第3節 地域における人と自然の関係を再構築する取組

1 里地里山の保全

 里地里山の保全再生に向けた多様な主体の取組をさらに全国へと展開していくために、里地里山の管理・利活用の方策を検討するとともに、多様な主体が共有の資源として管理し、持続的に利用する枠組みを検討します。これに加えて、全国の優良事例となりうる里地里山の取組を情報発信し、ほかの地域への取組の波及を図ります。また、都市住民等のボランティア活動への参加を促進するため、活動場所と専門家の紹介等を行うとともに、里地里山の保全再生に向けた活動の継続・促進のための助言等の支援を行います。

 文化財保護法(昭和25年法律第214号)に基づく文化的景観については、引き続き、地方公共団体の申出のあったものの中から特に重要なものを文部科学大臣が重要文化的景観として選定するとともに、地方公共団体が行う保存・活用事業を推進します。

 さらに、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金、自然再生の視点に基づく環境創造型の整備を推進します。また、上下流連携いきいき流域プロジェクトにより、里山林等における森林保全活動や多様な利用活動への支援を実施するなど、活動に対する支援面でも取組を進めます。

 国立・国定公園においては、土地所有者の高齢化等により管理が行き届かなくなった里地里山を対象に、国、地方公共団体、NPO等と土地所有者等との風景地保護協定の締結を推進します。また、特別緑地保全地区等に含まれる里地里山については、土地所有者と地方公共団体等とが管理協定を締結し、持続的に管理を行うとともに市民に公開するなどの取組を引き続き推進します。里山林では、NPO等と森林所有者とが結ぶ施業の実施に関する協定について市町村長が認可する制度を活用した国民参加の森林づくりを推進します。

2 鳥獣の保護管理の推進

(1)鳥獣保護事業及び鳥獣に関する調査研究等の推進

 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号。以下「鳥獣保護法」という。)等に基づく円滑な鳥獣保護管理及び第10次鳥獣保護事業計画が適切に実施されるよう、地方公共団体及び関係団体との連携・協力を進めていきます。

 各都道府県においては、鳥獣保護事業計画に基づき、鳥獣保護区の指定、被害防止のための捕獲及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進します。当該計画の推進に当たっては、人と鳥獣との共存の確保及び生物多様性の保全を踏まえて鳥獣を適切に保護管理することを基本とします。

 渡り鳥の生息状況等に関する調査として、鳥類観測ステーションにおける鳥類標識調査、ガンカモ類の生息調査等を引き続き実施します。全国的・広域的な観点から保護管理の方向付けを行う必要性の高い鳥獣について、保護管理のための指針づくりを推進します。

 また、野生生物保護思想の普及啓発を図るため、愛鳥週間行事の一環として「全国野鳥保護のつどい」を北海道釧路市で実施するほか、小中学校及び高等学校等を対象とした「全国野生生物保護実績発表大会」等を開催します。


(2)適正な狩猟と鳥獣管理の推進

 狩猟による事故防止、違法行為の防止の徹底等適正な狩猟を確保するための関係者への指導を行うとともに、狩猟鳥獣に係るモニタリング調査を実施します。特定鳥獣保護管理計画等による適切な鳥獣の保護管理を推進するとともに、農林水産業等に被害を与えている鳥獣や、地域的に孤立している個体群の広域的な保護管理のための指針を関係都道府県等と検討します。

 さらに、鳥獣保護管理の人材育成及び確保のために、「鳥獣保護管理に係る人材育成事業」を継続します。また、都道府県の特定鳥獣保護管理計画に基づく保護管理実施状況を引き続き調査・分析するほか、特定鳥獣保護管理計画の目的推進のため、モニタリング手法等に関する調査を実施します。このほか、適切な特定鳥獣保護管理計画の策定等に資するため、主な野生鳥獣の生息動向の把握や、生息数の推定方法の検討などを行う調査研究を実施します。


(3)鳥獣による農林漁業等への被害対策

 「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」に基づき、市町村による被害防止計画の作成を推進するとともに、野生鳥獣を誘引しにくい営農管理技術の開発等の試験研究、侵入防止柵等の被害防止施設の整備、効果的な被害防止システムの整備、鳥獣捕獲体制整備等を推進し、鳥獣との共存にも配慮した多様で健全な森林の整備・保全等を図る事業等を実施します。さらに、生態に悪影響を及ぼすことなく、トドによる被害を防ぐための対策として、被害を受ける漁具の強度強化等を引き続き促進します。また、近年アザラシ類による漁業被害が深刻化していることから、適切な保護管理対策に資するため、被害状況の把握・分析を行い、効果的な被害防止対策について検討します。


(4)国指定鳥獣保護区における渡り鳥等の保護対策

 渡り鳥の保護対策として、出水平野に集中的に飛来するナベヅル及びマナヅルについて、その生息環境の保全、整備を実施するとともに、越冬地の分散を図るための地域活動の推進、普及啓発を引き続き実施します。

 国指定鳥獣保護区においては、管理員の配置等を行い適切な管理に努めるとともに、鳥獣の生息環境が悪化しつつある浜頓別クッチャロ湖(北海道)、宮島沼(北海道)、片野鴨池(石川県)、漫湖(沖縄県)において鳥獣の生息地保護及び整備を図るため、引き続き保全事業を実施します。


