環境省自然環境・生物多様性国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会

第1回「指定に関する分科会」の概要


1.日時

平成18年11月30日
13:30〜16:30
新宿御苑インフォメーションセンター

2.出席委員

海津委員、熊谷委員、小泉委員、森田委員、横張委員、吉田委員

3.会議の概要

 資料1〜4を用いて事務局より分科会の進め方、「すぐれた自然の風景地」の概念、自然保護・生物多様性保全における国立・国定公園の役割、国民の利用の視点に立った国立・国定公園の指定のあり方等の論点について説明を行った。委員からの意見とそれに対する事務局回答の概要は下記のとおりであった。

(1)  指定分科会の進め方・前回検討会等における意見のまとめ

○ 自然環境保全地域と国立公園が重複できないことにより、一体的な管理ができていないことが問題。アメリカでは、ウィルダネスエリアと国立公園は重複できる。将来的には、自然環境保全地域も自然公園法の特別保護地区として重複指定し、一体的な管理をしてはどうか

(事務局)同じ環境省所管なので、重複していなくても一体的な管理をするよう努力する。

○ 区域のあり方が話題だと思うが、利用の観点からの地種区分が行われていない。地種区分の考え方もこの分科会の議論の対象か。

(事務局)不可分の議題だが、この場は、どうこうすべきという具体的な方針を決めることまでは考えていない。

(2) 「すぐれた自然の風景地」の概念

○ 昭和27年の選定要領で点数制が取り入れられたが、そのときの候補地選定では実際には点数つけはしなかったという説明があったが、どうやって審査したのか。また、選定要領では、国定公園については配置を考慮するとされていたにもかかわらず、候補地選定では全国配置を考慮しなかったのは何故か。

(事務局)当時の事務局幹事が点数つけを試行したようだが、審議会では地形、地被などの景観要素について定性的な議論が行われたようだ。選定要領では国定公園は全国配置を考慮することになっていたが、このときの審議は厳選主義ということで純粋に風景の質について評価し、配置は考慮されなかった。

○ 国定公園から国立公園に昇格しているものが多々あるが、その理屈はどういうものだったのか。新しい価値が生まれたのか、地元の要望によるものなのか。

(事務局)29年の候補地選定では、一つの風景様式から一つの国立公園、というように厳選された。36年の選定方針では、同じ風景型式でもその資質が既指定の国立公園と同じくらいすぐれていれば、数も限定する必要はない、となった。というのも、29年の候補地選定で国定公園とされた候補地の多くは国定公園に指定されたが、地域によっては、国定公園への道を選ばずに国立公園を目指し続けたところもあった。その願いの強さに負けたということではないかと思われる。厳選主義を貫けなくなったということではないか。選定のためのタタキ台づくりは、戦前は、行政主導で候補地を選定し、昭和29年の候補地選定でも都道府県からの申し出も受けたが、事務局の意志で選りすぐった。30年以降は陳情のあった地域をベースに検討するという形になっていった。

○ 東海自然歩道沿線の国定公園の指定には何か意図があったのか。

(事務局)当時の厚生省としてはかなり大胆で、東海道メガロポリス構想に対し、緑の防波堤を築くという思想があった。これは地元からの運動ではなく厚生省主導の動きだった。

○ 国は公園指定の価値を見出していたが、地元や関係者(特に林野庁)などが利害関係で国立公園や国定公園の指定を望ましくないと言うこともあったのではないか。また、価値観は変わっている。本来の価値がある国定公園であれば、国立公園への格上げがあるのではないか。北海道の大沼は国立公園級ではないかとの意見があるが、何か事情はあるのか。

(事務局)地元や関係者との関係で指定ができなかった典型例としては、屋久島がある。当初、屋久島は単体で国立公園の候補地になっていたが、木材需要の高かった時期でもあり、なかなか指定ができず、結局、範囲を狭めて霧島とくっつけて指定することとなった。北九州国定公園は石灰石の関係で長引いた。昭和46年に選ばれた候補地の中にも、実際の指定までの間にタイムラグがあるものもある。会津駒ヶ岳や熊野枯木灘は、未だに国立・国定公園になっておらず、現在も積み残しになっている。ちょうど厚生省から環境庁になった時代であり、地元は観光地としての評価付けをもらう意味があったが、環境庁所管となり、保護地域としての性格が強くなったためと思われる。

(3) 自然保護・生物多様性保全における国立・国定公園の役割

○ この場では、国立・国定公園が、重要な地域と重なっている部分について議論するのか、それとも、ずれている部分をどうするかについて議論するのか。

(事務局)自然公園法の目的から考えると、公園の区域内の生物多様性保全が責務になっているが、それは主に管理運営分科会で議論する。ずれている部分をどうするかは国立・国定公園だけで議論するわけにもいかないが、ご意見をいただきたいと考えている。

○ 風景の保護を目的としていたものの、実質的には自然環境や生物多様性が保護されてきたと言えるかもしれないが、考え方は明確にされてこなかった。二次的自然については、自然公園だけでは無理であり、他の施策との役割分担を考えることが重要。

(事務局)その点は管理運営の分科会で議論する。全体会合でもご意見をいただきたい。

(事務局)こちらからお聴きしたい。ギャップ分析はどのように行うのがよいのか。生物多様性保全上のギャップ分析は今回少し試みてみたが、景観資源やエコツーリズムなどの利用対象が守られているかについて、ギャップ分析の手法はあるのか、ご意見をいただきたい。

○ 生物多様性については、環境省の特定植物群落、動物の希少種との重ね合わせなどがあろう。また、道路などで分断されていないかどうかも重要。ある程度の固まりのある原生地域で道路で分断されていないところは、日高山脈、朝日連邦、奥只見、飛騨山地程度。

