課題名

B-52 木質系バイオマス・エネルギーの利用技術及び供給可能量の評価に関する研究

課題代表者名

天野 正博(独立行政法人森林総合研究所森林管理研究領域長)

研究期間

平成12−14年度

合計予算額

88,181千円(うち14年度 29,257千円)

研究体制

(1)我が国における木質系バイオマス資源のポテンシャリティ評価

(独立行政法人森林総合研究所)

(2)海外における木質系バイオマス・エネルギーのポテンシャル評価

(独立行政法人森林総合研究所、鈴鹿国際大学)

(3)木質系バイオマスのエネルギー変換技術の評価

(独立行政法人産業技術総合研究所、宮崎大学)

(4)木質系バイオマスのエネルギー供給のシステム化に関する研究

(独立行政法人森林総合研究所、<研究協力機関>日本エネルギー経済研究所)

研究概要

1.序

 IPCC2次報告書において、森林が永続的に地球温暖化の軽減に貢献できる方策として、バイオマスを近代エネルギー源として活用することが推奨された。京都議定書においても各国が排出削減割当量の達成に吸収源の吸収量を利用する仕組みが取り入れられ、吸収源に関する特別報告書の34項「追加的項目」に関する章でもバイオマスのエネルギー利用の重要性が強調されている。そのような中、20016月の新エネルギー部会報告にて初めて「バイオマス」というタームが新エネルギー源として提案され、20021月の政令改定をもって正式に決定された。さらに、バイオマス・エネルギー導入目標値が設定され、実用化への検討が本格化する運びとなるなど、機運は高まっている。

 しかしながら、日本においてバイオマス・エネルギーは未だ商業ベースで大規模に稼働しておらず、バイオマスの供給可能性やエネルギー導入システムについての計量的な評価研究が必要とされている。同様に吸収源に関する国際交渉に際しても、我が国のバイオマス・エネルギー利用の可能性に関する科学的なデータを提供とする必要があるが、我が国は研究蓄積が極めて少ないことから、早急な研究の進展が望まれている。

 このような背景のもと、バイオマス・エネルギー源としての森林資源評価、バイオマスのエネルギー変換技術といった農学・工学分野と、木質系バイオマスのエネルギー利用を社会経済面から評価する社会科学分野のアプローチからの評価が求められている。

 

2.研究目的

 本研究は、吸収源に関する国際交渉に際して我が国のバイオマス・エネルギーの可能性に関する科学的なデータを提供とすることを主目的とし、バイオマス・エネルギー源としての森林資源評価、バイオマスのエネルギー変換技術に加え、木質系バイオマスのエネルギー利用を社会経済面から評価するものである。各サブテーマの目的は以下の通りである。

(1)我が国における木質系バイオマス資源のポテンシャリティ評価

 日本の森林から得られる利用可能なバイオマスとして、伐採時の枝、葉、梢端やおが粉・端材など最終的な木材製品にならない部分と、旧薪炭林に代表される低利用の森林を取り上げ、これらの量を推定する方法を開発し、日本全国の未利用バイオマス資源量を評価すること、及び地域レベルでのより詳細な木質系バイオマス供給ポテンシャルの評価手法の開発を目的とした。

(2)海外における木質系バイオマス・エネルギーのポテンシャル評価

 CDM活動のひとつとして早生樹種の造林とそれによるバイオマスエネルギー利用を想定し、開発途上国におけるエネルギー資源としてのバイオマス供給量のポテンシャリティを、より高い精度で推定する手法を構築することを目的とした。

(3)木質質系バイオマスのエネルギー変換技術の評価

 木質系バイオマスエネルギーの導入・実用化に資するバイオマスエネルギー評価の一環として、木質系バイオマスからエネルギーを製造するプロセスを導入した場合の温暖化軽減効果を、計量的に評価することを目的とした。また変換プロセスだけでなく、原料バイオマスの収集、搬送、あるいは製造エネルギーの供給システムを含む一連のプロセスでのエネルギー、ならびに放出/吸収CO2量を試算し、より精確な評価を試みた。

(4)木質系バイオマス・エネルギー供給のシステム化に関する研究

 現在わが国では、原料供給システムや効率的なエネルギー転換プラント、そして、熱需要の欠如から、木質系バイオマス・エネルギー利用は十分普及していない状況にある。そこで、本課題では、その実現に向けて取り組むべき課題や、実行のために必要となる条件について、多面から具体的に検討することを目的とした。

