環境省自然環境・生物多様性風力発電施設と自然環境保全に関する研究会

風力発電施設と自然環境保全に関する研究会(第1回)議事録

平成19年3月30日(金)

1. 日時

平成19年3月30日(金)10:00~12:00

2. 場所

環境省第1会議室(中央合同庁舎5号館)

3. 出席者

大野 正人 
(財団法人日本自然保護協会保護・研究部主任)
大村 昭一 
(日本風力開発株式会社執行役員開発本部長)
岡安 直比 
(財団法人世界自然保護基金ジャパン自然保護室長)
鹿野 敏  
(鹿島建設株式会社環境本部新エネルギーグループグループ長)
古南 幸弘 
(財団法人日本野鳥の会自然保護室長)
下村 彰男 
(東京大学大学院教授)
長井 浩
(日本大学助教授)
祓川 清
(株式会社ユーラスエナジージャパン代表取締役社長)
原科 幸彦
(東京工業大学教授)
松田 裕之
(横浜国立大学大学院教授)
由井 正敏
(岩手県立大学教授)
上田 隆之
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)
安藤 晴彦
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課長)
市川 類
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー等電気利用推進室長)
黒田 大三郎
(環境省大臣官房審議官)
星野 一昭
(環境省自然環境局野生生物課長)
神田 修二
(環境省自然環境局国立公園課長)

4.議事

【安藤新エネ課長】  それでは、定刻になりましたので、第1回風力発電施設と自然環境保全に関する研究会を始めたいと思います。
本日、司会進行を務めさせていただきます資源エネルギー庁新エネルギー対策課の安藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事に先立ちまして、資料の確認をさせていただきます。

【市川新エネ等電気利用推進室長】  それでは、資料の確認をさせていただきます。
 議事次第、配付資料の紙にございますけれども、本日、資料1から資料6、資料6が2つあります。資料6-1と資料6-2がございます。乱丁等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

【安藤新エネ課長】  次に、本研究会の開催に当たりまして、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長・上田及び環境省大臣官房・黒田審議官より、一言ごあいさつをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【上田省エネ・新エネ部長】  経済産業省資源エネルギー庁の省エネルギー・新エネルギー部長の上田でございます。
委員の皆様におかれましては、本日はお忙しいところご参集いただきまして、ありがとうございます。「風力発電施設と自然環境保全に関する研究会」私の本件に関する問題意識を申し上げたいと思います。
風力発電と自然環境保全の問題というのは、古くからある問題ではありますが、極めて現代的な問題であるとも言えると思っています。今から約10年前の1995年に日本の風力発電は54基でありました。これが2005年度末には日本全国で1,050基の風車が稼働している状況にあり、非常に増えております。発電出力は1万kWが107.8万kWということで、大幅な増になっています。現在、日本の風力発電は世界10位の規模でありまして、先進的な地域としてはドイツ、スペイン、アメリカ、デンマーク、インド、イギリスが挙げられます。この10年間で日本の風力発電というのは飛躍的に伸びております。
今後どうするかということですが、ご案内のとおり、風力発電は自然環境に優しい、地球温暖化防止にも資する国産のエネルギーであり、私どもはこれをエネルギー政策としては、伸ばしていきたいと思っております。
先般、ご承知の方も多いと思いますが、RPS法を議論しております。RPS法と申しますのは、再生可能エネルギーによる電力を買うことを電力会社等に義務づける法律です。それを2014年までにどれぐらい電力会社等が買うことを義務付けるか。これは単なる目標ではありません、法律上の義務付けですが、それを延々と議論をしておりました。審議会の答申がまとまりまして、2014年に再生可能エネルギー全体で160億kWhを義務付け量にしようということになったわけであります。
160億キロワットアワーってどれくらいの量かといいますと、現状、2005年の実績は、再生可能エネルギー全体で55.7億kWhです。従って、2014年には約3倍になるぐらいのペースでこの自然エネルギーを拡大していきたいというのが私どもの思いであります。もちろん、RPS法というのは、それぞれの電気事業者等がどの自然エネルギーを買うかというのは、電力事業者に任されているので、全体が3倍になるから今の風力が3倍に直ちになるというわけではありませんが、風力発電も含めて、再生可能エネルギーの利用を3倍ぐらいに増やしていきたいと思っております。
 今、世界全体がそういう再生可能エネルギーの方向に動いていますが、再生可能エネルギーの価値観というものと、ほかの価値観との衝突というのが見られてきたということだと思います。この風力発電を設置していこうという価値観と、それから、野生生物の保護であるとか、景観の保護であるとか、もう一つの非常に正当な利益というような、価値と価値がぶつかるようになってきたわけであります。
 実はこの現象というのはほかの分野でもありまして、最近よく言われているのはバイオマスの分野であります。バイオマスエネルギー、バイオエタノールとか、ご承知の方も多いと思いますが、この利用を促進することは、世界の食料問題、あるいは世界の水問題との間でコンフリクト(ぶつかり合い)を起こす可能性があるということです。そういう意味では世界全体が化石エネルギーからできるだけ脱却していくという、ある種のエネルギー革命というのが世界で進行しつつあるわけですが、その中で、新しいエネルギーと別の正当な価値というのがぶつかる現象が至るところで起きてきていることが、実はこの問題の非常に現代的な側面ではないかと思っております。私は、ある意味これは非常におもしろい話だなと思っているわけであります。
 今後、この会議で議論を尽くしていただけば良いと思いますが、私はぜひ皆さんにもお願いしたのは、この分野に関しては世界の知恵をかりるということが重要ではないかと思っています。現在、風力発電は世界で4万基あります。日本が1,050基ですので、残りの3万9,000基というのはほかの国々に現在あるわけであります。世界のどこにもこの野生生物の保護の問題、渡り鳥の保護の問題、それから景観の保全の問題というのは当然存在しているわけで、では、その残りの3万9,000基の風力発電で、こういった問題というのはどういうふうに解決されてきたんだろうか。
 日本は、先ほど申し上げましたように、風力発電が伸びたのはここ10年でございます。もう少し正確に言えば、ほぼ2000年ぐらいからなので、実はこの5年でしかないんですね。やや知恵と経験の蓄積が足りないのではないかと思っておりまして、こういった問題をどう把握して、どう判断していくのかというところに、世界の知恵を借りて、残りの3万9,000基や、世界がどういうふうにこういった問題を考えているかといったことをぜひ一緒に勉強しながら、できればここにいる委員の皆様方にもお時間がいただければ海外の調査にも行っていただいて、世界の規制、あるいは世界ケースというのがどういうふうになっているかというのを勉強しながら、この新しい現代的な価値の衝突の問題にどう対応していくのか、こんなことを私自身も非常に勉強してみたいと思っております。
 これは研究会ですのでフランクな意見交換をぜひ期待していますし、別に風力発電を絶対推進すべきで、野生生物の保護はどうでもいいと、これはだれも思っていない。その逆もだれも思っていないわけで、両方の正当な価値観とどう調整していくか、非常に世界が直面している問題を勉強する場だと考えておりまして、皆さんと一緒に悩みながら、どうしたらいいかというのを考えていければありがたいと、こうした思いでこの研究会に参加させていただきたいと思います。是非よろしくお願いいたしたいと思います。

【黒田大臣官房審議官】  環境省の審議官の黒田でございます。
 今日は年度末で皆さん大変お忙しい中、また結構強い雨が降っていて足元の悪い中、お集まりいただきましてありがとうございます。
 今の上田部長さんのお話に尽きているということでございますが、環境省として、二酸化炭素の削減ということで旗を降って、政府を挙げていろいろな取り組みをしているところでございますが、風力発電をはじめ自然エネルギーをどういうふうにうまく使っていくかというのは、二酸化炭素削減の大きなひとつの柱であります。これは、そういう面から、やはり今以上に推進していかないといけないと、こういう認識で私どもも思っているところでございます。
 一方、渡り鳥との問題であるとか、具体的な話として出てくるのは、特に希少な猛禽類がぶつかって死んでしまうというような事例が見られるという報告もありまして、あるいは景観という面で、自然公園、国立公園など優れた自然を有する場所で、どういうふうに立地をしていくのかというような課題があって、懸念をする向きもある、そういう声も聞こえてくると、こういう状況にあるところでございます。
 一方で、ちょっと話は変わりますけれども、G8の中でいろいろな大臣会合というのがありますが、環境大臣会合というのが先ごろドイツのポツダムで開催されました。この中では、今お話ししたCO 対策というか、気候変動対策というのが1つの大きなテーマでありますが、これと全く同じ重みで生物多様性の保全と、これがもう一方のテーマとして掲げられたところでございます。この生物多様性の保全というのが、気候変動、地球温暖化防止と同じぐらい大きな重みを持ちつつある。これの相互の関係について、いろいろ議論がなされるようになってきています。
 生物多様性条約という条約がございまして、この条約に基づきまして、我が国でも生物多様性国家戦略というものをつくって、政府を挙げてこれの実現を目指していろいろな取り組みがなされているところでございますが、この国家戦略、本年は第3次の戦略をつくろうということで、今作業を進めているところでございますが、地球温暖化に対してどういうふうに取り組んでいくか。これは、いわゆる従来の自然保護というものと大分様相が違うかと思いますが、そういう中で、新たな課題である。例えば外来種の問題というのは私どもの大きな課題としてあるわけですが、そういうものと並ぶような生物多様性への危機である、脅威であるというぐらい大きなものじゃないかというような話をしておりますが、そういうような指摘もあるところでございまして、それぞれの野生生物の保全をするということを確固とする生物多様性の保全というものと地球温暖化の防止というものの両立を図っていかないといけない。
 それから、また話題が変わりますけれども、安倍政権の掲げる美しい国づくりというものが国の目標ということになってきておりますが、具体的には景観法が制定され、いろいろな景観を守り、美しい国をつくっていこうという動きが地域のレベル、あるいは行政もいろいろな形で取り組んでいて、全国的な広がりを見せていて、我が国の美しい景観をどういうふうに守り、つくり上げていくのか、こういうことに国民の関心も集まっていくと、こういう状況にあるわけでございます。
 上田部長のお話にもありましたが、こういうものがそれぞればらばらであってはならないと思っていて、地球温暖化対策、それから生物多様性の保全、そして美しい景観の保全、こういう取り組みが、それぞれがトレードオフではなくて、ウィン・ウィン、3つですからウィン・ウィン・ウィンかもしれませんが、そういうような関係になるように持っていかないといけないだろうと思っておりまして、世界の知恵を借りながらということでございますので、借りながら日本として一番良い解決法を見出していくと、こういうことをこの研究会の中で生み出していければ幸いでございます。
 それこそ、いろいろな立場の委員の先生方にお集まりいただいています。どういう対策が必要なのか、課題はどういうものかというベーシックな議論も含めて、幅広く忌憚のない意見を出していただいて、成果につなげていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございます。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございました。
 それでは次に、本研究会のメンバーを紹介させていただきたいと思います。お手元の資料1にメンバーの名簿をつけさせていただいてございます。

