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(2.09MB)

[G―2 砂漠化指標による砂漠化の評価とモニタリングに関する総合的研究]

(4)中国における砂漠化に伴う環境資源変動評価のための指標開発に関する研究

独立行政法人農業環境技術研究所

 

 

  地球環境部 食料生産予測チーム

 

谷山一郎・白戸康人

  生物環境安全部 植生研究グループ 景観生態ユニット

大黒俊哉

  環境化学分析センター 放射性同位体分析研究室

 

藤原英司

筑波大学 農林学系

 

石 敏俊

 <研究協力者> 独立行政法人国立環境研究所国際室

清水英幸

            東京大学大学院農学生命科学研究科

 

恒川篤史

[平成13〜15年度合計予算額]

 平成l3〜15年度合計予算額 35,029千円
 (うち、平成15年度予算額 7,966千円)
 上記の予算額には、間接経費 8,084千円(1,839千円)を含む

[要旨]

  内蒙古東部ホルチン沙地ナイマン旗おける植生、土壌のモニタリングから退行、回復の各ステ
ージでの土壌と植生の指標を抽出し、それらの相互関係を解析した。退行過程と回復過程をあら
わす指標は、植生では種組成、土壌特性では有機炭素と細粒質があげられ、これらは相互に関連
しながら退行、回復することが示された。内蒙古東部の広域調査により、植生タイプの差異は土
壌タイプおよび降水量により説明でき、脆弱性が高いとされる砂地域の植生は、地理的に多少隔
離していても組成的な類似性が高いことを明らかにした。一方、土壌肥沃度を規定する最も重要
な制限因子は可給態N、ついで可給態Pと陽イオン交換容量(CEC)であり、いずれも植生との相
関が有意に高いことから、植生指標の情報と補完することにより、土壌タイプごとの土壌肥沃度
評価が可能と考えられた。また、100万分の1スケールの植生図および土壌図を用いたオーバーレ
イによる解析により、上記現地調査の結果が広域に適用可能であることが示唆され、ナイマンで
抽出された植生では種組成、土壌では有機炭素と細粒質という指標は、潜在的な土地条件が異な
る比較的広い地域においても適用できることが示唆された。
 従来土壌侵食量測定に用いられてきた137Cs法は、地表の侵食や攪乱が大きい砂漠化域では核実
験等に由来する137Csが土壌に残存しておらず、適用が困難な場合が多かったが、210Pbは核爆発由
来の137Csとは異なり天然の降下物であるため、侵食により一度土壌表層部から失われても、新た
に集積するという利点があり、土壌中の降下210Pbを指標とする方法は、137Csが残存していない砂
漠化域土壌に対しても適用可能であることが示された。
 内蒙古中部・東部の村落での社会経済調査と農家経済モデルの解析結果から、土壌侵食防止対
策として退耕還林還草政策の効果、特に退耕還林還草地の補助金付加に伴う土壌侵食防止効果を
モデルから推測した。また、貧困そのものより貧困から脱却するための農家行動が環境劣化の一
因となっていること、砂漠化防止と草原保全のため、放牧圧や家畜頭数を制限する環境政策と、
技術進歩や信用供与を促進する農村開発政策を連携して実施する必要があること、農村の都市化
による非農業就業機会の増加が環境負荷軽減・環境保全促進に効果的なこと、などが推測された。

[キーワード]

 環境資源、砂漠化、社会経済、中国、モニタリング