 

3.研究の内容・成果

(1)我が国における木質系バイオマス資源のポテンシャリティ評価

 未利用バイオマス量算出モデルを作成しそれによって、日本の全森林について、伐採分のうち木材製品として使われなかった未利用バイオマス量(梢端、根株、樹皮、枝、葉、おが粉・端材)、及び禁伐林と京都議定書の34項分を除いた成長量余剰分全てを、木質系バイオマス資源として使うという仮定をおいて、その供給ポテンシャルを推計した。林業活動に伴う未利用バイオマス量は1995年に約6.7メガトン/年と推定され、樹種別ではスギが多かった。日本の森林からの木質系バイオマス資源の理論的な最大供給量は、1995年で約25メガトンと推計され、これは2000年度の日本の1次エネルギー消費量の約2.3%に相当すると推定された。

 また、岩手県遠野地域を対象として、地域むけのより詳細な未利用バイオマス量算出モデルを作成した。スギおよびカラマツについて林分測定データより直径・樹高分布の成長を求め、相対幹曲線と樹皮厚率、幹・枝・葉配分比、伐採現場での放置材の調査、製材工場での歩留まりの聞き取りなどによって、種類別に未利用バイオマスの予測表を作成した(図1)。スギの地位級3林齢50年では、ヘクタールあたり伐採現場で約90トン、製材工場で約40トン、合計約130トンの未利用バイオマスが賦存し、おが粉・端材、根曲がり部、葉、中間部放置材の量が多いと推計された。カラマツの地位級3林齢50年では、伐採現場50トン、工場40トン、合計約90トン/haであり、おが粉・端材、枝、根曲がり部が多いと推計された。広葉樹林では、林地残材量の調査から、伐採後の枝条バイオマス量は約25トン/haでほぼ一定であることが明らかになった。これらの予測表を、林業統計に適用した結果、遠野市域での年間の木質系バイオマス発生量は針葉樹28,413トン、広葉樹15,103トンと推定された。

 

 

(2)海外における木質系バイオマス・エネルギーのポテンシャル評価

 タイ東北部におけるユーカリ造林の実態調査をふまえ、供給可能量評価に関するフレームワークを開発した(図1)。これは、土地利用と塩分土壌の分布から造林の対象となる農地を抽出したのち、さらに社会経済学的な調査から利用可能な農地面積を推定し、これに林分調査から推定された単位面積あたりの生産量を乗じて供給可能量を推定するものである。

 まず、地球地図による土地利用図と塩分土壌図を用いたGIS解析を行い、ユーカリ造林の適地を塩分の影響を受けていない農地・草地としたところ、ナコン・ラチャシーマ県の適地面積は716ha(全面積の34%)であった。

 

 

図2. タイ東北部におけるユーカリの供給可能量評価に関するフレームワーク

 

 次に、社会経済的調査の中で土地所有者の造林意欲に関する聞き取り調査を行ったところ、ユーカリ造林の意向の決定要因として土地所有規模が大きいことが判明した。聞き取り調査から得られた所有面積とユーカリ造林面積の関係を表す回帰式と、センサスから得られた所有規模別土地所有面積割合から、ナコン・ラチャシーマ県においては農地のうち13.7%がユーカリ造林に利用可能であると推定した。

 また、林分調査と、円板採取による容積密度の測定から収穫予想表を作成し当地方の生産性を推定したところ、当地域の標準伐期である5年生時の幹重量47t/haから平均生産量は9.4t/ha/yであった。これは炭素に換算すれば4.7tC/ha/yとなる。

 以上の結果から、当県においては98haが造林可能面積であり、生産ポテンシャリティーは92t/yと推定された。これは、炭素換算で46tC/yに相当する。

 しかしながら、現状では地域におけるユーカリ造林の意向は飽和状態となっており、CDMによるユーカリ造林を広めるには、補助金などの造林推進施策と同時にバイオマス利用などの新しい需要を創出する必要がある。

 当評価手法は、具体的なCDM事業を想定しユーカリ造林に注目したものであったが、従来行われていたような土地利用や造林条件による造林利用可能面積を推定するだけではなく、社会経済的な調査を加えることにより、より現実的な利用可能面積を推定するという特徴を持つ。対象地域や対象森林により適地抽出の条件など若干の修正が加えられるものと考えられるが、社会的経済的な調査を加味するという当手法の基本的な考え方は、一般的な評価手法として利用可能であると考えられた。

