課題名

B-9 地球の温暖化が植物に及ぼす影響の解明に関する研究

課題代表者名

大政 謙次 (環境庁国立環境研究所生物圏環境部環境植物研究室)

研究期間

平成2−4年度

合計予算額

67,714千円

研究体制

(1)自然植生の分布への影響の解明および予測に関する研究

(環境庁国立環境研究所)

(2)高山・亜高山地域の植物への影響の解明に関する研究

(農林水産省林野庁森林総合研究所)

研究概要

 地球温暖化は温度や二酸化炭素濃度の上昇以外に乾燥化や日照条件の変化などの複雑な環境変化をもたらし、植生分布の変化と多くの植物種の絶滅が生じると懸念されている。

 本研究の目的は、植物の生理・生態と気候条件とのかかわりに関する基礎的な研究を推進するとともに、地球温暖化が植物に及ぼす影響を予測することである。

研究成果

(1)自然植生の分布への影響の解明および予測に関する研究

 ‘本の植生分布をクラスレベルおよびオーダー〜群団レベルのふたつのレベルでモデル化し、温暖化による分布シフトを予測した。また種レベルの分布シフトを予測するためのデータベースを開発し解析をおこなった。

 温暖化による生物季節の変化を予測するシミュレーションモデルを開発し、分析をおこなった。すなわち、ソメイヨシノ、ウメ、ツバキ、タンポポ、ヤマツツジ、ノダフジなどの開花日・発芽日・紅葉日・落葉日と月平均気象条件(月平均気温・降水量・日照時間・月最高気温・月最低気温・湿度など)との相関関係を解明し、温暖化による生物季節の変化を予測した。

 F本国内に分布南限域をもつオンタデを対象にして高温条件が乾物成長および花芽形成に及ぼす影響を生育実験によりあきらかにし、さらに分布南限域(富士山)におけるオンタデの生育条件および高温の影響を解明した。

 げ甲伐修猟樟椶留洞舛鮗ける温帯性植物種の分布南限地域での分布動態観測の基礎となる分布の現状を調査した。またそれらの個体群を中心に分類学的な検討をおこなった。これらの結果を温帯種の南限分布データファイルとしてまとめた。

 テ鷸晴獣坐杷仕戮料加とオゾン濃度の上昇による複合影響に関する実験をおこなった。

(2)高山・亜高山地域の植物への影響の解明に関する研究

 温暖化が高山・亜高山帯の植生に及ぼす影響を解明するため、この地域に発達する各種の植物群落の生育環境を調査した。温暖化によって、冬季の積雪量が変化すると同時に融雪時期が早まる。雪田の熱収支モデルにより、融雪過程を推定し、実測値との高い相関を得た。現在の森林植生帯の分布は主として温度条件に基づいているが、細部では一致していない。冬季の季節風の影響は積雪量に関与し、高木林の形成に大きな意味を持つ。同時に森林の存在が積雪量の増加と雪解け時期に影響を及ぼしている。土壌中の有機物量はリターの供給と分解量の差を示すものであると同時に立地環境としても重要である。温暖化はリターの供給と分解の双方を増加させる。気温と地温の変動のずれが植物の生育にどのように作用するかの解明は不十分である。また、過去の人為的影響は亜高山地域にも広く及んでいることが示唆された。環境条件の変化から予想される植生の変化と生態遷移による変化との関係もあきらかにする必要がある。これまでに、いくつかの環境要因と植物の生育の関係があきらかになったが、環境−植物群落の相互作用についての解明は十分でない。