第2章 大気環境の保全
第1節 大気環境の現状
1 光化学オキシダント
(1)環境基準の達成状況
光化学オキシダントに係る環境基準(1時間値が0.06ppm以下であること)の達成状況は、極めて低く、一般局と自排局を合わせて、昼間(午前5時~午後8時)に環境基準を達成した測定局及び1時間値の最高値が0.12ppm(光化学オキシダント注意報レベル)未満であった測定局数は、図2-1-1のとおりです。
(2)光化学オキシダント注意報等の発令状況等
平成18年の光化学オキシダント注意報の発令延べ日数(都道府県を一つの単位として注意報等の発令日数を集計したもの)は177日(25都府県)で、17年の185日(21府県)と比べ、わずかに減少しました(図2-1-2)。その発令延日数を月別にみると、8月が最も多く91日、次いで6月が51日でした。また、光化学大気汚染によると思われる被害届出人数(自覚症状による自主的な届出による。)は286人でした。
地域ブロック別に注意報の発令延日数をみると、関東ブロックで81日となっており、全体の約46%を占めています(図2-1-3)。
(3)非メタン炭化水素の測定結果
平成17年度の
非メタン炭化水素の測定局数は、221市町村319の一般局と、136市町村191の自排局でした。昭和53年度から継続して測定を行っている6一般局と6自排局の午前6~9時における年平均値の経年変化は図2-1-4のとおりです。
2 窒素酸化物
平成17年度の二酸化窒素に係る有効測定局(年間測定時間が6,000時間以上の測定局をいう。以下同じ。)数は、一般局が672市町村・1,424測定局、自排局が268市町村・437測定局です。年平均値は、一般局0.015ppm、自排局0.027ppmで、図2-1-5に推移を示したとおり一般局ではほぼ横ばいであり、自排局では緩やかな改善傾向が見られます。
環境基準の達成状況の推移は、図2-1-6のとおりです。平成17年度は、一般局99.9%、自排局91.3%で、一般局では近年ほとんど全ての測定局で環境基準を達成しており、自排局では前年に比べやや改善しています。
自動車NOx・PM法に基づく対策地域全体における環境基準達成局の割合は、平成17年度は85.1%(自排局)と近年改善傾向が見られます(図2-1-8)。また、年平均値は近年ほぼ横ばいながら緩やかな改善傾向が見られます(図2-1-9)。
3 浮遊粒子状物質
平成17年度の
浮遊粒子状物質(SPM)に係る有効測定局数は、一般局が675市町村・1,480測定局、自排局が258市町村・411測定局でした。年平均値は、一般局0.027mg/m
3、自排局0.031mg/m
3で、図2-1-10に推移を示したとおり、前年度に比べて改善し、近年緩やかな減少傾向が見られます。
浮遊粒子状物質の環境基準の達成率の推移は図2-1-11のとおりで、平成17年度は、一般局96.4%、自排局93.7%と前年度に比べていずれもやや低下しています。環境基準を達成していない測定局は全国24府県に分布しています。
4 硫黄酸化物
平成17年度の
二酸化硫黄(SO2)に係る
有効測定局数は、一般局が576市町村・1,319測定局、自排局が73市町村・85測定局でした。年平均値は、一般局、自排局ともに0.004ppmで、図2-1-12のとおり近年横ばい傾向にあります。
二酸化硫黄の環境基準の達成率の推移は表2-1-1のとおりで、平成17年度は一般局99.7%、自排局100%と、近年良好な状態が続いています。
5 一酸化炭素
平成17年度の
一酸化炭素(CO)に係る有効測定局数は、一般局が79市町村・91測定局、自排局が206市町村・304測定局でした。年平均値の推移は図2-1-13のとおりであり、一般局0.4ppm、自排局0.6ppmと近年は一般局でほぼ横ばいであり、自排局では漸減傾向にあります。
平成17年度においては、前年度に引き続き、一般局、自排局ともすべての測定局において環境基準を達成しています。
6 有害大気汚染物質
近年、多種多様な有害大気汚染物質が、低濃度ながら大気中から検出されており、これらの物質に長期間にわたってばく露することによる健康影響が懸念されています。
平成17年度に環境省及び地方公共団体等が実施した有害大気汚染物質のモニタリング結果によると、環境基準の設定されている物質に係る測定結果は表2-1-2のとおりでした(ダイオキシン類に係る測定結果については
第5章参照)。
7 石綿
