環境省自然環境・生物多様性国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する検討会

国立・国定公園内における
風力発電施設設置のあり方に関する検討会(第2回)
議事要旨


委員名簿(50音順・敬称略)
氏名 所属
飯田 哲也 NPO環境政策エネルギー研究所所長(欠席)
牛山 泉 足利工業大学総合研究センター長
小河原 孝生 (株)生態計画研究所所長
熊谷 洋一 東京大学大学院新領域創成科学研究科・農学生命科学研究科教授
瀬田 信哉 (財)国立公園協会理事長
本藤 祐樹 (財)電力中央研究所 経済社会研究所 主任研究員
森本 幸裕 京都大学地球環境学堂大学院教授
山岸 哲 (財)山階鳥類研究所所長 (欠席)
吉野 正敏 筑波大学名誉教授・国際連合大学上席学術顧問

1 開催日時:

平成15年10月20日(月)14:00~17:00

2 開催場所:

経済産業省別館944会議室

3 議題:

(1) 関係団体等からのヒアリング
(2) 前回検討会等における論点の整理等
(3) その他

4 議事経過:

なお、検討会における主要な発言は以下のとおりである。

◆関係団体からのヒアリング内容に対するコメント等

【資源エネルギー庁関連】

○NEDOの助成金を受けた大規模な風力発電施設ついては、個々の施設の建設に際し、NEDOが作成したマニュアルに従って事前の環境影響評価を行うよう資源エネルギー庁等より各事業者に対して指導されているようであるが、風力発電施設の建設促進が景観を含め我が国の自然環境全般にどのような影響を与えるかという評価や、風力発電施設設置後のモニタリングやデータ解析等のフォローがされていない。

○水力発電や火力発電は国レベルで個々の発電施設について評価を行っているが、風力発電施設の設置が与える自然環境への影響を懸念する声がある中で、推進する立場から積極的に事後のモニタリングによりデータ収集・解析や発信を行って、風力発電施設が景観も含め自然環境に与える影響の程度をプラス面も含めて科学的データで示すべきではないか。
(資源エネルギー庁)当庁としては、各事業者が事前の環境影響評価を適切に行い、景観を含めた環境配慮を行うべきと考えている。また、現段階では、CO2の排出削減という観点から、風力発電導入による効果の検証等を行っているが、景観や自然環境分野について、当庁で事後のデータ収集・解析を行うことは予定していない。

○風力発電の設置に関しては今後景観が一番の問題になろう。場所や作り方によっては風景が引き立つことも考えられるが、例えば尾根が複雑に入り組む日本の地形特性を踏まえて発電効率のみではなく景観に配慮した配列を検討すべき。地域住民にコンピューターグラフィックスによるシミュレーション結果を示して意見を聴取する、というようなことも必要ではないか。風景との調和については一律にこうあるべきといった基準の設定は困難で、個別に専門家の意見を踏まえて慎重な検討が必要である。

【福島県関連】

○風力発電施設を対象とした環境影響評価の事例において、どのような評価がなされたのか。
(福島県)これまで騒音や低周波といったことはさほど問題視されてはいないが、景観や鳥類への影響は慎重に対応されている。景観評価については、いくつかの視点場を定め、モンタージュ写真等をもとに、地域の景観との調和の具合について、市民にも意見を聴き、専門家の意見も踏まえて検討した。その結果、例えば送電線の素材を鉄柱からコンクリートに変更している。また、布引高原の事例では渡り鳥への影響が懸念されたため、事業者において現在追加調査を行っており、その結果を踏まえレイアウト等を検討する予定と聞いている。

○評価書作成後の追加調査で渡り鳥の飛行ルートに重なることが確認された場合、建設の撤回はあり得るのか。
(福島県)調査結果次第であり、何とも言えない。

○環境影響評価に時間がかかり、風力発電施設設置に係る予算執行上の支障が生じることはないのか。
(福島県)環境影響評価に当たっては最低1年を通した調査が必要としており、猛禽類等の生息が認められる地域においては2営巣期、1年半の調査が必要となることもある。

○風力発電施設の設置にあたっては観光面でのプラスの経済効果の評価も必要ではないか。県ではどのような調整を行っているのか。
(福島県)地元市町村では、町おこしに活用したいという意図はある。県の生活環境部では環境影響面の評価を行い、環境への影響を最小化するよう調整を行っている。

