第2節 生物多様性国家戦略及び生物多様性条約COP10

1 第三次生物多様性国家戦略の策定

(1)経緯

 国内外の状況の変化などを受けて(図6-2-1)、平成18年度に生物多様性国家戦略の見直しに着手し、生物多様性国家戦略の見直しに関する懇談会を開催して、見直しに関する論点を取りまとめました。また、その論点について広く意見の公募を行うとともに、全国8か所で地方説明会を開催しました。それらの結果を受け、平成19年4月、中央環境審議会に同戦略の見直しについて諮問を行い、自然環境・野生生物合同部会における審議、パブリックコメントを経た答申の提出を受けて、第三次生物多様性国家戦略を閣議決定しました。


図6-2-1 生物多様性国家戦略見直しの経緯


(2)特徴

 生物多様性国家戦略は、生物多様性条約第6条に基づき、生物多様性の保全と持続可能な利用について、基本的な考え方と政府の施策を取りまとめたものです。

 第三次生物多様性国家戦略は、構成を大きく1部と2部に分け、第1部で生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた戦略として基本的な考え方や方向性を示し、第2部で行動計画としてこの5年間で行うべき政府の各種施策を網羅的に整理しています。(図6-2-2)


図6-2-2 第三次生物多様性国家戦略の概要

 第1部では、まず第1章で、「生物多様性の重要性」について、「いのちと暮らしを支える生物多様性」といった言葉を用いて分かり易い整理に努めました。その中で我が国での暮らしが海外の生物多様性からの恵みにも依存していることも記述しています。また、第2章では、現状認識としてこれまで示されていた生物多様性に関する3つの危機のほかに、「地球温暖化による危機」を生物多様性に逃れることのできない深刻な影響を与えるものとして示すとともに、地球温暖化と生物多様性の関係について記述しました。また、世界とつながる日本の生物多様性について説明するとともに、地方公共団体、企業、NGOなどの取組について事例や期待される活動を記述しています。第3章では、豊かな生物多様性を将来にわたって継承し、その恵みを持続的に享受できる「自然共生社会」を構築するための目標として、[1]保全と絶滅の回避、[2]持続可能な利用、[3]社会経済活動への組込、の3つを挙げ、2010年に向け生物多様性総合評価を行っていくことを記述しました。また、「100年計画」といった考え方のもと、エコロジカルな国土管理の長期的な目標像を「生物多様性から見た国土のグランドデザイン」として示しています。さらに、第4章では、施策を展開する上で共通の基本的視点として、「科学的認識と予防的順応的態度」など5つを示すとともに、今後5年間程度の間に重点的に取り組むべき施策の大きな方向性を基本戦略として、[1]生物多様性を社会に浸透させる、[2]地域における人と自然の関係を再構築する、[3]森・里・川・海のつながりを確保する、[4]地球規模の視野を持って行動する、の4つに整理しました。

 第2部では、戦略を実現していくための具体的な行動計画として各種の施策を体系的に記述しています。個別の施策については実施主体を明記し、可能な範囲で数値目標を盛り込むことにより、国家戦略の実施への道筋を明らかにすることに努めました。全体で約660の具体的施策が挙げられており、その中の34については数値目標も記載しています。

 生物多様性については、地球温暖化による影響が顕在していることや、私たちの暮らしが自然資源に大きく依存していることなどから、国際的にも関心が高まってきています。我が国としても、第三次戦略を受けた政府の施策を着実に進めるとともに、様々な主体による積極的な取組を促していくことが必要です。

2 生物多様性条約COP10に向けた取組

 生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)及び同条約カルタヘナ議定書第5回締約国会議を我が国で開催すべく立候補しており、候補地である愛知県名古屋市や関係省庁と連携しながら準備を進めました。

3 自然環境調査

(1)自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)

 平成17年度に開始した第7回基礎調査を引き続き実施し、植生調査、種の多様性調査、生態系多様性調査(浅海域生態系調査)等に取り組みました。

 植生調査では、植生図を最新かつ詳細なものとするため、第6回基礎調査(平成11年度)から、植生原図の作成に従来の縮尺5万分の1地形図に代えて縮尺2万5千分の1地形図を用いることとし、平成19年度末時点で全国の約39%の作成作業が終了しました。浅海域生態系調査では、平成14~18年にかけて全国の干潟197か所を対象に底生生物相の調査を実施し、平成19年10月にその調査結果を取りまとめ、公表しました。


(2)モニタリングサイト1000

 全国の自然環境の変化を把握するため、平成15年度から開始したモニタリングサイト1000において、平成19年度も引き続き、森林、里地里山、陸水域(湖沼、湿原)、沿岸域(干潟、藻場、サンゴ礁等)などの様々な生態系のタイプごとに調査項目を設定し、調査を実施しました。



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