第3節 地域における人と自然の関係を再構築する取組

1 里地里山の保全

 文化財保護法(昭和25年法律第254号)に基づく文化的景観については、引き続き、地方公共団体の申出のあったものの中から特に重要なものを文部科学大臣が重要文化的景観として選定するとともに、地方公共団体が行う保存・活用事業を推進します。

 里地里山の保全再生に向けた多様な主体の取組を更に全国へと展開していくために、生物多様性などのさまざまな観点から将来に引き継ぎたい重要な里地里山を選定します。これに加えて、里地里山の新たな利活用の方策を具体的な地域での試行的な取組を通じて検討するとともに、都市住民など多様な主体が共有の資源として管理し、持続的に利用する枠組みを構築します。また、平成19年度から引き続きで、都市住民等のボランティア活動への参加を促進するため、活動場所と専門家の紹介等を行います。

 さらに、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金、自然再生の視点に基づく環境創造型の整備を推進します。また、上下流連携いきいき流域プロジェクトにより、里山林等における森林保全活動や多様な利用活動への支援を実施するなど、活動に対する支援面でも取組を進めます。

 国立・国定公園においては、土地所有者の高齢化等により管理が行き届かなくなった里地里山を対象に、国、地方公共団体、NPO等と土地所有者等との風景地保護協定の締結を推進します。また、特別緑地保全地区等に含まれる里地里山については、土地所有者と地方公共団体等とが管理協定を締結し、持続的に管理を行うとともに市民に公開するなどの取組を推進します。里山林では、NPO等と森林所有者とが結ぶ施業の実施に関する協定について市町村長が認可する制度を活用した国民参加の森林づくりを推進します。

2 鳥獣の保護管理の推進

(1)鳥獣保護事業と鳥獣に関する調査研究の推進

 国指定鳥獣保護区においては、保護管理方針を示すマスタープランを策定し、管理の充実に努めます。各都道府県においては、鳥獣保護事業計画に基づき、鳥獣保護区の指定、被害防止のための捕獲及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進します。当該計画の推進に当たっては、人と鳥獣との共存の確保及び生物多様性の保全を踏まえて鳥獣を適切に保護管理することを基本とします。

 渡り鳥の生息状況等に関する調査として、鳥類観測ステーションにおける鳥類標識調査、ガンカモ類の生息調査等を引き続き実施します。全国的・広域的な観点から保護管理の方向付けを行う必要性の高い鳥獣について、保護管理のための指針作りを推進します。

 また、野生生物保護思想の普及啓発を図るため、愛鳥週間行事の一環として「全国野鳥保護のつどい」を東京都内で実施するほか、小中学校及び高等学校等を対象とした「全国野生生物保護実績発表大会」等を開催します。


(2)適正な狩猟の推進と農林漁業被害の防止対策

 平成18年度に改正された鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号。以下「鳥獣保護法」という。)等に基づく円滑な鳥獣保護管理及び第10次鳥獣保護事業計画が適切に実施されるよう、関係者に対する普及啓発を行うとともに、地方公共団体及び関係団体との連携・協力を進めていきます。

 狩猟による事故防止、違法行為の防止の徹底等適正な狩猟を確保するための関係者への指導を行うとともに、狩猟鳥獣の種類の見直しに必要な調査・検討を進めます。

 環境省、農林水産省、林野庁が連携し、鳥獣被害対策等を推進するため全国や地方ブロックごとの連絡会議等を引き続き実施します。また、特定鳥獣保護管理計画等による適切な鳥獣の保護管理を推進するとともに、農林水産業等に被害を与えている鳥獣や、地域的に孤立している個体群の広域的な保護管理のための指針を関係都道府県等と検討します。

