課題名

E―3 荒廃熱帯林のランドスケープレベルでのリハビリテーションに関する研究

課題代表者名

小林繁男(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授)

研究期間

平成14−16年度

合計予算額

122,670千円(うち16年度 38,736千円)

研究体制

(1)択伐跡地、二次林、荒廃潅木林など荒廃林地の修復技術の開発と種多様性の評価に関する研究

 ―ど技術の開発と生物多様性の評価(独立行政法人森林総合研究所)

 択伐跡地の森林水利機能の評価(独立行政法人国際農林水産業研究センター)

(2)プランテーションや荒廃草地などのナチュラルフォレストコリドー導入に関する立地管理方法の開発に関する研究

 .淵船絅薀襯侫レストコリドーの樹種選択、設置と成長解析(独立行政法人森林総合研究所)

 荒廃地における造林技術の開発(東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林)

 B深種を用いたランドスケープレベルにおけるプランニング(蟒四林業・筑波研究所)

(3)森林修復管理オプションの社会経済的適応可能性の評価と住民参加による土地資源管理プログラムに関する研究

 ー匆餬从囘適応可能性の評価(独立行政法人森林総合研究所)

 ⊇嗣瓜臆辰砲茲訶效六餮惨浜プログラム構築(独立行政法人森林総合研究所)

(4)地域の環境保全のための修復技術の統合に関する研究

 ’帯林修復技術のネットワークおよびデータベース構築(独立行政法人森林総合研究所、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

 ⊇ど技術の統合と土地資源管理オプション(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

  熱帯生態系修復技術のネットワーク化に関する研究(独立行政法人国立環境研究所)

研究概要

1.序(研究背景等)

 地球環境問題としての熱帯林の減少に関する社会経済・研究のニーズは地球温暖化防止対策・持続可能な森林管理・生物多様性保全・砂漠化防止・木材認証制度等国際的なものであり、COP6(京都議定書)、モントリオールプロセス(基準指標)やITTO2000(持続的森林管理)などで協議されている通り、一連の国際条約等と密接に関連している。熱帯林のもつ温暖化緩和や生物多様性維持など森林諸機能の健全なる発揮が重要とされていて、持続的な熱帯林の管理については国連森林フォ
ーラム(UNFF)では基準指標を設定し、それに対するモニタリング・アセスメント・リポーティングという方針を検討している。しかし、熱帯林の減少・劣化が地球環境に与える多大な影響についての協議は進んでいるものの、荒廃した熱帯林の修復自体の検討はされていない。

2.研究目的

 荒廃した熱帯林や断片化している森林域を修復するには、これらの生態系のランドスケープレベルでの修復技術の開発が必要である。このための研究として‖鯣伽彙蓮二次林、荒廃潅木林など荒廃林地の修復技術の開発と種多様性の評価、▲薀弌璽廛薀鵐董璽轡腑鵑篆夕蠅瞭った荒廃地の修復と二次林樹木特性の解明、0貔徳畧樹人工林へのナチュラルフォレストコリドー導入による触媒効果の評価と立地管理方法の開発を行う。またた肯喀ど管理オプションの社会経済的適応可能性の評価と地域住民参加によるランドスケープレベルでの土地資源管理計画策定に関する研究をおこなうとともに、ジ渋犬垢襯優奪肇錙璽情報の交換やプロジェクトの総合化を行うためにデータベースと国際ネットワーク構築を行い、地域の環境保全のための修復技術を統合し、目的を達成する。
 さらに、国連森林フォーラム(UNFF)では、持続的な熱帯林の管理について、次期の検討課題として荒廃地の修復を挙げている。国際熱帯木材機関(ITTO)は、荒廃した二次林の修復ガイドラインの検討に来年から入る。IPCCは土地利用変化についてのリポートをまとめている。
 これら国際的な協議、研究協力にとって本研究で行う熱帯林生態系のランドスケープレベルでの修復技術の開発・統合は重要な貢献となる。

3.研究の内容・成果

(1)択伐跡地、二次林、荒廃潅木林など荒廃林地の修復技術の開発と種多様性の評価
 ―ど技術の開発と生物多様性の評価(独立行政法人森林総合研究所)
 昨年度は、強光に強い典型的な先駆性樹種と思われるマカランガでさえ、実生の葉は強光に対して比較的弱く、実生から稚樹のステージまで成長が進むためには窒素の貯蔵や水分吸収能力の増加が必要であり、このことが実生の生死や、成長の大きな制限要因になっていることを明らかにした。したがって、成木が存在する場合は、実生よりも萌芽シュートを利用して、より遷移を積極的に促進させることが重要であることがわかった。
 16年度は、荒廃林の生物多様性評価のためにカミキリムシ相の調査と同定を東カリマンタン、スブルー実験林で行った。この研究でカミキリムシのアルトカルプストラップなどの採集方法が確立され、またインベントリーのための標本と文献が整備された。結果として、カミキリムシは種数、個体数が多様性評価に適度な数で、生物多様性の評価に使いやすいこと、天然林、荒廃林それぞれを指標する種が存在することを明らかにした。荒廃した森林を対象に、樹木の動態と生理特性を解明し荒廃林地修復技術を開発すること、および森林回復過程での生物多様性を甲虫相から評価することを目的とした。荒廃熱帯林を修復には、遷移初期の先駆性樹種を利用する事が重要である。典型的な先駆性樹種であるマカランガの、実生、稚樹、萌芽シュート、成木といった各発達ステージでの光合成や蒸散、窒素利用特性を野外で調べた。成長ステージとともに、窒素資源が体内に蓄積し、窒素利用様式も変化し、稚樹を暗から明条件に移すと、蒸散要求が高まるにも関わらず、どの樹種でも根の通水性が低下した。特に先駆性樹種で根の通水性の低下が大きく、代わりに根を大きく成長させていた。これらの結果から、環境変化に伴う根の増大が、実生の成長や生残の制限要因になっていることがわかった。先駆性樹種は大きな林冠ギャップに適応的であるが、ギャップが再閉鎖しやすい小ギャップでは大きな可塑性がかえって不利になると考えられた。半島マレーシアのパソー保護林で皆伐跡地の二次林の現存量回復を調べたところ、1973-2002年の29年間で未だ48%程度の回復であった。元の現存量に回復するにはさらに40年以上の年月が必要である。荒廃林の生物多様性評価のためにカミキリムシ相の調査と同定を行った。この調査ではアルトカルプス・トラップなどのカミキリムシの採集方法が確立され、またインベントリーのための標本と文献が整備された。結果として、カミキリムシは種数、個体数が多様性評価にとり適度な数で、生物多様性の評価に使いやすいこと、天然林、荒廃林それぞれを指標する種が存在することが明らかになった。基礎的な資料も必要なため、東カリマンタンに生息しているカミキリムシ同定のために必要な文献目録を作成した。

