環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>平成30年度 環境の保全に関する施策  平成30年度 循環型社会の形成に関する施策  平成30年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策>第1章 低炭素社会の構築>第1節 地球温暖化対策

平成30年度 環境の保全に関する施策
平成30年度 循環型社会の形成に関する施策
平成30年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策

第1章 低炭素社会の構築

第1節 地球温暖化対策

1 研究の推進、観測・監視体制の強化による科学的知見の充実

気候変動問題の解決には、最新の科学的知見に基づいて対策を実施することが必要不可欠です。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の各種報告書が提供する科学的知見は、世界全体の気候変動対策に大きく貢献しています。この活動を拠出金等により支援するとともに、国内の科学者の研究を支援することにより、我が国の科学的知見をIPCCが策定する各種報告書に反映させていきます。また、IPCCは、現在第6次評価サイクルにあり、第6次評価報告書(2021年から2022年にかけて公表予定)に加え、1.5℃特別報告書、海洋・雪氷圏特別報告書、土地関係特別報告書が今後策定される予定です。さらに、2019年5月に開催予定のIPCC第49回総会を日本に誘致するため、地元自治体及び関係省庁と連携しつつ、IPCCとの調整を進めていきます。本総会では、パリ協定の実施に不可欠な各国の温室効果ガス排出量の算定方法のガイダンスに関する報告書が承認される予定です。

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」や2018年度打ち上げ予定の「いぶき2号(GOSAT-2)」による継続的な全球の温室効果ガス濃度の観測を行います。また、パリ協定に基づき世界各国が温室効果ガス排出量を報告する際に衛星観測データを利活用できるよう、「いぶき」の観測データからの推計結果と、インベントリからの推定結果の比較・評価を行うとともに、各国における衛星データの利用促進に向け、衛星観測データの利用ガイドブックに最新の科学的知見を反映し、精緻化を図ります。2017年12月に打ち上げられた気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」を活用し、気候変動による全球的な地球環境変化の観測を行います。さらに、航空機・船舶・地上観測等による観測・監視、予測、影響評価、調査研究の推進等により気候変動に係る科学的知見を充実させます。

2 持続可能な社会を目指した低炭素社会の姿の提示

パリ協定を踏まえ、今世紀後半の世界全体での脱炭素社会の構築を進めていくために、温室効果ガスの長期大幅削減を実現するための基本的な考え方、長期大幅削減を実現した社会の絵姿とそれに至る道筋、対策・施策の方向性等について議論を行い、国民に分かりやすく提示し、開かれた場において国民的議論を深め、国民各層の理解を得ていきます。

3 エネルギー起源CO2の排出削減対策

産業・民生・運輸・エネルギー転換の各部門においてCO2排出量を抑制するため、低炭素社会実行計画の着実な実施と評価・検証による産業界における自主的取組の推進や、科学と整合した目標設定(SBT:Science Based Targets) 等の企業における中長期的な削減目標の策定支援、省エネルギー性能の高い設備・機器の導入促進、トップランナー制度等による家電・自動車等のエネルギー消費効率の向上、家庭・ビル・工場のエネルギーマネジメントシステム(HEMS/BEMS/FEMS)の活用や省エネルギー診断等による徹底的なエネルギー管理の実施、ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ゼブ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及や既存建築物の省エネルギー改修による住宅・建築物の省エネルギー化、エネルギーの面的利用の拡大、地球温暖化防止国民運動「COOL CHOICE」の推進、次世代自動車の普及・燃費改善、道路の整備に伴って、いわゆる誘発・転換交通が発生する可能性があることを認識しつつ、CO2の排出抑制に資する環状道路等幹線道路ネットワークの強化、ETC2.0等を活用した道路を賢く使う取組の推進等や高度道路交通システム(ITS)の推進、信号機の改良、信号灯器のLED化の推進等による交通安全施設の整備等の道路交通流対策、公共交通機関及び自転車の利用促進、連結トラック等のトラック輸送の高効率化に資する車両等の導入やモーダルシフトの促進等による効率的かつ低炭素な輸送モード等への転換、港湾空間全体の低炭素化による「カーボンフリーポート」の実現、宅配ボックス等を活用した再配達削減、共同輸配送、貨客混載、IoT活用による取組等を通じた事業者連携による低炭素な輸配送システムの構築、トラック輸送の効率化等による物流体系全体のグリーン化、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化や安全性が確認された原子力発電の活用等による電力分野の低炭素化等の対策・施策を実施します。

