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○説明者(足立) ご紹介にあずかりました「環境・持続社会」研究センターの足立と申します。畑の方は私用がありまして、途中で質疑応答までには来るかと思いますので、質疑応答はメーンで畑が対応させていただくとして、私の方は最初に説明をさせていただきたいと思います。
 我々、炭素税研究会というのを環境NGOのメンバーと税理士の方々、研究者の方々と今年の3月ぐらいから立ち上げまして10数回の研究を経て、(炭素税提案の)とりあえずのバージョンを今つくっております。
 我々NGOとしまして、特に私どもの「環境・持続社会」研究センターは、税制改革と財政改革とODA改革といったものに焦点を絞って行っているんですが、特にODA改革に関しましては、JICAさんとかJBICさんとか、特にうちは財務省さんとの定期協議というのを3カ月に1回行わせていただくようになりまして、非常にNGO団体として何らかの貢献ができてきているかなと。ただ、財政改革に関しましては、公共事業の見直し等でNGOもある程度の役割は担ってきたんじゃないかと思うんですけれども、税制改革に関しましては、ほとんどこれまでちゃんとした貢献ができてきませんでしたし、特に環境省さんの方で1980年代から非常に勉強をなさってやってきたにもかかわらず、やはり市民側の後押しが足りなかったと思いますし、そういった反省を込めて、これまで税制改革を少し勉強しました我々と気候ネットワークさんとともに、ちゃんと炭素税の提言をつくりましょうと。やはり制度設計をつくることは非常に難しいわけですけれども、実際に、こういった制度がいいんじゃないかということをつくってみて、それで皆さんにたたいていただいて、政策をつくっていくための1つのたたき台にしていただきつつ、現実に炭素税を導入していくための1つの資源にしていきたいということで始めた研究会です。
 OHPを使いながら座って説明させていただきます。
 私どもは、基本的に6%削減に向けまして地球温暖化対策を推進していくために、炭素税を早期に導入していくことが非常に重要であるということで、制度設計をつくるということで始めた研究会です。
 目次構成はこのようになっております。
 1番目に、「目的と狙い」です。
 これは、短期的には京都議定書の6%削減をしっかりと実現するということです。しかし、それのみならず、やはり長期的には、第2約束期間以降、大幅な先進国の排出削減というのが見込まれているわけですし、そういった意味で、一刻も早い国内政策の強化というのが必要とされていると思います。それは、炭素税のみならず、さまざまな政策のポリシーミックスが必要とされるわけですけれども、まず第1に、我々は炭素税について、しっかりと制度設計をしましょうということで、制度を考えていきました。
 炭素税の政策的なメリットといたしましては、税の価格インセンティブ効果を用いて、やはり規制や排出量取引が難しい小規模の主体を含めて、あらゆる主体の対策を強化することができるということで、非常に重要な収穫がある性格であると考えております。
 また、炭素税というと、日本では環境税イコール炭素税ということがずっと言われてきましたけれども、それだけではなくて、欧州諸国ではさまざまな環境税が導入されていると。そういった意味では、炭素税を1つの契機として、その他の環境税の導入を図っていくということと、環境税制改革、財政改革の一歩にしていくということです。
 我々は、とにかく早期に導入していくということを非常に重視しています。と申しますのも、2010年まで非常に時間がありませんし、もしやはり北欧諸国におけるような1990年代初頭ぐらいから導入していれば、何らかのある程度の削減効果が見込まれたと思うんですけれども、そういった意味では議論をしている時間が我々に残されていないという意味では、なるべく早くということで2003年4月の導入を目指して、我々は喫緊に進めていくんですけれども、さまざまな方にご意見をお伺いしつつ、一緒に政策実現に向けて歩んでいきたいと思っています。
 そういった意味で、早期実現を優先していますので、一挙にがらっと変えよういうことではないので、実際、税率を上げれば効果があることは間違いないのですけれども、早期実現ということを優先して制度設計をさせていただいております。