 択伐跡地の森林水利機能の評価(独立行政法人国際農林水産業研究センター)
 熱帯林の伐採跡地および天然林の森林水利機能の評価することを目的としている。昨年度は、ブキタレ水文試験地(セランゴーゴール州、マレーシア)において水文観測を実施した。また、パソ森林保護林内(ネグリセンベラン州、マレーシア)において表層土壌水分を測定し、平面分布を明らかにした。
 ブキタレ水文試験地の水文観測データを用いて、流域からの蒸発散量の推定、作設された林道における降雨遮断の影響、およびかく乱による河道のバッファーゾーンにおける樹木構成の変化について研究した。3年間の移動水収支法によって求めた年間蒸発散量は、1,243mm〜1,605mm(平均値:1,425mm)であった。表層土壌水分を考慮した短期水収支法によって得られた推定日蒸発散量は、2.7〜4.9mmd-1(平均値:3.8mmd-1)であった。また、伐採跡地の林道の路肩にはシダが進入するが、この群落直下の降雨遮断率は高く(降雨量の79.2%)、また雨水が集まりやすい群落端では高い値(降雨量の134.0%)を示すことを観測の結果明らかにした。さらに、河畔林バッファーゾーンを対象に樹種構成とバイオマスを調べた結果、かく乱を受けていないC1流域のバッファーゾーンでは、40種114樹種、342t ha-1、また、かく乱を受けたC3流域での河畔林緩衝帯では、30科91種、211t ha-1であり、かく乱を受けた河畔林バッファーゾーンで樹種構成が劣り、バイオマスも少ないことを明らかにした。一方、パソ森林保護林内の6haプロットにおいて、38ヶ所で土層深を測定した結果、14ヶ所で6mを超える深さだった。パソ森林保護林周辺は半島内で年間降水量がもっとも少ない地域に位置するが、気象観測から推定できる年間蒸発散量は降水量を上回る年があった。このような水環境下で森林が維持されている理由は、深い土層によって雨水が長期間貯留されているためと考えられる。
 パソ森林保護林(PAFR)およびブキタレ水文試験地(BTEW)を対象に、水文・気象観測に基づいて、次のことを明らかにした。1)PAFR内50haプロットにおける表層土壌水分の空間分布は、地形を反映していた。2)PAFR内6haプロットにおいて38ヶ所で土層深を測定した結果、14ヶ所で6mを超える深さであった。この結果は、降水量が少ないこの地域で、深い土層が雨水を一時的に土層中に貯留する役割を果たしていることを示唆する。3)移動水収支法によって求めた年間蒸発散量は、1,243mmから1,605mm(平均値:1,425mm,標準偏差:70.8)であった。年蒸発散量を水収支式から推定する時、湿潤熱帯地域においても貯留量が一定でなく、水収支開始時間に注意が必要であることが示された。4)BTEWにおける低水時の水流出特性は、地質に依存し、日本の堆積岩を基岩とする流域と同様であった。また、堆積岩を基岩とする流域は花崗岩を基岩とする流域より水源かん養機能が劣ることが示唆された。5)河畔林緩衝帯が撹乱されると、樹木構成の多様性と地上バイオマスが減少することが示された。6)森林伐採による河川の土砂および有機物量について、河畔林緩衝帯を撹乱した渓流が他の撹乱しない渓流に比べて極端に大きい値を示した。7)作設後3年の林道において、シダ被覆が、作設後41年の林道では、ラタンやブルタンなどの植生および大径木(DBH≧20cm)が遮断に影響を及ぼしていることが示された。

(2)プランテーションや荒廃草地などのナチュラルフォレストコリドー導入に関する立地管理方法の開発
 .淵船絅薀襯侫レストコリドーの樹種選択、設置と成長解析(独立行政法人森林総合研究所)
 昨年度は、植栽直後の乾燥枯死を防ぐためのハードニング試験結果、処理で吸水能力が若干高まるが一部に効果の現れない樹種があることを明らかにした。 しおれにくさの指標である飽水時の浸透ポテンシャルのスクリーニングを、今年度も樹種を追加して行った結果、熱帯樹種は温帯性樹種とくらべて吸水能力が低く、裸地植栽には不向きであることを改めて明らかにした。
 さらに、触媒効果を期待して種子もしくは果実が鳥や小動物の食用となる熱帯樹種を用いて、マレーシア・プトラ大学(UPM)の演習林にナチュラルフォレストコリドーの試験地を設定した。光合成能力など生理的特性により9樹種を樹種選択し植栽し、これらの成長経過と生理的反応の追跡を行った。植栽後3ヶ月において枯死個体は無かったが、クロロフィルの蛍光反応診断から植栽木に慢性的な光阻害が生じており、特に、Bouea macrophylleおよびCynometra caulifloraで顕著であることが明らかになった。
 一方、マレーシア森林研究所(FRIM)のBukit Tarek森林水文試験地において、試験的伐採がされた流域で、伐採前後の土壌表層土の浸食・堆積量や表層土における理化学性の変化を調べた結果、伐採時に河道沿いに残したバッファーゾーンの森林下における土壌浸食、移動量は地形、土壌条件によって異なったが、バッファーゾーンが表層土の物理性改善に効果があることを明らかにした。また、深さ5cmまでの表層土の交換性塩基など養分量は伐採前後であまり変化していないことが明らかになった。植栽樹種の選定をするにあたり、樹木がもつ生理生態特性として光合成速度、水利用効率、保水性、強光への耐性という視点から調べた。またコリドーの目的は、植栽した木に動物や鳥が集まり、植生の遷移を促進させるという「触媒効果」を期待するため、動物や鳥が好む果実をつける樹種を主に選定し、実際に荒廃地に植栽をおこない、植栽木の生理生態特性をモニタリングした。その結果、植栽後の生長は、植栽前におこなった生理特性のスクリーニングの結果から予測された結果とほぼ一致した。また今回の実験から、生理生態特性だけではなく、樹種のもつフェノロジーも生長や生存に影響したと考えられた。
 森林伐採は林道や集材路の開設により地表が激しく攪乱され表土の移動や流亡を引き起こし、流域の土壌を荒廃させる場合がある。この研究では、マレーシア森林研究所Bukit Tarek森林水文試験地で試験伐採された流域を試験地として伐採による土壌の荒廃を表層土の侵食、堆積量や表層土における理化学性の経年変化から検討した。その結果、保護樹帯内における侵食・堆積量は斜面傾斜にある程度支配されるが、土砂の給源となる集材路や伐採地に連結しているガリーにおいて堆積量は最大となった。また、集材路に隣接していても下層植生が繁茂している場所ではほとんど侵食・堆積が生じないこと、倒木は土砂をトラップする機能がかなり高いことが明らかになった。また、保護樹帯の効果は表層土壌の物理性にも及んでいることが明らかになった。伐採前後における表土の養分環境の比較から表土の荒廃が起こるのは伐採や林道開設により表土が削剥された場所に限られ、表土が攪乱されなかった場所の表土は荒廃していないことがわかった。
 
