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II 地球温暖化防止対策について

1 気候変動枠組条約締約国会議

 1992年の気候変動枠組条約は、究極の目的について規定するとともに、先進国の約束として、2000年に二酸化炭素その他の温室効果ガスの排出量を1990年レベルに戻すことを目指して、政策・措置を講じ、その内容、将来の排出量・吸収量の予測等について、締約国会議に通報することを定めている。
 第1回締約国会議(COP1。1995年4月ベルリンで開催)では、現行条約上の先進国の約束の内容は、条約の目的を達成するためには不十分であるとし、第3回締約国会議までに、先進国について、「温室効果ガスの発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関する、例えば、2005年、2010年及び2020年といった特定のタイムフレーム内における数量化された排出抑制及び削減の目的などを含む法的文書を採択するべく、国際的作業を行うこと」などが決められた(ベルリンマンデート)。
 第2回締約国会議(COP2。1996年7月ジュネーブで開催)では、議定書には「温室効果ガスの発生源から生じる人為的な排出及び吸収源の除去に関して、例えば2005年、2010年、2020年という特定のタイムフレームの中で、排出抑制及び相当の削減のための数量化された法的拘束力のある目的」を含むこととされた。
 その後、1997年6月のデンバーサミットでは、「第3回締約国会議において、ベルリンマンデートに合致し、数量化された、かつ、法的拘束力のある排出の目標を含む強力な合意を形成しなければならない。我々は、2010年までに温室効果ガスを削減する結果をもたらすような意味のある現実的かつ衡平な目標にコミットする意図を有している」とし、また、1997年6月の国連環境開発特別総会(ニューヨーク)では、「2005年、2010年あるいは2020年といった特定の時間的な枠組みにおける温室効果ガスの排出量を相当削減する結果をもたらすような、先進国に関する、法的拘束力があり、意味のある、現実的、かつ衡平な目標を考える必要があるという、普遍的ではないものの、幅広い合意が既にある」ことが宣言された。
 このような経緯の下に、第3回締約国会議(COP3)が、1997年12月に京都で開催される。我が国は先進国として、またCOP3の議長国として、国際的リーダーシップを発揮しなければならない。
 また、我が国は、地球温暖化に関する環境科学からの予測を踏まえ、地球温暖化を防止するための目標を掲げ、それを達成するための対策を率先して講じるとともに、COP3で合意された目標を達成するよう国内対策として温室効果ガスの削減をより確かなものとし、2020年、2030年さらには2100年を視野に入れた長期的・継続的な温室効果ガスの削減のため、COP3後速やかに総合的な地球温暖化防止対策を整備する必要がある。

2 これまでの我が国の取組


3 今後の日本の地球温暖化防止対策への取組の基本的方向

 我々は、すでに地球温暖化防止対策の実行を開始しており、今後の我が国の地球温暖化防止対策への取組については、1990年以降の対策が効果を上げてこなかったことに対する反省の上に立って、新たな実効性のある対策の枠組みを構築しなければならない。
 特に温室効果ガスのうち二酸化炭素の排出は、産業、運輸、民生などあらゆる部門に及ぶものであることから、その削減に当たっては、政府としての対策の実施や企業の自主的努力の宣言だけでは足りず、それに加え、社会経済システムやライフスタイルの変革を含む実効性ある対策への広範な国民的な合意が不可欠である。すなわち、国民、企業、民間団体、地方公共団体、国などの各主体が連携しつつ、それぞれの立場で、削減目標を念頭に置きつつ、各主体が公平な役割分担の下に地球温暖化防止対策を総合的・計画的に実施することが必要であり、これらすべての主体に関わる対策に関する国民的合意は、国会における法律という形で明らかにしていくことが基本である。
 なお、具体的な削減目標を掲げるに当たっては、一定の計算モデルに将来の経済成長率やエネルギー消費量等の数値をインプットして「何らの対策を講じない場合に増加する二酸化炭素排出量(なりゆきケース)」を算定し、それを基準にして、どのような政策措置により、どの程度削減できるか算定するという手法がとられることがある。この場合、前提となっている「なりゆきケース」による将来排出量の数字は、採用する計算モデルによって変わりうる数字であって、決して固定的なものではなく、社会経済構造自体が変化したり、経済成長率が修正されたりすること等によっても異なってくることに留意する必要がある。