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[キーワード] 環礁州島、地形、堆積物、有孔虫、完新世

[B-15 環礁州島からなる島嶼国の持続可能な国土の維持に関する研究 ]

(1)環礁州島の自然(地形-生態)プロセスに関する研究[PDF](2,255KB)

  東京大学大学院 理学系研究科
  地球惑星科学専攻


茅根 創

<研究協力者>

 

  琉球大学 理学部 物質地球科学科 

藤田 和彦

  東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻

安河内 貫・大澤 葉子

  [平成15~19年度合計予算額] 57,190千円(うち、平成19年度予算額 13,300千円)

[要旨]

  海面上昇に対する環礁州島地形の応答を考える上で、環礁州島の地形構成とその形成・維持機構はもっとも基本的な情報であるにも関わらず、これまでほとんど調べられていなかった。本研究では、環礁州島の地形と堆積物の構成、年代と形成・維持に関わる要因を、マジュロ環礁とフナフチ環礁における現地調査に基づいて明らかにした。その結果、環礁州島の地形は、海側からサンゴ礁礁原-ストームリッジ-中央凹地-ビーチリッジの順に配列することが明らかになった。ストームリッジと中央凹地の下部はサンゴ礫から、中央凹地の上部は無層理の粗粒-中粒砂層から、ビーチリッジと中央凹地の上部の一部は葉理の発達した中粒砂からなる。年代測定の結果は、中央凹地下部の礫層と無層理砂層は、海面低下に伴って2000年前に数10年以内に形成されたことを示す。人々の初期居住は、島の形成とほぼ同時であった。
  州島の構成物としては、有孔虫砂の寄与がもっとも大きい。マジュロ環礁の礁原に多い有孔虫はCalcarinaとAmphisteginaで、風上側に位置する外洋側礁原の低潮位線付近や州島間の水路に多く棲息する。生産量は、風上側かつ自然条件下の地域の外洋側礁原でもっとも多く、礁湖側や風下側、人為的影響下の礁原では少ない。さらに、有孔虫の棲息密度と州島の人口には負の相関が認められる。マジュロ環礁では、人口の増加や人間活動によって地下水の栄養塩濃度が高くなっており、栄養塩濃度の上昇が有孔虫へ直接的・間接的影響を与えることで、有孔虫の棲息密度が減少したと推測される。マジュロ環礁全体では人為影響以前には、年間15000m3の有孔虫砂生産ポテンシャルがあり、そのわずか3%が沿岸漂砂によって運搬・堆積して島の地形が維持されていたと推定される。しかしながら現在は、生産ポテンシャルが大幅に減少してしまった。