 荒廃地における造林技術の開発(東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林)
 熱帯荒廃地を対象とし、造林技術の開発に関する実験室での基礎研究とタイ国ナラチワ県でのフィールド研究を行った。その結果、1)育苗ポットを大きくすると、フタバガキ科樹木の苗木を砂質土壌に植栽した場合に活着率が高まること、2)光硬化処理をすると、フタバガキ科樹木の苗木を砂質土壌に植栽した場合に活着率が高まる種があること、3)砂質土壌、強酸性土壌で植物成育の阻害要因となっているリン酸欠乏について、熱帯荒廃地造林に用いられるマメ科樹木4種を用いてリン酸欠乏耐性機構を調べたところ、どの種もリン酸欠乏に応答してリン酸トランスポーター遺伝子の発現が高まったこと、4)強酸性土壌での植物成育の阻害要因となっているアルミニウム過剰について、アルミニウム耐性の異なるフトモモ科樹木3種を用いて耐性機構を調べたところ、アルミニウム結合性物質の分泌によるアルミニウム取り込み抑制以外の耐性機構の存在が示唆されたこと、5)アルミニウム耐性種Melaleuca cajuputiについて、根端でのアルミニウムとの強い結合を抑制する耐性機構の存在が示唆されたこと、6)泥炭土壌での植物成育の阻害要因となっている根の低酸素ストレスについて、M.cajuputiを用いて光合成と糖代謝系の応答を調べたところ、M.cajuputiは、根の低酸素ストレスにより一時的に光合成速度が低下するが、比較的短期間で光合成速度が回復し、根への光合成産物の転流が増加したこと、7) 潅水耐性種M.cajuputiは、根圏の酸素濃度が低下してもすぐには根のスクロース分解酵素の活性が低下せず、根への糖の転流が阻害されないことが明らかになった。
 1)育苗ポットを大きくすると、フタバガキ科樹木の苗木を砂質土壌に植栽した場合に活着率が高まること、2)光硬化処理をすると、フタバガキ科樹木の苗木を砂質土壌に植栽した場合に活着率が高まる種があること、3)砂質土壌、強酸性土壌で植物成育の阻害要因となっているリン酸欠乏について、熱帯荒廃地造林に用いられるマメ科樹木を用いてリン酸欠乏耐性機構を調べたところ、どの種もリン酸欠乏に応答してリン酸トランスポーター遺伝子の発現が高まったこと、4)強酸性土壌での植物成育の阻害要因となっているアルミニウム過剰について、アルミニウム耐性の異なるフトモモ科樹木3種を用いて耐性機構を調べたところ、アルミニウム結合性物質の分泌によるアルミニウム取り込み抑制以外の耐性機構の存在が示唆されたこと、5)アルミニウム耐性種Melaleuca cajuputiについて、根端でのアルミニウムとの強い結合を抑制する耐性機構の存在が示唆されたこと、6)泥炭土壌での植物成育の阻害要因となっている根の低酸素ストレスについて、湛水耐性種M.cajuputiを用いて光合成と糖代謝系の応答を調べたところ、M.cajuputiは、根の低酸素ストレスにより一時的に光合成速度が低下するが、比較的短期間で光合成速度が回復し、根への光合成産物の転流が増加したこと、7)湛水耐性種M.cajuputiは、根圏の酸素濃度が低下してもすぐには根のスクロース分解酵素の活性が低下せず、根への糖の転流が阻害されないこと、8)高温が光合成と成長に与える影響をAcacia属について比較したところ、高温による光合成の低下がない種や光合成の低下はあるが光阻害が生じない種があることが明らかになった。

 B深種を用いたランドスケープレベルにおけるプランニング(蟒四林業・筑波研究所)
 急激に荒廃する熱帯降雨林を再生し、且つ残存する天然林の保全することは、地球環境の維持、改善に貢献するものである。H15年度は、焼畑や森林火災により草原化あるいは脆弱な疎林と化した熱帯降雨林跡地において、多樹種を用いた植栽試験を実施し、その初期成長を明らかにするとともに、このような場所における森林造成の可能性を検証し、熱帯降雨林の回復を目的とした植林事業案の提示に資する成長データの収集を行った。
 研究に用いた6樹種は1998年にインドネシア共和国東カリマンタン州のスブル実験林に植栽されたものである。植栽後約5年生時に、各樹種につき3〜4本を伐倒し、各器官(葉、幹、枝、根)のバイオマス量を測定した。各器官のバイオマス量と胸高直径の2乗との相対成長関係をもとめることにより、林分全体のバイオマス量を推定した。その結果、郷土樹種であるShorea gratissimaDryobalanops lanceolata及びPeronema canescensの林分の地上部バイオマス量はそれぞれ、1.09 tDw
ha-1、1.10 tDw ha-1、7.44 tDw ha-1であった。外来樹種であるShorea roxburghiiTabebuia impetiginosaおよびcf.Albizia sp. の林分の地上部バイオマスはそれぞれ、9.06 tDw ha-1、29.91tDw ha-1、186.19 tDw ha-1であった。
 インドネシア共和国東カリマンタン州のスブル実験林に植栽された在来種3種、外来種3種について、植栽後約5年のバイオマス量を推定した。在来樹種であるS.gratissima、D.lanceolata及びP.canescensの林分の地上部バイオマス量はそれぞれ、1.09tDw ha-1、1.10tDw ha-1及び7.44tDw ha-1であった。外来樹種であるShorea roxburghii、Tabebuia impetiginosa及びEnterolobium cyclocarpumの林分の地上部バイオマスはそれぞれ、9.06tDw ha-1、29.91tDw ha-1及び186.19tDw ha-1であった。これらの値をスブル実験林内の二次林やアラン・アラン草地バイオマス調査データと比較すると、T.impetiginosaE.cyclocarpumを除き供試した樹種の5年間のバイオマス固定量は、実験林内の二次林より少なく、植栽間隔5mx4mのD.lanceolata及びS.gratissima林分における炭素固定量は、アラン・アラン草地に比べても低かった。一方、外来種である2x2mで植栽されたE.cyclocarpumの林分は非常に大きなバイオマスを示した。平成16年度の研究では、これら6樹種を用いた植林シミュレーションを行い、その事業の可能性を検討した。また、E.cyclocarpumのように成長が早く、且っそのバイオマスを利用できる樹種という観点から、当該地域の在来樹種の中から、比較的成長の早いと思われる3種(Octomeles sumatrana、Dillenia excelsa、Anthocephalus chinensis)についてその材質を調べ、合板加工試験を実施した。これら3種は合板心材への利用が可能であることを明らかにし、3種の中、インドネシアにおける林分成長データの入手できたA.chinensisを昨年度の研究に供試した6種に加えて植伐シミュレーションをした結果、植林事業の収益性は改善した。未利用樹種の探索とその造林技術の開発及び成長データの蓄積が当該地域において事業成立を促す鍵となりうることを示した、

