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[キーワード] 海面上昇、波・流れ場、土地被覆、ゾーニング、マジュロ環礁

[B-15 環礁州島からなる島嶼国の持続可能な国土の維持に関する研究 ]

(3)環礁州島形成維持プロセスの統合モデルと変動予測、モニタリングに関する研究

2) 環礁州島の地形維持機構に関する研究[PDF](261KB)

  茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター 

横木 裕宗

<研究協力者>

 

  茨城大学 工学部都市システム工学科 

桑原 祐史

  茨城大学 大学院理工学研究科博士後期課程
  情報・システム科学専攻


佐藤 大作

  [平成15~19年度合計予算額] 15,097千円(うち、平成19年度予算額 3,500千円)

[要旨]

  環礁州島における気候変動・海面上昇に対する適応策を提案することを目的として、現地調査と数値計算、および空中写真・衛星画像解析により州島の地形維持機構の解明を行った。現地調査はマジュロ環礁とフォンガファレ島で行った。現地調査では、まず海岸付近の踏査を行い、海岸地形、底質、海岸植生、陸側の土地利用の状況を調査した。その結果、ラグーン側海岸では比較的砂浜が豊富に存在しているものの侵食傾向であること、また外洋側海岸は礫浜となっていることが分かった。侵食傾向にある海岸では海岸植生の根も侵食されていた。また、マジュロ環礁のローラ島の海岸で断面地形測量を行い(2006、2007年)、同じ測線でSOPACが実施した測量結果(1997、1998年)と比較した結果、ローラ島先端部において激しい侵食傾向が見られる以外は、大きな変化は見られなかった。これは、最近10年間に大きな暴浪が来襲しなかったためと考えられる。
  次に、ローラ島周辺、ロングアイランドのラグーン側海岸において流速場の定点観測を行った結果、ローラ島先端部付近では潮汐流が、それ以外の海岸では波浪による往復流が流れ場の主たる要因となっていることが明らかとなった。さらに、汎用的な波浪変形数値モデルを用いて、マジュロ環礁周辺の波浪場の計算を行い、汀線変化モデルと同様の仮定をおいてローラ島海岸の土砂変化量を算定したところ、断面地形測量の比較結果をほぼ再現することができた。また、海岸域での土地利用の変遷や海岸植生域の変化の海岸地形維持機構への影響を考察するために、フォンガファレ島およびマジュロ環礁において、地質調査図、空中写真、衛星画像を用いて最近20年間程度の海岸域の土地利用変遷と海岸植生分布について調査した。その結果、フォンガファレでは、海岸植生は州島の端部かつラグーン側海岸でより顕著に減少していたことが分かった。また、ローラ島で海岸植生分布と海岸地形変化傾向について比較したところ、明確な対応は見出せなかった。以上の知見をもとにローラ島において海岸の保護を主眼にした、土地被覆と海岸植生を考慮に入れたゾーニングマップを作成した。