(3)木質系バイオマスのエネルギー変換技術の評価

 再生可能で大気中のCO2を固定するため、温暖化軽減に寄与すると期待されるバイオマスからエネルギーを製造・導入した場合の、温暖化軽減効果を試算した。

  .┘優襯ー変換プロセスとして、木質系バイオマスから糖化−発酵によりエタノールを製造、これをデイーゼル燃料代替として発電に用いた場合のCO2削減効果を試算、その結果をこれまでに検証の終わった燃焼発電、ガス化発電、熱分解と比較した。その結果、原料の産地や変換地の事情によりCO2削減量は変動するが、4種のプロセスで最も削減効果が大きかったのはガス化発電であった。

 ◆‘本国内のバイオマスを用いて燃焼orガス化発電を行う場合について、モデル地域を想定し、地域特性に応じた適正規模の発電技術とシステムの検討を行った。その結果、日本の東北地方の小都市(人口3万人相当)では、マイクロガスタービンコジェネ(300kW、複数基)による小型分散発電システムが適していること、300kWのマイクロガスタービンコジェネ発電に必要な木材量は、約25AD-t1基)であり、この地域の調達可能木質系バイオマス量に適合することが判った。

  日本における小型燃焼発電の調査とコスト試算、エタノール発酵のコスト試算を行った。日本における木質系バイオマスの発電コストは6189/kWhとばらつきが大きく、現状では石炭火力との経済的競合は困難であるが、炭素税等の温暖化対策措置を考慮すれば、競合可能となり、その場合、原料バイオマスのコストの圧縮が重要であることがわかった。エタノール発酵に関しては、木質系バイオマスから製造したエタノールのコストは平均約84/Lで、粗留アルコール(44/L)には及ばないが、発酵エタノール(86/L)と競合可能、原料費を大幅に下げれば合成アルコール(74/L)とも競合できることが示唆された。

(4)木質系バイオマス・エネルギー供給のシステム化に関する研究

  .┘優襯ー原料としての木質系バイオマスの利用可能性評価及び利用推進条件

 わが国での木質系バイオマスの再利用状況をみると、エネルギー原料としては林地残材と建築廃材が量的に有望である。しかし、現状では原木価格が最も安いチップ用材価格が電気やA重油価格よりも割高であり、林地残材については集荷コストをいかに引き下げられるかが大きな課題である。また、バイオマス・エネルギー供給にはスウェーデンにみられるような大型電熱供給プラントを中心とする集中型システムのほか、最近わが国でも利用が進みつつあるペレットストーブなど個別分散型熱供給システムが考えられる。集中型システムは、スウェーデンのように町全体にエネルギーを供給する大規模なプラントは施設やパイプライン建設費が莫大であり、また様々な法的規制があるため、わが国での普及は現実的ではないであろう。それよりは、札幌市にみられるような市街地のビジネス地区や公共機関集中地区、住宅地区など限定的な範囲にエネルギーを供給する小規模プラントの方が普及の可能性がある。また、わが国でもペレットを利用したストーブやボイラーなど個別暖房システムの試験的な導入が既に始まっており、公共施設や事務所などでの普及が期待できる。

 木質系バイオマス・エネルギーの原料供給には安定供給体制の実現が不可欠であり、賦存量の詳細調査が必要となる。スウェーデン、オーストリア、ドイツなどでは、木質燃料が化石燃料と競合できるように、化石燃料に環境税を課すことによって木質燃料の価格競争力を高める政策をとっている。このような施策の導入がわが国でも必要であり、林業、環境、エネルギー部門の諸施策を包括的に行うことが必要となる。他方、木質系バイオマス・エネルギーに関する行政担当者や一般市民への情報提供が重要となっている。

 ◆々饂査狎什犢場における残廃材のエネルギー利用システム化の検討

ア.製材工場での残廃材の発生・利用フローおよび残廃材発生原単位の把握

年間約3万m3の素材を加工する国産材大型製材工場を対象に、木材加工工程における残廃材の発生・利用の実態を調査した結果、工場では、素材の前処理工程・挽き材工程・製品仕上げ工程ごとに、樹皮・端材・鋸屑・べら板・チップ・モルダー屑などの多様な残廃材が発生しており、これら残廃材の総発生量は、素材加工量13当たり約0.2トンと推定された。