(3)森林修復管理オプションの社会経済的適応可能性の評価と住民参加による土地資源管理プロ
グラムに関する研究
 ー匆餬从囘適応可能性の評価(独立行政法人森林総合研究所)
 荒廃熱帯林の植林による修復を考えていく際、この意義をいかにして普及し広めていくかと考えると、これまでに各国で行われてきた植林の奨励策において得られた経験や知見というものが非常に参考になると考えられる。そこで14年度よりタイとラオスを対象としてそれぞれ2つずつの計4つの奨励プロジェクトについて取りあげて比較・検討を開始した。方法としては、各プロジェクトの担当者及び参加者への聞き取り及び文献収集を行い、それぞれの特徴・問題点などについて社会経済的適応可能性の比較検討を行った。
 タイでは「キャッサバ転換早成樹植林プロジェクト」、「3,000バーツ補助植林プロジェクト」、ラオスでは「ADB(アジア開発銀行)短期融資早成樹植林プロジェクト」、「FORCAP(JICAラオス森林保全復旧計画フェーズ2)分収造林システム」を対象とした。これらの比較を行うことで、1)地域住民参加による造林の奨励策比較のための要件の整理、2)タイとラオスにおける地域住民によ
る造林活動における初期造林コストの把握、3)各造林奨励プロジェクトにおける公的負担の整理、を行うことが出来た。
 また、15年度においては土地利用と土地所有権利関係に関する項目の検討を開始した。このため、ラオスの北部山岳地域で取り組まれているチーク造林を対象として、この地域の土地利用図を作成した。これによって、チーク造林が、焼き畑移動耕作中心である対象地域の土地利用に与えた影響を明らかにした。
 地域住民の直接造林によるリハビリテーションの事例として、インドシナ半島に位置するタイとラオスを対象として、各2事業、計4つの造林奨励事業をとりあげ、比較・検討を行った。方法としては、各プロジェクトの担当者及び参加者への聞き取り及び文献収集を行ない、それぞれの特徴・問題点などについて社会経済的適応可能性について比較検討した。これらの比較を行なうことで、1)地域住民参加による造林の奨励策比較のための要件の整理、2)タイとラオスにおける地域住民による造林活動における初期労働・資本投入量の把握、3)各造林奨励プロジェクトにおける事業者負担の整理、を行なった。また15年度には、土地利用と土地所有の権利関係に関する項目の検討を開始し、ラオスの北部山岳地域で取り組まれているチーク造林をとりあげ、地域の土地利用図を作成し、長期間かけて木材としての価値が形成されるチーク造林が、継続的な利用を前提とする焼き畑移動耕作の広がる対象地域の土地利用に与えた影響を明らかにした。16年度はタイ王室林野局(RFD)や林業公社(FIO)により1970年代頃からそれぞれ試みられている森林村事業を中心としたリハビリテーション事業、ラオスにおける企業による造林事業をとりあげ、主に労働力としての住民の事業への参加及びその推移についてみた。FIO森林村事業では、周囲の村落に与える影響は限定的であったが、直接的な事業対象の森林村の住民には雇用創出と修正タウンヤ法を用いた耕作地提供、社会インフラ整備による生活基盤安定の効果を与えていた。しかし、事業が休止された時期に森林村を離れた住民も見られ、造林予算の安定的な計上により雇用機会が安定的に提供されることが要件である。対象地ではチーク間伐からの収入が得られ、ゴム生産が軌道に乗るなど経営基盤が強化されつつあった。

 ⊇嗣瓜臆辰砲茲訶效六餮惨浜プログラム構築(独立行政法人森林総合研究所)
 地域住民の参加による持続的な森林保全を目指して、「森林リハビリプロジェクトサイトにおける参加型土地資源管理プログラム」の概念を整理し、プログラム構築のためのガイドラインを提示することを目標としている。14年度は、「住民参加」や「参加型森林管理」についての概念整理をおこない、主体的な森林管理・利用に取り組んでいるインドネシア東カリマンタン州西クタイ県の
B村の現状を調査した。
 15年度は、概念整理を継続し「リハビリサイト」における「住民参加」について検討するとともに、西クタイ県森林局が取り組む森林修復プログラムについて調査した。「住民参加」は多様であり、参加の位置づけが「手段」か「目的」という違いの他、参加の「程度」も単なる動員から住民が決定権を有するものまである。また、「住民」や「土地資源」、両者の関係そのものも多様である。参加型森林管理とは、様々な「森林管理活動」の「全てのプロセス」において地域住民が「主体的に参加」することであり、「決定権」は地域住民にあり、更にその最終目的は、地域住民が持続的に森林資源を管理できる能力の開発にあるといえる。
 インドネシア共和国東カリマンタン州西クタイ県内のB村における主体的な土地資源管理への取組では、造林活動は行われていないが、慣習保全林の設定および木材伐採企業との境界確定、「森林産物採取権(HPHH)」や「バンジルカップ(違法伐採)」による木材生産などが活発に取り組まれてきた。また同県の森林局による森林修復プログラムは、森林修復という国家政策の枠内で、運用の際に住民参加を積極的に取り入れた事例であり、住民の福祉向上を上位目標とし、住民を信頼する態度に特徴がある。
 地域住民の主体性を尊重する態度と、外部者により実施が決定されるリハビリプロジェクトとの整合性をとる一つの手法として、「社会単位」と「ランドスケープレベル」の概念を組み合わせるアプローチ(参加を得られた社会単位が管理・利用する土地でリハビリプロジェクトを始める)が考えられる。B村における主体的な土地資源管理への取組では、住民間での利益配分や運営における透明性の確保、土地所有権・利用権の確保、土地資源管理の持続可能性の確保、オーナーシップの確立・保証などが、また同県の森林局による森林修復プログラムは、実施主体の責任感の弱さ、住民や森林局職員の能力向上などが課題となっている。西クタイ県森林局による取り組みでは、現在、実施主体の責任感の弱さ、住民や森林局職員の能力向上などが課題となっている。
 「参加型土地資源管理プログラム」の概念を整理し、プログラム構築のための「ガイドライン」を提示することを目的とする。「住民参加」は多様であり、参加の位置づけが「手段」か「目的」という違いの他、参加の「程度」も動員から住民が決定権を有するレベルまである。「参加型開発」や「参加型森林管理」の要件として、地域住民の「主体的」な参加、「全てのプロセス」における参加、参加を「保証する制度」、「決定権」が地域住民にあること、地域住民の「キャパシティ・ビルディング」などが挙げられる、外部者により実施が決定されるリハビリプロジェクトにおいては、住民参加レベルは限定されるが、「社会単位」と「ランドスケープレベル」を組み合わせて、参加を得られた社会単位が管理・利用する土地でリハビリプロジェクトを始めるアプローチが有効である。「参加型土地資源管理プログラム」の具体的内容は、プロジェクト目的や地域によって異なるが、住民参加の位置づけ、土地資源管理計画、住民参加の誘因、住民組織の在り方、住民のプロジェクトへのオーナーシップの確立、住民のキャパシティ・ビルディング、参加住民とプロジェクト推進者側との関係、ファシリテーターや行政などの外部アクターの役割などが要件と言える。「参加型土地資源管理プログラム」のプログラム構築手順は、現状調査段階、参加住民とプロジェクト推進者との間で認識を共有する準備段階、計画段階、実行段階、評価段階という一連のプロセスからなり、これを繰り返す中で改良が続けられる。プログラム作成時における主要な留意点・重要事項としては、参加へのアプローチ方法、プロジェクト推進者に求められる「行動様式と態度」、参加の持続性確保の道筋、キャパシティ・ビルディング、外部アクターの役割などが整理された。