(5)野鳥における鳥インフルエンザ対策

 渡り鳥を含む野鳥の高病原性鳥インフルエンザウィルス保有状況調査や渡り鳥の移動経路等に関する調査及び渡り鳥の飛来状況調査を継続して実施し、国民に情報提供を行います。

3 希少野生動植物種の保存

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)に基づき、希少野生動植物種を指定し、個体の捕獲・譲渡し等の規制、器官・加工品の譲渡し等の規制を引き続き実施していくとともに、国内希少野生動植物種については、生息・生育状況を把握するための現状調査や、生息地等保護区の指定を推進し、生息・生育環境の保護管理を行います。また、保護増殖事業については、種の保存法に基づく保護増殖事業計画に従い、ツシマヤマネコ、アホウドリ、ミヤコタナゴ等の生息環境の改善・整備や繁殖の促進のための事業を推進するとともに、国内希少野生動植物種に指定された種で保護増殖事業が必要な種について、順次、保護増殖事業計画を策定します。さらに、野生生物保護センター等において絶滅のおそれのある野生生物の保護増殖事業等を推進します。この中で佐渡島においては、トキの野生復帰に向けて野生順化訓練と放鳥を継続するとともに、環境省、農林水産省、国土交通省の連携調査結果を踏まえ、餌資源の確保や営巣木、ねぐら木になる松林の保全を進めます。

4 外来種等への対応

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)に基づく特定外来生物の飼養規制等を継続するとともに、生態系、農林水産業等への影響が現に生じている地域における防除を進めます。さらに、効果的な防除手法の検討等を引き続き進めるとともに、外来種についての普及啓発を引き続き推進します。

 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)に基づき遺伝子組換え生物等の使用等の規制に関する措置を講じ、生物の多様性の確保を図るとともに、環境中での使用について承認された遺伝子組換え生物等に関する情報の提供などを進めます。

5 飼養動物の愛護・管理

 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)に基づき、平成18年10月に策定された動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針の点検を引き続き実施します。

 広く国民の間に動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるため、その趣旨にふさわしい行事、動物愛護管理功労者の表彰、動物の愛護や適正飼養を啓発するポスターの作成及びそのデザインのコンクール等を動物愛護週間(9月20〜26日)に国及び地方公共団体において実施することにより、総合的な普及啓発を図ります。

 都道府県等に収容される動物の適正な取扱を徹底するとともに、収容施設の新・改築や譲渡のための専用スペースの設置等に係る経費の一部を都道府県等に新たに補助し、譲渡及び返還を積極的に推進します。

 マイクロチップによる個体識別措置の普及啓発を図るため、全国数か所においてモデル試行事業を実施します。

 また、動物の特性に応じたペットフードの選定及び与え方の留意点、ペットの体調管理等に関する普及啓発を引き続き実施します。

 平成21年6月から施行される愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成20年法律第83号)の適切かつ着実な運用を図るため、基準規格の設定や、関係団体等との連携体制の整備等を行います。

6 遺伝資源などの持続可能な利用

(1)遺伝資源の利用と保存

 農林水産分野においては、引き続き、農業生物資源ジーンバンク事業などにより、動植物、微生物、DNA、林木、水産生物の各部門の国内外の遺伝資源の収集、分類、保存などを行い、研究開発資料として利用者に配布及びその情報の提供を行うとともに、新たに植物遺伝資源約7,000点等の収集を計画しています。また、海外から研究者を受け入れ、遺伝資源の保護と利用のための研修を行います。

 また、「林木育種戦略」に基づき、絶滅の危機に瀕している種等の希少・貴重な林木遺伝資源の保全を図るとともに、林木の新品種の開発に不可欠な育種素材として利用価値の高い林木遺伝資源等を確保するため、その収集・保存を進めます。さらに、林木遺伝資源の有効利用を図るため、特性評価、情報管理及び配布を行います。


(2)微生物資源の利用

 独立行政法人製品評価技術基盤機構を通じた資源保有国との国際的取組の実施などにより、資源保有国への技術移転、わが国企業への海外の微生物資源の利用機会の提供などを行い、微生物資源の「持続可能な利用」の促進を図っていきます。


(3)バイオマス資源の利用

 「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成18年3月閣議決定)に基づき、バイオマスの利活用の加速化を図ります。特に、国産バイオ燃料については、平成19年2月に総理報告した「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた工程表」に基づき関係府省が協力して取組を推進します。具体的には、農林漁業バイオ燃料法に基づき新設されたバイオ燃料製造設備に係る固定資産税の軽減措置による支援や、バイオ燃料の原料供給から製造、流通まで一体となった取組を行います。また、食料供給と両立できる稲わら等のソフトセルロース系原料の収集・運搬からバイオ燃料の製造・利用までの技術を確立する取組を行うとともに、バイオ燃料向け資源作物の開発や資源作物全体から高効率にエタノールを生産する技術開発等を進めます。なお、バイオ燃料の基準策定に係る国際的な動きについても、わが国の立場が適切に反映されるよう対応します。

 このほか、地域のバイオマスを効率的に利活用するバイオマスタウンを平成22年度までに300地区程度で構想を策定することを目指し、バイオマスタウン構築の加速化を推進します。



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