<資料1に基づき紹介-省略->

【安藤新エネ課長】
続きまして、本研究会の趣旨等とスケジュールについてご説明をさせていただきます。

<資料2に基づき説明-省略->

 それでは次に、風力発電に関して議論を進めてまいりたいと思います。
 議題3の風力発電に関する施策の状況ということで、私どものほうからご説明を申し上げるようにいたします。
 資料3に沿いまして、簡単にご紹介を申し上げたいと存じます。
 1枚おめくりをいただきまして、風力発電とは、これは専門家の皆様はもう既にご案内のことと存じますけれども、一応はその概念図を整理させていただいております。最近では、1,000kWよりもっと大型のもの、2,000kWを超えるようなものも出てきてございますが、ここの例としては標準的なものとして1,000kWのものをお示ししてございます。ローターの直径56メートル程度、高さが60メートル程度でございます。必要な敷地面積、あるいは発電量、耐用年数、コスト等についてご紹介しております。
 次のページ、下側でございますが、導入支援に関する主な施策をご紹介してございます。これは幾つかのタイプがございまして、1は民間の事業者の方々が風力発電を建設する場合の補助でございまして、原則の補助率を3分の1×0.8以内、こういう形にさせていただいております。これはほかの新エネルギーも含めての支援策ということでございますが、風力発電がかなり大きな部分を占めているのが現状でございます。
 それから、2の地域新エネルギー導入促進事業でございます。これは自治体、地方公共団体や、あるいは非営利民間団体、そうした方々への導入の補助ということでございまして、これは補助率のところに少し切り分けがございますが、3,000kW以下と、それより大きいものとで差がございますが、原則2分1×0.9以内と、こうした補助をさせていただく、こんな仕組みでございます。
 それから、風力発電系統連系対策助成事業といたしまして、これはNEDOを通じまして、特に系統連系関係での助成をさせていただいております。これは運転データの分析等ということでございますが、これは蓄電池を設置いたしまして、その蓄電とあわせてということでございます。これは補助率3分の1以内、そういう助成事業になってございます。
 それから4番目、これが風力発電フィールドテスト事業。実は風況というのは、その地点、地点でかなりローカルに決まってまいります。一体ということではなかなか考えにくいということで、原則そういったデータを現地で計測して、そして、風車を建てていただく。こういう仕組みでございまして、そのフィールド調査を行っていくと、こうしたものを助成させていただいております。NEDOを通じまして2分の1の負担、こんな施策がございます。したがいまして、導入のところでのイニシャルの補助、あるいは蓄電池対策の助成、そして、その事前のフィールド調査と、こんなものにお手伝いをしていると、こんなことでございます。
 それから、4ページでございます。これはいわゆるRPS法と言われておりまして、電気事業者に新エネルギーから発電される電気の一定以上の購入を義務づける、こうした法律でございます。左側の枠の中に具体的な対象となるエネルギーの種類ということでございますが、真っ先に風力が出てくるわけでございます。これで2010年度には全国で122億kWh、そして、最終的に今年度決まっておりますが、平成26年度、全国で160億kWh、こうしたものを義務者、これは右側の方に書いてございますが、39社ございますが、一般電気事業者、あるいは特定電気事業者と、こうした方々を含めて、義務者39社ございます。こうした方々に按分をしながら、そういう新エネルギーの導入をしていただく、そういう法律でございます。ある意味、規制によりましてその導入の促進を図ると、こういう仕組みでございます。
 5ページに導入量の推移を整理してございます。冒頭で上田部長からごあいさつがございましたように、現状で1,050本、2005年度末でございますが、ようやく大型発電所並みの100万キロワットを超える設備容量が出てきているということでございます。この10年間で急激に増えてきた、こういう様子がご覧をいただけるかと存じます。
 6ページをご覧いただきますと、国内の地域別の導入状況でございます。北海道、東北、あるいは九州が多いということでございまして、下の方に地図がございます。これをご覧いただきますと、ほんとうに日本全国くまなく風力発電が設置をされてきているといった点がご覧いただけるかと存じます。
 その次のページでございます。8ページでございますが、世界との比較でございます。これも直近のデータを出させていただいております。ドイツが一番、スペイン、アメリカと続きまして、日本は13位になってきたと、こういう状況でございます。
 そして、全国の風況マップということで、その下側のほうに絵をかかせていただいておりますが、赤いところ、黄色いところ、こうしたところが非常に風の強いところでございます。自然のあるところに風も強く吹くということで、こうしたものとの調和ということが非常に大事になってくる状況がご覧いただけるかと存じます。
 風力発電に関しましては以上でございます
 続きまして、議題4の自然環境保全に関する施策の状況につきまして、環境省からご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【星野野生生物課長】  それでは、環境省から自然環境保全に関する施策の状況を説明させていただきます。
 お手元の資料4をおあけください。1枚あけていただきますと、自然環境保全に関する主な施策の概要といたしまして、法律を4つ挙げさせていただきました。自然環境保全法という法律に基づきまして、特に自然環境保全上重要な地域を自然環境保全地域に指定いたしまして、すぐれた自然環境を有する地域を保全しているということがございます。最も規制の厳しい原生自然環境保全地域が5地域、それに次ぐ自然環境保全地域が10地域、いずれも国が指定しております。そのほか都道府県が指定する地域として全国に536地域、自然環境保全地域がございます。
 また、自然公園法という法律に基づきまして、すぐれた自然の風景地の保護と利用の増進をしております。国立公園が28、国定公園が55、そして都道府県が条例に基づきまして設置している都道府県立自然公園が309カ所あるという状況でございます。
 また、野生生物の保護に関しましては、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、種の保存法と言っておりますけれども、この法律に基づきまして、野生動植物の絶滅の防止、保護増殖といった取り組みを行っております。具体的には、希少な野生動植物を指定いたしまして、それの保護を図る。また、捕獲の規制、必要なものについては生息地を保護区として開発行為を規制する。また、数が極めて少なくなっているものについては、増やすための保護増殖事業を実施するといった取り組みをやっております。
 また、哺乳類、鳥類全般に関する鳥獣保護の関係でございますけれども、これにつきましては、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律と、通常、鳥獣保護法と言っておりますけれども、この法律に基づきまして各種取り組みを行っております。国として全国66の地域に鳥獣保護区を設定して鳥獣の捕獲規制を行っておりますし、都道府県においても全国で3,800カ所を超える地域で都道府県の鳥獣保護区が設定されているという状況でございます。
 次、3ページ目をおあけください。特に絶滅のおそれのある野生生物の保全対策でございますけれども、これにつきましては「レッドリスト」というものをつくっております。絶滅のおそれのある種について、科学的な観点からの生息状況の検討を行いまして、一定の基準に基づいて、絶滅のおそれの高いものをリストアップして、レッドリストという形で種を公表しております。また、その種の生息状況の詳細を記述した「レッドデータブック」というものも作成しているところでございます。
 そして、これらがベースになりまして、特に法律に基づいて規制をする必要があるものにつきましては、国内希少野生動植物種というもので指定をいたしまして、現在73種類指定しているということでございます。
 これらに指定されますと、捕獲、譲り渡し等の規制がなされております。そのほかに、特に必要があるものについては生息地等保護区というものに指定をいたしております。全国で今9地域指定しているところでございます。
また、38の種類につきましては、特に保護増殖の取り組みが必要だということで、これは環境省だけではございませんで、農林水産省や国土交通省、関係省庁と合同で国としての保護増殖事業計画を策定いたしまして、その計画に基づいてさまざまな保護増殖事業を行っているところでございます。猛禽類につきましては、例えばオジロワシにつきましては平成17年に保護増殖事業の実施計画を策定しているという状況でございます。
次のページをお願いいたします。風力発電施設整備に係る懸念事項ということでございますけれども、希少な生物、渡り鳥、猛禽類、こういったものを保護する観点から、どういった問題があるかということでございます。
1つは、希少な種類の生息域に風力発電施設がつくられた場合、問題が生じているということでございます。イヌワシ、クマタカ、オジロワシ等、希少な猛禽類で問題の事例が発生しているということでございます。
また、鳥類の渡りのルートに設置されるものにつきましては、サシバ、ハチクマ等、季節的な渡りをする鳥類、この渡りが集中するようなルートと重複する場合に問題が生じるということでございます。
また、鳥類の飛行ルート上に設定されるケースもございます。これは渡り鳥等がねぐらと餌場を往復いたしますけれども、そういった往復するルートの中間に設定されたようなケースで問題が生じているということでございます。
次、5ページ目をあけていただきますと、北海道の例をお示しいたしました。オジロワシの羽が切断されたりして発見されたケースがございます。それらの発見された場所7カ所をお示ししております。平成16年2月から今年の1月までの間に、北海道ではこういった場所でバードストライクの可能性が高いと思われるオジロワシの死亡事例が発生しているということでございます。
次、6ページ目をあけていただきますと、オジロワシの概要の説明でございます。オジロワシといいますのは、ロシア極東地域で繁殖した個体が日本に渡ってくる。北海道や本州北部で越冬するというものでございます。
また、一部は国内の北海道の海岸や湖沼周辺で繁殖しているものもございます。北海道の営巣地はやや増加傾向にございますけれども、繁殖は必ずしも安定していないという状況でございます。
確認されている北海道の営巣地は、99年現在の数字でございますけれども、56カ所。冬期北海道と本州北部で越冬しているオジロワシの生息数は、およそ550から850羽程度と推定されています。
この鳥は雌のほうが体が大きくて、雌では94センチ、翼を広げると2メートルを超えるという大きな猛禽類でございます。
法指定状況でございますけれども、先ほどご説明した種の保存法に基づく国内希少野生動植物種にしてございます。
また、レッドリストにおいては、絶滅危惧IB類ということで、現状のままでは近い将来絶滅の危険性が高い種というところにランクされております。
 また、文化財保護法に基づく天然記念物にもなっている種でございます。
 次、7ページ目でございます。来年度から石油特会を使った風力発電施設に係る事業を考えてございます。地球温暖化対策の一環として、新エネルギー対策を進めていく必要がございまして、その一環として風力発電施設を一層導入していく必要性がございます。
 一方、風況のよい地域といいますのは、海岸線沿いであったり、岬、山の稜線といったところでございまして、鳥の渡り、生息に多く利用される場所でございます。また、景観のすばらしい自然公園内にも多くそういった地域があるということでございまして、バードストライク等の問題が発生しているということでございます。
 こういった状況を受けまして、風力発電施設の適切な整備を推進という観点から、バードストライクの防止策を実証する事業、そして風力発電施設の立地の適正化を図るための事業を2つ組み合わせて来年度から実施する予定でございます。実証事業に関しましては、風力発電施設自体の工夫、色彩ですとか、レーダーを使用する、ライトアップする、風車の列内での位置等防止のために効果がある、そういった取り組みを実証事業ということで行っていきたいと思っております。
 また、立地適正化に関しましては、地形等の立地条件を解析したり、猛禽類等の渡りの詳細な情報を得て、どういった点に配慮して適切な立地推進ができるかということを検討していきたいと思っております。こういったことを通じてCO 削減にも貢献していきたいと思っております。
 次をあけていただけますでしょうか。自然公園に関しても私からまとめてご説明させていただきます。自然公園につきましては、自然公園法に基づきまして、「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図り、もって国民の保健、休養及び教化に資することを目的」として指定されております。地域を指定する公園でございます。公園の区域は、環境省が所管する国有地ということではございません。地域制という言葉で呼んでおりますけれども、そういう公園でございます。
 戦前より国土の自然景観の核心地域として機能してきたところでございますし、また、観光の核になる地域として、延べ人数で年間約7億人の方が利用されているという地域でございます。
 我が国の国土におきます生物多様性の保全の屋台骨としての役割も非常に重視されているというところでございます。
 面積といたしましては国土の9%ということでございますけれども、一層の拡充が求められているということでございます。
 次、9ページ目をあけていただけますでしょうか。新エネルギー施策導入推進ということで、各地で風力発電の導入が進んできておりまして、国立・国定公園内における風力発電施設の設置の要望というのが増加してまいりました。
 風力発電施設といいますのは、大型の施設でございまして、これまでにない新しいタイプの構造物だということもございまして、国立・国定公園内においても設置する場合の基本的な考え方、取り扱い方針を示す必要があるということで、平成15年度に専門家からなる検討会を設置いたしまして、国立・国定公園内における風力発電施設に関する検討を始めたということでございます。
 その結果を踏まえまして、自然公園法の施行規則を改正いたしまして、国立・国定公園内、特に特別地域内における風力発電施設設置に関する審査基準を追加したということでございます。平成16年4月からこれは施行しているということでございます。
 検討の経緯でございますが、15年8月に検討会を開催いたしまして、主要な論点の整理・検討を行いました。そして、翌年の2月、パブリックコメントを経て基本的な考え方を取りまとめ、4月に施行規則の改正を行ったということでございます。
 具体的な内容でございますが、特別地域におきましては、国立公園では環境大臣、国定公園では都道府県知事の許可が必要な地域でございます。なお、国定公園内の場合でも、高さが50メートルを超えるような場合には環境大臣の同意が必要だということでございます。
 どういう基準かと申し上げますと、特に公園の核心地域である特別保護地区、第1種特別地域、海中公園地区等ではないこと、また展望・眺望の著しい妨げにならないこと、撤去の計画があり、撤去後に跡地の整理を適切に行うものであること、野生動植物の生息・生育に重大な支障を及ぼさないことが許可をする場合の基準として定めたところでございます。
 また、普通地域でございますが、これは高さが30メートルを超えるものについては環境大臣または都道府県知事への届け出が必要という地域でございますけれども、特別地域等と同様の項目について審査をして、風景を保護するために必要な限度において、行為の禁止・制限等を命ずることが可能ということでございます。
 ここには書いてございませんけれども、自然公園の特別地域の中では1ヘクタールを超えるような開発行為を行う場合には、風力発電にかかわらず、その行為が自然環境や景観に及ぼす影響を予測いたしまして、影響を軽減するための措置を記載した書類を提出するということになっております。いわゆる環境アセスメントと似たような仕組みがあるということをつけ加えさせていただきます。
 最後のページをおあけいただけますでしょうか。国立・国定公園内におきましては、利用者に対する自然情報の提供と、もしくはさまざまな施設の整備を行っているところでございます。そういった直轄の施設の整備に当たりましても、地球温暖化対策にも資する観点から、ソーラー発電パネルを設置する等の積極的な取り組みをしているところでございます。小規模な風力発電を行っているところもございます。
 ここの写真、2つ掲げましたけれども、1つは中部山岳国立公園の上高地でございます。屋根を見ていただきますとソーラーパネルが設置してございます。また、右側は南アルプス国立公園、仙丈岳という山の避難小屋でございますけれども、小規模な風力施設を設置しているという状況でございます。
 今後も公園内におきまして、小規模風力発電、ソーラー発電、バイオマス発電、小規模水力発電等の新エネルギー導入の推進を図っていきたいと考えているところでございます。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございました。
 両省庁の説明に関して何かご質問などございましたらどうぞ。

