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[G―2 砂漠化指標による砂漠化の評価とモニタリングに関する総合的研究]

(6) パキスタンにおける砂漠化プロセスの解明と指標化に関する研究

独立行政法人農業環境技術研究所

 

 

  農業環境インベントリーセンター

 

中井 信・大倉利明

  (社)国際環境研究協会

松本 聰・角張嘉孝・星野 亨

 

 

深井善雄・安西孝雄・石川祐一

 <研究協力者> 独立行政法人国立環境研究所国際室

 

清水英幸

            東京大学大学院農学生命科学研究科

 

恒川篤史

            京都大学大学院地球環境学堂

 

小崎 隆

[平成13〜15年度合計予算額]

 平成l3〜15年度合計予算額 24,738千円
 (うち、平成15年度予算額 3,802千円)
 上記の予算額には、間接経費 5,709千円(878千円)を含む

[要旨]

  砂漠化のうち約10%が塩性化などの化学的劣化に起因している。パキスタンは、全耕地面積の
約80%が灌漑農業地という、世界でも類を見ないほど灌漑設備を発達させ、灌漑農業を展開して
きた国である。しかし、不適切な灌漑に伴う塩性化によって農作物の減収が顕在化してきている。
そこで、塩性化地域における砂漠化の指標抽出のため、インダス川流域灌漑農業・放牧地域の、
流域レベルでの砂漠化を進行させる歴史的・宗教的・社会的要因を含む諸要因を解明すると共に、
集落レベル・農家レベルでの砂漠化評価のための生物生産力を算出するモデルとして提案された
EPICモデルの塩性化地域への適用性を検討した。
 インダス川流域に沿って土壌・水資源などを調査した結果、塩性化プロセスは、土壌生成要因
と灌漑水の水質に起因すると考えられた。歴史的、社会的には、インド・パキスタン独立が遠因
となり以下のことが起こっている。灌漑システムが分断されたため、安定的な灌漑水の供給が難
しくなってきた。その灌漑水の不足を補うために進められた汲み上げ地下水は、現在では水質が
悪化して塩類集積の一因となった。シク教徒の移動に伴い、農業開発に必要な資本も移動し、パ
キスタン側では塩性化に対処するための十分な資本投資が行われなかった。
 パキスタンの現地土壌データとEPICプログラム同梱のデータベースからほぼ同等な土壌デー
タを用いて、EPICモデルによる生物生産力の推移を試算した。その結果、EPICモデルの試算が塩
性化地域における生物生産力低減を適切に反映していないことが推測された。そこで、モニタリ
ング地区で最も塩性化の進んでいる地点の詳細土壌データと最近地の気象データを用いて、ソル
ガムの植物生産量と土壌の蒸発散量の変化をシミュレーションした。表層から1m未満に現れる
地下水面までの土壌データと気象データを用いても表層への塩集積による土壌劣化は、ソルガム
の収量には反映されなかった。さらに、カザフスタンの塩性化地域のデータをEPICモデルで解析
した結果、同様に土壌塩性化が収量に反映されなかった。EPICモデルでは、土壌pHが9.0以下し
か設定していないこと、塩性化土壌で重要な指標であるNa+量やSARなどを属性として扱ってい
ないことが原因で、これらの指標を考慮したEPICモデルの改良が必要なことが明らかになった。

[キーワード]

 塩類集積、砂漠化、パキスタン、モニタリング、EPIC(Environmental Policy Integrated Climate)