 課税対象なんですけれども、化石燃料起源の二酸化炭素を考えております。その他の温室効果ガスに関しましても、課税が必要なものもあるかと思いますが、これは補論で述べさせていただきます。
 課税主体ですけれども、地方自治体と国のどちらかという議論があるかと思いますが、やはり地球温暖化対策は国全体として進めなければならないということと、ある程度税収が地方全体に広がる必要があるということがありますので、国で課税をさせていただくということを提案したいと思います。
 課税段階なんですけれども、原則としては上流とすべきであると。それは、軽油引取税のように脱税の温床になったりですとか、なるべく不公平な課税を避けるためにも上流とすべきだというふうに考えております。
 ただ、我々が今検討していますのが、例えばCO2 排出削減に努力した企業に対して、税の減免措置等を行ってもいいのではないかということで、我々研究会の方でも今検討しているんですけれども、もしそういった軽減とか緩和措置を行う場合には、やはりある程度下流課税ということも検討に値するかなということで、この点については検討するところがありますが、制度が可能であれば、漏れなく不公正のないように、やはり上流でちゃんとかけるということが基本であると我々は考えております。
 税率ですけれども、炭素1トン当たり 6,000円ということで、これは純粋に炭素分に比例する炭素税を考えています。すべての化石燃料に対して均等に 6,000円かけるということです。税率は、当初は 6,000円を考えておりますけれども、2010年まで対策の進捗状況を見て、対策が足りていないということであれば税率を上げていくということも可能であると考えております。
 炭素税の政策的なデメリットとして、排出削減がなかなか確定できないということがよく言われますけれども、これに関しましては、我々は、その他の協定ですとか排出量取引ですとか、その他の政策とのポリシーミックスということも重要ではないかと考えておりますが、と同時に、こういった形で税率を上げていくことによって、ある程度炭素税で排出削減を担保できると考えております。
 削減効果なんですけれども、時間の関係で細かい試算は省かせていただきますけれども、もし数字の問題とか細かい試算のデータが見たいということであれば、後でご質問いただくか、あるいは我々の方にご質問いただければと思います。
 我々は、この炭素1トン当たり 6,000円の炭素税で約 700万トンの削減が見込まれると考えております。ただ、これはミクロの積み上げで、実際、マクロのシュミレーションモデルを使った削減効果を算出する必要があると考えておるんですけれども、まだ間に合っていませんで、数カ月以内に何とか出したいと思っています。我々のミクロの積み上げ試算によると、2003年4月から 6,000円の炭素税で、税率を引き上げることなしに、そのまま7年間、2010年までかけ続けるということで、約 700万トンの削減ができるというふうに考えておるわけです。
 仮に導入がおくれて2008年から導入するということになりますと、 6,000円の炭素税をかけても約 200万トン、3分の1以下の削減効果しかないということになります。
 仮に 700万トンの削減を実現するということで、しかし、導入がおくれて2008年から導入するということになりますと、 700万トンの削減を2008年から実現するには19万円というとんでもない炭素税がかかってくると。これは、こうした急激な社会的な変化は、やはりなかなか容認されないのではないかと思います。そういう意味では、我々がどうして炭素税の早期導入が必要であるかということは、やはりなるべくスムーズな形での社会の必要な形での対応ということを重視しているからです。
 その税収の使途なんですが、我々は、税収の使途に関しましては、一般財源とするということを提案したいと思います。これは、現在、議論がされていますように、特別財源が不要というか、なかなか効果がないというような使途にずっと税金が使われ続けるといったような問題ですとか、今さまざまな問題がある中で、やはり炭素税収は一般財源にすべきではないかというふうに考えました。
