課題名

H-4 アジア地域における環境安全保障の評価手法の開発と適用に関する研究

課題代表者名

原沢英夫(独立行政法人国立環境研究所社会環境悉恥研究領域環境計画研究室)

研究期間

平成11−13年度

合計予算額

168,352千円(うち13年度 51,916千円)

研究体制

(1)アジア地域における持続可能な都市化と人間・環境安全保障に関する研究

(厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所、(財)アジア人口・開発協会、

[研究協力機関]日本貿易振興会アジア経済研究所、

[研究協力機関]早稲田大学、[研究協力機関]神戸大学)

(2)アジア地域の環境変化と食料安全保障に関する研究

(農林水産省農林水産政策研究所、独立行政法人国際農林水産業研究センター、

独立行政法人農業環境技術研究所、京都大学、(社)国際環境研究協会)

(3)アジア地域における水需給の将来予測と対策に関する研究

(独立行政法人国立環境研究所、熊本大学、慶應義塾大学、[研究協力機関]京都大学)

(4)アジア地域における都市大気汚染と対策に関する研究

(独立行政法人国立環境研究所、長崎大学、[研究協力機関]京都大学)

(5)アジア地域における環境安全保障の総合評価手法の開発と適用に関する研究

(独立行政法人国立環境研究所、独立行政法人森林総合研究所、(財)自然環境研究センター)

研究概要

1.序
 アジア地域は、急速な人口増加や経済成長のために環境が破壊されたり、劣化しつつあり、生活の基盤が脅かされるばかりでなく、農業を圧迫しており人口増加と相まって食糧危機が懸念されている。一方、農村からの人口流入による都市のスラム化などは経済発展の障害となるとともに、都市のエネルギー使用が増大するにつれ、大気汚染などの被害も深刻なものとなっている。温暖化やエルニーニョなどの異常気象はさらに状況を悪化させることが懸念されている。こうした一連の問題を環境安全保障の面から捉え、対応を図ることが緊急課題となっている。

2.研究目的
 本研究は、アジア地域において持続可能な発展の基盤となる人口、食糧、水、環境の現状や相互関連性を把握した上で指標やモデルによる定量化を行う。これらを用いて2050年までの将来予測を行い、人口の爆発的増加、急速な経済成長がもたらす食糧不足・水不足・環境悪化の可能性及びそれらを回避するための方策について環境安全保障の視点から評価する手法を開発し、具体的な対応策について検討することを目標とする。本研究は以下の5つのサブ課題からなるが、それぞれの課題の目的は以下のとおりである。

(1) アジア地域における持続可能な都市化と人間・環境安全保障に関する研究
 アジア諸国について各種の人間・社会的リスク、環境・衛生的リスクの指標を作成、統合して持続可能な都市化の指標を構築し、それに基づく分析によって、人口からみた環境安全保障の概念整理と評価手法の開発を行う。
(2)
アジア地域の環境変化と食料安全保障に関する研究
 アジア地域では急速な人口増加と工業化により環境が著しく悪化し、従来健全に営まれてきた農業は環境変化の影響を受けている。環境変化と食料需給構造、稲作社会の構造の相互影響を調査解析し、その評価モデルを開発し、具体的に適用することによって、食料需給からみた安全保障について検討する。
(3)
アジア地域における水需給の将来予測と対策に関する研究
 アジア地域においては、環境変化が著しく、温暖化などの気候変化はさらに干ばつや洪水など水資源の分布の空間的バランスを変化させると予測される。現在及び将来の水資源の存在量や水需給量を予測、評価する手法を開発し、アジア地域の問題地域の今後の対応方策について検討す
る。
(4)
アジア地域における都市大気汚染の将来予測と対策に関する研究
 アジア地域においては、人口や産業の都市への集中は大気汚染などの環境問題を惹起してお
り、都市大気汚染の現状把握を踏まえ,将来のエネルギー利用を見通した上で、健康被害などの
影響を定量的に評価する手法を開発し、適用して問題地域の抽出と対応策の検討を行う。
(5)
アジア地域における環境安全保障の総合評価手法の開発と適用に関する研究
 (1)から(4)のサブ課題の具体的問題から得られた知見をもとにアジア地域における環境安全保
障について考え方を整理し、評価する手法について検討する。

