1 温室効果ガスの排出削減対策
(主な議論)
○ 示された削減率がどの程度の厳しさのものかという質問に対し、社会経済やライフスタイルのあり方が現在のまま続くとすれば、現在の技術メニューでは、例えば10%の削減は厳しいものと考えられるが、社会経済やライフスタイルを変革していけば更なる削減は可能との見方が示された。
○ 政府の介入の内容とは規制、補助金、税制等が考えられる。
○ シミュレーション上与えているインセンティヴとしては、大きな削減率を達成するケースで二酸化炭素1トン当たり3万円の経済的インセンティヴを与えている。すなわち、1トンの二酸化炭素を削減するための費用が3万円までの対策が導入されることになる。
イ 産業・エネルギー転換部門
(報告要旨)
産業分野からは、二酸化炭素排出総量の約4割が排出されており、近年、排出量は横這いとなっている。
各業種別に生産工程の改善による対策とコジェネレーション、コンバインドサイクル、インバーター等の業種横断的な対策を導入すれば、将来の排出量を算定したところ1990年比で相当の削減が可能と推計される。
また、エネルギー転換部門は直接排出量としては二酸化炭素排出総量の約3割を占めており、この部門での二酸化炭素排出のない又は少ないエネルギー源への転換や発電効率の向上などの対策を積極的に進めていくことが重要である。
さらに、中長期的には天然ガス利用促進のための社会的資本(パイプライン等)の整備に向け検討を進めていく必要がある。
(主な議論)
○ 技術予測の不確実性・戦略性をどう考えるかが重要。産業界・企業の意見も聞 きながら議論を進める必要がある。コストの問題も重要。
○ 自主的取組は積極的に行っていく。
○ 自主的取組以外にも規制的手法等様々な手段が考えられる。
○ 省エネ技術の導入に対するインセンティブが必要。
○ カスケード的(温度に応じ最も効率的)な熱利用などを行い、エネルギーの総 合的な利用効率をあげていく必要がある。
ウ 運輸部門
(報告要旨)
運輸部門からの二酸化炭素排出量は、全体の約2割を占めており、排出量は増加傾向にある。
次に示すような施策を講じることにより、2010年時点で1990年比8%増の6300万トンに抑えることができる。
エ 民生部門
(報告要旨)
民生部門の二酸化炭素排出量は、1990年で7170万トン(全体比23.4%)であり、このまま推移すれば2010年には、9300万トン(25.0%)と増加することが予測される。
民生部門の対策は、エネルギー消費効率の高い電気機器等の技術の開発・普及、適切な選択及び使用等の個別対策を講じることはもちろんであるが、国民の意識改革を通じてライフスタイルの変革を図り、現状以上の増加それ自体を抑制することが重要である。
そのことにより、1995年から2010年までに自然増的に増大すると見込まれている排出量(1030万トン)を充分抑制しうる余地があると考えられる。
(主な議論)
○ ライフスタイルの具体的方策が示されたことは評価する、ソフトの充実が課題。
○ 対策は単品を見ないで、総合的に関連分野を含めて見ていく必要。
○ 取組を進めるにはアナウンスメント効果(光害の防止のような)が重要。
○ 対策の中にNGOや個人が情報を共有し、様々な考えが生きる仕組みがあると良い。
○ エネルギー需要は、機器の普及、機器の効率、床面積、気温に依存。
○ 国民の取組の状況を継続してウォッチしていく必要。
イ 亜酸化窒素の排出削減対策
人間活動に伴う亜酸化窒素は、燃料の燃焼、工業プロセス、家畜の糞尿、施肥、廃棄物焼却等から発生しており、我が国の温室効果ガス排出総量の2.6%(1994年度)を占めている。
今後、工業プロセスにおける亜酸化窒素排出抑制装置の設置等により相当の削減が見込まれ、また、現在検討段階にある農業分野や燃料・廃棄物の燃焼分野での対策の進展も期待される。
ウ 代替フロン等の排出削減対策
HFC、PFC及びSF6はいずれも人工物質であり、HFCは冷媒やエアゾール分野等で、PFCは半導体製造工程や精密洗浄乾燥分野で、また、SF6は電力絶縁用ガスとして使用されており、この3ガスで我が国の温室効果ガス排出総量全体の3.5%(1994年度)を占めている。
これらのガスはその用途が拡大し、また、使用量が近年急増していることから、このまま放置すれば大気中への放出量の増大に伴い、地球温暖化への寄与が著しく増大する可能性がある。したがって、オゾン層保護対策との調整を図ることに留意しつつ、使用分野の限定、クローズドシステムの採用、回収・再利用・破壊の推進及び代替物質・代替技術開発の推進が課題である。
イ 事業者の自主的取組
(主な議論)
経済団体連合会から平成9年6月に「経団連環境行動自主計画(最終報告)」が発表されており、これについて、以下のような意見があった。
○ 業種ごとの削減目標等における数値の扱い方が異なり、業種ごとに比較できるような形になっていない点を改善すべきである。
○ 設定された目標について二酸化炭素の排出総量で安定化する、あるいは総量で規制するという目標を掲げている業種が少ない。なお、原単位の引き下げを目標としている業種もあるが、それ以上に総量が増加したときには、全体の排出量が増加する可能性もある。