 その際に、炭素税収をどのように使うかということですけれども、我々研究会では大体2つの議論がありまして、やはり地球温暖化対策に炭素税収を使うべきではないか。やはり、これだけ6%削減の実現が難しい中で、地球温暖化対策予算にしっかりと投入して、さらに削減効果をアップするという意見も非常に強くて、非常に大きな議論があったわけですけれども、我々の方で最終的にまとめました提案では、そういう形ではなく、同額の減税を行うということを選択させていただきます。それによって、社会全体の税負担を現在と同等に保つという税収中立にするということです。
 一方、やはり温暖化対策予算が必要であるということで、それに関しましては、後ほど補論の4の方で述べたいと思います。
 それでは、炭素税収が我々の試算では約 1.7兆円に上るわけですけれども、それに見合う減税というのを実現する際に、何を減税するかということを考えてみました。それに関しましては、以下の2つの理由から保険料を選択いたしました。それは、1つは、逆進性の緩和措置です。これは、よく言われますように、炭素税が消費税のように低所得者層への非常に大きな影響があるということです。これに対して対処するということです。
 2つ目が、これだけの日本の経済状況の中で、やはり雇用をちゃんと確保するというこが非常に重要ですから、その雇用の増加へも寄与するということです。こういった2つの理由から、雇用、労災、国民健康保険料というのを選択させていただきました。
 もう少し具体的に述べさせていただきますと、この減税に関しまして--減税というか、
実際には社会保険料などのかけ金が減額になるわけですけれども、これは、個人に関しましては約 6,000億円ほど、企業に対しては約1兆 1,000億円ほどということで 1.7兆円を割り振ってあります。
 個人に関しましては、基本的に逆進性対策ということですので、これは定率で返しますと、高所得者の方に多く返ってきてしまいますので、なるべく定額で返すということで、 6,000億円で大体 1.2億人ぐらい日本人口がありますから、大体1人当たり 5,000円ぐらい返せないかということで考えました。その際に、やはり雇用に生かすということで、雇用保険料の個人負担分の減額ということを考えたわけですが、実際には、雇用保険料をお支払いになっていない方もいらっしゃるわけです。となると、国民全体に広く行き渡らないわけですから、そういった方に関しては、国民健康保険料というのは、ほとんどの方が払われているということで、国民健康保険料を 5,000円ほど減額させていただくという提案でまとまりました。
 企業に関しましては、やはり雇用保険料と労災保険料の企業負担を軽減するということです。
 これによって、理論的には炭素税は 1.7兆円とるわけですけれども、それがすべて減税に回るわけです。そうしますと、企業側にとっても、産業全体としては税収は中立なわけですから増税になっていないわけです。理論的に考えますと、これは、エネルギー多消費産業には非常に不利になるわけですけれども、エネルギー少消費産業に関しては、税に関して非常に得になるわけです。50%以上の方には(得になると)感じていただけるのではないかと思っていますし、そういった制度になっています。
 さらに、先ほど申し上げましたとおり、CO2 排出削減に努力した企業に対しては、その報償として炭素税を減免していく、あるいは軽減していくという措置を、我々もまだこれに合意していないんですけれども、一応それは検討していこうということで、検討段階に入っております。先ほどCO2 排出量の削減効果は、炭素税では約2%と言いましたけれども、これは我々はちょっと少なめに見積もっているかと思うんですけれども、実際にヨーロッパで環境省のデータを見せていただきますと、実際は北欧諸国の事後評価ではもう少しあると。このデータ自体をどのように評価するかということは非常に難しいわけですけれども、ちょっと大目に見積もり過ぎているんじゃないかという気もしますが、我々の 6,000円で2%というよりも効果があるように出ていますし、イギリスやドイツの事前評価でももっと効果があるといったようなデータがあります。しかし、我々の 6,000円の炭素税でもたった2%しかないということで、6%削減を担保するには、やはりその他の政策が必要になっていくと。その際に、炭素税をとって、もしCO2 排出削減協定などを結んで、実行した企業に対しては税を減免してあげる、還付してあげるということは、CO2 削減を実現するということにもなりますし、エネルギー多消費産業の負担を軽減するという意味でも非常に重要ではないかということで、こういった制度を提案させていただいているわけです。