3.研究の内容・成果
(1)
アジア地域における持続可能な都市化と人間・環境安全保障に関する研究
 アジェンダ21では「人口動態と持続可能性」の相互関係に関する研究とそれに基づく政策が
求められた。しかし、タイ、フィリピンをはじめとする東南アジア諸国では経済成長が所得の向
上を通じて主として都市部に物質的繁栄をもたらし、都市・農村間の所得格差を拡大させた結果
人口増大による圧力も加わり、都市への人口流入が増大し、都市化が進行し、工業の急成長とあ
いまって深刻な汚染問題をもたらしている。都市人口の増大は都市インフラの整備の遅れから衛
生状態の悪化や生活公害の増大をもたらしている上、経済成長そのものによる産業公害や自動車
公害も付け加わっている。バンコクとマニラも他のアジアの大都市と同様、人口密集、貧しい住
環境、交通渋滞、大気・水質汚染、産業廃棄物・危険廃棄物といった都市環境問題に直面してい
る。社会主義国であるベトナムのハノイやホーチミン市もドイモイの影響もあり、例外ではなく
なりつつある。
 他方、温暖化ガスや環境汚染物質の排出量削減・抑制の議論において、人口規模は無視することのできない要素である。しかし、多くの文献は、総人口およびその増加率に着目しており、一国内の人口分布や人口移動と環境負荷の関係についてはさほど議論をしていない。途上国においては、農村から都市への人口移動による急激な都市化が顕著であり、人口増加のみならず人口移動が、どのように環境負荷に影響しているかを検討する必要がある。
 しかし、国内の人口学的研究で人口・開発・環境の相互関係を検討したものは少なく、都市化との関連でそれらを明示的に検討したのは当研究課題の先行研究プロジェクトの成果2)、3)くらいであろう。タイとフィリピンに関する人口学的研究も少ないが、ベトナムに関するものはほとんどない。また、国外の人口研究分野では人口・開発・環境の相互関係を研究したもの特にタイやフィリピンについての研究は少なからずあるが、両方の関心を融合した研究は少数で東南アジアにおける持続可能な都市・都市化について論じたものとしてはPernia(1992)Drakakis-Smith and Dixon(1997)が目に付く程度である。しかし、東南アジア諸国では首座都市と呼ばれる突出した大都市に人口が集中する傾向があり、人間・環境の両面での安全が脅かされがちであるため、本研究を実施する意義は大きい。
 本研究は、アジア諸国において持続可能な都市化の脈絡における人間・環境の両面での安全保障を確保するための施策の策定、実施、評価に資するため、農村都市間人口移動と都市環境への適応における各種の人間・社会的リスク、環境・衛生的リスク、環境関連行動に関するミクロレベルの情報を収集し、持続可能な都市化の枠組みに基づく分析によって人間・環境安全保障の概念と評価手法の検討を行うことを目的とした。
 本研究では3年間にわたり、文献調査研究に加え、アジア諸国に関する既存のミクロデータ(「人口保健調査」)の比較分析、フィリピン、タイ、ベトナムの各2都市におけるサンプル調査の実施とそのミクロデータの分析を主として実施した。既存のミクロデータの比較分析の結果、都市居住は女性や子供の健康に好悪両面の影響があることが示された。また、現在の都市居住だけでなく、移動と関連する思春期の都市居住が女性本人とその子供の健康リスクに意外に大きな影響を及ぼすことが示された。さらに、環境衛生要因の種類によっては男児と女児の死亡リスクに逆の影響を及ぼすものも見受けられ、女性の地位の重要性が再確認された。
 本研究で実施したサンプル調査の分析結果から、女性の移動はタイでは家族戦略との関連で行われていることが示唆されたが、フィリピンではむしろ個人の意志で行われている可能性が強いことが示唆された。また、フィリピンでもベトナムでも恵まれた社会経済的階層の女性の方が物理的環境に対する満足度が高いが、これは環境条件に恵まれた地域・住宅に居住していることによる可能性がある。

 フィリピンとタイの2都市におけるサンプル調査データの分析によれば、フィリピンでは非移動者の方が交通手段として自家用車等の非公共交通手段を使う傾向が強いが、タイでは移動者と非移動者と移動者に大きな差はみられなかった。しかし、いずれにおいても高所得階層が非公共交通手段を使う傾向が強く、資源多消費的であることが示唆された。本研究の結果から、アジア地域において持続可能な都市化の脈絡の中で人間・環境の両面での安全保障を確保するためにはミクロレベルでの女性の社会経済的地位や人口移動の影響が無視できない要素であることが明らかになった。