イ.残廃材エネルギー利用の経済性・化石燃料代替効果の検討

調査工場を対象に、木材乾燥に向けた残廃材エネルギー利用システムの経済性・化石燃料代替効果を検討した結果、当該システムはコスト面で重油利用の木材乾燥システムと差がなく、化石燃料代替を通して環境負荷軽減に寄与することなどが明らかになった。

ウ.システムダイナミックス(SD)モデルによる残廃材エネルギー利用システムの動態的評価

調査工場をモデルに、木材加工システムに残廃材のエネルギー利用(木材乾燥用途)を組み込んだ、SD手法による簡易モデルを作成し検討した結果、化石燃料代替をより進めるには、未利用樹皮の活用度を高めることが効果的であることがわかった。感度分析の結果、発生樹皮を全量エネルギー利用した場合、年計値では、木材乾燥に必要な熱エネルギーを全て残廃材エネルギーでまかなうことが可能である。ただし、木材需給等の変動で、残廃材のみでは不足する月も生じることがわかった。

  岩手県遠野市における木質系バイオマスのエネルギー利用実行可能性に関する研究

ア.林地残材や製材加工残材といった「林業・林産バイオマス」の発生量を、既存の統計資料から容易に、より高い精度で推計する手法を開発した。それを用いて、岩手県遠野市周辺のバイオマス発生量を推定した。その結果、林業バイオマスの発生量は、林産バイオマスのそれの2倍以上となっており、木質系バイオマスの量的な確保のためには、現在利用の行われていないそれらの収集システム整備が不可欠であることが明らかとなった。なお、林業・林産バイオマスの利用可能量を増加させるには、林業・林産業の活性化が重要であるといえる。

イ.形態別のバイオマス集荷コストを推計することによって、熱単価を推定した結果、熱利用を想定した場合、チップを除く林産バイオマスの利用可能性が高く、切り捨て間伐木を除く林業バイオマスの利用可能性もあることが分かった。また、変換効率の低い蒸気式発電を想定した場合では実現可能性が低いが、ガス化等の新技術が確立すれば、その実現性は十分あることも明らかとなった。上記の二つから、林業・林産バイオマスの供給曲線を導出した結果、遠野市における、経済的な林産バイオマス利用可能量は2.7t/h(年間6500t)と推計され、中規模以下のプラントが妥当と判断された。ただし、周辺市町村からの原料収集を行えば、大規模プラント設置も可能となるが、その場合、他地域のプラントとの適正配置が要件となることを指摘した。

 

図3. 林業・林産バイオマス供給曲線

 

ウ.木質系バイオマスから電気・熱エネルギーを取り出し、既存のホテル、体育館等の民生用施設で利用した場合の可能性評価を行った。まず、民生用施設の熱需要調査を行い、遠野市中心部のあえりあ遠野地区(ホテル、市民センター、体育館、図書館の4施設)では、年間3.3GJ(電気280kWh、熱はA重油2GJ)のエネルギーを消費し、所要電力はピーク期1,100kW、オフピーク期490kW、中間期で700740kWと推算した。この結果と、林業・林産バイオマスの利用可能量(6070t/日)から、この地区には中小規模の発電設備(発電規模300kW級)が適用可能であると判断した。また、高い発電効率、エネルギー変換方法の多様性、エネルギー搬送が可能という条件から、ガス化法を採用し、ガスエンジンで発電する方法を想定した。プラントの設置場所、エネルギー搬送方法から、6.5km離れた木材総合供給モデル基地内でガス化し、A案(ガスパイプライン搬送−ガスエンジン発電)、B案(ガスボンベ輸送−ガスエンジン発電)、地区内にプラントを設置し、C案(ガス化−ガスエンジン発電)、D案(直接燃焼−蒸気タービン発電)で経済性評価を行った。その結果、A案は設備費用が12.1億円で年間3,200万円の赤字、同様に、B案は12.6億円と4,600万円の赤字、C案は8億円と450万円の黒字、D案は9.4億円と5,100万円の赤字となった。このことから、木質系バイオマス発電の導入には、電気・熱の安定的な需要先の確保が重要であり、加えて設備費用圧縮のための簡素化やオンサイト化、木質系バイオマス価格の低減等が重要な課題であることが明らかとなった。

