットラインを設置したほか、現場調査や関係法令等に精通した専門家チームを派遣し、都道府県等の不法投棄対策を支援しました。

8. その他の政府の取組

(1) 都市再生プロジェクトの推進
 都市再生プロジェクトとして推進している「大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築」に向けて、首都圏ゴミゼロ型都市推進協議会及び京阪神圏ゴミゼロ型都市推進協議会では、廃棄物の減量化目標の達成、廃棄物処理・リサイクル施設の整備、静脈物流システムの構築等を内容とする中長期計画を策定しています。この中長期計画に基づき、毎年、その進捗状況の点検及び新たな課題の検討等のフォローアップを行っています。平成16年度は、首都圏ゴミゼロ型都市推進協議会では7月に、京阪神圏ゴミゼロ型都市推進協議会では6月にフォローアップを行い、それぞれ中長期計画に基づく取組はおおむね計画どおりに進んでおり、引き続き国、地方公共団体及び民間事業者が一体となって取組を推進していくことが確認されました。

(2) 循環型社会実現のための静脈物流システムの構築
 廃棄物や再生資源・製品の輸送については、リサイクル対象品目の増加、再生利用率の向上などによって、輸送の大量化・中長距離化が進むことが予想されます。また、大都市圏における廃棄物・リサイクル施設の集中立地や拠点形成により、拠点間の相互連携によるリサイクル等の廃棄物処理に的確に対応した物流システムの整備が必要となってきます。
 平成13年7月に閣議決定された「新総合物流施策大綱」においても、環境問題の深刻化、循環型社会の構築等の社会的課題に対応した物流システムを構築する観点から、地方公共団体とも連携して、今後のリサイクル拠点の配置にも対応しつつ、循環型社会の実現に貢献する新たな物流システムを構築することとされました。そのため平成14年度に首都圏で実施した調査に引き続き、平成15年度は近畿圏において生産拠点の状況、リサイクル関連拠点の配置計画、当該拠点間における輸送等の実態把握に努めるとともに、鉄道・海運の活用を含めた効率的な静脈物流システムについての検討を行いました。
 循環型社会の実現を図るため、港湾においては、広域的なリサイクル施設の立地に対応した静脈物流の拠点となる港湾を「総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)」(全国18港)に指定し、官民連携の推進、港湾施設の整備など総合的な支援策を講じました。また、循環資源の取扱いに関するガイドラインの作成・周知やリサイクルポート間での循環資源の輸送実験等を実施しました。さらに、今後増加が見込まれる汚染土壌の処理需要に対応するために汚染土壌の積み出しや処理を行う拠点の形成やネットワークの形成についての検討を行いました。

(3) 農業用使用済プラスチック等農業生産資材廃棄物の適正な処理
 農業用使用済プラスチック等農業生産資材廃棄物の適正な処理を推進するため、全国段階において、再生品の需要拡大を図るための普及啓発等を行うとともに、都道府県・市町村段階において、関係者の協力体制の確立、処理・減量化計画の策定、排出量を削減するための生分解性プラスチックフィルム等導入技術実証、普及啓発等を行いました。

(4) 使用済FRP船の再資源化の推進
 FRP(繊維強化プラスチック)船については、数年後には廃船時期を迎えるものが1万隻を超えることが予想されており、早期の廃船処理システムの確立が求められています。
 このため、平成12年度に開始した「FRP廃船高度リサイクルシステム構築プロジェクト」を平成15年度も継続して実施し、経済性に優れ、かつ、環境にも配慮したリサイクル技術確立のための総合実証試験及びリサイクルシステム事業化のための検討等を行いました。

(5) 標準化の推進
 我が国の標準化機関である日本工業標準調査会(JISC)は平成14年4月に策定した「環境JISの策定促進のアクションプログラム」の中の「環境JIS策定中期計画」について毎年度改訂し、環境JISの整備に取り組んでいます。
 平成16年度は、「スラグ類の化学物質試験方法」、「コンクリート用再生骨材H」のスラグ類の活用に資する規格などを制定し、環境JISの制定・改正は33規格となり、累計で123規格となりました。

(6) 地方組織の強化
 改正廃棄物処理法が平成15年12月に施行されたことに伴い、緊急時における環境大臣が行う廃棄物処理施設等への立入検査、廃棄物及び特定有害廃棄物等の輸出入に際しての申請内容調査及び立入検査、廃棄物の広域処理認定又は再生利用認定の事前相談及び現地確認等に関する事務が、全国9ブロックの地方環境対策調査官事務所の事務に追加されました。

(7) 廃棄物・リサイクルガバナンスガイドラインの策定
 排出事業者における廃棄物管理を徹底し、経営的な観点から廃棄物・リサイクルに関するマネジメントを行うための自主的取組を推進するため、産業構造審議会において、平成16年9月に「排出事業者のための廃棄物・リサイクルガバナンスガイドライン」を策定しました。


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