(4)地域の環境保全のための修復技術の統合
 ’帯林修復技術のネットワークおよびデータベース構築に関する研究(京都大学大学院アジ
  ア・アフリカ地域研究研究科、独立行政法人森林総合研究所)
 熱帯生態系修復技術のネットワーク化に関する研究(独立行政法人国立環境研究所)
 荒廃した熱帯林を修復する意義についての人々の意識と地域の人々がその地域及び熱帯地域の森林をどのようにとらえているかを明らかにするために、アンケート調査を平成14年度は日本で行いデータを収集した。平成15年度においては、タイ、インドネシアでアンケート調査を行った。その結果、日本人の森林に対する感じ方・とらえ方として、森林は自らの生活圏外の遠くにあるもの(高校生)、自らの生活圏内にあるが自分とは距離があるもの(科学園、父兄、環境省)、自らの生活圏が森林の中にあるもの(信州大)という考え方が明らかになり、回答者の居住地と森林との距離感による差があることが明らかになった。
 一方、タイでは、日本と同様、居住域と職種によって、森林に対する距離感が生じている結果であったが、どちらも、森林の存在は重要だと回答していたが、日本とタイとでは森林に期待する内容について回答が異なった。日本人は森林に、「二酸化炭素の吸収(炭素固定)」、「環境維持機能」を期待する回答が高いが、タイでは、「季節的な一定量の降雨をもたらす機能」、「水源涵養及び洪水防止機能」、「食糧、林産物、労働を得る場」を期待する回答が高かった。また、インドネシアでも、タイと同様に、「水源涵養及び洪水防止機能(地滑りの防止)」、「食糧、林産物、労働を得る場」の回答率が高かった。荒廃した森林を修復することについては、日本、タイ、インドネシア全ての調査で「賛成」の回答率が80%を越え概ね賛同していると考えられる。
 修復技術の統合では各サブテーマの成果をパラメータとし、3つのコントロールファクターを用いて、コンパートメントモデルのドラフトを構築した。
 研究の普及・広報については、ホームページ(日本語版・英語版)を森林総合研究所内サーバに構築し、情報発信・情報収集を行った。平成14年度では森林・熱帯林に関する知識の普及・啓蒙のため日本、タイ、及びマレーシア各地で8回の講演を行い、既存の研究成果や荒廃地の修復、世界・日本の森林の現況を紹介した。
 平成15年1月18〜19日の間、国際ワークショップを森林総合研究所で行い、タイ、マレーシア、インドネシアから合計10名の海外研究者を招聘し、現況報告・討議を行った。また、当ワークショップのプロシーディングスをとりまとめ平成15年9月に発行した。平成15年度は、国際ワークショップをタイ(Kasetsart大学)、マレーシア(Putra Malaysia大学)、インドネシア(科学技術庁)、インド(ケララ森林研究研究所)から9名の海外研究者を招聘し、平成16年3月2日〜3日の間行った。タイ、インドネシアでアンケート調査を行った。平成16年度はタイで大・中・小都市で調査を実行した。その結果、タイ人と日本人の森林に対する感じ方・とらえ方として、それぞれの国による違いと地方と都市とのちがい、あるいは都市共通のいしきなどが明らかになった。インタービューし
た回答者の居住地と森林との距離間により考え方に差があることが明らかになった、それはタイと日本では共通していた。一方、タイでは、日本と同様、居住域と職種によって、森林に対する距離感が生じている結果であった。都会に住むタイ人と日本人は森林に、「二酸化炭素の吸収(炭素固定)」、「環境維持機能」を期待する回答が高いが、地方住むタイ人と日本人はその程度の差はあるが、「季節的な一定量の降雨をもたらす機能」、「水源涵養及び洪水防止機能」、「食糧、林産物、労働を得る場」を期待する回答が高かった。また、インドネシアでも、タイと同様に、「水源涵養及び洪水防止機能(地滑りの防止)」、「食糧、林産物、労働を得る場」の回答率が高かった。荒廃した森林を修復することについては、日本、タイ、インドネシアの地方・都市を含めて全ての調査で「賛成」の回答率が80%を越え概ね賛同していると考えられる。 修復技術の統合では各サブテーマの成果を大別して技術修復パラメータと社会経済パラメータの2つとし、3つのコントロールファクター(ランドスケープレベル、トレードオフ、サイクリックターム)を用いて、コンパートメントモデルを構築し、モデルの運転を行った。結果は30万以上の応答選択からコントロールファクターをいれ3つのオプションを選択した。現地への適応が待たれる。
 研究の普及・広報については、ホームページ(日本語版・英語版)を森林総合研究所内サーバに構築し、情報発信・情報収集を行った。平成16年度までの森林・熱帯林に関する知識の普及・啓蒙のための既存の研究成果や荒廃地の修復、世界・日本の森林の現況を紹介した。
 平成14、15、16年の計3回の国際ワークショップを森林総合研究所で行い、タイ(Kasetsart大学)、マレーシア(Putra Malaysia大学)、インドネシア(林業省及び科学技術庁)、インドから海外研究者を招聘し、現況報告・討議を行った。また、当ワークショップのプロシーディングスをとりまとめ2刊が発行済みである。