石綿による大気汚染の現状を把握し、今後の対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供していくため、建築物の解体工事等の作業現場周辺などで、大気中の石綿濃度の測定を実施しました(平成18年度の対象地点は全国54地域169地点)。18年度の調査結果ではいずれの地域分類においても特に高い濃度は見られず、17年度と同様に問題になるレベルではないと思われます。
8 騒音・振動
騒音に係る環境基準は、地域の類型及び時間の区分ごとに設定されており、類型指定は、平成17年度末現在、47都道府県の744市、492町、45村、23特別区において行われています。また環境基準達成状況の評価は、「個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本」とされ、一般地域(地点)と道路に面する地域(住居等)別に行うこととされています。
また、航空機・鉄道の騒音・振動については、その特性に応じて、別途環境基準又は指針が設定されています。
航空機騒音・新幹線鉄道騒音に係る環境基準については、地域の類型ごとに設定されており、平成17年度末現在で、航空機騒音については33都道府県、64飛行場周辺において、新幹線鉄道騒音については25都府県において類型の指定が行われています。
騒音苦情の件数はここ数年増加しており、平成17年度は16,470件でした(図2-1-14)。発生源別に見ると、工場・事業場に係る騒音苦情の割合が33.8%を占め、次いで建設作業騒音に係る苦情の割合が31.0%を占めています。また、近年では、低周波音に関しても、100件程度の苦情が寄せられています。
また、振動の苦情件数は、平成17年度は3,599件でした。発生源別に見ると、建設作業振動に対する苦情件数が60.7%を占め、次いで工場・事業場振動に係るものが21.7%を占めています。
平成17年度の一般地域における騒音の環境基準の達成状況は、全測定地点で77.8%、地域の騒音状況を代表する地点で78.7%、騒音に係る問題を生じやすい地点等で70.8%となっています。
平成17年度の道路に面する地域における騒音の環境基準の達成状況は、自動車騒音常時監視の結果によると、全国2,914千戸の住居等を対象に行った評価では、昼間又は夜間で環境基準を超過したのは456千戸(16%)でした(図2-1-15)。このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある1,240千戸のうち昼間又は夜間で環境基準を超過した住居等は317千戸(26%)でした。この状況は、
GISを活用し、「全国自動車交通騒音マップ(環境GIS自動車交通騒音実態調査報告)」として、インターネット上で一般に公開しています(
http://www-gis.nies.go.jp/noise/car/)。
航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、長期的に改善の傾向にあり、平成17年度においては測定地点の約73%の地点で達成しました(図2-1-16)。
新幹線鉄道騒音については、東海道、山陽、東北及び上越新幹線沿線において、主に住居地域を中心におおむね75デシベル以下が達成されていますが、一部で達成していない地域が残されており、引き続き音源対策を計画的に推進しました。また、新幹線鉄道振動については、振動対策指針値はおおむね達成されています。
9 悪臭
悪臭苦情の件数は昭和47年度をピークにおおむね減少傾向にありましたが平成5年度を底として以後は増加傾向にありました。17年度の悪臭苦情件数は19,114件となり2年連続で減少しました(
図2-1-14)。発生源別に見ると、畜産業や製造工場など、かつて問題となっていた業種に係る苦情件数は近年横ばいで推移していますが、サービス業・その他に係る苦情が増加する傾向が見られます。
10 その他の大気に係る生活環境の現状
(1)ヒートアイランド現象
都市部の気温が郊外に比べて高くなる
ヒートアイランド現象が大都市を中心に生じており、夏季には、熱帯夜の日数が増加しています(図2-1-17)。また、冷房等による排熱が気温上昇を招き、さらなる冷房による排熱が生ずるという悪循環が発生しています。このほか、夏季の光化学オキシダントや冬季の窒素酸化物(NOx)による大気汚染を助長するといった関連性も指摘されています。
(2)光害(ひかりがい)
不適切な夜間照明の使用から生じる光は、人間の諸活動や動植物の生息・生育に悪影響を及ぼすことがあります。また、過度の屋外照明はエネルギーの浪費であり、地球温暖化の原因にもなります。