【由井委員】  いろいろありますけど、それをやっているとそれだけできょう終わっちゃうので、こういうところに疑問があるということだけちょっと述べさせていただきます。
 自然エネルギーをこれから推進する必要があると思います。もちろん風力に関してはこれから論議しますけれども、バイオマスに関しまして、食料生産とコンフリクトするというお話でして、これからバイオマスをどう扱うかというのが明確でないんですけれども、世界的には、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告やなんかでも、2050年以降はバイオマスは世界の50%以上にしないといけないと書いてありまして、もちろん食料になるものを転換してエタノールで使うのはよくないと思いますけど、森林資源とか、いろいろあると思いますので、そういう自然エネルギーをこれからどうするかという基本的戦略があって、その中で風力がどのぐらいの位置になるかという基本的な方向といいますか、メルクマールがないと、一体この委員会がどちらに向いて、どの辺を目途に動いていくかというのが明確にならないという気がしております。
それから、景観の問題を最後に説明されましたけれども、地球が地球温暖化で滅亡しようとしているときに、生態系は人間の生存基盤ですから守らなければいけないんですけれども、こう言っては申しわけありませんけど、景観を大事にする余り、地球環境がつぶれては元も子もないという気がしますので、景観に関しても、この委員会の本来の任務かどうかわかりませんけれども、今後、景観をどうするかということに関して論議を詰める必要があるのではないかと、そういうふうに考えております。
以上です。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございました。ご意見ということでよろしいでしょうか。

【由井委員】  はい。

【原科委員】  資料について。
 この議論、今どんなふうに行われているかというお話がありましたけど、この後半では、今度は影響に対する話ですね。私は環境アセスメントの研究を行っておりますので、実際にどんなふうなアクションといいますか、事業計画が行われて、その結果、どんな関係があるか、こういうような観点で見ますと、資料として足りないと思いますのがあります。それはこういった風力発電施設の立地プロセスがどうなっているか、これは大変大事なところですね。そうしないと、どこでどんなふうにして環境対策を講じていいかわからないのですよ。今日は手元に資料がないので、しかも時間が余りないようなので、この場では無理だと思いますが、ぜひ、次回、その資料をご用意願ってご説明いただきたいと思います。これはお願いしておきます。

【大野委員】  時間がないところにすいませんが、研究会のこの趣旨の説明があり、今、先生方から出されたことも含めてなんですけれども、多分この研究会を4回やって、いろいろな課題が出てくると思います。その課題が出てくる中で、おそらく今のプロセスですとか、あと、自然環境上の重要性をどう見るかということが具体的に出てきて、その改善策などもいろいろ出てくると思います。研究会の趣旨の中で、今後必要となる対策等と入っているんですけれども、多分最終的な論点のまとめの中では、その具体的な対策とかも含まれてくると思います。そういった、今、環境省、エネルギー庁が進めている施策の改善まで論点整理の中に含めて考えていいのかどうか、ちょっと確認をしたいと思います。

【安藤新エネ課長】  ご趣旨、どういうあれですか。

【大野委員】  ですので、論点整理だけで終わるのか、論点整理の中に今行われているプロセスなり、そういった行われていることの改善も含めて考えていいわけですね。多分課題を出していくときに、こちらからもいろいろな改善策なりの提案をしていきたいと思うんですけれども、そういうことも含めた論点整理という理解でよろしいんですね。