 ぁ|楼茲砲ける木質系バイオマス・エネルギー資源の推計モデルの開発

 木質系バイオマス・エネルギー資源の利活用状況の調査を日田地域について行った結果、加工・製材部門での排出量が最も大きく、木質系廃棄物の種類別再利用率が明らかになった。木質系バイオマス・エネルギー資源の推計モデルの構造を検討した結果、既存の木材供給予測モデル(野田、1999)をベースに組み込んだ構成で、森林・林業セクターでの未利用木質系バイオマス量予測システムを構築することができた。事例適用の検討は岩手県遠野市で実施した。

 

4.考察

 本研究は、バイオマス・エネルギー源としての森林資源評価、エネルギー変換技術に加え、木質系バイオマスのエネルギー利用を社会経済面からも評価を行い、併せて地域における木質系バイオマス・エネルギーのシステム導入に関して、具体的な資源背景と発電規模をふまえた現実的なシステムの提案とその評価を行ったものである。

 その中では木質系バイオマスに注目した供給可能量の推定手法を、全国レベル、地域レベル、さらには製材工場レベルといった様々なレベルについて開発した。いずれも、森林の特性とバイオマス・エネルギー利用を念頭に置いたものであり、新しい知見や技術を数多く含んでいる。この供給可能量予測手法とエネルギー変換技術の知見を基礎として、岩手県遠野市という具体的な地域を定め、資源背景と現実的なコスト評価をふまえてバイオマス・エネルギープラントの成立可能性を検討した。現実的な資源供給の推定、それに基づいたエネルギー変換技術の選択、さらには地域における適切なシステムの提案といったアプローチは、広く適用可能な技術と考えるものである。

 以下、個別の成果について考察を加える。

(1)我が国における木質系バイオマス資源のポテンシャリティ評価

 未利用バイオマス量の算出モデルと伐採統計及び森林資源統計から、日本の全森林について、人工林の伐採に伴って生じる未利用バイオマス量及び、禁伐林分と京都議定書の34項分を控除した成長量余剰量分のバイオマス量を推定した。これは、今後、国レベルで木質系バイオマス発電の導入目標をいくらにするのかに関する基礎情報となると考えられる。また、測樹学的な成長モデルに基づいて、地域レベルでの未利用バイオマス量を推定する詳細なモデルを提案し、次いで、このモデルを利用して木質バイオマス予測表を調製した。これは、木質バイオマス資源量を定量化する上で高い実用性を備えていると考えられた。

(2)海外における木質系バイオマス・エネルギーのポテンシャル評価

 早生樹種の造成によるバイオマス供給量のポテンシャリティを、より高い精度で推定する手法を構築した。当手法は、土地利用と塩分土壌の分布から造林の対象となる農地を抽出し、さらに社会経済学的な調査から利用可能な農地面積を推定し、これに林分調査から推定された単位面積あたりの生産量を乗じて供給可能量を推定するものである。これを、タイ、ナコン・ラチャシーマ県において適用し、当県においては98haが造林可能面積であり、生産ポテンシャリティーを92t/yと推定した。当評価手法は、土地利用や造林条件による造林利用可能面積の推定に、社会経済的な調査を加えることにより現実的な利用可能面積を推定するという特徴を持ち、この考え方は一般的な評価手法として他地域においても利用可能であると考えられた。

(3)木質質系バイオマスのエネルギー変換技術の評価

 各種変換プロセスのCO2削減効果の評価の結果、炭素削減に最も有効なバイオマスエネルギー変換技術は、直接ガス化発電であった。日本の地方小都市でバイオマス発電を導入する場合、イクロガスタービンコジェネによる小型分散発電システムが適し、木工団地の近くにガス化プラントを建設し、製造したガスをパイプライン/ボンベによりホテル−公共施設複合体へ搬送し、100kW程度の発電器複数代と商用電源の連結運転により、熱電併給を行うのが有望であると考えられた。これは、資源供給と需要規模に適合した発電システムの提案について新しい知見を示したものである。

(4)木質系バイオマス・エネルギー供給のシステム化に関する研究

 欧州の先進事例調査から、木質系バイオマス・エネルギーの原料供給には安定供給体制の実現と、化石燃料への環境税賦課による木質燃料の価格競争力を高める政策が重要であることが明らかとなった。また、製材工場における木材乾燥への残廃材エネルギー利用システムはコスト面で重油利用の木材乾燥システムと差がなく、さらに化石燃料代替をより進めるには、樹皮活用の向上、大型木屑サイロの設置などが課題となることが明らかとなった。

