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[キーワード]対流圏オゾン、大気汚染、気候モデル、気候影響、エアロゾル

[B-051 アジアにおけるオゾン・ブラックカーボンの空間的・時間的変動と気候影響に関する研究 ]

(5)化学気候結合モデルによるオゾン・ブラックカーボンの気候影響の評価[PDF](1,548KB)

  名古屋大学 大学院環境学研究科 

須藤 健悟

  独立行政法人海洋研究開発機構
  地球環境フロンティア研究センター


秋元 肇

<研究協力者>

 

  九州大学 応用力学研究所

竹村 俊彦

  [平成17~19年度合計予算額] 4,273千円(うち、平成19年度予算額 2,000千円)

[要旨]

  本サブ課題では短寿命大気汚染物質であり温暖化に対して正の影響(加熱)を及ぼす対流圏オゾンとブラックカーボンエアロゾルに注目し、これらの物質の変動が実際にどのように気候を変化させるかについて評価を行う。このために、全球の化学過程と気候のシミュレーションが行える化学・気候モデルを用いて対流圏オゾンとブラックカーボンの変動が及ぼす気候影響について感度実験を行う。まず、平成17年度では過去から現在までの人為起源汚染物質の放出(エミッション)による対流圏オゾンの増加量を見積もるための実験を行った。さらに、このオゾン変動による放射強制力を計算し、IPCC第4次報告書に向けたプロジェクトの枠組みにおいて、他のモデル結果と比較し、整理した。また、CHASERにより計算されたオゾン分布変動はオゾンゾンデによる観測データとほぼ整合的であり、対流圏オゾン増加だけでなく、成層圏オゾン減少の効果も適切に表現できていることが確認された。18年度の研究では、産業革命以前から現在までの全球オゾン変動に対する気候感度実験を実施し、結果についての詳細な評価を行った。17年度の研究において化学・気候モデルCHASERによって計算されたオゾン変動分布をオフラインでCCSR/NIES/FRCGC気候モデルに与えて平衡応答実験を実行し、気候場(地表気温・降水)への応答を定量的に解析した。本平衡応答実験では、海洋混合層モデルを用いて行い、50年間の積分の上、最後の20年間分の結果を解析に使用した。その結果、1850-2000年の対流圏オゾン変動により、+0.3℃の気候応答(全球平均2m気温変化)が得られ、これはその他の温室効果気体(CO2 + CH4 + N2O + CFCs)の変動に対する応答 +2.2℃(本実験)の14%であり、対流圏オゾン変動が全球気候に対して無視できない影響を持つことが示された。このような対流圏オゾン増加の顕著な気温影響は地表のみならず、対流圏全体で確認された。また、対流圏オゾン増加により成層圏下部(低緯度域)で-1.0℃程度の強い降温(寒冷化)が生じることや、地表昇温に対しては、とくに北半球で特徴的な水平パターンを持つことなどが明らかにされた。19年度では、ブラックカーボン(BC)変動が及ぼす気候影響を明らかにする研究を実施した。本研究で計算されたBCの放射強制力は全球平均で0.5 Wm-2 であり、本研究で得られている対流圏オゾンによる放射強制力 0.49 Wm-2 に非常に近い値であった。BCによる地表気温上昇は約0.5℃であり、夏季の北米、欧州、そして特にアジア大陸中央で1℃以上の大きな昇温パターンが見られた。