【安藤新エネ課長】  それはむしろこの研究会でご議論していくことですが、当然のことながら、大事な価値がそれぞれありますので、それをどう調整しながら進めていくか。進めていくかということには、当然対策が入ってくるということですし、それは両省庁での政策にも当然反映をさせていく。難しい問題もいろいろとあると思いますけれども、そこはそういうことで考えておりますので、ですから、むしろぜひご議論をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【原科委員】  私もそう理解しています。私は環境アセスメントの研究をやっていますので、私がこのメンバーということは、そういう情報が必要だと理解しました。特に、この27日火曜日に、戦略的環境アセス(SEA)の導入ということで、環境省の戦略的環境アセスメントの今年度最後の研究会があり、ご存じのようにガイドラインができました。これは環境影響評価の対象事業すべてですが、13事業が対象ということで始まったんですけれども、ややこしいことがありまして、ご存じかと思いますけれども、発電所だけ外れてしまったんですね。ただ、これ、外れたのにはいろいろな事情があるということで、すぐには難しいので外れたと私は理解しました。だから、最初から外れるつもりではなくて、いろいろ検討したら、難しい点があるので、ちょっと待ってくれという意味だと理解しておりますから、ぜひできそうなところからやっていただきたいんです。
 風力発電なら、まさに立地問題がポイントですから、これはもう率先してやるべき対象です。そういう意味では、そういう対策として、ガイドラインからは外れているけれども、むしろCSRの概念で、事業者には積極的に環境配慮を行っていただく。企業の社会的責任という観点から、SEAの実施をぜひ考えていただきたいと思っておりますので、ひとつよろしくお願いします。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
 それでは、ご意見をいろいろいただきましたので、そうしたことを踏まえながらこの研究会を進めさせていただきたいと思います。次回のご説明の中でも、ご指示ありました点についてご報告、あるいは議論をいただく形にいたしたいと存じます。
それでは、議題5、(1)の風力発電施設と自然環境保全に関する提言について、ユーラスエナジージャパンの祓川様よりご説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【祓川委員】  ご紹介いただきました祓川でございます。事業者の観点から、風力発電事業者懇話会、ここは日本における主要な風力発電事業者7社、それから日本風力発電協会さんは119社の加盟者がございまして、風力発電事業に関係する代理店の方とか、あるいは建設会社さんとか、あるいは、中には事業者とコンサルタント等が入っているということで、共同での提言ということにさせていただいています。
 それでは、次のページをお願いします。今回の発表内容につきましては、基本的に5点から、以下ご説明させていただきたいと考えております。
 事業者サイドの考え方といたしましては、基本的な考え方として、風力発電というものは自然環境との共存が可能だということで、環境への影響を最小限にとどめ、事業性との環境の調和という観点から、今後、事業を推進したいというような基本的な考え方をしております。
 事業者としては、基本的に地元のご意見を尊重するという立場で、地元優先の観点からの事業の取り組み並びに環境問題でございますが、環境影響評価報告書の積極的な公開並びにバードストライクの調査等も自主的に行っておりますので、情報を国等へ提供させていただくという観点で進めていくということで考えております。
 続きまして、風力発電事業がどんなことに役立っているのかという観点からご説明させていただきたいと思います。既にお話が出ておりますが、IPCCの第4次報告書では、地球温暖化というのは人為起源による、そして北極海の海氷は21世紀の後半までに消失すると。右のほうにちょっとした図を書いております。
 一方、Natureの報告でいきますと、生物種の15から37%が2050年までに絶滅の危機に瀕するという、非常に大きなインパクトのある報告等が挙がっているところでございます。
 地球温暖化防止に貢献する、CO の排出量を減らすということで、主として原子力や再生可能エネルギーが今後伸びていくべきだというようなご議論がある中で、風力発電は一体どうなるかと申しますと、風力発電は運転中には基本的に二酸化炭素を排出しないということでございます。
 ただし、製造・輸送・撤去等には排出量が少ないとは言うものの発生いたしまして、表としては、右のほうにございますけれども、風力が一番右になっておりまして、グリーンで示しているところが運転中、それからオレンジ色のところが製造過程等でのCO 排出量。最新の大型機種(3MW機)では、4.64というような数値も出ているということなので、製造過程においてもかなり風力発電のCO 発生量というのは特筆して低いのではないかと考えております。
 先ほど経済産業省さんのほうからもご説明いただきましたけど、風力発電というのは日本だけじゃなくて世界中で導入が進められている。データのとり方にもよりますけど、毎年25%も伸びていて、やはりCO の排出を減らすという意味での貢献が世界的に評価されていると私どもは認識しております。
 特に我が国ではエネルギーの依存率が80%台とか、あるいは90%とかといろいろ問われているところでございますけれども、我々日本は海外のエネルギーに依存するという観点から、エネルギーセキュリティーの面からも風力発電を国内でさらに進展させるというのが必要ではないかと考えております。
 地球温暖化とか、そういう全般的な問題以外に地域に対しまして風力発電がどんな貢献をしているかというと、自治体、市町村への税金を納付させていただいている。あるいは、建設の際は地元の企業を採用させていただいて、地元経済効果を発生している。それから、運転している段階におきましては、保守要員を地元を中心に雇用させていただきます。さらに、自然エネルギーを取り入れることによって自治体のイメージアップにもつながり、さらに事業者のほうでは、教育機関等のご要請によりまして、小学生や中学生の自然エネルギーの普及についての教育活動にも貢献していると理解しております。いろいろご意見はあるかと思いますが、観光客も増加していることによって観光収入の増加が図られていると考えております。
 今、風力発電とバードストライクの問題というのが資料を賑わしてしておりますけど、我々の観点でバードストライクの問題についてご報告させていただきたいと思います。
 先ほど上田部長のほうからもお話がございましたけど、やっぱり海外を勉強しなければいけないというスタンスは非常に重要だと我々は考えておりまして、バードストライクの海外における事象ということで、両方とも米国での例でございますけど、上の表、Ericksonのほうでいきますと、自動車、建物、送電線、通信鉄塔、風力発電の比較というのが記載されております。
 一方、他の研究で、California Energy Commission等のものでいきますと、衝突率が鳥類全般ではメガワット当たり5羽、猛禽類だと1.8羽。アルタモントという非常に有名な風力発電に鳥が当たり、ばたばたと死亡するというような問題の地域では、鳥類全般で8羽、猛禽類では3羽というような数値が発表されております。
 それでは、日本でバードストライクはどうなっているのかということで、種々問題があるのでございますが、2006年3月までに操業を開始している風力発電所ということで、日本全体では、先ほどご説明がございましたように1,050基、1,078MWということが発表されております。我々、今回の発表に当たりまして、懇話会並びに風力発電協会の7社、7社、14社の合計数値で計算しておりますけど、基数で558基、それからトータルで721MWという規模になりまして、日本全体の67%のデータというふうにご理解いただければと思います。
 調査方法につきましては、もうばらばらでございます。一番多くの調査をされているところでは、週1回の頻度で所定の調査範囲を設定し巡回しているというものから、保守点検時に偶然発見したバードストライクを記載しているというようなことで、事業者間でも差異がございまして、この辺、国のご指導を得て、今後、統一した基準のもとに、統一した時期に行っていくというようなことが必要かなと考えております。
 解析の結果でございますけど、まず右の緑で囲んだところを見ていただければと思いますが、月に1回の調査で、死骸は3日で消失すると仮定しますと、発見数の10倍にした数値が左の表の補正後の数字です。全鳥類、全猛禽類、希少猛禽類に分けております。死因が特定できていないものや羽だけの確認事例なども含んだ補正値になっていますけど、この全鳥類、全猛禽類と先ほどのアメリカとの比較でいきますと、日本では20分の1から30分の1の数値になっています。調査方法が統一化されていないこと、あるいはアメリカでの風車は小型風車がどちらかというと多いとか、あるいはレイアウトの問題とか、種々な観点で、今後、日本の調査自身もより正確なものに近づけていく必要性があると思いますが、数値的にはそういう比較になっています。
 バードストライク問題につきましては、なかなかデータ等が発表されていないということなんですが、希少猛禽類3種の死亡要因ということで、齊藤先生のほうが北海道の希少猛禽類を発表されていますので、そのデータを使わせていただいております。オオワシ、オジロワシ、シマフクロウと希少な猛禽類3種、2002年から2005年の4年間にわたっての調査で、結果としては138例死亡数がございまして、風力発電によるバードストライクと思われるものについてはオジロワシ4例ということでございました。事業者としては、当然のことながら環境アセスを行いまして、風力発電のバードストライクを下げるという観点で実際の環境アセスメントを実施しているのでございますが、そのほかにも事後調査ということでのモニタリングを継続しているということで、2例をご説明させていただきます。
 左のほうでいきますと、愛媛県伊方町でございますが、当時、1,000kW、11基のハチクマ等の3種が問題ということで保護団体様からご意見をいただきました。事後調査を1週間程度行いまして、渡り鳥は約1km手前から風車を認識し迂回、迂回がいいのかどうかというご議論もあると思いますが、調査期間中並びにこれまで上記種の衝突は確認されておりません。
 続きまして、北海道稚内市では1,000kW、57基で、オジロワシ・オオワシの渡りのルートということで、3,000羽近い2種のワシが渡ってくるのではないか。ハクチョウ類の渡来地にも近いというようなご指摘をいただいております。2005年11月から現在まで、2シーズンの渡りの調査並びに月1回、あるいは2週間に1回の継続調査を行っております。その結果、オジロワシ・オオワシ及びハクチョウ類の衝突は、当該プロジェクトでは現在まで確認されていないというような状況でございます。
 事業者として、各種調査の研究をさらに行って、やはりバードストライクを少しでも減らす努力を続けていくことが重要であると認識している次第でございます。
 これが先ほどの愛媛県瀬戸町のものでございますけど、建設前は赤印で線が引かれていますけど、このように渡り鳥等が飛んでいた。その後、建設後では風車を回避するというような形に変化しているというような具体例でございます。
 これは岩手県の釜石でやっているものでございますが、風車にイヌワシが近づいてくるときの狩場としての対策として、このようなテープ、あるいはカカシ(マネキン)を具体的に設置して、希少猛禽類が風車に近づいて衝突などがないような回避の調査・研究を実施しております。
 続きまして、バードストライクは、一番問題となるのは、鳥については、昼間は調査できるんですけど、夜間はどうなのか、霧の状態ではどうなのかなということなので、レーダーを使いまして、福島県の滝根小白井でレーダー観測によって鳥の捕捉技術を上げていこうというような調査・研究も行っております。
 バードストライクに関する要望ということなんですが、風力発電のバードストライクというのは非常にマスコミ等でも取り上げられておりまして、我々事業者にとっても大変なインパクトになっているということでございますけど、風力発電と他の要因、すなわち自動車なのか、あるいは新幹線なのか、送電線なのか、建物なのか、ガラス窓なのかという、鳥もそうなんですけれども、やはりバードストライクが他の施設との関連性の中で、風力発電のバードストライクのインパクトというのは一体どういうレベルにあるのか、あるいは風力発電のバードストライクというのは、ある一定の基準を設けた上で、その数値をきちっと把握していくということを、やはり国として、我々事業者としては当然ご協力させていただくというところでございますけど、していく必要があるのではないかと考えています。
 一方、バードストライクもさることながら、地球温暖化の観点、地元貢献、エネルギーセキュリティー等を含めた風力発電の包括的な評価が必要とされるのではないかと考えております。
 続きまして、自然公園における景観問題でございます。おかげさまをもちまして、平成16年4月に環境省さんのほうで、国立・国定公園、結果としては県立自然公園へも波及した効果ということで、風力発電を自然公園内に建てさせていただくことができるようになってきました。さらに、今まではなかなか議論をしていただけない状況だったんですが、個別案件につきまして、基本的にはすべて環境省さん、あるいは県の方でご相談なり、窓口で受けつけていただけることになったということは、事業者サイドとしては大変感謝しているところでございます。
 ただし、全般的にはよろしいのでございますけど、一部の地域では解釈や運用について徹底されていないというようなところもございますし、運用等も含め改善をお願いしたいというような考え方でおります。
 また、地球温暖化ということで、1990年対比6%減のCO 排出量はあまり進んでいないという状況の中において、もう一度自然公園の位置づけというものを考え、もし可能であるならばさらなる規制緩和をお願いしたいというところでございます。
 解釈や運用についての要望ということですが、次回に事業者サイドのほうからもう少し自然公園についての具体的なお話をさせていただきたいと思いますが、主要な展望地から展望する場合の著しい妨げとか、視野角1度がもう少し緩和できないのでしょうか。展望地というものの基準を明確化していただきたい。
 山稜線等ということにおきまして、眺望の対象が、例えば火力発電所が後ろにあって、その前に風力発電所ができたときに、火力発電所を見ないで、風力発電だけを取り上げて評価するというようなところもあるやにお伺いしていますので、そういう点。あるいは、審査基準について、全国レベルで環境省さんのほうでご展開いただいているわけなんですが、ある地域においてはなかなか審査基準が浸透していないというようなところも見受けられるように思われますので、ひとつそこら辺はさらに推進していただければと思っております。
 最後に、環境影響評価ということでございますが、これは10,000kW以上の風力発電施設の場合で、実際の事業計画から、事業を認定いただいて、補助金をいただき、事業を実施するまでの期間の主として環境影響評価フローでございます。事業者のほうは環境影響に対する方法書を作成いたしまして、方法書については原則公開をいたしております。意見を受け付けるということで、地元や自然保護団体の方々の意見も受けまして、その意見についての有識者の先生方のご意見もいただいて方法書を完成させる。その方法書を完成して、実際に環境アセスを実施いたしまして、実施した結果の評価書案というものも公開するというのが原則でございまして、その間、さらに意見の受け付けということで、地元や自然保護団体の方々のご意見もいただき、そこに有識者の先生のご意見をいただいて、最終的な環境影響評価の報告書の作成ということになります。したがって、ピンクで囲ったところは地元の方等のお話ができる状況のところでございます。
 我々としても、方法書の公開や、有識者の先生方の意見聴取とか、あるいは評価書案の公開ということで、場合によっては自主的な委員会を開催することを通じまして、バードストライク、景観等の問題につきましても、地元を中心に我々としては展開していこうというような考え方でございます。
 まとめでございますが、基本的な考え方としては、私どもは、風力発電と自然環境は共存可能という考え方をしておりまして、バードストライク問題については、客観的、あるいは科学的な手法によるバードストライクの実態を解明し、その中で風力発電を取り巻くいろいろな評価がございますので、包括的な評価をいただいて、次に対策等がどうあるべきなのかというのを考えいくのが必要なのかなと思っています。
 自然公園の景観問題については、基準の統一化、さらなる規制緩和等をお願いしていきたいということでございます。
 環境影響評価につきましては、経済産業省さん、あるいはNEDOさんを中心にすばらしい環境アセスの手法をご提示いただいているわけですが、今後、コミュニケーションルールや、あるいはそれをどういうふうな体制で行っていくかということについて、検証を進めていくことが必要なのではないかと考えている次第です。
 以上でございます。どうもありがとうございました。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございました。
 ご質疑は後でまとめていただきますので、次に、環境NGOからのご説明として、議題5の(2)風力発電が鳥類に与える影響について、日本野鳥の会・古南様よりご説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【古南委員】  古南でございます。
 資料6-1と2を見ながらお話を聞いていただければと思います。すいません、大分盛りだくさんになってしまったので、すごく早口で駆け足になってしまうと思いますが、鳥類への影響ということで、主にバードストライク、それから、それにかかわるほかの影響がありますので、そのお話をいたします。それから、環境影響評価の課題ということ、あわせて今後の方策ということで、大まかに3つお話をしたいと思います。
 レジュメのほう、資料6-2に細かなことは書いておりますけれども、風力発電と鳥類の問題で、ヨーロッパとかアメリカでもかなりいろいろな研究が進んでいるところです。まず、野生動植物保護のためのヨーロッパの国の間の条約、ベルン条約というのがあります。ここが関係NGOに委託して行った研究というのがございまして、資料6-2の1ページを見ていただくといいと思いますけれども、Langstoneさんほかの論文というのが1つ出ております。それなどを参考にして海外の事例をお話ししたいんですけれども、大まかに言いますと、風力発電は平均して強い風が吹くところ、開けた場所に建設する必要がある。どうしても高台とか沿岸地域、あるいは沖合などが建設の候補地になることが多いということです。それから、日本の場合には、現在、山岳地帯で尾根とか峠のようなところでも建設計画が増えてきていると認識しています。
 それから、騒音の問題が当然ありますので、人家に近い場所というのは建てられないというのが現状だと思います。そうなりますと、いろいろなことを考えると、鳥類の繁殖、越冬、渡りなどにとって重要な場所に風力発電施設が建てられて、それらが影響を与える可能性があると思われます。
 日本の現状ですが、今ほどもお話がありましたけれども、かなり大きな風車が建てられるようになっています。今、主流が多分1,500から2,000kWぐらいだと思うんですけど、高さが地上からこのブレードの先まで120mぐらいあるようなところ、ローターの直径が約80mという非常に大きなものです。
 それから、1カ所へ集中するということです。こういうすごい壁みたいなスクリーン状になっている、これはサロベツ原野ですけれども、こういうようなところもあります。これは銚子ですが、ほんとうにあちこちの農地の中に立っているというようなことも現状としてはあります。大体今申し上げたような100mから120mという非常に大きなものです。
 日本でもこういうふうになっているという現状ですが、影響は大まかに4つにまとめられます。何と言っても風車に衝突して鳥がほとんどの場合死んでしまうという、いわゆるバードストライクの問題です。これは風力発電にとってかなり特徴的で、しかも一番大きな影響だと思われます。
 これに付随するようなものというのがありまして、飛びますけれども、この[3]番とか[4]番が、風力発電がバードストライクを起こすということに非常に大きく関係しておりまして、風車を避けることによっていろいろな行動が変化するということです。
 それから、この[2]番は風車そのもの、あるいは附帯施設、道路とか、電線とか、変電所などです。あるいは、最近ちょっと言われて、そういうこともあるのかと思ったんですが、風況調査のポールがかなり大きくて、斜めにワイヤーを張ってありますので、そういうものが影響を与えているんじゃないかという指摘もあります。そういうことも含めて、いわゆる一般的な開発事業があるときに生息地が影響を受けるというものが[2]番です。影響は4つにまとめられるということです。
 希少種の生息地、あるいはたくさんの鳥が集中するような場所というようなことが環境としては問題になります。
 それから、最近では、先ほど申し上げたように、風況のよいところに大型のものが集中していく傾向がありますので、複数の施設の影響が累積的に起こるということも視野に入れておかなければいけないということがあります。これはヨーロッパでも言われていることです。
 ベルン条約の表です。6-2の1ページに挙げてあるのと同じ表です。非常にいろいろな鳥類で影響が認められている、あるいは推測をされています。衝突が一番多いですけれども、いろいろな形で先ほど挙げた4つの影響というのが挙がってきています。
 具体的に、バードストライクの話。これは先ほどのお話にもありました、カリフォルニア州のアルタモント峠の状況で、お話が重なりますけれども、Langstoneさんほかがまとめたベルン条約への報告書の中でも、世界で最も大きな影響が起きているというところが2カ所挙がっていまして、カリフォルニア州のアルタモント峠と、それからジブラルタル海峡です。アルタモントに関しては、このような感じで、年間100羽前後のイヌワシであるとか、ノスリの仲間であるとか、非常にたくさんの猛禽類が死んでいるということです。
 ちょっと写真だけお見せします。こんな感じで死んでしまいます。ブレードに切断されて死んでしまうのですね。ここは多くの猛禽類が越冬したり、渡りの途中で通過していく場所ですので、非常に大きな影響が出ていると考えられます。
 ジブラルタル海峡の近くにはタリファ、ナバレという大きなウインドファームがあります。ここはシロエリハゲワシという翼を広げると3メートルぐらいある非常に大きな猛禽類ですが、かなりたくさん死んでいるということで問題になっています。
 猛禽類のお話、何回も出てきますけれども、大型で翼を固定したまま上昇気流などを利用して飛ぶ飛び方、ソアリングと言いますけれども、そういうのを行う種類というのが、旋回性能が乏しいので、例えば尾根部分などに風車がたくさん建っていると、そこでぶつかってしまいやすいというようなことがあります。
 国内での事故例です。6-2の3ページ、4ページに一覧表を挙げてあります。これは私どもが直接調べたわけではなくて、報道の記事とか論文などに載ったものをまとめさせていただいたものです。幾つか写真などがあるものだけお見せいたしますけれども、五島列島の岐宿町、福江島です。ここは、おそらく日本で初めてこういうバードストライクの事故を報告する論文が書かれた事例なんですけれども、毎年、トビなどが多いんですけれども、いろいろな鳥がぶつかっています。
 それから、先ほど環境省さんのお話にもありましたオジロワシの死亡で、これは最初にオジロワシが見つかったときの環境省さんのほうで出された解剖所見なんですけれども、ちょっと見にくいですが、ここに風車のタワーが、こうありまして、それで死体が車道の両側に分かれて落ちていたということです。上半身と下半身が別れ別れになっていて、それで通りかかったバードウォッチャーの方が見つけたというようなお話なんですが、こういう形で死んでいます。
 詳しくは表2のほうを見せていただければと思いますけれども、オジロワシ、全部で7例あります。そのほかにもミサゴですとか、トビ、ウミウ、こんな種類です。オジロワシはいろいろな形で保護の網がかかっているものですし、ミサゴもレッドデータブックの準絶滅危惧ですが、そういうものが死んでいます。こういうことに関係なく、いわゆる普通種のものの事故というのもほかにも記録がございます。ただ、系統的な調査が行われているわけではありませんので、この表2も北海道と長崎の記録が多いのは、たまたま観察者がたくさん論文を書かれていたということだけで、全国的にこういうことがきちっとわかっているわけではありません。
 それからこれはレジュメに載せていませんけれども、スメーラというデンマークの例ですけれども、ヨーロッパでここは建てないほうがよいということで、バードライフという世界的な野鳥保護団体があるんですが、そこが反対の勧告を出したのですが、もう建てられてしまった場所です。2005年、2006年から、こういう非常にたくさんの風車が建っているファームで影響の記録がとられています。ここはやはりオジロワシが繁殖している場所なんですけれども、ここに挙げたように非常にたくさんの死亡が確認をされています。
 風車1基当たりの衝突率というのは低いんですけれども、非常にたくさんの風車がありますので、ここに挙げたように、結構多くの個体が死んでいるということです。特に、既に繁殖ステージにある成鳥、それから、これからまさに繁殖しようとしている若い鳥、若いうちはまだ繁殖しない時期が一、二年ありますけれども、そういうものが死んでいる。
 それから、詳しく挙げませんけれども、生息地の放棄が起こっていて、縄張りがなくなっていったり、あるいはひなの数が低下していくというようなことがあって、消耗地帯という言い方をしていますけれども、ここで事故がずっと起こり続けることによって、事故が起きると縄張りがあきますので、そこに新しいオジロワシが周辺から入ってくるわけですが、またその個体が死んでいく、また死んでいくということで、この地域だけではなくて、かなり広い地域のオジロワシに影響を与えているのではないかというような研究が行われている場所です。
 衝突事故には、こんな問題もあります。事故の起きるメカニズムなんですけれども、「モーション・スミア」という言葉をお聞きになった方も多いと思いますが、鳥の網膜が一定以上の速さの動きをとらえられなくなってしまうということが、これは実験的にも証明されています。それで、これはなかなか防止方法がないということで、例えばブレードの色を塗り分けたりというようなこと、あるいはライトをつけたりして回避できないかという研究もアメリカなどで行われていますが、まだ決定打がないということで、これがやはり風力発電の影響を回避するために一番大きな問題であると思っております。立地選択が重要というようなご発言が既に出ましたけれども、なぜ立地選択が重要かというと、ここがどうしても避けがたいという部分がありまして、それが一番悩ましいところではないかなと思います。
 いろいろな飛行の特徴によって事故の起き方が変わります。場所、場所で非常に変わりますので、全部平均して事故がどのくらいですということはあまり意味がないと思っておりまして、大きな事故が起き続けるような場所もありますし、ほとんど問題ないという場所もあるということですので、問題のある場所に建てなければよいというふうに私自身は考えています。
 これはオジロワシが実際に死んだ根室市の現場の写真ですけれども、海岸断形の端のところに建っていまして、海からの風が吹き上げるちょうどへりのところに当たってしまっているんですね。おそらく風を利用して飛んでいったオジロワシがこのブレードにぶつかってしまったと思われるんですが、そのような事故の起きやすい特徴的な地形というのがおそらくあると思いますので、系統的な調査でこういうことを明らかにしていく必要があると思います。
 いろいろな要素によって危険性が異なってくるということですが、今申し上げた地形の条件以外にも、例えば鳥の繁殖段階によってもかなり影響の出方が違ってきます。
 それから、猛禽類がなぜ問題になるかというと、成鳥が長生きするもの、ひなの数が少ないものというのは、1羽の成鳥が死ぬ影響が非常に大きくなります。死亡数の回復が難しいですから、オジロワシのようなものが死んでいくということが、1羽の重みが違うと言うと語弊がありますけれども、何羽死ぬから影響があって、何羽死ぬから影響は少ないということではなくて、特に希少種ですとか、こういう特徴を持った鳥に関しては保護上の問題があるというようなことです。
 それから、たくさん鳥が集中するところというのもどんどん事故が起き続ける可能性というのはあります。これは、施設をつくるに当たっての影響というのは、こういうものがありますということです。
 間接的な影響に関しては、これは実際にオジロワシの事故が起きたサロベツ原野ですけれども、こういう風車が建つことによって行動も変化して鳥に影響があるということで、間接的な部分ですので、なかなか定量的な評価は難しいですけれども、例えばこの風車ができることで、鳥が風車の周辺のこういったところを避けようとして一定の場所が使えなくなってしまうということであるとか、あるいは、鳥は長距離の渡りですとか、比較的短いねぐらと採食地の移動ですとか、そういう移動のためにこの場所を通りたいんですけれども、ここが通れないので回避しないといけないということで、長期にわたって特定の種の個体群に影響を与え続けるということも、考える必要があるということです。
 日本でも既に、先ほどの伊方町の例も1つそういう影響を考慮しないといけないと思いますし、長崎県の生月町のように、ツルが渡りの途中におりる場所があったんですけれども、ツルがそこを避けてしまっておりなくなったというようなこと、あるいは飛行コースも変わってしまったというようなことも観察記録としてはあります。
 生息地を放棄する事例というのはなかなか見つからないんですけれども、それは風車が建ってしまっても無理して鳥がそこを使ってしまっているという、生息地に固執しているということで説明ができるんじゃないかということがヨーロッパでは言われています。
 幾つかこういう研究で、300m以内に関しては繁殖期は放棄が起こりやすいとか、最大の距離で600mとか、そういう幾つかの事例は既にあります。
 それから、環境影響評価のお話をしていきたいと思います。今ほど祓川さんからもお話がありましたけれども、NEDOさんのガイドラインに基づいて、大型のウインドファームに関して環境影響評価法と同じような事業アセスが行われているわけですけれども、これは事業者さんによって取り組み姿勢に非常に差があります。
 3つほど事例を紹介しますけれども、ここでお話しするのはむしろ一生懸命やっていただいている例だというふうに考えていただければいいと思います。以前、松田先生に一生懸命やっているところほどNGOがたたくのはなぜかと言われたことがあるんですけど、そういう意味じゃなくて、一生懸命やっていただいているところほどいろいろ議論が起こりやすいというところはあります。もちろん、何もやっていなくて、いつの間にか建ってしまったみたいなファームもありますので、そういうところは論外だと思います。
 最初は環境影響評価の評価書の段階、実は評価書ができてから私たちはこれを知ったんですけれども、こんな事例がありましたということですが、ラムサール条約湿地の片野鴨池がこの辺にあって、こちら側に採食地があります。それで、ガンが毎日通る飛行経路の周辺に今計画があるというところなんですけれども、これは問題ではないかということで、事業者さんの調査が済んでから私どもも調査をいたしましたけれども、影響があるという結果が出まして、これはほんとうは評価書をつくる段階でいろいろ議論ができればよかったんですけれども、もう既に調査が終了してから私どもはやっているんです。この事業計画地に対して、大半は離れたところを飛ぶんですが、日によって計画地そのものを通過する。その日に通過したもののほとんどの個体が通過する場合もあるといったことで、これはきちんと議論したいんですけれども、実は公開された検討の場が設けられていませんので、議論の場がないなというところが悩んでいるところです。
 それから、もうちょっと進んでといいますか、方法書の公開というお話がありましたが、実際には、いろいろな事業者さん、関係者にお話を聞きますと、方法書をきちんと公開されている例というのは非常に少ないです。その中では、これはユーラスエナジーさんがやられたものですけれども、根室半島で、方法書の段階で議論いたしました。方法書が公開されたときに、私どもは独自調査をやって、この地域に15基建てるという計画だったんですが、オジロワシの飛行ルートがこのように結構あちこちに飛んでいますよということを添えて意見書を出したりということをやっております。これはかなり進んだやり方ではないかなと思います。
 もう一つ、これもユーラスさんの事業なんですけれども、函館市の汐首岬というところの計画です。北海道から本州に鳥が渡っていくところとしては、この白神岬(北海道側)から龍飛岬(本州側)というところが有名なんですけれども、実はこの下北半島の対岸の汐首岬も渡りがあるんじゃないかということを言われていましたが、この計画がわかってから、地元の野鳥の会の人間が100回ぐらい調査しましたところ、結構たくさんの鳥が渡っているということがわかりました。
 そこで、いろいろ議論させていただいている中で、これも評価書段階まで、あるいは準備書ぐらいまで行っているんですけれども、環境影響評価検討委員会というのが発足しています。専門家、関係者による議論をやろうということで、公開で行われております。
これは、画期的なのは、事業の可否について専門家の意見を得るということを事業者さんにおっしゃっていただきまして、要するに事業アセスからかなり踏み込んで、この立地が果たして正しいのかどうかということまでやっていただくというようなことを明言されたというのが非常に画期的だったと思います。
 ただ、先ほどの根室半島と汐首岬の例は、事業者さんの都合で、今、事業自体が凍結というか、見込みがないので、両方とも動きがとまってしまっていて、モデルになる非常におもしろい例だと思っているんですけれども、この検討会自体も休止している状態なので、ちょっとそれがモデルとしては進まないので残念だなと思っています。
 やはり自主アセスではなかなか拾えないところがあるので、幾つかの自治体では条例アセスでやられています。4つの自治体では対象事業としていますし、例えば地上高が何メートル以上とかいうような規模要件でアセスをやられているところが4県あります。それから、条例化を検討しているのが3、4県ぐらいあるはずなんですが、そうしますと、今、47都道府県で4分の1ぐらいの県は何らかの形でアセスをやらないともう間に合わないと考えておられるということだと思います。
 環境影響の軽減に向けてということで、詳しくは資料6-2の9ページ、10ページあたりのところに、ベルン条約への報告書に載せられている勧告などをもとに、私のほうで3点申し上げたいんですけれども、今申し上げてきたお話で、この2番目の環境影響評価に関しては、やはり今のやり方だとちょっと足りないということがあります。特に公開された場で検討して、評価の基準づくりを行うという、これはまだ環境影響がどういうふうに出るのかという部分が、日本で経験、蓄積が少ないですから、そういうことが、こういう場を通じて経験値が上がっていくということも1つ重要だと考えています。
 先ほど祓川さんから示された幾つかの事業者さんが調査されているデータというのは、今まで公開されたことがなかったものが多いですので、こういう場を通じてというのも1つあると思いますが、環境影響評価をきちっと行うことで、より評価がやりやすくなっていくということが考えられると思いますので、これは改善の余地があると思います。
 それからもう一つは、立地を選ぶということが重要で、モーション・スミアがなかなか解決できませんので、鳥がたくさんいそうなところに関しては、やはり計画段階で設置を避けるということが重要であると思います。
 表3に出てくるオジロワシの死亡例の中で、非常にびっくりしてしまうことがあるんですが、30基、40基建っている大きなウインドファームだけで死んでいるわけではなくて、オジロワシの死亡例の中には、石狩市の2基という非常にこじんまりとした風車であるとか、あるいは、先ほど写真を出しましたけれども、根室市の5基というところなど、基数の少ないところでも事故が起きてしまうんですね。そうしますと、特に石狩市の場合には市民風車であって、大規模なところではないので、自主アセスの対象にすらなっていないようなところなんですが、そういうところでも場所をうまく選ばないとオジロワシという希少種に対して大きな事故が起きてしまうということがありますので、これはそういうことも含めて考えると、何らの形で、その事業者さんがやる個別の事業アセスじゃない計画段階での検討が必要であると思います。
 これは今任意で自治体さんが地域新エネルギー導入計画などを立てられるような機会もあるけれども、そういうときにあわせて検討するというようなやり方もあるのではないかなと思います。
 それから、既に申しましたけれども、もう既に建ったところの事後の影響評価をきちっと行って解析することが必要であると思います。
 イギリスで行われている、これは事業アセスのときのチェックポイントです。それから、立地選択のときの指針というのもあります。
 スコットランドではこういう形で、影響を受けやすい希少種がたくさんいるところを2kmメッシュ単位で濃い色で表示しています。こういうデータは既に日本でもあると思いますので、こういったものを示して、こういう濃いところはあまり建てるのは好ましくないといったようなことを、例えば風況マップとオーバーレイして、では、どこなら安全そうなのかということを探していくというのも、これは規制なのか指針なのかという手法の選択の問題はあると思いますけれども、基礎データを公開していくということが必要だと思います。
 既に日本でも長野県が影響想定地域マップというのをつくられています。これは入笠山・鹿嶺高原の例で、菅平でも作られていますが、もう既にデータはある部分が多いと思いますので、これはすぐにでも取り組んでいけることではないかなと思います。
 私どもでも重要野鳥生息地というマッピングをやっていまして、これは国際基準で167カ所全国に重要な野鳥生息地というのがあって、こういう目録づくりをやっています。この目録で今足りないのは、渡りの経路などの調査データが今非常に少ないので、これからやらないといけない部分が、ほとんどここに載っていません。そういうものが1つ参考になるのではないかと思います。
 鳥獣保護法とか自然環境保全法などの指定というのはもちろん参考にしていただいて、行為規制などもありますので、きちんとそこでやっていただければいいと思いますが、すべての重要生息地がそういった法的規制のもとに置かれているわけではないので、やはり違った観点から、重要生息地の目録、あるいは長野県さんではアボイドマップと言っていますけれども、これを作成していくことが今後のキーになるのではないかなと思います。
 最後に1つだけ、全然違う観点で、風力発電を推進されている方でもほとんどご存じないみたいなので、写真を1枚だけ挙げておきます。これは風車なんです。カリフォルニアで今TMAという会社が試されているもので、ごみ箱みたいに見えますけど、この中に垂直軸型で2枚羽がありまして、ぐるぐる回るんですが、外側にこういう覆いがありますので、ほとんど鳥の衝突事故が起きていないと現地で調査している専門家に聞きました。こういうデザインのものの開発・研究はかなりお金と期間がかかると思うんですけれども、こういった観点ももう一つは必要なのではないか。世界の風力エネルギーの導入にかなり貢献する部分もあると思いますので、まだ関係者の方はほとんどご存じないみたいですけれども、こういったものを1つサイドの問題として検討してみてはどうかなと思います。
 以上です。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございました。非常にご示唆に富んだご発表でございました。
 それでは、これから議論に移りたいんですが、会議のプロトコル、特に申し上げませんでしたが、ご発言のあります方、お名前の名札を立てていただきましたら漏れ落ちがなくなりますので、そうした形でお進めをいただきたいと思います。できるだけ順番に沿ってお願いをしたいと思いますが、では、松田先生、一番最初でしたので、お願いいたします。

