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保護及び管理に係るさまざまな取組

白山・奥美濃地域ツキノワグマ広域保護管理指針

1.広域指針の目的

 白山・奥美濃地域個体群は、ツキノワグマの分布中心地である東北地方から中部地方にかけての東日本分布域の西端にあたる個体群であり、本地域個体群が分布する5県では、平成16年(2004年)と平成18年(2006年)に、低地部へのツキノワグマの大量出没が各地で見られるなど、エサ資源の状況変化に対して、ツキノワグマの生息動向に共通した現象が見られた。特に、富山・石川・福井では、多くの人身被害が発生し、両年の捕獲数は通常の5倍以上の500頭以上に達し、地域個体群への影響も懸念された。それに対し、ツキノワグマの保護管理の方向性や実施体制の整備状況など、各県の対応が異なっていた。

 本広域保護管理指針は、白山・奥美濃地域ツキノワグマ個体群を対象として、保護管理の基本的な考え方と目標を示し、地域住民や市町村の理解と協力を得ながら、関係県がツキノワグマの適切な保護管理を実施するために、保護管理計画および被害防止計画を作成あるいは改訂する際の基本的な考え方や対策の方向性を示すものである。

2.保護管理の目標

 白山・奥美濃地域における人とツキノワグマの適切な関係を構築するため、以下の目標を定める。

[1]
白山・奥美濃地域ツキノワグマ個体群の長期にわたる安定的な維持を目標とする。
[2]
被害対策を推進し、人身被害を防止するとともに、農林業等の被害を最小限に抑える。
[3]
人間活動地域へのツキノワグマの大量出没の要因を減らし、集落から離れた地域でのツキノワグマの定着化を図る。
[4]
人材育成および市民への環境教育等の活動を共同で推進することにより、その効果的な実施を図るとともに、保護管理の理念や手法の共有化を進める。

3.保護管理の内容

(1)生息動向等の把握

 分布調査および生息密度・個体数調査等を実施する。その結果をその後の保護管理にフィードバックする。

(2)捕獲数管理

 当地域個体群は、生息数から判断すると安定存続個体群であるため、生息数に対する毎年の捕獲数割合の上限をツキノワグマの個体数の12%以下とする。

 また、各県のツキノワグマの分布状況、生息密度など現状は様々であり、総捕獲数管理は、各県ごとの『個体数水準』に適した管理を行うこととし、生息数と捕獲数割合から総捕獲数の上限設定を県別に行い、捕獲数の運用手法は「白山・奥美濃地域ツキノワグマ広域協議会」で検討する。

(3)被害防除

 ツキノワグマによる人身被害、農林業等の被害等を最小化するために、以下の対策を実施する。

[1]
ツキノワグマの人里への移動経路となりやすい河畔林、段丘林などを電気柵などの侵入防止柵等で遮断する。
[2]
被害発生が繰り返される生息地近くの畑、養蜂箱設置場所等を電気柵などで囲む。
[3]
樹皮はぎ被害を頻繁に受けている林分の樹木をネット巻きなどで保護する。
[4]
ツキノワグマの人里への移動経路となる生息地と人里の接点になる草むら、法面などの刈り払いを行う。

(4)ゾーニングと管理方針

 ツキノワグマの生息地の維持・保全及び人との軋轢の軽減に努めることにより、地域個体群の適切な保護管理を推進することとする。そのため、ツキノワグマの生息状況、自然環境及び人間活動を考慮しながら、ツキノワグマの主たる生息地と人間活動の主たる地域を3区分にゾーニングし、ゾーニング区分に応じた被害防止対策、生息環境整備及び被害防止のための捕獲等の取組を行う。

○ ゾーン1(生息保護地域)
 自然林が多く残っているなどツキノワグマの主要な生息地として適した地域とする。具体的には、国立・国定及び県立の自然公園、国指定・県指定の鳥獣保護区、自然環境保全地域、森林生態系保護地域や緑の回廊などが該当する。特にゾーン1の設定に際しては、関係県間で調整し、ゾーン1の連続性が図られるよう配慮する。
○ ゾ―ン2(保護調整地域)
 人間活動が行われ、ツキノワグマも生息している地域とする。落葉広葉樹二次林や人工林及び里山地域などが該当する。
○ ゾーン3(被害防止地域)
 人間活動が活発で、ツキノワグマが本来生息していない地域とする。集落や集落周辺地域の耕作地などが該当する。

(5)その他

○普及啓発活動
 各県及び県の調査機関等が連携・協力し、平常時から地域住民、市民を対象とした普及啓発活動を効果的に行うとともに、必要な教材等の共同開発や共通化を図る。
○人材育成と活用
 保護管理に直接関わる技術を有する人材や普及広報に関わる人材の育成及びそれらを配置する組織の整備並びに指導者の育成を国や各県及び県の調査機関等が連携・協力し効果的に行う。
○関係県の情報の整備と情報交換
 広域の保護管理を効率的に進めるため、情報収集体制の整備と関係県相互の情報交換が欠かせないため、情報体制の整備に努める。
○調査研究とデータの整備
 国及び関係県は連携・協力、分担し、調査研究を実施するとともに、データを定期的にとりまとめて分析を行い、指針の見直しのための資料とする。