4 エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスの排出削減対策

非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等の排出削減については、廃棄物処理やノンフロン製品の普及等の個別施策を推進します。フロン類については、モントリオール議定書キガリ改正も踏まえ、上流から下流までのライフサイクルに渡る包括的な対策により、排出抑制を推進します。

5 森林等の吸収源対策、バイオマス等の活用

森林等の吸収源対策として、間伐等の森林の整備・保全、農地等の適切な管理、都市緑化等を推進します。また、これらの対策を着実に実施するため、バイオマス等の活用による農山漁村の活性化と一体的に推進します。

吸収源対策や木材・木質バイオマスの利用拡大を推進するため、森林・林業の担い手の育成や生産基盤の整備など、総合的な取組を実施します。

藻場等の海洋生態系が蓄積する炭素(ブルーカーボン)を活用した新たな吸収源対策の検討を行うとともに、それらの生態系の維持・拡大に向けた取組を推進します。

6 国際的な地球温暖化対策への貢献

国際的な地球温暖化対策を進めるため、まずはパリ協定を更に実効的なものにすべく実施指針策定の議論に積極的に参加し、同指針の2018年中の採択を目指します。また、「日本の気候変動対策支援イニシアティブ2017」等に基づき、日本の優れた技術・ノウハウを活用しつつ、途上国と協働してイノベーションを創出する「Co-innovation(コ・イノベーション)」の考え方の下、途上国支援を着実に実施していきます。国際的連携の確保に向けた取組、途上国等における排出削減への我が国の貢献を適切に評価する二国間オフセット・クレジット(JCM)の構築による低炭素技術、製品、インフラ等の提供を通じた取組、温暖化対策の推進に貢献する気候変動枠組条約以外の国際協力の枠組みの積極的な活用、低炭素社会づくりに関する地域レベルの協力(ネットワーク形成)及び二国間協力の推進を図っていきます。また、土地利用変化による温室効果ガスの排出量は、世界の総排出量の2割を占め、その排出を削減することが地球温暖化対策を進める上で重要な課題となっていることから、特に途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等(REDD+)を積極的に推進し、森林分野における排出の削減及び吸収の確保に貢献します。

7 横断的施策

地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)に定める温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度、排出抑制等指針について一層の充実を図っていきます。

持続可能な低炭素社会の構築や適応方策を推進するための学校や社会における環境教育、国民運動の展開、国・地域、企業、家庭等での「見える化」の推進を図っていきます。

我が国でのより一層の取組の推進を促す観点から、公的機関の率先的取組、中小企業等の温室効果ガスの排出削減を促すJ-クレジット制度の推進、カーボンフットプリントマークなど環境ラベルの活用、環境金融の活用、民間資金を低炭素投資に活用する方策の検討、エネルギー消費情報等のオープン化、グリーンICTの活用等の促進を図っていきます。

低炭素社会構築を支えていくため、排出量・吸収量の算定手法の改善、サプライチェーン全体での排出量の把握・管理、削減貢献量や排出削減量の算定手法に関する検討、省エネルギー・省CO2効果の高い家電やOA機器等の普及を促進するための支援策の実施、地球温暖化対策技術の開発の推進、調査研究の推進、国、地方公共団体、NGO・NPO、研究者・技術者・専門家等の人材育成・活用、評価・見直しシステムの体制整備等を図っていきます。

8 公的機関における取組

(1)政府実行計画

政府は、2013 年度を基準として、政府全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに40%、中間目標として2020年度までに10%削減するという政府実行計画の目標を達成すべく、LED照明の率先導入等の削減取組を進めます。

(2)地方公共団体実行計画

地方公共団体は、地方公共団体実行計画を策定し、これに基づく自らの率先的な取組により、区域の事業者・住民の模範となるべく、実効的・継続的な温室効果ガス排出の削減に努めることが必要とされています。

こうした取組を促進するため、地方公共団体実行計画の策定・実施に資するマニュアル類を作成するほか、優良な取組事例の収集・共有、地方公共団体職員向けの研修や地域レベルの温室効果ガス排出量インベントリ・推計ツール等の整備等の支援を行います。