○ ドイツ産業連盟の自主的取組のように、自主的取組の実績がどれくらいあがっているかについて、政府等の第三者がモニタリングを行い、その結果に基づいて、自主的取組を改善する、政府が規制措置を強化する等、チェックアンドレビューをしっかりすべきである。
○ 経団連の考えは、税金の代わりに自主的取組を行うということではない。経団連の「自主計画」の目標は、各業界が積み上げていったものよりも更に厳しいものである。
ウ 国民の自主的取組
(報告要旨)
生活の仕方を変えるなど、国民の理解と合意の下にこまめな努力を分かち合うことによって、国民のライフスタイルの変革が行われるものである。具体的には、冷暖房温度の調節、包装廃棄物のリサイクル、電気製品の使用時間の短縮等やそれらを総合的に推進するためのエコライフ国民運動推進本部の設置、エコライフセンターの設置などが考えられる。
(主な議論)
○ 効果が見えないと、国民は取り組まないものである。
○ NGOの知恵、ノウハウをいかに国民に知らせるかが重要。NGO等の組織化の明確化が必要。
○ 例えば一年ごとに国民運動を徹底化させるなど、常にウォッチすることが重要。
エ 環境への負荷の低減に資する製品等の利用促進
環境への負荷の低減に資する製品等の利用を促進するためには、何が環境にやさしい商品なのか等の情報を消費者が入手できるようにするとともに、生産者へも環境への負荷の少ない製品の開発を促して、環境保全型製品の市場育成を進めることが必要である。
具体的には、二酸化炭素排出量の少ない適切な電気製品の選択や低公害車の選択などが考えられ、例えば二酸化炭素排出量順に分かる電気製品リスト(ChoCO2)などの配布により、環境への負荷の低減に資する製品の利用が促進されることが期待される。
(4)事業の実施
(報告要旨)
二酸化炭素排出抑制に資するインフラストラクチャーを積極的に整備することも温暖化防止対策として有効な手段の一つである。例えば、北東アジア天然ガスパイプライン構想の実現(天然ガスの利用促進のための国際的パイプライン整備)等の公的インフラストラクチャーの整備を今後積極的に推進する必要がある。
(主な議論)
○ 地球温暖化防止のための都市構造の変化など事業の実施は進んでいないのが現状。
○ スーパーごみ発電という事業もよいが、燃やさないでリサイクルという方法がより重要である。
(5)普及啓発・情報提供
(報告要旨)
広報等を通じ、国民一人一人の意識改革を促すだけではなく、環境教育等を通じた将来を担う子供への働きかけなどが重要である。また、自主的取組を推進するためにも国、地方公共団体、事業者、国民の各主体からの情報の提供が必要である。
(主な議論)
○ 環境教育の体系化、人材育成が必要である。
○ 広報は一方的な手段であり、自主的な取組が重要である。
(6)科学的知見の充実、地球観測の強化
イ 温室効果ガス排出量の監視
温室効果ガスの排出削減対策の効果を把握し、常に有効な対策を実施していくため、温室効果ガス排出量を監視するとともに、対策へのフィードバックのシステムが必要である。
ウ 温室効果ガスの観測等
温室効果ガス濃度の観測については、分野、項目、地点、手法等多岐にわたるため、その方法等について、国際的な観測・監視計画との整合性を図りつつ、検討を進めるとともに、観測データの蓄積に努める。また、地球温暖化の被害を極小化するため、環境変化の監視、被害の予兆の早期発見、対策実施への結びつけられるようにする必要がある。
エ 地球温暖化に関する技術開発の推進
資源・エネルギーの効率的利用、温室効果ガスの排出の少ない生産工程・農業、新エネルギー活用の技術など、地球温暖化を防止するための技術開発を行う必要がある。
(2)共同実施
共同実施とは、先進国が有する地球温暖化防止に関する技術、ノウハウ、資金等を組み合わせて、途上国において温室効果ガスの削減を行い、その削減量の一部を当該先進国の削減量としてカウントすることにより、地球温暖化防止対策を費用効果的に実施することを目的とするものである。気候変動枠組条約では、COP1で共同実施の基準に関する決定を行うと規定されているが、途上国の強い抵抗などにより、共同実施を進めるための諸条件について国際合意が得られず、代わって、共同実施活動を行うことが決定された。共同実施活動は、既存の援助とは別に先進国の技術、資金の提供を行うものであり、今世紀末を期限とするパイロット・フェーズが設置され、世界各国で試行が始まっている。
(3)開発途上地域への支援
先進国は、気候変動枠組条約第4条第5項等の規定により、途上国に対し、温暖化対策等に係る技術、資金の移転を促進する責務がある。我が国は、これまでも既存のODA等を積極的に活用してその促進を図ってきた。
1997年6月のデンバーサミット及び国連環境開発特別総会においては、我が国は、中長期的な視点に立った地球温暖化防止のための技術開発と途上国への技術移転を国際協力の下に進める「グリーン・イニシアティブ(地球温暖化防止総合戦略)」を提唱した。