 その場合に、企業に対する軽減ないし還付措置を導入しますと、もちろんその分税収は減ってしまうわけです。その場合には、例えば数千億円の分の税収がなくなってしまった場合には、企業の1兆 1,000億円の減税分をさらに減らすということで、個人の(減税)分は減らさないという考え方になっています。
 次に、産業への配慮ということなんですが、これまでも考えてきたように、やはり雇用保険料や労災保険料の企業負担分の軽減とともに、やはり先ほどエネルギー多消費型の産業に関しては非常に増税になるということなんですけれども、やはりこの負担に対しては何らかの措置をしないと、実際には厳しいだろうということで、まず1つは、国際競争力への対応措置というものを必要とするであろうということです。
 その方法に関しましては、我々は2つの方法を非常に議論しまして、基本的に理論的には国際競争力への対応なので、国境で調整するのが最も理論的ですから、「国境税調整」というものを行うべきではないかと考えています。
 しかし、WTOの問題ですとか、その実現可能性等の配慮ができるかどうかというところで、まだ論点が尽くされていなくて、基本的に国境税調整をしたいんですけれども、やはりこれが国際的にも実現していないので、欧州諸国で行われているような「炭素税の軽減や還付」といったような措置を一応検討しているということです。どちらにしても、国際競争力への対応措置というものをとるということです。
 もう一つは、先ほど申し上げたCO2 排出削減に努力した企業に対する報償ということです。こうした措置によって我々が考えていますのは、エネルギー多消費型産業に関しましても、ちゃんとCO2 排出削減に努力するということで、ある程度の税は非常に軽減されるのではないかと思いますし、あるいはオイルショック時にあった、実際にエネルギー消費を減らせば電気代とかが減るわけですから、そういうことも考えれば、一概に頑張った企業に関しては損になるということは言えないんじゃないかと考えていますし、非常にこれはNGOの方から産業に甘過ぎると言われますけれども、産業のためにどんどん導入してくださいと。産業発展、雇用発展のために、まず炭素税というふうに我々は考えています。
 その次に、特に低所得者への対応なんですけれども、先ほども申し上げたとおり、逆進性対策として雇用保険料などを減額するということです。ただ、この辺は、実現可能性に関しましては、まだ不明なところもあって、皆様からさまざまなご意見をいただければと思います。基本的には、減税として逆進性対策に使うということが我々の考え方だということです。
 それでは、炭素税はいいんだけれども、既存エネルギー税制をどうするんだという議論になるわけです。それに関しましては、我々の今回の炭素税は、化石燃料すべてに対して炭素1トン当たり 6,000円を導入するわけですから、既存の税に単純に上乗せする形になっております。
 ただ、我々は、これだけでいいとは思っていません。やはり現在の既存税制もさまざまな問題を抱えていますし、これは早急に見直さなければいけないと考えております。その意味では炭素税導入とともに、できるだけ可及的速やかに見直していくということが必要だと考えておりますが、しかし、それを待って炭素税の導入がおくれるということはあってはいけないということで、炭素税導入とともに、見直せることは見直すということです。
 我々の基本的な考え方は、既存エネルギー諸税の課税に関しましては、まず基本的に、税率を下げないということです。どの税も税率を下げない。そして、使途に関しましては、やはり道路、我々は道路予算というのは、温暖化を加速すると考えておりますし、あるいは大規模火力発電というのも温暖化を加速するような形になっていますので、エネルギー諸税というのは使途の面で非常に問題があって、温暖化対策に逆行していると我々は考えていますので、そういった部分で使途を見直すと。特定財源を一般財源化していくということが基本的なことだと考えております。
 ここで、特に石炭と石油と天然ガスでは、炭素税をかけても石炭の方が税が安いので、燃料転換を進めることができなくて、やはりヨーロッパの方の天然ガスがどんどんふえている国に比べると、日本は燃料転換の面で非常におくれているわけですけれども、そういった面で、炭素税だけでは非常に不十分であるということで、それに関しては、また補論で説明させていただきたいと思います。
