課題名

H-3 地球環境保全に関する土地利用・被覆変化研究(LU/GEC

課題代表者名

大坪 国順(環境庁国立環境研究所地球環境研究センター)

研究期間

平成7−9年度

合計予算額

78,4679年度 26,565)千円

研究体制

(1) アジア・太平洋地域の土地利用・被覆変化の長期予測(国立環境研究所)

(2) 地理情報システムを用いたアジア・太平洋地域の土地利用・被覆データのスケーリング手法の開発(環境庁国立環境研究所)

|羚颪砲ける土地利用・被覆データセットの開発(中華人民共和国南京師範大学)

▲ぅ鵐疋優轡△砲ける土地利用・被覆データセットの開発

(インドネシア共和国ボゴール農科大学)

タイにおける土地利用・被覆データセットの開発(タイ王国コンケン大学)

 

研究概要

1.序(研究背景等)

 UNCED以降、持続的開発を目標とする開発と環境保全の両立が世界的課題となっている。特に、開発途上国での持続的開発を実現するために、資金援助、技術協力、科学の推進などの国際協力が求められる。アジア・太平洋地域は、世界の6割以上の人口を有し、地球上で最も速い速度で経済成長しており、地球環境の変動や地球全体の持続性的開発に大きな影響を与えている。従って本地域において開発と環境の長期的な予測を行い、持続的開発のための指針を提示することは非常に重要である。土地利用・被覆の変化は、地域が持続的開発をなし得たか否か映し出す鏡であり、土地利用・被覆変化を理解して、将来を予測し、その改善策及び予防策を提示することは、取りも直さず、地球環境の将来像を占い、かつ保全する手段を提示することであり、その意義は大きい。

 

2.研究目的

 LU/GECプロジェクトの第1期の目的は3つである。一つは、将来土地利用・被覆状況がどうなるかを議論するためのツールとしての予測モデルの開発、二つ目は、過去に何が起こってきたかを推測するための土地利用・被覆関連のデータ・ベースの整備、三つ目が、現地調査による土地利用変化メカニズムの検討である。本プロジェクトで開発を目指したモデルは、5つの土地利用・被覆形態(耕作地、森林、草地、都市的利用地(居住地、工場etc.)その他、利用不可能地)のシェア(比率)の社会、経済的要因による将来変化を予測するためのものである。各土地利用・被覆形態のシェアを問題にした理由は以下のようである。土地利用・被覆変化の問題は土地を資源と捉えた場合、資源総量が増加することのないゼロ・サム・ゲームの問題である。よって、国および地域の持続的発展を土地利用の観点から考察する場合は、耕地とか都市的利用地のみの挙動に着眼して議論をすると問題の本質を見誤る危険性があるからである。

 データ・ベース整備は、開発したモデルをアジア・太平洋地域の国々や地方に適用する際のモデル中のパラメータの決定やモデルの検証にも利用される。複数の年次に渡って土地利用・被覆に関する情報・データのみならず、変化の誘導因子になりうる社会・経済的情報データの収集、整備にも努めた。

 現地調査は、現在何が起こっていてそれはなぜかを理解するための強力な手段であり、研究に有益なデータの所在情報やデータそのものの収集も現地調査時に得られることが多い。

 

3.研究の内容・成果

(1)アジア・太平洋地域の土地利用・被覆変化の長期予測に関する研究

 アジア・太平洋地域の土地利用・被覆変化の長期予測モデルを構築するためにLU/GEC検討会を設置し、ヾ靄椒皀妊襯哀襦璽廖↓中国モデルグループ、E貽逎▲献▲皀妊襯哀襦璽廖↓ち完莖板ゥ哀襦璽廚鮑遒蝓△修譴召谿焚爾虜邏箸鯤担した。

ヾ靄椒皀妊襯哀襦璽廖痛椒汽屮董璽泙涼羶瓦箸覆覺靄椒皀妊襦LUGEC-機砲粒発と適用を図った。平成7年度はLUGEC-汽皀妊襪離灰鵐札廛箸鮴澤廚掘第一段階として他の地域と物と人のやり取りを考えないLU/GEC-Ver.1を完成させ、関西地方、関東地方、インドネシア全体に適用した。平成8年度は、他の地域もしくは、国々との物と人のやり取りを考えた(リンケージ)を考慮したLU/GEC-Ver.2を完成させ、関西地域に適用した。平成9年度はLU/GEC-Ver.2を日本全体に適用した。

中国モデルグループ…平成7年度は、経済発展の最も著しい中国の米倉でもある華東地域(長江最下流)を現地調査し、関連データの所在調査および収集にあたった。平成8年度には、LU/GEC-Ver.1の中国長江下流域への適用を試みた。現地調査としては草地の農地転用が著しいといわれる内蒙古地域を対象とした。平成9年度は、商品作物農業が最も進行している珠江デルタ(広東省)の現地調査を実施した。