【松田委員】  まず、これは祓川さんの資料5の11枚目、12枚目あたりなんですけれども、まずアメリカの例に比べて風力発電によるバードストライクが少ないということはありますけれども、これは調査方法がまだ十分に統一されていないとか、そういう問題もあると思いますので、これは統一するようなガイドラインはやっぱりあったほうがいいかなと思います。
 例えば12枚目を拝見しますと、オジロワシが2005年までで4例ですか、その後、合わせて7例ですけれども、ほかの衝突に比べてずっと少ないということがありまして、古南さんのほうからは希少猛禽類はほかのものに比べて1羽当たりの個体群への影響が大きいということがありましたけれども、ほかの要因と比べますとこれはかなり少ないというデータになっています。ただ、その場合、どのぐらい少ないのかということを検証したいんですけれども、それには、それぞれの当たっているやつが、例えば年齢がどのぐらいだとか、そういう基礎データがほんとうはいただきたい。ところが、オジロワシだけだと53例ですか、53例あるというのはこの論文にあるんですけれども、それ以上詳しいデータに当たれないという状況がありまして、私どものほうではこれ以上の解析ができない状態になっています。ですから、まず一番重要なのは生死ですね。それから年齢、せいぜい亜成長と成長の区別であるとか、発見場所であるとか、あとは、当然鉛中毒やその衝突に関しても全数がはっきり報告できているわけではなくて、発見率というのがそれぞれあるはずですので、死後何日たっているという大ざっぱな所見というものがそれぞれにないと、我々としても個体の生態学的な解析をやりようがないという状態がありますので、ぜひそういう情報を積極的に開示していただきたいですし、むしろ問い合わせ先みたいなものをちゃんと明確にしていただきたいと思います。
 それから、同じバードストライクに関して、資料4の5枚目ですか、オジロワシ、北海道で7例当たっている。そのうち4例が苫前であるということなんですが、これは補足のご意見がありましたら教えていただきたいんですけど、これが渡りであるのか、そこのそ場の営巣個体であるのかというのも非常に重要な情報なんですけど、それもわからないんですね。これは多分DNAとか調べて、この4例がもし血縁であるとかそういうことがわかれば大分重要な情報になると思いますので、ぜひDNA解析などをさせていただきたいと思います。
 あと、古南さんのほうから、むしろまじめに情報を開示している者ほどいじめられるというのはよくないということで、むしろ前向きな例として紹介していただいたというふうに発言いただいて、ほんとうにありがとうございます。今の古南さんの発言を聞くと、多分事業者側も大分意欲がわいてくるんじゃないかと思います。それはこの場にいる人しかわからないことで、もっとそういうふうにむしろ前向きに取り組んでいる人ほどほめるという体制がないと、むしろマスコミなんかは完全に逆になっていると思いますので、ほめるという体質をつくるには、やはりそういうふうにいい調査をやって、いい合意形成を図っている事業者などには、例えばですけど、環境大臣賞を与えるとか、そういうような積極的なポジティブ・インセンティブもぜひご考慮いただきたいと思います。
 以上です。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
 ご議論は後でまとめしたいと思いますので、由井先生、次お願いします。

