第5節 海洋環境の保全


1 海洋汚染の防止等

ロンドン条約1996年議定書の締結に向けた平成16年の海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号。以下「海洋汚染等防止法」という。)の改正による海洋投入処分の許可制度等の導入を受け、18年10月には海洋投入処分を行うことができる廃棄物を規定している廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の改正を行いました。
また、油、有害液体物質等の排出に関する規制に関するMARPOL73/78条約附属書I及びIIの改正に対応し、海洋汚染等防止法施行令の改正等を行いました。
国際的に船舶のバラスト水の排出による外来生物や病原菌による海洋環境の汚染等が問題視されており、日本における処理装置の認証に関する体制整備のための検討を行いました。さらに、バラスト水中に含まれる生物による海洋環境への影響に関する基礎調査を行いました。
平成17年5月に船舶からの大気汚染を防止するためのMARPOL73/78条約附属書VIが発効しました。現在、IMO(国際海事機関)において本附属書のNOx、SOx等船舶からの排出ガス規制強化の見直しが行われており、日本も議論に参画しています。
昨今の老朽タンカー等による油流出事故の主な原因となっている安全・環境に関する国際基準を満たさない船舶(サブスタンダード船)の排除を目的とする任意によるIMO加盟国監査制度が平成18年9月から開始されました。我が国は、同制度の早期定着に向け、19年2月に監査を受け入れました。
海洋環境管理については、東アジア12か国の参加による東アジア海域の持続可能な開発のための連携強化を目的とした東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)に参画しており、平成15年の閣僚級会合で採択された東アジア海域の持続可能な開発戦略(SDS−SEA)の実施に向けた取組を進めました。
中国、韓国、ロシアと我が国の4カ国による日本海及び黄海の環境保全のための北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)に基づき、河川や大気を経由して日本海に流入する汚染負荷量の把握に関する調査を行ったほか、対象海域の状況を把握するため、富山県に設置した施設において、人工衛星からのリモートセンシングデータを受信・処理しました。さらに、平成17年のNOWPAP第10回政府間会合において採択された海洋ゴミに関するプロジェクトとして、ワークショップ等の開催、ガイドラインの作成、モニタリング計画の作成、クリーンアップキャンペーンの実施等が行われました。
UNEPが提唱する「陸域活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画」(GPA)に関しては、平成18年に政府間レビュー会合が開催され、情報収集等が行われました。
漂流・漂着ゴミについては、構造改革特区第8次提案に対する政府の対応方針(平成18年2月15日構造改革特別区域推進本部決定)を受けて、漂流・漂着ゴミに関するより実効的な対策を検討するため、「漂流・漂着ゴミ対策に関する関係省庁会議」を開催しました。同会議では漂流・漂着ゴミ問題について、現状、国の取組、今後の課題等を取りまとめ、平成19年3月に公表しました。

2 未然防止対策


(1)船舶等に関する規制
海洋汚染等防止法に基づき、油、有害液体物質等及び廃棄物の排出規制、焼却規制等について、その適正な実施を図るとともに、船舶の構造・設備等に関する技術基準への適合性を確保するための検査、海洋汚染防止証書等の交付を行いました。また、日本に寄港する外国船舶に対して立入検査を行い、MARPOL73/78条約等の基準を満たしているか否かを確認するポートステートコントロール(PSC)を的確に行いました。

(2)未査定液体物質の査定
船舶によって輸送される有害液体物質等に関し、MARPOL73/78条約附属書IIが改正され、平成19年1月1日から汚染分類が変更となりました。新基準に基づき、環境大臣が海洋環境保全の見地から有害性の確認がなされていない液体物質(未査定液体物質)の査定を行っています。これまでに査定、告示した物質は11物質(平成19年3月末現在)となっています。

(3)海洋汚染防止指導
6月と11月の「海洋環境保全推進週間」を始めとして、全国各地で海洋環境保全講習会等の海洋環境保全推進活動を行いました。船舶の不法投棄については、廃船の早期適正処分を指導する内容が記載された「廃船指導票」を廃船に貼付することにより、投棄者自らによる適正処分を促進し、廃船の不法投棄事犯の一掃を図りました。

