第2節 生物多様性を社会に浸透させる取組

1 地方公共団体、企業や市民の参画

 「生物多様性」の国民の認知度は高いとはいえない状況ですが、自然の恵み豊かな国土を将来世代に引き継いでいくためにも、一般の人々が暮らしの中で生物多様性について考えたり、意識したりすることが必要です。

 広く国民への生物多様性に関する普及・広報を推進するため、有識者等からなる「生物多様性広報・参画推進委員会」において、生物多様性のための国民の行動リストを拡充することなどにより、効果的な普及啓発を推進します。

 都道府県及び市町村が、生物多様性基本法に基づく生物多様性地域戦略を定める際の指針を策定するとともに、企業が生物多様性の保全と持続可能な利用のための活動を自主的に行う際の参考となる指針を策定することなどにより、生物多様性の社会への主流化を推進します。

 さらに、地域における生物多様性の保全・再生に資する取組を支援する「生物多様性保全推進支援事業」を実施し、地域における野生生物の保護管理や外来種対策などの取組を推進します。

2 自然とのふれあいの推進

(1)自然解説活動及び健全なふれあい利用の推進

 「みどりの月間」(4月15日~5月14日)、「自然に親しむ運動」(7月21日~8月20日)、「全国・自然歩道を歩こう月間」(10月)等を通じて、自然観察会等自然とふれあうための各種活動を実施します。また、「平成21年度自然公園ふれあい全国大会」は、平成19年8月に新たな国定公園として誕生した丹後天橋立大江山国定公園及び区域が拡大された若狭湾国定公園(京都府域)において9月に開催します。

 国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施するとともに、利用者指導の充実を図ります。また、地方環境事務所等においてパークボランティアの養成及びその活動に対する支援を行います。

 また、関係省庁が連携し実施する、農山漁村での小学生の長期宿泊体験等において、その体制づくりの一環として自然体験プログラムの開発や子どもたちに自然保護官の業務を体験してもらうなどにより自然環境の大切さなどを学ぶ機会を提供することで、自然と人との共生について子どもたちをはじめ関係者の理解を深める事業を展開します。

 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林とのふれあいを楽しみながら理解を深める森林ふれあい推進事業等を実施します。また、学校等による体験学習活動の場である「遊々の森」や、国民による自主的な森林づくり活動の場である「ふれあいの森」、企業の社会貢献活動としての「法人の森林」の設定・活用を図るとともに、伝統文化の継承等に貢献する「木の文化を支える森づくり」や、NPO等多様な主体との協働による「知床自然の森づくり」などに取り組み、国民参加の森林づくりを推進します。

 国営公園においては、良好な自然環境や歴史的資源を活かし、自然観察、ガイドツアー、稲作体験、プロジェクト・ワイルド等、多様な環境教育プログラムを提供します。


(2)利用のための施設の整備

 国立・国定公園等において、自然とのふれあいを求める国民のニーズに応えるため、木材等の自然素材を活用し、自然環境の保全やバリアフリー化にも配慮しつつ、安全で快適な公園利用施設を計画的に整備します。

 ア 国立公園の整備

 国立公園の保護及び利用上重要な公園事業を環境省の直轄事業としており、国立公園の主要な入口における情報提供施設、山岳地域における登山道、すぐれた自然景観にふれあう景観歩道等を重点的に整備するとともに、利用拠点である集団施設地区において、良好な景観形成を図りつつ、施設の温室効果ガス排出削減やユニバーサルデザイン化を推進していきます。

 イ 国定公園等の整備

 地方公共団体の行う国定公園の整備及び長距離自然歩道の整備に対して、自然環境整備交付金により支援します。

 ウ 森林の多様な利用の推進

 保健保安林等を対象として防災機能、環境保全機能等の高度発揮を図る共生保安林整備事業を実施します。また、国民が自然に親しめる森林環境の整備を行う森林空間総合整備事業等を助成します。

 また、森林環境教育、林業体験学習の場となる森林・施設の整備、学校林の整備・活用を行うモデル学校林の設定等を推進します。

 さらに、森林総合利用施設等において、年齢や障害の有無にかかわらず多様な利用方法の選択肢を提供するユニバーサルデザイン手法の普及を図ります。

 国有林野については、「自然休養林」等の「レクリエーションの森」において、民間活力をいかしつつ利用者のニーズに対応した森林及び施設の整備等を行います。また、国有林野を活用した森林環境教育の一層の推進を図るため、農山漁村における体験活動とも連携し、フィールドの整備及び学習・体験プログラムの作成を実施します。

 エ 海岸等のふれあい施設の整備

 海と緑の豊かな海岸環境を確保する白砂青松の創出や生物の生息・繁殖場所となる砂浜、干潟等の保全や創出を行う「エコ・コースト事業」や、海岸環境の整備により安全で快適な海浜利用の増進を図る「海岸環境整備事業」を実施します。

 オ 港湾等のふれあい施設の整備

 港の良好な自然環境の市民による利活用を促進し、自然環境の大切さを学ぶ機会の充実を図るため、自治体やNPOなどが行う自然体験・環境教育活動等の場ともなる藻場・干潟等の整備を行います。

 カ 河川等のふれあい施設の整備

 河川の高水敷やダム周辺等を公園、緑地、運動場等として利用するため諸施設の整備を行います。かわまちづくり支援制度や水辺の楽校等の整備により、親水レクリエーションの促進を図ります。


(3)エコツーリズムの推進

 地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムのより一層の普及・定着を図るため、エコツーリズムに関する普及啓発、ノウハウ確立、人材育成、国立公園等におけるエコツーリズム支援のほか、各地の全体構想の認定や地元協議会への参画・助言等、エコツーリズム推進法に基づき取り組む地域への支援等を関係省庁の連携により総合的に実施します。


(4)都市と農山漁村の交流

 平成20年度から実施している、全国の小学校において農山漁村での1週間程度の長期宿泊体験活動の実施を目指す「子ども農山漁村交流プロジェクト」を一層推進し、子どもの豊かな心を育むとともに、自然の恩恵などを理解する機会の促進を図ります。

 都市と農村の多様な主体が参加した取組等を総合的に推進し、グリーン・ツーリズムの普及を進め、農山漁村地域の豊かな自然とのふれあい等を通じて自然環境に対する理解の増進を図ります。


(5)温泉の保護及び安全・適正利用

 温泉法の運用に当たり、温泉源の保護、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止及び温泉の適正かつ効率的な利用の増進を図るため都道府県等に対し適切な助言を行います。また、温泉の公共的利用増進のため、保健、休養等に適した温泉地を国民保養温泉地に指定します。



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