【由井委員】  私はイヌワシの例ですけれども、資料3の最後のページをごらんいただきたいんですが、資料3の最後に全国風況マップというのがございます。これは海岸のほうにたくさん風力開発に都合のいいところが載っていると思いますけれども、この中で注目していただきたいのは、岩手県の内陸にたくさん赤点がございます。これはイヌワシが全国生息数の6分の1ぐらいが北上高地に集中していまして、ほとんどが岩手県内の北上高地にいるわけですけれども、30つがい以上がおります。繁殖率が非常に落ちておりますけれども、ここで風力の立地計画が、この赤点の全部ぐらいにあります。ただし、実際にはまだ4カ所しか、全部で60基ぐらいしか建っておりません。それは、地元でいろいろ調査をして、NGOを含めて一緒になって遠慮してもらっているということがあります。
 先ほど私が最初に発言しました景観との兼ね合いですけれども、それは無理して例えば岩手のこの地域に風力を建てるよりは、多少景観を我慢していただいて、ほかの地域に建てていただきたいと、そういう意味で申し上げました。
 それで、風力に関して私はニュートラルなんですけれども、先ほど申し上げた木質バイオマスに関しても、日本は成長力がよいですから、林を伐ってイヌワシのえさ場をつくれば、イヌワシの生産率は改善するということで、風力より私はどちらかと言えばバイオマスを進めているんですけれども、もっと基本的には、風力だけではなくて、先ほど言いました自然エネルギー全体をどこまで持っていくかという中で、ほかの化石燃料や原子力を含めて、どこまで減らすかというその議論が先にあって、その中で風力をどこまで進めるということでないと、野鳥がただ死にしてしまうわけですよね。だから、そういう意味で、日本のエネルギーをこれからどうするかというのをまず第1に、この場の論議ではないと思いますけど、環境省や経済産業省のほうでさらに突っ込んで将来見通しを明らかにしていただきたいというのがまず1つです。
 あとは、例えば岩手の例ですと、実際に建っているところでは、夜間照明をしますと、霧の夜に小鳥が結構当たっているのがわかっております。コウモリも当たっています。そのイヌワシがいるところは避けて立地しているんですが、どこからともなくイヌワシが来たりします。それで、先ほど祓川さんのほうから説明があった、今度はイヌワシを追い払うテープとかマネキンをやって実験しておりますけれども、風力をどうしても立地するという場合には、先ほど、すぐ前に古南さんですか、説明があった、縦に回るんじゃなくて水平回転式の風車ではいけないかという、それの低コスト化の努力をする。そうすればバードストライクはなくなると思うんです。そういうふうにいろいろな選択肢があります。それを今回検討するんだと思いますけれども、まず日本のエネルギーをどうするかというメルクマールのお話がないと、単に場当たり的な風力だけを解決すれば、バードストライクを解決すれば、景観問題を解決すれば何とかなるという話では実はないのではないかと、私はそういうふうに現在考えています。
 以上です。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
 それでは、原科先生、お願いします。

【原科委員】  今、由井先生がおっしゃったことは、そのとおりで、まずそういう意味では政策や計画段階の検討というのは必要なんですね。戦略的環境アセス、まさにそういう段階を本来やるべきなんです。ただ、ここでは風力発電が対象ですので、ご発表に対して少し質問させていただきます。
 祓川さんのご説明で、前にも話をお聞きしましたのでおおむねわかったつもりですけど、ただ、具体的な手続についてもうちょっと教えていただきたいんです。資料5のスライド番号22で、環境影響評価フローがあります。この流れをざっと見ると、我々がよく見なれている形なんですが、どういう主体がこれを進めるかということが大変大事なポイントですね。それから情報公開はどの段階でやるかとか、それから参加はどうか、そういった観点に対してもうちょっとご説明いただきたいんですが、それが1つです。
 質問をもうちょっと続けていきます。これにちょっと関係しますけれども、その次のページの23ページで、有識者等からの意見聴取では、自主的な委員会開催ということも書いておられますから、この中身はどんなことか、あわせてお願いしたいと思います。この2点です。
 それから、古南さんにもちょっとお聞きしたいので申しますけれども、資料6-1のスライドの25番のところです。生息妨害による生息地の放棄でございまして、この生息地放棄の規模は、土地への投資と、代替地の有無により異なるという記述がございますので、この意味がちょっとわからなかったので教えていただきたいと思います。
 それからもう一つ、アセスメントに関係するということで、34番目のスライドに係るところなんですけれども、SEAのこと、予防的措置で、ここでは「影響が大きく出そうな条件の場所では設置を避ける」と書いておられるけど、設置を避けるというよりも、これはサイトロケーションの問題かなと思いますので、この辺どんなふうにお考えかということもあわせてお聞きしたいと思います。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
 では、岡安さん、お願いします。