E貽逎▲献▲皀妊襯哀襦璽廖鎚神7年度は、インドネシアジャカルタ周辺を対象として、途上国の大都市周辺の土地利用変化のプロセスを調査するとともに、インドネシアにおける土地利用、被覆変化関連のデータの所在調査ならびにデータ収集を行った。平成8年度は、ジャカルタ周辺での調査を継続し、道路整備に伴う都市的利用拡大のモデル化を行った。また、スマトラでの森林面積の減少に関する社会・経済的要因をマルチロジスティックモデルを適用して検討した。

ち完莖板ゥ哀襦璽廖鎚神7年度は、日本、中国、インドネシア、タイを除くアジア・太平洋地域の各国について、土地利用・被覆変化に関連するデータの所在調査およびデータ収集を行った。ほとんどの国で、国レベル以下の行政単位ではヒストリカルデータ(過去にさかのぼって年次変化を検討するためのデータ)が全く整備されていないことが明らかとなった。平成8年度はLU/GEC-Ver.1を、対象とした国の中ではデータが最も揃ったインドに適用したが、データ不足のため土地利用のシェアの変化要因を明らかにできなかった。平成9年度は、新たに開発したLU/GEC-競皀妊襦憤貳眠KSIM法)をインド、韓国に適用した結果、国レベルでの土地利用シェアの変化予測は一応可能となった。

 

(2)地理情報システムを用いたアジア・太平洋地域の土地利用・被覆データのスケーリング手法の開発に関する研究

|羚颪砲ける土地利用・被覆データセットの開発

 平成7年度は、中国全土の農業関連データを県(日本の郡)単位で集めるとともに、長江下流域の社会・経済データを県または地区(日本の広域市町村)単位で収集してデータセットを作成した。平成8年度は省単位のデータの充実を図った。特に入手が困難な省単位での森林に関するヒストリカルデータを整備した。アジア各国で、国レベル以下の行政単位でのデータの整備が非常に遅れていることが判明したため、国を単位としたデータを用いて土地利用のシェア変化が予測できるLU/GEC-競皀妊襦憤貳KSIM法)を新たに開発した。一般化GKSIMGKSIM: Generalized kane's Simulation Model)においては、予測対象地域と同じ空間スケール(行政単位)で土地利用とその変化要因のデータを最低3時点にわたって収集すれば理論的には予測が可能となる。土地利用のシェアが、土地利用形態の相互影響の具合、人口、GDPで表現できるとして、人口、GDPの将来変化を与件として土地利用のシェアを予測するものである。平成9年度は8年度に開発したLU/GEC-兇量簑蠹世鮟だ気靴董2050年までの中国での土地利用のシェアの変化を予測した。一般的に、ある対象地域の土地利用変化の将来予測のためのモデルとしては、次の条件を満たすことが要求され、今回開発したGKSIMモデルは全条件を満たしている。

(1)

各土地利用形態の面積はその限度値を超えないこと。この限度値は、土地の標高や傾斜度、気候等の自然要素、或いは人口や国内総生産等の社会経済状況によって決まる。例えば、森林予測値は、現有の森林面積と森林に変換され得る他の土地面積の和を超えることはできない。

(2)

シミュレーション結果が過去の土地利用変化をよく説明すること示す統計的な検定が可能なこと。

(3)

どの時点でも、予測された各土地利用面積の和は、対象地域の総面積と一致すること。

▲ぅ鵐疋優轡△砲ける土地利用・被覆データセットの開発に関する研究

 本研究では、インドネシアにおける土地利用・被覆変化を論じるために必要なデータを網羅的に収集し、ディジタルデータセットを作成するとともに、これらのデータが利用できる土地利用・被覆変化予測モデルを構築してその適用を図った。

 平成7年度は農業関係を中心に、全土の社会・経済データを州レベルで集めるとともに、ジャワ、スマトラ両島についてはカブパテン(日本の郡)レベルで集めてデータセットを構築した。平成8年度は、ジャワ島を対象に、収集したデータベースを用いて、50年後までの土地利用のシェァの予測を行った。データの分析を通して土地利用のシェアと経済成長率の間に函数関数を見いだして、過去のデータから統計的に推定した経済成長曲線を与えて土地利用シェアを予測する手法である。平成9年度は、国単位のデータを用いてインドネシア全体としての土地利用のシェアを予測するモデルを構築した。このモデルは、土地面積、土地の生産性、作物生産量、及び、食糧の需要供給バランスの間の基本的関係を単純化して誘導されたもので、モデルの性格から土地利用変化に関する定弾性動的均衡モデルと名付けられた。インドネシアの過去約30年の土地利用、農業活動に関する年次データを用いてモデル式中のパラメータの値を決めた。この土地利用変化モデルにGDPと人口の将来変化シナリオを外部変数として与えて、インドネシァにおける5つの土地利用形態の将来変化を予測した。