3 排出油等防除体制の整備

OPRC条約及び「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」(以下「国家的な緊急時計画」という。)に基づき、環境保全の観点から油汚染事件に的確に対応するため、脆弱沿岸海域図の公表、関係地方公共団体等に対する傷病鳥獣の救護及び事件発生時対応のあり方に対する研修・訓練を実施しました。また、平成19年6月に国際発効する危険・有害物質汚染事件に関する議定書(以下「OPRC−HNS議定書」という。)に対応するために各種検討等を行いました。
OPRC-HNS議定書の締結に伴い、海上における有害液体物質等の排出事故に適確に対応し得る国家的な体制を確立するため、海洋汚染等防止法の一部を改正するとともに、国家的な緊急時計画の全体的な見直しを行い、新たに「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を策定しました。
また、油防除資機材の整備、大型のしゅんせつ兼油回収船の建造、荒天対応型大型油回収装置等の研究開発等を進めました。また、海上における油等の排出事故に対処するため、巡視船艇・航空機の常時出動体制を確保し、防除資機材を配備するとともに、排出油防除に関する協議会等の組織化・広域化の推進及びこれらの協議会との連携の下、各種訓練等による官民一体となった排出油防除体制の充実を図りました。
さらに、油防除活動等を効果的に行うために必要な「沿岸海域環境保全情報」の整備を進め、国の関係機関、地方公共団体等が、インターネットでこれらの情報の共有化を進めています。そのほか、油等の排出事故対応に資するため、漂流予測の情報を提供するための海上浮遊物移動拡散予測業務についても引き続き実施するとともに、次世代型海流監視システムの運用等により収集した詳細なデータを漂流予測情報に活用しました。
大規模石油災害時に油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行いました。また、漁場保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、油防除・油回収資機材の整備、関係都道府県等に対する汚染防止機材の整備、民間団体の実施する防除指導者の育成のための講習会及び実地訓練等について助成しました。さらに、流出油が海洋生態系に及ぼす長期的影響調査を行いました。

4 海洋汚染防止のための調査研究・技術開発等

漁業被害の防止のための赤潮対策技術開発、各閉鎖性海域の特徴を踏まえた赤潮及び貧酸素水塊による漁業被害防止対策確立のための調査、防除に関する手法の検証及び開発・普及の推進等を実施するとともに、赤潮発生状況等の調査等について助成しました。また、海浜及び漁場の美化を総合的に推進するための廃棄物の回収除去や、良好な漁場環境の保全を図ることを目的とした漁民の森づくりの活動に助成しました。

5 海洋環境保全のための監視・調査

日本周辺海域の海洋環境の現状を把握するとともに、国連海洋法条約の趣旨を踏まえ、領海・排他的経済水域における生態系の保全を含めた海洋環境の状況の評価・監視のため、水質、底質、水生生物を総合的・系統的に把握するための海洋環境モニタリングを行いました。また、漂流・漂着ゴミ等の状況を把握するための実態調査及びシミュレーションモデルの策定等を行いました。
さらに、日本の周辺海域、閉鎖性の高い海域等における海水及び海底堆積物中の油分、PCB、重金属等の海洋汚染調査を実施するとともに、バックグラウンドレベルの放射能の調査の一環として、日本周辺海域の海水、海底土中に含まれる放射性核種の分析を行いました。加えて、東京湾においては、人工衛星による赤潮等の常時監視を行いました。このほか、海洋における重金属、油分等の海洋汚染物質の全般的濃度を把握するための海洋バックグラウンド汚染観測についても日本周辺海域及び北西太平洋海域で実施しました。

6 監視取締りの現状

海上環境事犯の一掃を図るため、沿岸調査や情報収集の強化、巡視船艇・航空機の効果的な運用等により、日本周辺海域及び沿岸の監視取締りを行っています。また、潜在化している廃棄物・廃船の不法投棄事犯や船舶からの油不法排出事犯に重点をおき、悪質な海上環境事犯の徹底的な取締りを実施しました。最近5か年の海上環境関係法令違反件数は表1-5-1のとおりで、平成18年に送致した680件のうち、有害液体物質及び廃棄物の排出等の海洋汚染に直接結びつく違反は611件と全体の約90%を占めています。

表1-5-1海上環境事犯法令別内訳



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