【岡安委員】  私どものNGOは、野生動物の保護と、それから気候変動問題という両方に取り組んでおりますので、今日バードストライクのかなり細かいお話が出ましたけど、それへのコメントというよりも、やはりこの研究会自体の位置づけというものをもう一度確認させていただきたいというところがあります。
 気候変動問題というのは、そういう意味で、本当にグローバルなものとして国際的な取り組みが行われておりまして、その観点から見ますと、先ほど気候変動と生物多様性の保全というのが二本柱としてこれからの戦略に非常に大切なものになるということですけれども、例えば気候変動自体が実際にこれから2050年までに全体のポピュレーションにどういう影響を与えるかということは、包括的に、なおかつ大局的な視野で見なければならないところです。そういうような観点から、一方で、現場で起こっていることは何なのかという、非常にきめの細かい対策も必要な2つの問題になるわけですけれども、先ほど上田さん、あるいは黒田さんからのお話もありましたけれども、ウィン・ウィン状況を今の段階でつくっていくにはどうしたらいいかというのがこの研究会の目的であるというお話でした。
 ただ、一方で、原科先生がおっしゃったように、ちょうど昨日の段階で、戦略的環境アセスのところで、例えば発電所が外されるという問題が出てきて、そういう意味では、この場は2つの大きな環境保全に対する問題意識を持ちながら、現場で何をしなければならないかという非常にきめの細かい対策を打ち出していくいい研究会になるのではないかと思われます。
 そういう意味では、日本の場合はまだまだ自然再生エネルギーの電力に対する貢献というもの自体が非常に低い段階で、これからどういうふうに風力発電あるいはリニューアル全体をより嵩上げしていかなければならないかという大きな問題がある中で、まだまだそういう意味では世界のレベルから見ると遅れていると申さざるを得ないわけです。
 そういう意味では、風力発電もここ5年ぐらいで増えてきたとは言っても、まだまだ現実的には足りないという問題があるわけで、これをいかに進めていくか。ただ、まだ進んでいない段階で、それ以外のその過程で生じてくる問題を予防するという意味では、今ここで研究会が何らかの風力発電の推進に対するガイドラインを設置するというような目標を持って議論を進めていくべきではないかというのが、今日実際にここに出席させていただいて、現場の細かい状況をご存じの皆さんのお話を伺って非常に感じました。
 そういう意味では、海外の事例というものは確かにいろいろ参考にはなりますけれども、日本の自然というのは、やはり日本固有の問題というのがたくさんあるわけです。今日お話を伺った中で、事業者側と、それから環境NGO側の両方の話を伺って、この全国風況マップと、それから古南さんのほうからご紹介があったセンシティビティ・マップ、これ全体をまず重ね合わせるという作業をすれば、それだけでもかなりのところが解決できるわけです。これはほんとうにこれからリニューアブル・エナジーを進めていかなければならない段階で、具体的にまず取りかかれるところだと思いますので、海外の細かい事例を重ねるというよりは、日本国内にほんとうにどんな問題が具体的にあるのかということを、あんまり回数が多くありませんので、この研究会で徹底的に詰められるようにしていただければと思います。
 以上です。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
あとは、長井先生、お願いします。

【長井委員】  今、岡安さんが言われたように、風力発電の推進と言っても、まだ日本では1,000基ぐらいで、現在世界の設置基数4万基に対しては非常に少ないわけですけど、これだけ事例等がこの問題は顕在化しているわけですので、まず風力発電自身は風の強い場所という非常に特定の限られた場所での事業が展開されるわけで。まずはそういうようなものと、それから生息地ですか、古南さんから言われたようなマップの作成が重要であります。
 それからもう一つ、環境の中で、今、国立公園と国定公園だけを取り上げられていますけど、実は県立自然公園というのも非常に大きなエリアを占めていますので、そこも国の指針に沿った形での準拠というか、そういう調査をされていますので、そこも含めて、そういうようなセンシティビティ・マップというものをもっとこの委員会等で議論することが必要であります。やはり風力発電を推進するという中では、そういう風がいい場所というときに、後からこういうような問題が出てくるので、今非常に対立の構図になっているという中で、事前にそういう場所があるんだったらば、そこは事業者さんのほうも避けるだろうという観点もありますので、そういうようなマップが必要と思います。
 それから、大規模な事業者さんはいいんですけれども、小規模なものに関しては、特にこういうようなアセスメントが事業採算上難しい状況では、例えば苫前のようなところでは大規模開発の場合、環境アセスメントはやっていますけれども、自治体がやっている1万kW未満のところでは環境アセスメントの実施が難しい経過が出ているわけです。そういう避ける場所とか、懸念される場所、地形等をもう少し明確化していくというのが1つ大事なことです。
 それから最後に、今、陸上の話が主になっていますが、渡り鳥の話というのは、今後、風力発電自身が洋上というような問題も日本でも5年後、10年後に出てくるわけですので、今からそういうようなものに対しての対処というか、今から検討をしていかないと、洋上での風況を観測し事業化をしようというときに渡り鳥が問題になった場合には、非常に事前の風力発電事業の実施の全ての調査費用というものが無駄になってしまいますので、そういう近い将来の部分を含めて本研究会等で考えていただきたいということです。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
 ちょっと議論が多くなってきていまして、お時間、12時というお約束なんですが、10分、15分延びますが、皆さんよろしいでしょうか。大事な議論でございますので、お許しをいただきたいと思います。
 由井先生、また追加のご意見ありますか。よろしいですか。
 そうしましたら、あと、すいません、順番が前後するかもしれませんが、大野さん、お願いします。

【大野委員】  先ほどちょっとよい事例ということで古南さんのほうからお話がありましたが、今、悪い事例というのをお話しすると、日本自然保護協会には各地で会員の方たちから風力の問題についていろいろな情報を寄せていただくんですけれども、1つは、現地で行われている調査が不十分だということと、住民の方たちの周知も十分じゃないというのが共通した課題です。
 1つの事例を挙げるとすると、東伊豆熱川の風力発電の事業がありますが、これは先ほどのNEDOのカイドラインに沿った環境影響評価のフローで言うと、方法書の公開の前に調査を行っていたりとか、補助金の申請をした後に評価書が縦覧されたりとか、その順番がもうめちゃくちゃな事例というのもあるわけです。そういったNEDOのガイドラインに従ってうまくやっているところはまだいいんですが、やはり事業者によってその差がとてもありまして、それに沿わずにめちゃくちゃなことが起きていることがよく見受けられます。そういった事例でも補助金申請が通ってしまっている現状があるんです。その補助金申請の審査体制ですとか審査内容というのを次回に明らかにしていただきたいと思います。
 以上です。

【安藤新エネ課長】  では、最後のご意見、下村先生、お願いします。

【下村委員】  今日はバードストライクを中心にということなので、1つ質問と、それから意見も言ってよさそうだということで、2つばかりご意見をと思います。
 1つは、すごく単純な話なんですが、風況のよしあしと、それから鳥の飛行ルートというか、渡りだとかというものとの場所による相関というのがありそうなのかどうかということですね。風がよくて、開けて、そうすると当然風況はいいわけですけれども、そういうところはわりと鳥が通りやすいのかどうか。そういう相関に関する研究があるのかどうかというのが、まず単純な質問でございます。
 それから、意見を2つ。1つ目は、スタンスの問題で、風力のエネルギー政策、あるいは世界的な環境問題の中で、位置づけに関しての議論は多々あると思うんですけれども、きっと短時間で今回ある程度の進める方策も出していかなきゃいけないということですから、重要であるということと、それから、少なからず影響があるということはわかっているわけで、具体的にどこへどう落とし込めばいいかというよりも、あまり位置づけの議論よりも具体的な議論を進めていったほうがいいだろうなというのがスタンスに対しての意見です。
 それからあと、私は景観の問題ということで参加させていただいておりまして、景観についても、今日祓川さんのほうから、国立・国定公園の中での景観の問題、それから由井先生なんかも景観にちょっとご発言なんですが、景観の問題というのも、なかなか定量的な知見だとかなんかで比較的示しにくい分野ではございますけれども、いろいろなストックもございます。それで、ここのところ景観に対する認識というのはやっぱり変わってきて、生活への影響が非常に問題だというようなことは一般的な社会認識になってきていると思いますので、風力は、先ほど言ったように、むしろ具体的な方策、立地としていいのか悪いのかというような議論をしなければいけないときには、基本的にそこの地域の人がどんなふうに風景というものを考えているかということを中心に議論をしなければいけませんので、そういう点では、一番最初に原科先生がおっしゃっていた、導入プロセスの問題です。どうやって合意形成をしていくのかという、そのプロセスがこの研究会の中では重要な問題になってくるんじゃないかなと思います。ですから、事例も含めて、そこをぜひ資料としてまたご用意いただけるとありがたいなと思います。
 基本的にはそういうことですが、国立・国定公園の問題はまた話がちょっと違っていて、やはりある程度風景の価値というのが認められて、国民からある程度管理を付託されているというエリアになりますので、そこでの扱いは一般の風景問題とはちょっとまた違ってくると思います。基本的には、その地域の方がどういうふうに風景を認識するかということへの問題だと思いますので、そこの議論をさせていただけるとありがたいと考えています。
 以上です。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
 それでは、少しお答えのほうからお願いしたいと思いますが、祓川さんには松田先生、原科先生からのご意見、ご質問がございます。それから、古南さんには、同じく松田先生、原科先生、それから下村先生からも若干ご意見があったと思いますが、お願いいたします。その後、事務局のほうからお答えをさせていただきます。

【祓川委員】  松田先生のお答えになるかどうかわかりませんけど、例のオジロワシについては、私ども、詳しい調査はわかりませんので、ご容赦いただければと思います。
 それから、原科先生のご質問でございますけど、方法書の公開と評価書案の公開ということで、これは経済産業省さんが中心になって、実質的にはNEDOさんがおつくりになった自主環境アセスの手法ということで明白になっているんですけど、基本的には、まずは事業者がコンサルタント等に委託をして、どういう環境アセスを調査するんだろうということについての方法書をつくります。それについて、当社の場合ですと地域の自治体にご説明をし、方法書につきまして公開するというような新聞報道をいたしまして、実際に市町村に方法書を閲覧できる体制を組むということで、1.5カ月間ぐらいの地元の方々、地域の方々のご意見を取り込んで、それを総合的にまとめた段階で有識者の先生の最終的なご意見をいただいて、方法書を確定するという手順にしています。
 したがって、鳥の問題等でのご発言等があれば、その段階で調査をどうするか。我々は、例えば春と秋2回やればいいでしょうという話に、いや、そうじゃない、4回だとか、いろいろな議論があると思うんですね。期間の問題を含めて。そこで、方法書確定の段階で、各氏のご意見、特に地元のご意見を入れているというようなことでございます。
 それから、評価書案の公開でございますけど、そういうようなことで、手順が決まって、実際にやりました、やった場合、こうなりましたと、これについても皆さんにご報告いたしまして、さらに追加調査が大切だとか、あるいはモニタリングしなさいとか、いろいろな意見も含めて、ここで地元の方、地域の方のご意見、それには自然保護団体の方々のご意見も入れてまとめていく。その結果に従って、我々は必要であれば事後のモニタリングも実施していくというような形をとっております。

【原科委員】  そうしますと、進行管理も事業者の方々が行うのでしょうか。進行管理をどこかの主体にお願いしてやるというんじゃなくて、通常、事業者が調査をやって、アセスメントとかいろいろな作業をやりますね。環境影響評価法とか条例のもとでは、進行管理はパブリックなセクターがやるわけです。あるいは、問題によっては環境省とかね。その辺はどんな具合でしょうか。

【祓川委員】  一般的には事業者が主体となって行います。

【原科委員】  そうすると、そこが随分違うんですね。

【祓川委員】  はい。
 あと、今、原科先生のほうからもう一つの質問ということで、自主的な委員会というようなお話がございましたけど、事業者はそういうような形で通常は環境影響評価フローに沿って実施しているのでございますけど、中には、当社の場合でいきますと、釜石だとかいろいろなところで、あるいは北海道でも種々の自然保護団体さんからのご指摘をいただきまして、事業者サイドの、もちろん事業者がやっているということじゃなくて、当然のことながら第三者機関に調査を委託しているわけでございますけれども、その手法等につきまして、専門家のご意見を、今回いらっしゃる有識者の先生方のご意見などもいただきまして、委員会形式を設置しまして、その中において、環境保護団体の方、あるいは地域の方の意見なんかも極めて重要なんで、全体のバランスを考えて、最終的にどう判断するのか。これはなかなか言いづらいところがあるんですけど、鳥の種類にもよるでしょう、それからバードストライクの可能性という問題もあるでしょう、実際に今までの調査はどうだったんだろうと。その一方では、地元に対する貢献という問題もありますでしょうし、そこら辺を総合的に判断し、事業を実施するかしないかという問題を委員会として議論し、決定していこうというような考え方です。
 岩手県の場合ですと、実際には地元の野鳥の会さんとか、イヌワシの会の方とか、種々の自然保護団体の会長さんを全部メンバーに呼びまして、地元の議員の先生とか、地元の地権者の方とか、あるいは県の環境部の方を入れていただいて、そういう委員会の中に有識者の先生に入っていただきまして、総合的な観点から、種々のアドバイスをいただきまして、事業者はあくまでもその場合は環境アセスをやったことについて報告をする場で、その委員会のほうからも種々のご指摘をいただいて、さらなる調査を行って、最終的にその場合は委員会の決定に従って我々は事業を実施したというような状況でございます。