 研究成果は以下に要約される。

1)

インドネシァにおいて、耕地の拡大は森林と湿地等の未利用地のプランテーションの拡大は牧草地からの、また、都市的利用地の拡大は耕地を森林の、転用による。

2)

インドネシアについて、可能経済成長は1997年実績の95倍、増加可能人口は1997年現在の2.5倍と算定されている。

3)

しかし、上記の経済成長、人口増加を実現するためには、土地生産性と社会効率の大幅な向上が前提となることが予測結果からわかった。さらに、将来にわたっても、現在の土地生産性、社会効率性しか期待できないと仮定すると、食物の需給バランスは2003年時に崩れ、経済も2006年から1997年レベルに逆戻りする、という予測結果が得られた。

4)

社会効率性や土地生産性が現在より低下すると、さらに深刻な事態が予想される。

タイにおける土地利用・被覆データセットの開発に関する研究

 本研究はタイにおける土地利用・被覆変化の将来予測シミュレーションに必要な人文科学的および自然科学的データのデータベースの構築と2050年までのタイの土地利用・被覆変化の予測を目指したものである。

 平成8年度は、土地利用・被覆変化に関係するデータの所在を調べ、国、州、県レベルに分類してデータを収集しデータベースを整備した。タイでは国単位の他に、全土を北部、中央部、南部の4区分した単位でヒストリカルデータが揃っている。平成9年度は、収集したデータベースを利用して土地利用変化の将来予測を試みた。まず、LU/GEC基本モデルをタイに適用するために、タイのディストリクトレベルを単位としてデータ収集を試みたが、一部データを除いてデータがほとんど整備されていないことが明らかになった。次に、1つ上の州(province)レベルを単位としてデータの収集を試みたが、1970年代のデータは入手できない項目が多かった。よってLU/GEC基本モデル(LU/GEC-機砲鬟織い謀用するのは困難と判断した。タイの4つの地方、北東部、北部、中央部、南部を単位とするデータは一応揃っているので、この4つの地方に対してLU/GEC-GKSIM法)モデルの適用を試みた。タイの4つの地方における過去30年間の土地利用・被覆変化を鳥瞰し、それを参考にしつつ4つの地方毎にLU/GEC-兇療用、計算結果及びモデルの今後の課題について整理した。4地域に対して人口の将来予測がなされ、森林保護政策が打ち出されているので、GDPを中位の成長シナリオで与えて、LU/GEC-競皀妊襪鰺僂い禿效詫用のシェアの強化を予測した。

 

研究者略歴

課題代表者:大坪国順

1951年生まれ、信州大学大学院終了、京都大学工学博士、

現在環境庁国立環境研究所水土壌圏環境部上席研究官、

主要論文:

・霞ヶ浦底泥の物性および堆積特性に関する調査と検討

 土木学会衛生工学研究論文集、Vol. 21, pp.201-210, 1985

Field Studies on Physical Properties of Sediment and Sediment Resuspension, in Lake Kasumigaura(和訳):霞ヶ浦における底泥の物性に関する長期変動特性と再浮上に関する研究

 The Japanese Jour of Limnology, Vol.48, Special Issue, pp. S131-138, 1987

LUCC(土地利用・被覆変化)について

 地球環境、1 (1), pp.49-62, 1996

 

サブテーマ代表者:

(1)

大坪国順(同上)

 

 

 

 

(2)

.乾鵝Ε献アンシン

 1959年生まれ、京都大学農学部博士課程修了

 現在、中国南京師範大学助教授

 

 

主要論文:

・均質点集合を用いた農村集落分類

 農村計画学会誌13-5, 1994

・メッシュ・データによる農村集落分類指標の簡便計算法

 農村計画学会誌13-5, 1994

・事象の空間的分布に関する分布疎度統計量の構築

 人文地理46-5, 1994

 

▲好鵐好鵝Ε汽┘侫襯魯ム

 1962年生まれ、京都大学農学部博士課程修了

 現在、インドネシアボゴール農業大学講師

 

 

主要論文:

Land Evaluation and Planning for Forest Concession Area Development, Jambi, Ministry of Forestry, 1988

Spatio-Socio-Cultural Patterning of Rural Occupations for Land Use Planning, Rural Planning Association, Japan, 1991

Land Availability Classification with Consideration of the Market Conduct, Indon. J. Trop Agric., Vol.3 (2), 1992

 

ベラポン・サエンジャン

 1955生まれ、京都大学農学部博士課程修了

 現在、タイコンケン大学アカデミック・サービス・センター所長

 

 

主要論文:

Intra-Urban mobility forces and Residentia1 Preferences, Journal of Irrigation and Drainage Engineering, Japan, 1989

Potential of Investment Opportunity in Northeast Thai1and, Research and Development Institute, Khon Kaen University, 1993 (in Thai)

Rural land Use in Thailand, Asian Productivity Organization, Japan 1993