(2) アジア地域の環境変化と食料安全保障に関する研究
 アジア地域の食料生産は稲作を中心に発展してきた。世界の半分を占める人口は依然増加しており、経済発展による所得の増加を加えると2050年までに食料の需要量が現在の2倍に達すると指摘されている。土地資源はすでに限界にきている中で、水資源の問題など農業資源の変動をめぐる問題はアジアの食料安全保障に大きな影響を及ぼす。
 本研究は、モンスーンアジア稲作社会の特殊性に着目し、環境変動に関連して長期的な持続的農村社会システム、食料安全保障のあり方について様々な時間的、空間的尺度で広範な視点から検討し、過去における食料飢饉,農村文化の崩壊などのメカニズムについて解明した。また環境変動・環境問題の深刻化と食料需給構造・社会構造の相互影響メカニズムの定量的把握とモデル化・将来予測を試みた。さらに作物モデルの結果を広域に適用する手法を開発するため、大気・輸送モデルを用いた数値シミュレーションによる地表オゾン濃度を推定し,米の生産力に及ぼすオゾンの影響を評価した。
 その結果、中国北部の食料主産地である山東省では、水資源の供給が農業生産の維持に不可欠な条件となっており、他用途への利用の増大が将来の食料需給状況の悪化をもたらすことを示した。また、中国におけるオゾン濃度の増加は1990年において長江流域を中心にすでに10%以上の稲潜在生産力を減少させていると推計し,2020年までに予想される一層の濃度上昇が稲生産力に深刻な影響を及ぼす懸念を示した。さらに、東北タイにおける塩害が農業生産力の減少のみならず労働力の域外移動の要因となっている可能性を示した。一方、インドネシア、ベトナム、タイの地域比較検討により、降水量変動が食料安全保障上の主要因であることを示すとともに、エルニーニョなどの気候変動に対する多様な農民の対応が明らかとなり、石灰岩地質等地域の特殊な条件を加味した対策が必要なことを示唆した。

(3) アジア地域における水需給の将来予測と対策に関する研究
 人口増加、工業化、灌漑面積の増加といった様々な原因により、水資源不足は世界各地において深刻な問題となりつつある。本研究では、気候変化を考慮した中長期の水需要と利用可能な水資源量の予測を行ない、渇水リスクの高い地域や気候変化に対して脆弱な地域を抽出する方法を検討した。その方法を2050年〜2059年の10年間を対象として適用し、水需要と利用可能な水資源量の比(需給比率)を推計し、水資源の逼迫度を流域ごとに評価した。その結果、
1) 中国のアムール川・長江では人口増加と工業化を反映した水需要が増加傾向にあるため水資源が現状より逼迫する、
2) ガンジス川流域では急激な水需要増加が見込まれるが同時に気候変化による流出量の増加も見込まれるため需給比率で見た水資源の逼迫度としてはあまり変化しない、
1) ミシシッピ川流域やナイル川流域においては流出量の年々変動が現状よりも大きくなる、
といった流域ごとの水資源逼迫度の定性的な将来見通しを示すことができた。
 さらに、需要推計モデルを改良し、2030年までを対象期間として、アジア太平洋地域各国のより詳細な水需要推計を行った。将来の水需要の決定因子として、工業部門についてはGDP、農業部門については灌漑面積、家庭部門については給水人口を用いた。決定因子の将来変化については、過去の実績値をもとにした回帰式によって設定した。国連環境計画(UNEP)の「第3回地球環境見通し」で検討されたX向発展型Av型An域孤立型A蝠v型Sつの社会経済発展の将来動向(シナリオ)に基づき推計を行ったところ、3部門合計の水消費量で比較した場合、いづれの地域においても「地域孤立型」が最も需要の伸びが大きいと見積もられた。部門別に見ると、工業部門については現状傾向発展型の水消費量がもっとも大きく、農業部門については急激な人口増加と遅い技術進歩速度を反映して地域孤立型の水消費量がもっとも大きい。

 

(4) アジア地域における都市大気汚染の将来予測と対策に関する研究
 アジア地域においては、沿岸域の大都市に人口が集中するとともに、急激な経済発展を反映して、エネルギー需要が急激に増加しており、とくに大気汚染などの環境悪化が深刻化して、健康影響をもたらしている。さらに、温暖化や異常気象などの気候変化はこうした影響を助長すると考えられる。都市大気汚染の現状把握、将来予測を通じて都市の環境問題の視点から環境安全保障を評価する方法を検討した。初年度に続き、アジア地域における都市大気環境に関する情報収集と問題点の整理を行うとともに、特にインドネシアについて検討を加えた。途上国の環境問題を国際的な経済格差と流動性によるグローバル化を推進力としてとらえ、4類型の環境問題を位置づけた。具体的には、直接投資などによる先進国型の生産活動の活発化による産業公害問題、都市部への人口の集中増加と都市での生活公害問題、国際的な経済との格差に伴う自然環境資源の破壊問題、非都市部における地域コミュニティーの崩壊と環境資源の劣化の問題である。事例としてインドネシアを取り上げ考察した。