4.考察

 プロジェクト最終年度に入り、全般に研究は年度計画とプロジェクト計画に従って進捗した。
 (1)択伐跡地、二次林、荒廃潅木林など荒廃林地の修復技術の開発と種多様性の評価
 ―ど技術の開発と生物多様性の評価(独立行政法人森林総合研究所)
 劣化した森林の修復には二次遷移過程を明らかにしなければならない。H14年度は、実生から稚樹、稚樹から成木への成長の間で、生理的変化があり、樹木の発達段階において、成長優先から被食防衛優先へと、樹木特性が変化することを明らかにした。
 H15年度は、種多様性評価により熱帯林の荒廃度評価手法を開発した。すなわち、カミキリムシ相の調査方法として、アルトカルプストラップによる採集方法を確立し、インベントリーのための標本と文献を整備した。この成果により、カミキリムシの種数、個体数によって天然林、荒廃林それぞれを評価できると考えられる。
 Hl6年度は異なる森林帯における二次遷移過程を明らかにするとともに二次遷移のファシリテータとしての樹種の確定、後退遷移としてのコンペティターの樹種が明らかにされ、修復の立地評価が可能になったと思われる。さらにこれらの樹種の生理生態も明らかにされた。最も重要な修復の効果を評価するため、カミキリムシによる基準指標が設定されたことは今後の修復技術的用のためには大きな成果であったと考える。

 択伐跡地の森林水利機能の評価(独立行政法人国際農林水産業研究センター)
 熱帯林の伐採跡地および天然林の森林水利機能の評価することを目的として、H14年度は低地熱帯林流域において水文観測を実施し、またパソ森林保護林内(ネグリセンベラン州、マレーシア)において表層土壌水分の平面分布を明らかにした。
 H15年度は、ブキタレ水文試験地の伐採処理区において、伐採跡地の林道の路肩に侵入するシダ群落の降雨遮断率や林道への雨水供給量を明らかにした。これらの成果は河畔林バッファーゾーンの有用性や植皮による雨水流出パターン変化を示す基礎知見であると考える。
 さらに、低地熱帯林であるパソ森林保護林は、蒸・発散量の割に降雨による水供給は多くないことをこれまでに明らかにしているが、H15年度は土層深を測定し、雨水の貯留量を考慮に加えてこの現象を検討した。その結果、降水量よりも年間蒸発散量のほうが多い年があっても、深い土層によって多量の水が長期間貯留されていることで説明がつくことを明らかにした。このことは、低地熱帯林の脆弱性のひとつを明らかにしたと考えられ、この成果の意義は深いと思われる。
 H16年度は森林伐採インパクトの軽減方法を検討し、土壌の侵食の程度により軽減方法を評価した。これは最終的にガイドラインにまとめることが出来ると思われる。

(2)プランテーションや荒廃草地などのナチュラルフォレストコリドー導入に関する立地管理方
法の開発に関する研究
 .淵船絅薀襯侫レストコリドーの樹種選択、設置と成長解析(独立行政法人森林総合研究所)
 極限的な荒廃地における森林修復を行うために、H14年度は植林の際の初期生存率を高めるためのハードニングの効果を検討した。H15年度は、しおれにくさの指標である飽水時の浸透ポテンシャルのスクリーニングを多くの樹種を用いて行った結果、熱帯樹種は吸水能力が低く裸地植栽には不向きであることを改めて明らかにした。
 さらに、触媒効果を期待して種子もしくは果実が鳥や小動物の食用となる熱帯樹種を用いたナチュラルフォレストコリドーの試験地を設定し、新たに測定した生理的特性により植栽樹種の選択を行い、成長経過と生理的反応の追跡を行った。このような実証的な研究によって、より良い熱帯林再生の手法が開発されるものと考える。
 一方、試験的伐採がされた流域で、伐採前後の表層土(深さ5cmまで)の交換性塩基など養分量はあまり変化していないことを明らかにしたが、今後のさらなるデータ蓄積が望まれる。コリドー設置は動物や鳥類のための果樹がなる植物の植栽だけでなく、動物の働きや植栽木によ
る環境緩和作用などから植栽による触媒効果が期待できることが推察された。

 荒廃地における造林技術の開発(東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林)
 育苗ポットを大きくすると活着率が高まること、リン酸欠乏耐性機構・アルミニウム過剰害回避機構・根の低酸素ストレス回避機構、などが明らかになり、極限的な熱帯荒廃地の造林技術の開発の基礎的知見が集積していると考えられる。さらに、光硬化処理によりフタバガキ科樹木が砂質土壌に植栽が可能であること、湛水耐性樹種の検討、高温下で光合成が低下しにくい樹種など検討した結果、荒廃地あるいは生育条件の厳しい場所においても複数の樹種の混植により森林の再生が可能であることが推察された。

 B深種を用いたランドスケープレベルにおけるプランニング(蟒四林業・筑波研究所)
 焼畑や森林火災により草原化あるいは脆弱な疎林と化した熱帯林跡地において、多樹種を用いた植栽試験によりその初期成長を明らかにし、地上部バイオマス量を推定したことは、多樹種を用いたランドスケープレベルにおける熱帯林修復プランニングの策定の基礎を築いたと考えられる。このプランニングにおいて未利用樹種の利用化が植林事業において重要であると推察され、この点を含めて、植伐シミュレーションモデルから荒廃地修復のための植林事業の収益性を改善できると考えられた。

(3)森林修復管理オプションの社会経済的適応可能性の評価と住民参加による土地資源管理プロ
グラムに関する研究
 ー匆餬从囘適応可能性の評価(独立行政法人森林総合研究所)
 14年度よりタイとラオスを対象としてそれぞれ2つずつの計4つの奨励プロジェクトについて取りあげ、社会経済的適応可能性の比較・検討を開始しH15年度も継続した。その結果、地域住民参加による造林の奨励策比較のための要件の整理、地域住民による造林活動における初期造林コストの把握、および各造林奨励プロジェクトにおける公的負担の整理が行われ、森林修復に関する貴重な社会経済的知見を深めることができたと考える。
 ラオスにおける企業による造林事業をとりあげ、主に労働力としての住民の事業への参加及びその推移について検討した。森林村事業では、周囲の村落に与える影響は限定的であったが、直接的な事業対象の森林村の住民には雇用創出と修正タウンヤ法を用いた耕作地提供、社会インフラ整備による生活基盤安定の効果を与えていたと推察した。

