環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第2節 平成28年熊本地震からの復興に係る取組

第2節 平成28年熊本地震からの復興に係る取組

熊本県熊本地方で、2016年4月14日及び16日に最大震度7の地震が発生しました。その後も多くの地震が続き、地震活動範囲は熊本県から大分県にかけての広域に及びました。これらの地震により、死者228人、負傷者2,700人以上、建物被害21万棟以上となるなど、甚大な被害をもたらしました(2017年4月13日現在)。

平成28年熊本地震による災害は、2016年5月13日に、東日本大震災の教訓と課題を踏まえ、2013年に制定された大規模災害からの復興に関する法律(平成25年法律第55号)に基づく非常災害に初めて指定され、関係機関が連携して、復興に向けた取組が進められています。ここでは、環境政策の観点からの対応を概観します。

1 環境政策の観点からの平成28年熊本地震への対応

(1)災害廃棄物の処理

平成28年熊本地震では、全壊8,697棟、半壊3万4,037棟、一部損壊15万5,902棟の住宅被害が発生しました(2017年4月13日現在)。熊本県内では、1年に発生する一般廃棄物の5.6年分に相当する、316万トンもの災害廃棄物が発生しました。これは、近年の災害としては、東日本大震災、阪神・淡路大震災に次ぐ発生量となっています(写真4-2-1表4-2-1)。また、ごみ焼却施設25施設のうち5施設、ごみ固形燃料(RDF)化施設2施設のうち1施設、し尿処理施設21施設のうち4施設が地震による被害が確認され、熊本市や益城町等において、生活ごみ等への対応が必要となりました。

写真4-2-1 災害廃棄物の発生状況
表4-2-1 過去の災害による災害廃棄物の発生状況

環境省では、4月14日の発災から被災状況の情報収集を開始し、被害の甚大性を鑑み、発災翌日の4月15日朝に九州地方環境事務所に災害対策本部を設置するとともに、同日のうちに環境本省災害廃棄物対策室及び地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課から被災地に災害廃棄物の担当職員を派遣するとともに、東日本大震災を教訓に設置した「災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.Waste-Net)」の専門家を派遣しました。また、政府・現地対策本部にも職員を派遣し、政府一丸となった支援体制を構築するとともに、4月17日に熊本県庁内に「現地支援チーム」を開設し、し尿の収集及び処理、生活ごみ・避難所ごみ、片付けごみの収集・運搬及び処理の支援といった初期対応について技術的な支援を行いました。

現在、災害廃棄物の処理は、発災後2年以内の処理完了を目指して処理が進められています。災害廃棄物の処理は、被災自治体がそれぞれ民間事業者の協力を得て進めるとともに、熊本県が7町村(宇土市、南阿蘇村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町、西原村)から地方自治法に基づく事務委託を受託し、仮設の中間処理施設(移動式の破砕機等)を設置して処理を進めています(写真4-2-2)。

写真4-2-2 災害廃棄物の処理状況

災害廃棄物の処理進捗率は50%(2017年3月末現在)、解体済棟数は2万1,939棟で進捗率は64%(2017年4月末現在)となっています。環境省では、九州地方環境事務所を中心に、大量の災害廃棄物の適正かつ円滑な処理の推進に向けて熊本県や被災市町村への技術的・財政的支援を実施しています。国によるプッシュ型支援として、現地に1,150基の仮設トイレを供給しました。また、し尿の収集・運搬に関して、し尿処理業界団体に協力を要請し、し尿の収集体制の確保を図りました。生活ごみ、避難所ごみ及び片付けごみの収集・運搬や処理に関しては、市町村等清掃事業団体及び固形一般廃棄物処理業界団体に協力を要請し、他市町村や業界団体等から無償での応援も得て、ごみ収集車の派遣やごみの広域的な受入処理等の支援を実施し、速やかな撤去を実現することができました。

(2)大気環境対策

災害時のアスベストの飛散・ばく露防止について応急的に現場で取るべき行動等の情報を関係省庁、被災自治体等に情報提供を行うとともに、2016年6月から2017年2月にかけて被災地約40か所においてアスベストのモニタリング調査を実施し、アスベスト大気濃度は通常の一般大気環境とほぼ同じであることを確認しました。また、発災直後には、被災住民の安全・安心への対応のため、被災住民用の防じんマスクの提供を公益社団法人日本保安用品協会に依頼し、熊本県及び益城町において2万4,000枚を配布しました。

また、災害廃棄物の害虫・悪臭対策や仮設トイレ・避難所等における臭気対策について情報提供を行うとともに、被災地からの要請を受け、悪臭対策アドバイザーの派遣を実施し、主に避難所における悪臭原因の把握、抑制方法についての助言・指導等を行いました。

(3)被災ペット対策

環境省では、東日本大震災等での経験を踏まえ、2013年6月に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を策定し、災害時のペットの同行避難や避難所でのペットの受入れを推奨しています。

平成28年熊本地震では、4月19日から被災地に動物愛護管理室の職員を派遣し、避難所等におけるペットの受入れ状況を調査するとともに、被災自治体や地元獣医師会、地元のボランティアと連携して、避難所等におけるペットの受入体制の整備を支援しました(写真4-2-34-2-4)。また、ペットと一緒に住める仮設住宅の確保を関係市町村に要請し、全ての市町村の応急仮設住宅でペットとの同居が行われています。

写真4-2-3 ペット飼育専用施設の中の様子(熊本県益城町)
写真4-2-4 ペット預かり施設(熊本県益城町)

さらに、「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」の改訂を視野に入れ、熊本地震への対応状況を検証し、課題の抽出を行いました。

コラム:災害に強い再生可能エネルギー

東日本大震災では、避難施設や防災拠点においても、大規模で長期にわたる停電が発生し、非常用通信手段の確保や被災者・避難者の良好な生活環境の確保等に大きな支障が生じました。こうした教訓を踏まえ、環境省では、2011年度より、再生可能エネルギー等導入地方公共団体支援基金事業を実施し、2012年度からは、再生可能エネルギー等導入推進基金事業により、県や市町村の避難所・防災拠点への自立分散型エネルギーの導入を支援してきました。

熊本県内でも、本事業を活用して、避難所・防災拠点78か所に再生可能エネルギーが導入されており、平成28年熊本地震では、43の施設において、本事業で導入した再生可能エネルギーが活用され、避難所・防災拠点の夜間照明や情報収集機器への非常用電力の供給に大きな効果を発揮しました。

環境省事業で熊本県御船町に整備された太陽光発電設備