○規模要件に満たずにアセスメントを必要としなかった事例はあるのか。
(福島県)3件ほどあるが、いずれも設置台数は少ない。

【稚内市関連】

○稚内市で定めたガイドラインに盛り込まれているゾーニングや事後調査は重要である。また、保安林の規制緩和の話があったが、防風効果などプラス面の調査も行ってはどうか。

○稚内市ではある程度の制約を持ちつつも、風力発電を推進しているのはどのような理由によるものか。
(稚内市)市としては風力発電を積極的に推進する立場であるが、以前、景観論争へと発展し、地域が混乱する事態もあったことから、ガイドラインを作成した。風力発電施設については、景観等への影響について市民の懸念もあるため、まず地域の理解を得ることが重要と考えている。問題がない案件については積極的に支援することとしているが、変電所の受け入れ容量に限界があるのも事実。

【日本野鳥の会関連】

○渡り鳥の飛行ルートを除外すべきとの提案であるが、風力発電の施設計画と渡り鳥の飛行ルートとはスケールが全く異なり、また施設の高さと渡り鳥の飛行高度に違いがあるため、単純に影響があるとはいえない。各方面の専門家を交えた検討が必要である。
(野鳥の会)渡り鳥は風を上手に利用して出来るだけ効率の良い飛行を行おうとするので、風況の良い場所を選ぶ風力発電施設の設置により、バードストライクの問題だけではなく、渡り鳥が飛行ルートを変えざるを得ない場合の影響も懸念される。

○野鳥の会の配布資料にある神奈川県三浦市における事例については私が聞いた情報と異なっており、事実と異なるのではないか。
(野鳥の会)三浦市からのヒアリング内容等を記載したもの。誤解を招く表現については修文する。

【風力発電事業者懇話会関連】

○風力発電施設の設置について、景観への配慮など、どのようにレイアウトを決定しているのか。
(風力発電事業者懇話会)モンタージュ写真の使用等により事業者が事前に調整を行う。また、地元の要望があれば設置位置の変更も可能である。

◆論点の整理について

○景観や環境影響、観光振興の評価は、人や時代によって変わりうることを認識することが重要である。また、風力発電施設が各地に出来れば観光振興の効果は激減するだろう。量的、物理的なインパクトと、人による評価を分けて考えるべき。

○風力発電導入による温暖化防止効果についても改めて評価をし、風力発電が環境に対してどれだけのマイナス面・プラス面を有するのかについて評価が必要である。建設したが、稼働していないという例も聞く。

○鳥類への影響については、個々の個体だけではなく、種全体に対する影響をも評価すべき。事業アセスでの対応では不十分であり、戦略アセスの考え方が必要である。また、風力発電促進の立場からも鳥類への影響調査などに積極的に取り組むべき。

○不確定要素を含む事前の評価は完全なものとはなり得ないため、風力発電施設設置後の事後評価をいかにガイドライン等に組み込むかが課題。事後評価を行うことにより、当該事業の実施だけでなく今後の他の事業計画の立案にも寄与するメカニズムを作るべき。

○風力発電施設は環境に優しく、自然の風を利用するから風景との親和性があるとの主張があるが果たしてそうだろうか。自然の風景は地域によって様々であるのに、経済性、効率性など画一的な考え方で設置される大規模な風力発電施設が風景と馴染めるのか疑問である。実際にはケース・バイ・ケースの判断が不可欠ではないか。色彩の検討だけですむ問題ではなく、立地、規模、配置のあり方など、自然公園にあった風力発電施設のあり方を検討する必要がある。

○ゾーニング及び景観評価の2点が今後の重要な検討課題であり、特に風景論の観点から議論を深めることが必要である。

○至急、景観等の専門家から成るワーキンググループを設けて風景論の観点から検討を行い、次回以降の検討会の場でワーキンググループの検討結果も踏まえて検討を行うこととしたい。


資料一覧はこちら

環境省自然環境局国立公園課(大代表03-3581-3351)
課長 : 笹岡達男(内線6440)
課長補佐 : 牛場雅己(内線6442)
保護管理専門官 : 中島尚子(内線6438)