(5) アジア地域における環境安全保障の総合評価手法の開発と適用に関する研究
 近年アジア地域においては、エルニーニョなどがもたらす異常気象が頻発している。これらの現象は、人間活動による森林伐採などとあいまって、一旦発生するとその影響は深刻であり、人命の損失ばかりではなく、生産施設や生活環境を大きく破壊し、時として経済成長やGNPにも少なからず影響を与える。1997年のインドネシアの森林火災による東南アジア地域における煙害は、大小の森林伐採時に発生した火災が、エルニーニョによる乾燥、干ばつが同時発生して、従来であれば小規模な火災にとどまったり、続く降雨により鎮火していた火災が、消火活動の遅れもあり、規模が拡大した、と考えられる。本研究は、サブ課題1〜4の研究成果を踏まえて、アジア地域における環境安全保障のあり方について検討を行った。
本研究の一環として実施したシンポジウムにおいて、人間活動面での対応策についてインドネシア研究者と討議、検討した。インドネシアの森林火災による、東南アジア地域における煙害の原因は、大小の森林伐採時に、エルニーニョによる乾燥、干ばつが発生して、従来であれば小規模な火災や降雨により鎮火していた火災が、消火活動の遅れもあり、規模が拡大した、と考えられる。
アジア地域のおける環境安全保障
 近年アジア地域においては、食糧需給の逼迫、水資源の不足、都市の環境問題など多面的な問題が発生しているが、さらに温暖化はこうした問題を深刻化すると考えられる。アジア地域における環境安全保障を検討するために、各サブ課題から得られた知見、さらにアジア地域の専門家の見解をもとに、アジア地域における環境安全保障について整理した。食糧については、人口増加と収入増による食生活の改善により食糧需要が増大するが、一方単位面積あたりの収穫量の伸びも今後はそれほど期待できず、かつ農地の工場や都市用途への土地利用転換が進んでいるために、アジア地域の各国は全般的に食糧需給が逼迫することが予想される。水資源に関しては、食糧生産、都市・産業用水などに利用されているが、利用可能な水の20%以上を既に利用している地域が多く、今後は水資源量が活動の制約になる可能性がある。さらに、現在進んでいる温暖化は、悪影響を各地域、各部門に与えると予測されるので、さらに食糧、水資源からみた環境安全保障が悪化することが予想される。

4.考察
(1)アジア地域における環境安全保障
 本プロジェクトにおける環境安全保障の概念として、1)環境を巡る国家間の紛争など、軍事面での安全保障の延長上で捉えられる環境安全保障(レベル1)、2)環境の悪化や資源の過剰利用が、人々の生存や生活、ひいては社会、経済システムの不安などを生じる環境安全保障(レベル2)、3)環境の保全や持続可能な管理が重要であるとする環境安全保障(レベル3)にレベル分けした。
 アジア地域のおいては、環境安全保障を検討する上では、1)人口移動:特に農村から都市への移動や移動後の移動者の生活や活動、2)食糧の需給の確保:アジア地域は多くの論文や評論が示すように食糧不足になるのか、3)水資源:生態系の維持だけではなく、人間の生存や活動に必須であり、また農業や工業の発展のためには基礎的な資源である、4)都市:人口が集中するとともに、経済活動も集中しており、とくに交通渋滞や大気汚染などが深刻化しており、都市居住者への影響も深刻化している、5)温暖化:温暖化は都市のヒートアイランド現象と複合して生じる熱波などの極端な気温上昇、集中豪雨などの降水量変化や異常気象の発生は、1)から4)までの問題をさらに深刻化する可能性がある。特に、熱波や集中豪雨は現在でもアジア各国で観測されており、今後持続的発展に向けての障害となることは明らかである。