 ⊇嗣瓜臆辰砲茲訶效六餮惨浜プログラム構築(独立行政法人森林総合研究所)
 14年度は、「住民参加」や「参加型森林管理」についての概念整理を行い実例の調査を行った。15年度は、概念整理を継続し「リハビリサイト」における「住民参加」について検討するとともに、現地で取組んでいる森林修復プログラムについて調査し、実情や問題点を明らかにした。その結果、地域住民の参加による持続的な森林保全を目指して、「森林リハビリプロジェクトサイトにおける参加型土地資源管理プログラム」の概念を整理し、プログラム構築のためのガイドラインの提示のための準備が進んだと考える。
 「参加型土地資源管理プログラム」の具体的内容は、プロジェクト目的や地域によって異なるが、住民参加の位置づけ、土地資源管理計画、住民参加の誘因、住民組織の在り方、住民のプロジェクトへのオーナーシップの確立、住民のキャパシティ・ビルディング、参加住民とプロジェクト推進者側との関係、ファシリテーターや行政などの外部アクターの役割などが要件と考えた。「参加型土地資源管理プログラム」のプログラム構築手順は、現状調査段階、参加住民とプロジェクト推進者との間で認識を共有する準備段階、計画段階、実行段階、評価段階という一連のプロセスからなり、これを繰り返すことで改良が続けられると考察した。

(4)地域の環境保全のための修復技術の統合に関する研究
 ’帯林修復技術のネットワークおよびデータベース構築(独立行政法人森林総合研究所、京都大
学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
 熱帯生態系修復技術のネットワーク化(独立行政法人国立環境研究所)
 アンケート調査を日本(H14年度)、タイ(H15年度)、およびインドネシア(H15年度)で行い荒廃した熱帯林を修復する意義についての人々の意識と地域の人々がその地域及び熱帯地域の森林をどのようにとらえているかを明らかにした。さらに、H15年度は、修復技術の統合では各サブテーマの成果をパラメータとし3つのコントロールファクターを用いてコンパートメントモデルのドラフ
トを構築し、ホームページ(日本語版・英語版)を用いて情報発信・情報収集を行った。また、前年度同様に15年度も国際ワークショップを開催した。これらの活動の結果、熱帯林修復技術のネットワークおよびデータベース構築を進展させたと考える。
 16年度はプロジェクト最終年度であるため、森林観を修復のためのコンパートメントモデルに組み入れるため、タイと日本で都会と地方に住む人々の森林観について調査を行った。タイと日本で都市に住む人々は森林に対して環境保全あるいは環境に森林が寄与しているという共通の認識が認められ、これはグローバル化の影響と考える。さらに、修復コンパートメントモデルをタイ・トンパープン・メクロン流域に対して適用し、荒廃林の修復のための応答選択のオプションを算定した。実際の応用にはさらに、新たなプロジェクトを立ち上げて結果を導かねばならない。特に地方行政に応用できる応答選択のオプションを考える必要がある。平成14年から本プロジェクトのホームページ(和英)を更新しながら、研究成果や写真等の情報発信を行った。国内外からのアクセスが相当数に上ったことは荒廃林の修復の意義と技術開発にとって、有効な普及手段であったと考える。本課題ではプロジェクト期間中に3回の国際ワークショップを主催し、先の2回に関してはプロシーディングスの刊行を行った。国内外の研究者同士の情報交換ならびにプロジェクト進捗にとって有意義であったと考える。

5.研究者略歴

課題代表者:小林繁男
        1949年生まれ、京都大学農学部林学科卒業、農学博士、独立行政法人森林総合研究所
        研究管理官を経て、現在、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、教授

主要参画研究者
(1) Э兄魁ヽ
    1955生まれ、弘前大学理学部卒業、北海道大学大学院環境科学研究科博士課程単位取得
    退学、学術博士、現在、独立行政法人 森林総合研究所 森林植生研究領域 群落動態研究室長

 ◆槇原 寛
    1947生まれ、鹿児島大学農学部卒業、九州大学大学院農学研究科修士課程中途退学、現
    在、独立行政法人 森林総合研究所 海外研究領域 荒廃熱帯林担当チーム長

 :石田 厚
    1961年生まれ、茨城大学理学部生物学科卒業、東京都立大学大学院理学研究科博士課程、
    理学博士、現在、独立行政法人 森林総合研究所 植物生態研究領域 樹木生理研究室長

 ぁ野口正二
    1965生まれ、東京農工大学林学部卒業、農学博士、独立行政法人 森林総合研究所 水
    流出研究室 主任研究員 現在、独立行政法人 国際農林水産業研究センター 林業部主任研究員

(2) Ь硝寨朮
    1953年生まれ、静岡大学農学部林学科卒業、東京大学大学院農学系研究科(林学専攻)
    博士課程修了、農学博士、独立行政法人 森林総合研究所 海外研究領域 海外森林資
    源保全研究室長、現在、独立行政法人 森林総合研究所 海外研究領域長
  ◆丹下 健
    1958年生まれ、東京大学農学部林学科卒業、東京大学大学院農学系研究科(林学専攻)博
    士課程中退、農学博士、現在、東京大学大学院 農学生命科学研究科、教授(附属演習林研究部長)
(3) Р弾 隆
    1947年生まれ、岩手大学農学部林学科卒業、農学博士、森林総合研究所 林業経営・政策
    研究領域長、現在、森林総合研究所 四国支所長
 ◆Ц轍板捷
    1974年生まれ、東京大学農学部林学科卒業、東京大学大学院 農学生命科学研究科(森林
    科学専攻)修士課程修了、農学修士、現在、森林総合研究所森林管理研究領域環境計画研究室
 :横田康裕
    1970年生まれ、東京大学農学部林学科卒業、東京大学大学院 農学生命科学研究科(森
    林科学専攻)博士課程中退、農学修士、現在、森林総合研究所 東北支所 森林資源管理研究グループ研究員
(4) Ь林繁男(同上)
 ◆П田敏統
    1956年生まれ、広島大学大学院博士過程終了、理学博士、現在、独立行政法人 国立環
    境研究所 生物圏環境研究領域、熱帯生態系保全研究室室長

