刊行に当たって

刊行に当たって 環境大臣小沢鋭仁
環境大臣
環境大臣 小沢鋭仁


 平成22年版の白書を刊行いたします。環境問題を広く、詳しく知っていただくため、環境白書、循環型社会白書、生物多様性白書を1冊にして公表します。

 地球温暖化に対する政府の取組は大きく変化しました。私は「わが国を脱化石燃料社会へ変革する」という強い意志の下、地球温暖化対策を進めています。地球温暖化対策が経済と相反するという考え方を変え、環境が成長を牽引するという発想の転換をしたからにほかなりません。わが国は、一定の前提の下、1990年比で2020年までに温室効果ガスの排出を25%削減することを表明しています。すでに、地球温暖化対策基本法案において、国内排出量取引制度、地球温暖化対策税、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度を3本柱とする政策の全体像を明らかにしました。また、目標にいたるまでの道筋として、「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣小沢鋭仁試案)」を提案し、この白書でも取り上げました。本年1月から温室効果ガスを25%削減するための国民的運動「チャレンジ25キャンペーン」を展開しており、一人でも多くの方に参加いただきたいと思います。

 国際的には、11月の気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)において、アメリカ、中国等を含む主要な排出国が加わる枠組みが構築されるよう、わが国も積極的な役割を果たす決意です。

 10月には、「国連地球生きもの会議」(生物多様性条約第10回締約国会議(COP10))が愛知県名古屋市で開催されます。この会議では、生物多様性に関する2010年以降の世界目標の策定や遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する国際枠組みの構築など、地球上の生きものの将来を左右する議論が行われます。46億年前にこの宇宙の中に地球が誕生し、およそ40億年前に生命が生まれたといわれています。長い歳月を経てはぐくまれた多様な生きものや環境が、私たち人間の活動によって危機に瀕しています。こうした状況にストップをかけ、唯一の「生命の星である地球」をきちんと後世に伝えていくことが、いまを生きる私たちの責務です。COP10では、地球規模での人と自然の共生の実現に向けて、国際社会をリードしていきます。

 人口、エネルギー、水を含む資源利用、経済等の人間の活動を地球規模で見ると、資源やエネルギーを持続可能な形で利用しなくてはならない状況であり、循環型社会の構築、それを推進する技術革新が不可欠です。

 未来志向の国づくりのためには、過去の教訓に学び、再び繰り返さないことが必要です。水俣病は、環境庁発足の契機ともなった公害の原点ですが、半世紀を超えて今なお苦しんでいる方がいらっしゃいます。3月には和解の基本的合意が成立し、4月には救済措置の方針を閣議決定しました。5月1日には、歴代首相として初めて鳩山総理大臣が水俣病犠牲者慰霊式に参列し、祈りの言葉を捧げました。今後も水俣病問題の解決に全力で取り組んで参ります。

 この豊かな地球を着実に引き継ぐため、私たちは将来への約束を決め、現代の責任を果たしていかなくてはなりません。そのためには、環境と成長が両立する社会の実現が不可欠です。その思いを皆様と共有するためにこの白書が役立てば大変嬉しく思います。



目次 次ページ