(2)人口、食糧、水資源、都市環境、温暖化の安全保障上の問題点
 アジア地域は、自然、文化、政治など多様な国から構成されるとともに、世界人口の6割が住む。アジア地域の人口、食糧、水資源、都市環境、温暖化の5つの分野において、これまでの検討結果から得られた問題点をまとめると以下のようである。
・人口:アジアの代表的な巨大都市における調査から、都市化と健康リスクの分析、6カ国の比較検討から、持続可能な都市を形成するうえで、女性の地位や人口移動の影響が重要である。
・食糧:水資源の乏しい地域での干ばつ、水害が同じ自然災害でありながら、食糧生産に与える影響は異なること、またタイにおいては、農業開発や森林破壊によって引き起こされた塩害地域での稲作生産の制約や労働力の移動との関連性が明らかとなった。
・水資源:水供給量と水需要量とのギャップによって生じる水不足リスクを影響評価モデルを用い、かつ将来の各国の発展形態を想定したシナリオ分析によって解析した。将来の動向として、各地域において地域が孤立した場合に重要の伸びが大きく、今後供給量が一定である場合、水不足の確率が他の地域に比べて相対的に高く、対策を早急に必要としている地域である。
・都市環境:人口集中が続く都市では、経済開発の影響が著しく、とくに健康影響をもたらす自動車交通が拡大している。アジアの巨大都市では、自動車、鉄道、地下鉄、バス等の交通手段を有するが、自動車交通へに依存が高まっており、日本の経験した都市大気汚染を再び経験しようとしている。自動車から公共交通機関への変更を行うなど、日本など先進国の経験を生かす方策が必要である。
・温暖化:地球温暖化はアジアの途上国では、全般的に悪影響を与え、とくに都市地域においては、人口が集中しているために健康の悪化など人的被害が増加すると予測される。温暖化は気温上昇、降水量変化、異常気象の発生により農業、水資源にも影響を与えることから、温暖化影響への適応策の構築が緊急課題である。

5.今後の課題
 人口、食糧、水資源、都市環境、温暖化は、アジア地域の社会−環境システムの環境安全保障を考える基礎的要因であり、さらに各要因についての分析を進めると同時に、環境安全保障の視点から総合的捉える評価指標や方法の具体化をはかることが今後の課題として指摘しうる。

6.研究者略歴
課題代表者:原沢英夫
1954
年生まれ、東京大学工学部都市工学科卒業、工学博士、現在国立環境研究所社会環境システム研究領域環境計画研究室長
主要論文:.
Harasawa, H. 1999: Development of an Integrated Assessment Framework for Environmental Security in the Asian region, 1999 Open Meeting of the Human Dimensions of Global Environmental Change Research Community, Shona Village, Japan, 24-26 June 1999.
Takahasi, K., H. Harasawa, and Y. Matsuoka, 1999: Impacts of Environmental Change on Food Security in the Asian Region. 1999 Open Meeting of the Human Dimensions of Global Environmental Change Research Community, Shona Village, Japan, 1999.
原沢英夫、2000:12章地球環境は人間社会の問題ではないのか、西岡秀三編:新しい地球環境  学、古今書院、249-266.

サブテーマ代表者
(1):小島 宏
1953
年生まれ、米国ブラウン大学社会学博士、現在、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長
主要論文:
Kojima, H. 1995: Aging in Japan: Population Policy Implications, Korea Journal of Population and Development, Vol.24, No.2, 1995, pp.197-214.
Kojima, H., 1997: Environmental Determinants of Demographic and Health Behaviors in Asian Countries," National Institute of Population and Social Security Research (ed.), Research Papers on Interrelationship between Population Growth in Develop-ing Countries and Global Environment, Vol.2, Tokyo, National Institute of Popula-
   tion and Social Security Research, 1997, pp.17-35.
Kojima, H. 1997: (avec Jean-Louis Rallu) "La fecondite au Japon et en France",Population (Paris), Vol.52,No.4-5, 1997, pp.1143-1172.

(2):小山修
1954
年生まれ、東京大学教養学部卒業,国連食料農業機関計量経済専門官、現在、国際農林水産業研究センター海外情報部国際研究情報官
主要論文:
O. Koyama, 1997: Asian Food Supply Demand Situation from a Global Perspective, JIRCAS
  International Symposium Series no.6, 13-30
O. Koyama, 1997: Projecting Food Balances in China using the World Food model, Paper
  presented at AAEA post conference.
O. Koyama, 1997: World Food Projection to 2020, Farming Japan, 32(4), 19-27

(3):原沢英夫(同上)

(4):原沢英夫(同上)

(5):原沢英夫(同上)