【原科委員】  時間が足りなくなるとまずいと思いますので、私は、ここでストップします。
ありがとうございました。概ねわかりました。また改めて別の機会にお尋ねします。

【安藤新エネ課長】  では、古南さん、お願いします。

【古南委員】  すいません、苫前の分に関しては、基本的な情報は私のほうにありませんで、環境省さんのほうで解剖記録をとっていますので、そこはもっと細かい剖検が出ているはずだと思います。時期的に言うと、おそらく越冬個体ではないかなと思いますが、4月という記録がありますので、よく解析してみる必要があるかなと思います。越冬期の採食場所に近いというような話を聞いたことがあります。
 それから、原科先生のご質問、立地選択のお話ですね。既に岡安さんからもお話がありましたけれども、基本的に、私ども、スライドの39でもお見せしましたけれども、こういった客観的な基準を使って、重要生息地目録というのをつくっています。ただ、先ほど申し上げたように、これは汎用的な生息地目録ということで考えていますので、風車の検討のためのものではないので、もう少し工夫が必要かなと思います。
 日本で今既にデータがとれているものとしては、例えばイヌワシ、クマタカといった希少猛禽類に関しては、先ほどのスコットランドの地図で示したようなものが既につくられていると思いますし、それから、鳥類の全国繁殖分布調査というのをやっていますので、メッシュがかなり広いですけれども、その中から一定の、例えばレッドデータブック種なり、特にその中で影響の受けやすいと思われる種のリストを仮につくって、それでGIS化して、風況マップとオーバーレイさせるというようなことは割とすぐにできるのではないかと思います。
 あと、モニタリングサイト1000で、シギ・チドリですとか、ガンカモですとか、そういうたくさんの鳥が集中する場所というのが調査サイトに選ばれていると思いますので、そういう場所も入れたほうがいいかなと思います。私どものIBA(重要野鳥生息地)目録もぜひ使っていただければと思います。
 問題は、これは環境省さんのご発表にもありましたけれども、今データがなくて、これから調べないといけないものというのが幾つかあると思います。鳥の渡りに関しては、具体的などんな場所に鳥が集中するかというのがあまりわかっていない。昼間渡る猛禽類、サシバとかハチクマに関しては、これはアマチュアの研究者のグループの方たちがホームページなどもつくっていて、かなりいろいろなデータが毎年出ていまして、かなりよくわかってくるようになっていますが、全くデータがないものもあります。そういう先行しているアマチュアなども含めた研究成果をうまく取り込むということを1つは考えたほうがいいかなと思います。特に小鳥類ですとか、夜間渡るものですとか、そういうものに関しては、まだデータはこれからとらないといけないというところだと思います。渡りの経路の話です。
 それから、希少猛禽類で、オオワシ、オジロワシの越冬地に関しても、多分これも民間の調査があると思いますので、これもきちっと使える形になるように交渉といいますか、話をして、それでデータとして取り入れていく必要があるかなと思います。渡りの場所が非常に難しいのは、2つの要素があるんですけれども、季節的に非常に短い期間に一気に渡ってしまうということがあるので、逆に言うと、渡りの季節にある程度長い期間ずっと綿密に調べていかないと、全然渡らない日があって、一気に何万羽と渡っていって、またゼロの日がある。これをずっと毎日のように調べていかないときちんとした定量的な評価ができないというのが1つあります。
 それから、特に風車の場合、影響を見るときに、鳥が飛ぶ高さとコースが重要なんですけれども、これは気象条件によって非常に左右されますので、向かい風が吹くと低く飛ぶとか、あるいは霧が出ると低く飛ぶとか、そういうことがあるんですが、それに左右されてしまいますので、気象条件をいろいろな条件下で調べないといけなくて、要するにかなりたくさんの調査が必要になってくるというところなので、これがこれから少し時間をかけて調べないといけないところではあるかなと思います。
 どなたかおっしゃった洋上に関しては、今ほとんどデータがありませんが、日本の海鳥の研究については、非常に熱心な研究者がいるんですけれども、お金がかかるので非常におくれていまして、洋上に関してやるのであれば、かなり組織的で、大規模な予算をかけた調査が必要なんじゃないかなと思います。
 それから、下村先生のご質問で、野鳥の重要な生息地などの相関ということに関しては、ちょっと私は不勉強で、そういうものを見たことがないんですけれども、ただ一般的に考えると、風の強いところに鳥類が好んで住んでいるわけではなくて、風の強さ等はあまり基本的には関係がないと思います。ただ、たまたま開けた原野のようなところで風が強いところに住んでいる希少種がいるとか、そういうようなことはあると思います。
 あと、渡りに関して言うと、鳥が気流とかを利用してあまり羽ばたかずに飛んでいくということはありますので、例えば吹き上げによる上昇気流とか、熱上昇気流とか、そういうものが生じるところに関しては渡り鳥が使っている可能性が高いとかいうことはあると思いますが、それが恒常風といいますか、風力の強さということとは本質的にはあまり関係がないかなと思いますので、むしろ鳥のほうの条件で、重要な場所の地理的条件らしいといいますか、そういうものをきちっと解析して、それと風況地図というものを重ねていくほうがいいかなと思います。
 蛇足ですけど、風況地図、今改めて見てちょっと気がついたんですが、この風況地図の中で、黄色とか赤になっていないんだけれども、結構たくさんの計画があって、鳥との共存について話題になっているところというのは、例えば愛知県の渥美半島ですとか、伊勢志摩半島ですとか、あと、さっきあわら市の例を出しましたけれども、北陸の沿岸とか、多分能登半島もかなりあると思うんですが、それからあと島根半島なんかもそうですね。陸上部分は黄色になっていないんですけれども、そういうところで渡りのルートがあって、かなりの件数――あと静岡県の沿岸部などもありますので、多分この風況マップはかなり大まかなものなので、緑とか青のところで計画がないということではないと思うんです。なので、もう少しそこは精査が必要かなと思います。
 概論として、風の強いところは、鳥もいるんだから、鳥の多いところを避けるというのは無理ですというような言われ方をする方が希におられますが、それは基本的には間違いだと思いますので、そういう大ざっぱな話をしていると、世界中どこでもそうかもしれませんけど、どこにも風車は建てられないという話になってしまう。あるいは、鳥がいても構わずに風車を建てるという話になってしまいますので、そういう二者択一の議論はあまり意味がないかなと思います。

【大村委員】  すいません、1つよろしいですか。

【安藤新エネ課長】  すいません、ちょっとお時間が押していますので、ご意見は別途文書でいただくほうがいいかなと思うんですが、もしあれでしたら一言。

【大村委員】  ちょっと資料だけなんですけど。
 すいません、古南さんの資料の中で、5ページですか、銚子の写真がございますよね。これ、全く事例としては何もないと思うんですよ。といいますのは、銚子の風車はほとんど私どもがつくっておりまして、全く事例はないんですよ。こういう資料は、我々にとっても不利な状況になりますので、ちょっとご注意いただきたいなと。

【古南委員】  失礼しました。たまたま、私の手元に写真があったので使わせていただきました。これはあくまでも今のウインドファームといいますか、風車の設置状況のお話をしたまでです。事故の報告があるのはこのオトンルイだけなんですが、そこと並べてしまったので、ちょっと要らぬ誤解を招いてしまったかもしれません。ここの文脈としては、設置の状況ということでご説明したかっただけです。そういう誤解はされないかなと思って使ったんですが、誤解を招いたということであれば、すいません、おわびしておきます。

【大村委員】  よろしくお願いします。

【安藤新エネ課長】  いろいろなご懸念がありますので、ご配慮いただきながら、一方で、ちゃんと情報を共有していくというのは大事だと思います。

【古南委員】  そうですね。
 それとあと、今、図らずもおっしゃっていただいたんですけど、私どもは、事業者さんから、こんな調査をしていて、こういう結果が出ていますというのを個別に聞く機会がないんですよ。きょう初めて祓川さんの資料で系統的なことをお聞かせいただいたいので、個別のウインドファームの調査データに関しても、これは科学論文の形が僕はいいと思うんですけれども、やっぱりこういう集計した数だけではなくて、今の銚子なら銚子でこういう調査をしていて、こういう結果が出ていますと。もちろん、ないというデータも非常に重要ですので、それを公開していただかないと、今のような誤解も生じてしまうかもしれません。すいません、ちょっと蛇足です。

【安藤新エネ課長】  ありがとうございます。
 あとは手短に事務局からご報告いたしますが、自然エネルギー、あるいは新エネルギーの位置づけがどうか。これは、実は政府として、2010年に一次エネルギー供給の3%を満たしていく。全体で1,910万klなんですが、300万kWを目指して進めていく、こういう計画を持っております。
 一方で、おっしゃるようにバイオマスも大事ですし、また技術で解決していく太陽電池、これも世界一なんですが、これも重要でございます。また、最近ですと中小水力という、都市部でも水力で優しく発電するとか、あるいは地熱も、これは環境影響の問題がございますけれども、一方で温泉なんかもうまく使っていく、こんな取り組みも進めております。
 また、縦型風車というのが大事だと、これも私どもはよく認識しておりまして、縦型ですと、それこそ防護ネットみたいなものを張っていけば鳥のその問題というのは避けられるのではないか。一方で、技術的にも、モーターの部分、重い部分を下に置けますので、垂直軸というのは非常に技術的な優位性がございます。
 でも一方で、安全にとめるということが非常に大事な技術でございまして、日本のような非常に台風の多いところですと、縦型風車で破損、そしていろいろな二次被害という、こういう可能性といったところもよく慎重に考えなければいけない。技術的にいろいろなトレードオフがございまして、世界的にも、プロペラ型といいますか、ローター型のものが今は主流になっておりまして、そこの部分が現実の発電コストの面でも世界的に非常に進んでいるということでございます。また、その大型化も進んできつつある中で、いろいろなことを考えなければいけない。若干走りながらという部分がございます。
 それから、ご提案が幾つかございました。マップの重ね合わせの問題ですとか、あるいは日本の現実に即してちゃんと考えるべき、岡安さんからもご意見をいただきましたし、また、固有の地形の中での問題、洋上の問題、こうしたところは、ぜひ情報、知見を共有していくと古南さんがおっしゃられましたけれども、そういうことが非常に重要で、また、この研究会の場というものが、そういう1つのチャンネルになるのかなと感じております。
 立地プロセスにつきましては、次回ちょっと整理をしまして、なかなかご意見をいただく部分も盛りだくさんでございますので、お時間的に苦しいんですけれども、ぜひしっかりとご説明させていただいて、議論をしていただければと思います。
 1つお願いは、別に短期間で集中にというよりは、私ども、しっかりと議論させていただきたいと思っておりまして、次回のご日程が、大変恐縮なんですが、だんだん締めに入ってまいりますが、5月10日10時からということになっております。1カ月あきますのはほんとうに忸怩たるところでございまして、ぜひ、先生方、委員の皆様のご日程のお決めいただくときのプライオリティーを高くしていただいて、△を○にしていただき、×は△にしていただくと、こんなところでご協力いただけますと、できるだけ回数を多くじっくりとご議論いただけるようになるかと思います。
 環境省の皆さん、何か補足。はい、お願いします。

【星野野生生物課長】  先ほどご質問ありましたオジロワシのデータの件ですけれども、環境省の地方事務所で解剖した結果もありますので、それは別途紹介して、またご報告させていただきます。

【松田委員】  お願いします。

【星野野生生物課長】  マップの重ね合わせ等、幾つも意見を出していただきました。私どもで来年度から立地の適正化とバードストライクの防止をするための事業を立ち上げる予定でございますので、今回またこの検討会の中でこれから出される意見を含めて事業を進めていきたいと思いますので、そういった中で、また詳細を検討させていただきたいと思っています。

【安藤新エネ課長】  よろしいですか。
 それでは、先ほど次回のスケジュールをご報告申し上げてしまいました。詳細につきまして、また事務局のほうからご報告を申し上げたいと存じます。
 本日は長時間ありがとうございました。これにて終わらせていただきます。

 ―― 了 ――