 近年アザラシ類による漁業被害が深刻化していることから、適切な保護管理対策に資するため、被害状況の把握・分析を行い、効果的な被害防止対策について検討します。

 さらに、鳥獣保護管理の人材育成及び確保のために、専門的知識や技術等を有する人材を登録により確保する仕組みづくりや、鳥獣保護管理の中核的な担い手を育成し、将来にわたる鳥獣管理体制の構築を図るため「鳥獣保護管理に係る人材育成事業」を実施します。また、都道府県の特定鳥獣保護管理計画に基づく保護管理実施状況を引き続き調査・分析するほか、特定鳥獣保護管理計画の目的推進のため、モニタリング手法等に関する調査を実施します。このほか、適切な特定鳥獣保護管理計画の策定等に資するため、農業被害等をもたらす主な野生鳥獣の生息動向の把握や、生息数の推定方法の検討などを行う調査研究を実施します。

 また、野生鳥獣を誘引しにくい営農管理技術の開発等の試験研究、侵入防止柵等の被害防止施設の整備、効果的な被害防止システムの整備、有害獣捕獲のための体制整備等を推進し、鳥獣との共存にも配慮した多様で健全な森林の整備・保全等を図る事業等を実施します。さらに、生態に悪影響を及ぼすことなく、トドによる被害を防ぐための対策として、被害を受ける漁具の強度強化等を引き続き促進します。


(3)国指定鳥獣保護区における渡り鳥の保護対策

 渡り鳥の保護対策としては、出水平野に集中的に飛来するナベヅル及びマナヅルについて、その生息環境を改善し、越冬地を分散するために、遊休地の確保等の事業を引き続き実施します。また、我が国有数の渡り鳥の渡来地の一つである谷津干潟において、生息環境の調査等の事業を実施します。


(4)鳥類の鉛中毒事故の防止対策

 地域を指定しての鉛弾の使用禁止及び無毒の代替弾への切り替え等の措置を引き続き推進するとともに、指定猟法禁止区域について新たな指定を促進します。


(5)鳥インフルエンザの感染症対策の推進

 渡り鳥を含む野鳥の高病原性鳥インフルエンザウィルス保有状況調査や渡り鳥の移動経路等に関する調査及び渡り鳥の飛来状況調査を継続して実施し、国民に情報提供を行います。

3 野生動植物の捕獲・譲渡等の規制、生息・生育環境の整備等

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)に基づき、希少野生動植物種を指定し、個体の捕獲・譲渡し等の規制、器官・加工品の譲渡し等の規制を引き続き実施していくとともに、国内希少野生動植物種については、生息・生育状況を把握するための現状調査や、生息地等保護区の指定を推進し、生息・生育環境の保護管理を行います。また、保護増殖事業については、種の保存法に基づく保護増殖事業計画に従い、ツシマヤマネコ、アホウドリ、タンチョウ、ミヤコタナゴ等の生息環境の改善・整備や繁殖の促進のための事業を推進するとともに、国内希少野生動植物種に指定された種で保護増殖事業が必要な種について、順次、保護増殖事業計画を策定します。さらに、野生生物保護センター等において絶滅のおそれのある野生生物の保護増殖事業等を推進します。この中で佐渡島においては、トキの野生復帰に向けて野生復帰ステーションでの順化訓練に取り組み、試験放鳥に着手するとともに、環境省、農林水産省、国土交通省の連携調査結果を踏まえ、餌資源の確保や営巣木、ねぐら木になる松林の保全を進めます。豊岡市においては、引き続き、コウノトリの試験放鳥を継続するとともに生息環境の整備を実施していきます。

4 外来種等への対応

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)に基づく特定外来生物の飼養規制等を継続するとともに、生態系、農林水産業等への影響が現に生じている地域における防除を進めます。さらに、効果的な防除手法の検討等を引き続き進めるとともに、外来種についての普及啓発を引き続き推進します。

 遺伝子組換え生物等の使用等の規制に関する措置を講ずることにより、生物の多様性の確保を図るとともに、環境中での使用について承認された遺伝子組換え生物等に関する情報の提供などを進めます。



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