(事務局)緑地保全地区、重要文化的景観、都道府県立の自然公園など他省庁が自治体の保護地域制度も対象となる。

○ 照葉樹のことが話題になっているが、国立公園には、四季の景観のすばらしさがあることが特徴。殊に新緑、紅葉はすばらしい。例えば、ナナカマドはその景観をつくる重要な樹木だが、あまり重視されていないため、分布もわからない。観光客が何を求めて訪れるのかについて、考えるべき。

○ すぐれた自然の風景、美しい紅葉を守ることで、結果として、それを構成する生物の多様性が守られてきたということも認識する必要がある。生物多様性ありきではなく、そういう美しい風景を守るということが、生物多様性を保全してきたということを。

○ 多様性と風景が両方求められる利用形態として、エコツアーがある。エコツアーが多く行われているところは、ギャップ分析をする際に重要な地域と言えるのではないか。国立公園と重なっているところもあれば、重なっていないところもある。やんばるや奄美は、エコツアーが盛んに行われている地域だが、保護地域になっていないので心配していた。次回ケーススタディが行われるということなので、安心した。エコツアーについても指定を考える際のポイントにして欲しい。

○ 中京地区の希少種の生息地となっている貧栄養湿地を調べたときに、貧栄養地は、常に移動しているということがわかった。そこに生息している動物は、湿地が移動するとともに移動する。
ギャップ分析にあたっては、生息地が移動しうるポテンシャルのある地域も含めて保護を考えていく必要がある。

(4) 国民の利用の視点に立った国立・国定公園の指定のあり方

○ 過去に地図出版に関わっていたときには公園区域を大事にしていた。どこかの時点で多色刷りのコストを考えて外したのだろうが、外してもクレームが来なければそのまま定着する。また、写真を撮ってきても、そこが公園に入っているかを調べるのは難しい。ホームページを見ても、区域図が載っている公園とそうでない公園がまちまち。これは是非、統一して欲しい。また、名勝など他の保護地域には標識があるが、公園の入り口には標識がない。標識をつけていくことで自然を保護している地域だということを示していくべき。

○ つまり、国立公園が分かりにくいのではなく、環境省が国立公園を分かりにくくしているということ。

○ この話題は面白いが、パンドラの箱をあけるようなところもある。まず、国土地理院の地形図に公園区域を入れてもらうよう努力すべき。

(事務局)5年に一度見直して少しずつ区域が変わるので、地理院の地図に入れてもらうのはなかなかむずかしい。法律上の区域図とは別に、縮尺の大きな概略を示した地図を持って広報に使っていくことも考える必要があるかもしれない。

○ 質の違う国立公園、国定公園が同じ名前で指定されているのは、ある程度仕方がない。IUCNカテゴリーをうまく活用してはどうか。オーストラリアは、国立公園の中のゾーニングにIUCNカテゴリーを当てはめて管理している。来年、カテゴリーサミットがスペインである。日本はこれまで受け身だったが、積極的に提案していってはどうか。

○ 資質を失ったところは削除するという提案もあったが、なぜ資質を失ったかを考えるべき。
許可してきた結果、資質がなくなったから公園から外すというのは問題だと思う。

(事務局)審議会においても同じ指摘を受ける。しかし、指定後70年の間に国土の変貌は著しい。
評価するものさしも変わっている。対象もものさしも変わると、削除する地域もあり得るだろう、ということも念頭においていただきたい。

○ 地理学会でも地形図に入れるよう働きかけているが、なかなか難しい。このまま働きかけをしないと、社会科の地図帳からも消えてしまう。役所同士で働きかけをしていくべき。日本のことをきちんと知るという意味で、教育も重要である。また、新しい価値も生まれる。地形のめずらしいところを、解説付きで見たいということで呼ばれることが多い。生物多様性以外にも新しい価値が生まれているので、PRして欲しい。

○ 「国民の利用の視点に立った」ということで、最近の観光客は目が肥えている、本物志向だと言われているが、本当だろうか。ディズニーランドは全て偽物だが、ニセモノをニセモノとして楽しむという嗜好が観光の形態として定着しているのではないか。スノーケリングでサンゴ礁の海を見て、水族館みたい、という感想を述べた人もいる。本物が何で偽物が何かがわからなくなっているのではないか。国立公園はあくまでも本物だとして毅然としていられるのか。知床などは本物の原生自然として毅然としていても良いのだろうが、瀬戸内海などは観光観の変化に対応していく必要があるのではないか。

○ 西表島で、エコツアー参加者と地元の人にアンケートをしたところ、国立公園の範囲は島全体だと思っている人が多いが、国有林との関係で国立公園の区域は限られている。何故、西表島全島が国立公園でないのかについても、地元の人は知らないので、観光客に地元の人が説明することも難しい。頭の中の国立公園と実際の国立公園の範囲が違うのはいいことではない。

○ カテゴリー分けの話は重要。瀬戸内海国立公園も、きちんとカテゴリー分けしてそれに応じて管理することを考えるべき。工業化したところは削除して良い。

○ 法律上の第1種、第2種、第3種特別地域というゾーニングは一般の人にはわかりにくい。IUCNのカテゴリーは国際的には定着しているので、このカテゴリーを指標として管理していっても良いのではないか。守りたい地域の姿を持って、例えば、今は普通地域だが、カテゴリーIに相当する場所ですよと説明し、それに見合う規制の実施を目指していくことが重要ではないか。

○ 実現するためには、それなりの予算が必要。制度のみならず予算のことも考えていく必要がある。

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