6.成果発表状況(本研究課題に係わる論文発表状況。素読あり。)
(1) H. Makihara and W.A. Noerdjito :Bull. FFPRI, 1, 3, 189-223 (2002)
  "Longicorn beetles from Gunung Halimun National Park, West Java, Indonesia from 1997 -2002"
(2) N. Yamashita, N. Koike and A. Ishida: Plant Cell Env., 125, 412-419 (2002)
  "Leaf ontogenetic dependence of light acclimation in invasive and native subtropical trees of different successional status"
(3) R. Yoneda, I. Ninomiya, P. Patanaponpaiboon, and K. Ogino: TROPICS, 11, 125-134 (2002)
  "Carbohydrate Dynamics on Trees in Dry Evergreen Forest, Thailand I. Diel Fluctuation of Carbohydrates in a Whole Tree of Hydnocarpus ilicifolius"
(4) R. Yoneda, I. Ninomiya, P. Patanaponpaiboon, and K. Ogino: TROPICS, 11, 135-148 (2002)
  "Carbohydrate Dynamics on Trees in Dry Evergreen Forest, Thailand II. Modeling of Carbohydrate Dynamics in a Leaf of Hydnocarpus ilicifolius and Glycosmis parva"
(5) 野口正二:TROPICS, 11, 231-239 (2002)
  「半島マレーシア・熱帯雨林における自然のダムとしての機能」
(6) S. Noguchi, K. Baharuddin, Y. Zulkifli, Y. Tsuboyama and M. Tani : J. Trop. For. Sci., 15, 513-530 (2003)
  "Depth and physical properties of soil in forest and rubber plantation, Peninsular Malaysia"
(7) T. Kenzo, T. Ichie, T. Koike and I. Ninomiya: Photosynthetica, 41, 4, 551-557 (2003)
  "Photosynthetic activity in seed wings of Dipterocarpaceae in a masting year: Does wing photosynthesis contribute to reproduction?"
(8) Y. Hayashi, N. Ikeue, K. Tanoi, N. Nogawa, T. Tange, H. Yagi, K. Matsune, and T.M. Nakanishi: J. Radioanal. Nucl. Chem., 255, 115-118 (2003)
  "Element analysis and radioactivity measurement within a wood disk by neutron activity
analysis"
(9) 斎藤哲也、井上真、横田康裕:国際開発研究, 12, 1, 99-113(2003)
  「地方分権化に伴う森林管理主体のダイナミズム〜インドネシア共和国東カリマンタン州西クタイ県を事例として〜」
(10) H. Makihara and W.A. Noerdjito : Bull. FFPRI, 3, 1, 49-98 (2004)
  "Longicorn beetles of Museum Zoologicum Bogoriense, identified by Dr. E. F. Gilmour, 1963
(Coleoptera: Disteniidae and Cerambycidae)"
(11) S. Noguchi, N. Abdul Rahim, S. Siti Aisha, M. Tani, and T. Sammori: 水文水資源学会誌、
17, 482-492 (2004)
  " Evapotranspiration estimates of tropical rain forest, Bukit Tarek Experimental
Watershed in Peninsular Malaysia, using the short-time period water-budget method"
(12) T. Kenzo, T. Ichie, R. Yoneda, Y. Kitahashi, Y. Watanabe, I. Ninomiya, and T. Koike: Tree
Physiol., 24, 1187-1192 (2004)
  "Interspecific variation of photosynthesis and leaf characteristics in canopy trees of
five species of Dipterocarpaceae in a tropical rain forest"
(13) T. Ichie, T. Hiromi, R. Yoneda, K. Kamiya, M. Kohira, I. Ninomiya, and K. Ogino: J. Trop.
Ecol., 20, 697-700 (2004)
  " Short-term drought causes synchronous leaf shedding and flushing in a lowland
dipterocarp forest, Sarawak, Malaysia"
(14) K.O. Irino, Y. Iba, S. Ishizuka, T. Kenzo, S. Ripot, J. J. Kendawang, N. Miyashita, K.
Nara, T. Hogetsu, I. Ninomiya, K. Iwasaki and K. Sakurai: Soil Sci. Plant Nut., 50, 5,
747-753 (2004)
  "Effects of controlled-release fertilizer on growth and ectomycorrhizal colonization of
pot-grown seedlings of the dipterocarp Dryobalanops lanceolata in a tropical nursery."
(15) 小島克己:日本林学会誌、86,1, 61-68(2004)
  「熱帯樹木の環境ストレス応答」
(16) T. Hashimoto, T. Tange, M. Masumori, H. Yagi, S. Sasaki and K. Kojima: TROPICS, 14, 123-130
(2004)
  "Allometric equations for pioneer tree species and estimation of the aboveground biomass
of a tropical secondary forest in East Kalimantan"
(17) S. Kobayashi: For. Ecol. Manage., 201, 13-22 (2004)
  "Landscape rehabilitation of degraded tropical forest ecosystems - Case study of
CIFOR/Japan project in Indonesia and Peru"
(18) A. Ishida, T. Toma and Marjenah: JARQ, 39, 57-67 (2005)
  "A comparison of in situ photosynthesis and chlorophyll fluorescence at the top canopies
in rainforest adult trees"
(19) T. Toma, A. Ishida and P. Matius: Nut. Cycl. Agroeco., 71, 63-72 (2005)
  "Long-term monitering of post-fire aboveground biomass recovery in a lowland dipterocarp
forest in East Kalimantan"
(20) M. Shimizu, A. Ishida and T. Hogetsu: Oecologia, 143, 189-197 (2005)
  "Root hydraulic conductivity and whole-plant water balance in tropical saplings following
a shade-to-sun transfer"
(21) A. Ishida, K. Yazaki and L.H. Ang: Tree Physiol., 25, 513-522 (2005)
  "Ontogenetic transition of leaf physiology and anatomy from seedlings to mature trees
of a tropical pioneer tree, Macaranga gigantea"
(22) S. Noguchi, N. Abdul Rahim, and M. Tani: JARQ, 39, in press (2005)
  "Runoff characteristics in a tropical rain forest catchment"
(23) S. Kogawara,M.Norisada,T.Tange,H.Yagi and K.Kojima:Tree Physiol.,in press(2005)
  ”Elevated atmospheric C02 alters the effects of phosphate deficiency on carbon allocation
in pine (Pinus densiflora Sieb. & Zucc.)"
(24) K. Tahara, M. Norisada, T. Hogetsu and K. Kojima: J. For. Res., in press (2005)
  "Aluminum tolerance and aluminum-induced deposition of callose and lignin in the root
tips of Melaleuca and Eucalyptus species"
(25) K. Tahara, M. Norisada, T. Tange, H. Yagi and K. Kojima: Soil Sci. Plant Nut., in press
(2005)
  "Ectomycorrhizal association enhances Al tolerance by inducing citrate secretion in Pinus
densiflora"
(26) T. Yamanoshita, M. Masumori, H. Yagi and K. Kojima: J. For. Res., in press (2005)
  "Effects of flooding on downstream processes of glycolysis and fermentation in roots of
Melaleuca cajuputi seedlings"
(27) K.O. Irino, Y. Kang, T. Kenzo, D. Hattori, I. Ninomiya, J. J. Kendawang and K. Sakurai:
Soil Sci. Plant Nut., (in press)
  "The performance of the pot-growth Dryobalanops lanceolata applicated with
controlled-release fertilizer after transplantation into the abandoned sifting
cultivation lands in Sarawak, Malaysia"
(28) T. Ichie, T. Kenzo, Y. Kitahashi, T. Koike and T. Nakashizuka: Trees, (in press)
"How does Dryobalanops aromatica supply carbohydrate resource for reproduction in a
masting year? "