目次 1.地球温暖化対策 2.環境保全型社会 3.化学物質対策
  4.自然と人間 5.大気・水環境 6.健康被害

平成10年度環境庁重点施策の考え方について


 今日、人類の経済社会活動はますます拡大し、環境に対し深刻かつ回復困難な影響を及ぼしている。地球温暖化の影響が既に平均気温の上昇や海面の上昇等の形で現れているなど、まさに、人類社会の基盤を揺るがしかねない環境危機とも言うべき状況が生じつつある。
 この環境危機を克服するためには、経済構造を改革し、環境基本計画が目標とする環境への負荷の少ない持続可能な経済社会システムへ転換を図ることが不可欠である。
 この転換に当たっては、事業者、国民等全ての主体の努力が必要であり、短期的には痛みが生じる場合もある。しかし、環境への負荷の少ない社会への改革は、一方で、環境負荷の少ない製品や生産方法、自然と共生するライフスタイルに対応した製品やサービスなどの環境保全関連の新たな産業への需要を顕在化させ、これまでとは質の異なった活力ある社会を創り出す道でもありうる。

 これに対し、環境保全施策の現況は、平成9年6月の中央環境審議会による環境基本計画の第2回点検結果において指摘されているとおり、政府として各省庁の施策間の連携が十分ではなく、また、個別施策の効果が必ずしも明らかでない。このため、統一的な方針に基づく体系化を進める等、一層の取組の推進が求められている。

 また、平成9年12月に開催された地球温暖化防止京都会議では、2000年以降の国際的な温暖化対策を決める京都議定書が採択された。日本は京都会議後もリーダーシップを発揮し、国際社会に占める地位にふさわしい貢献を行っていくことが求められているが、会議の結果を受け、京都議定書を円滑に実施するため、国際的にも国内的にも率先して取り組む必要がある。

 平成10年度は、環境の危機という現下の状況と、それに対し日本に求められている大きな役割に鑑み、21世紀に向け環境保全型社会を構築するため、地球温暖化問題、廃棄物による環境問題等の解決に向け、各種の環境保全施策の確立を目指し、具体的には以下の施策を積極的に推進する。
 第一に、京都議定書を国内において確実に実施していくため、法制度等の地球温暖化対策の強化についての検討を早急に進める。加えて、地方公共団体の取組の支援、低公害車の導入、自然エネルギーを活用した自然公園施設整備等の温暖化防止に資する各般の施策を推進する。また、議定書等の円滑な実施に向けた国際的な作業に積極的に貢献する。
 さらに、地球環境戦略研究機関を発足させ、国際的な温暖化防止対策等の戦略研究を推進するとともに、酸性雨等の地球環境問題に関し、アジア太平洋地域を中心とした国際協力を進める。

 第二に、近年深刻な社会問題となっている廃棄物問題に対処するため、廃棄物・リサイクル一体となった望ましい物質循環を促進する総合的なシステムの構築を検討するほか、オゾン層保護のため、フロン等の回収・破壊を推進する。また、環境基本計画の実効性を高めるために必要な見直し作業を進めるとともに、環境影響評価法の成立を受け、環境影響評価制度の円滑な運用に備えるための検討を進める。
 さらに、自主的・積極的な取組の促進及び環境研究・技術開発の推進を図る。
 第三に、ダイオキシン類を始めとする化学物質対策を進める。ダイオキシン類に関しては、平成10年度からの5カ年間に総合的な対策を順次講じる。
 また、化学物質による環境リスクの包括的な管理を図るPRTRの導入に向けた取組等を進めるとともに、微量化学物質や内分泌攪乱化学物質の問題について、実態の把握解明に努め、対策の基礎となる知見の充実を図る。

 第四に、自然と人間の共生の確保を目指し、生物多様性国家戦略に基づく生物多様性の保全施策の具体化を図るとともに、自然とのふれあいを促進するためのハード、ソフト両面にわたる取組、野生鳥獣の適正な管理等を実施する。

 第五に、自動車環境対策等の大気環境対策、健全な水循環の回復等の水環境対策及び海洋環境保全等を推進する。

 第六に、公害健康被害の予防、公害健康被害者の救済、特に水俣病対策については、平成7年12月の閣議了解等に盛り込まれた施策を着実に実施する。


目次 1.地球温暖化対策 2.環境保全型社会 3.化学物質対策
  4.自然と人間 5.大気・水環境 6.健康被害