 岩手県遠野市を対象として経済的な林業・林産バイオマスの供給可能量を推定したところ、バイオマスを量的に確保するためには、林地残材の収集システム整備、林業・林産業の活性化が重要であり、経済的な利用可能量は年間6500t程度、中規模以下のプラントが適当と判断された。ここで開発した木質バイオマスの供給可能曲線は、森林資源を背景とした供給面からの現実的な推定手法として活用すべき技術と考えられた。

 具体的に、市内の熱電需要について民生公共施設の集まる「あえりあ地区」を対象に調査した結果、中小規模のガス化発電が適し、コスト的には地区内にガス化施設建設する案で可能性が高く、その場合、設備のオンサイト化と費用の圧縮、原料費の削減が重要であることが明らかとなった。

 以上のような、現実的な資源供給の推定、それに基づいたエネルギー変換技術の選択、地域における適切なシステムの提案といったアプローチは、広く適用可能な技術と考えるものである。

 

5.研究者略歴

課題代表者:天野正博

1946年生まれ、名古屋大学農学研究科修士課程修了、農学博士、現在、独立行政法人森林総合研究所森林管理研究領域長

主要論文:Amano, M., Trends of forest resources in the world and their relations with global warming, Farming Japan Vo1.35-1, 10-19 (2001)

Noble, I., M.Apps, R.Houghton, M.Amano and et. al., Implications of Different Definitions and Generic Issues, Land Use, Land-use Changes, And Forestry, IPCC, Cambridge University Press, 53-1262000

天野正博、西暦2000年の森林資源、森林科学、28, 8-15 (2000)

 

サブテーマ代表者

(1)家原敏郎

1959年生まれ、島根大学理学部卒業、農学博士、現在、独立行政法人森林総合研究所

森林管理研究領域資源解析研究室長

主要論文:Masayoshi Takahashi, Kazyhiko Saito, Norihiko Shiraishi, Toshiro Iehara, Fumitoshi Takahashi, A Photo Based Measurements System using a Measuring Camera. Journal of Forest Planning, 3(1), 1-9 (1997)

家原敏郎、ヒノキ無間伐林分と間伐実行林分における素材収穫量と収益性の比較、森林計画学会誌、2117-30 (1993)

家原敏郎、ヒノキ長伐期施業の収益性と経営的評価、日本林学会誌、75 (1)34-40 (1993)

 

(2)松本光朗

1958年生まれ、名古屋大学農学部卒業、農学博士、現在、独立行政法人森林総合研究所

林業経営・政策研究領域林業システム研究室長

主要論文:Mitsuo Matsumoto, Construction of yield tables for Sugi (Cryptomeria japonica) in Kumamoto district using LYCS, J. For. Plann., 3, 55-62 (1997)

Mitsuo Matsumoto, Kenjiro Honda and Juuro Kurogi, Management and Yield Prediction of Kunugi (Quercus acutissima) Grazing Forests, Journal of Forest Research 4(2) 61-66 (1999)

松本光朗、日本の森林による炭素蓄積量と炭素吸収量、森林科学、33, 30-36 (2001)

 

(3)小木知子

1954年生まれ、東京大学理学部化学科卒業、東京大学大学院博士課程中退、工学博士、

現在、独立行政法人産業技術総合研究所エネルギー利用部門バイオマスグループ

主要論文:横山伸也,小木知子,Anan Nalampoon, Biomass Energy Potential in Thailand, Biomass and Bioenergy, Vol.5, 45-410 (2000)

小木知子、バイオマスとバイオエネルギー、日本エネルギー学会誌、Vol.80, 154-164 (2001)

井上誠一、小木知子、Y.Yazaki, Thermochemical treatment of Radiata Pine bark with hydrogen peroxide solutions at temperatures higher than 100, Bulletin of the Chemical Society of Japan, 72, 2135-214 (1999)

 

(4)駒木貴彰

19568月生まれ、北海道大学大学院農学研究科林学専攻博士後期課程修了、農学博士、

現在、独立行政法人森林総合研究所北海道支所北方林管理研究グループ長

主要論文:日本農業気象学会北海道支部、北海道における自然エネルギー利用技術−農業への利用を考える−、143-151 (2002)、「木質バイオマス・エネルギー利用の動向と将来展望(駒木貴彰)

駒木貴彰、ヨーロッパにおける木質系燃料の利用、国際資源、268, 38-43