課題名

E-4 熱帯林生態系の修復に関する研究

課題代表者名

名河原 輝彦(農林水産省林野庁森林総合研究所研究管理官)

研究期間

平成3−7年度

合計予算額

141,5297年度 26,899)千円

研究体制

(1) 自然更新機能の解析に関する研究(環境庁国立環境研究所、名古屋大学)

(2) 修復過程における土壌、根菌類の役割の解明に関する研究

(農林水産省森林総合研究所、東京大学)

 

研究概要

1.熱帯の樹木の種子形成過程を明らかにする目的で果実の特性を調べた。

2.熱帯林における自然更新過程を解明するために、ギャップでの光環境と稚樹の成長ならびに光合成速度について調査した。

3.熱帯林小流域における浮遊固体物(SS)の発生運搬機構の解明のために降雨・流水量・渓流水質・SS濃度の経時変化の観測と森林と裸地におけるSS発生過程の違いを明らかにするため水理実験を行った。

4.熱帯林における土壌形成金の生態的役割の解明のため、マレーシアパソー保護林において木材腐朽菌に関する調査を行った。

 

研究成果

1.Durio zibethinus Murray果実の形態特性ならびにCO2交換速度を調べ、果軸が果実の支持器官であることを明らかにした。

2.比較的開けたギャップでの光量子密度の時間変化特性が明らかになった。

3.ギャップが大きな場合、稚樹が成長できる程度の光量子密度があったが、樹冠が欝閉している林床では、かなり耐陰性の高い樹種しか成長できないような低い光量子密度であった。このよ'うな光環境:下でも稚樹は枯死することはなく少なくとも数年は生存していることが明らかになった。

4.自然状態と人為的環境下におけるShorea leprosulaの実生の成長は、ギャップの大きさが大きいほど成長が良かった。

5.葉の窒素含有量は強光区より弱光区の苗で高く、光飽和での純光合成速度は葉面積当たり及び窒素含有量当たりともに弱光区より強光区の苗で高かったが、両区の光合成速度の差は葉面積当たりよりも窒素含有量当たりで縮まることが明らかとなった。

6.浮遊固体物の濃度は流出水量よりも降雨強度と関係があり、降雨強度のべき乗で表されることが判明するとともに、浮遊固体物の有機物含有量はSS濃度と逆比例の関係があり、高濃度時においても3040%と高く、系外への炭素流出が無視できないことがわかった。

7.雨滴の衝撃力による土粒子の分離と表面流との相互作用によって、裸地における自然降雨時の浮遊固体物流下量は非常に多いことがわかった。

8.森林における浮遊固体物の生産源は河道の近傍であると推察され、開発時には河道付近の植生を存置することが水質保全に有効な方法となると判断された。

9.未解明であった熱帯林における木材腐朽菌相の一端が明らかとなった。

10..菌の乾燥耐性の違いによって基質サイズ・樹種が異なることが明らかになった。

11.採取された腐朽菌のほとんどが宿主特異性を有しないことが明らかになった。

12.同一基質上に広範囲に同一種の木材腐朽菌がコロナイズする例が多数見られたが、クローン分析の結果では異なるクローンに属しており、同一基質上の菌個体群は形状の小さなクローンの集合であることが明らかとなった。

13.倒木初期にコロナイズする菌は高い材分解能力を持つことが明らかになった。