 本論の最後に、中長期的な制度設計についてご説明します。
 まず、炭素税導入後、我々は2003年に導入できているだろうという前提に立ってしまっているわけですけれども、その際に、政策目標の達成度を検証しつつ、定期的に制度を見直していくということです。特に税率に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、第1約束期間の日本の国際公約を担保するために段階的に変えていくと。
 特に炭素税の導入とか運用の見直しに関しまして、使途などでさまざまな議論がされていくと思うんですけれども、その際に、やはりぜひとも透明性なりアカウンタビリティーを非常に持っていただきたいということと、我々市民側も非常に勉強していかなければいけないわけですけれども、やはりそこにNGOのちゃんとした参加システムをつくっていくということが非常に重要ではないかと考えています。
 以上が本炭素税についての概要なんですけれども、補論といたしまして、京都議定書にかかわる以下4点についてご説明させていただきます。
 まず、先ほど申し上げました石炭税に関してです。石炭は、ご存じのように、CO2 排出量も非常に多いですし、汚染物質も非常に多いですから、こういった石炭の消費を抑え、燃料転換を早急に進めなければいけないということです。
 まず第1に、石炭には関税や石油税がかかっていないわけですから、これに対して、直ちに原油並みの課税をするということです。これはどういうことかと申しますと、炭素税がついて、さらに原油並みの課税が石炭にもつくと。これで、課税に関しては石炭にちゃんと課税されるということです。
 ただ、先ほど申し上げましたとおり、これだけでは見込める燃料転換は少ないです。なぜかというと、石炭の価格が安いからです。そういう意味では、我々は、やはり燃料転換をちゃんと進めていくと。火力発電の中で、天然ガスに切りかえていくということが非常に重要であると考えておりますので、そういう意味では、さらなる石炭への課税の強化ということも必要ではないかと考えておりますし、逆に、天然ガスへの発電に対する財政支援なりも必要になってくると考えております。
 ちなみに、原油並みの課税というちょっと小さいタイプの課税ですけれども、これだけで税収が約 1,500億円になるわけです。この 1,500億円の課税を、また減税なり他の政策に使うことができるわけです。
 次に、補論2ですが、これは冒頭に述べさせていただきましたが、他の温室効果ガスへの課税です。
 化石燃料起源のCO2 が日本では約90%弱を占めるわけですけれども、やはり他の温室効果ガスの削減も非常に重要なわけです。とりわけHFCとかに関しては、非常に早期の対策が必要になってくると。こういった対策の実現のためにも課税が必要になってきます。ただ、その制度設計が異なりますので、我々の方でまだこういった制度設計に関する提案はつくっていないわけですけれども、ここでは、そういった例だけ述べさせていただきますが、特に、他の温室効果ガスの中でもHFCなど代替フロンガスへの課税というものを行うべきだと考えております。その税収は約 1,600億円ぐらいになると考えております。
 ちなみに、ようやくフロンの回収、破壊の法律ができて、そういったものが進みつつありますが、それとはまた別の課税を我々は考えております。
 これは、先ほどの連合さんの後の質疑応答で出ていました、原子力や大規模ダムの電力への課税をどうするかということです。これは、炭素税は原子力発電や大規模ダム水力発電をコスト的に優位に置くと。我々は、これらの方式というのは、CO2 は排出しないけれども、非常に環境負荷が大きいと。特に原子力は将来世代へのツケが大きいということで、温暖化対策という名目で、こうした環境負荷や将来世代へのツケを残してはならないと考えています。そうした意味で、炭素税の導入と同時に、原子力発電や大規模水力発電に対しても同等の課税を行うことが重要であると考えております。
 ただし、その方法については、まだ我々は議論途上でして、実際にヨーロッパでは皆さんご存じのとおり、電力に対して課税をし、そして、例えばコジェネレーションとか再生可能なエネルギーに対しては免税にするといった形で、化石燃料と同時に原子力や大規模水力発電に課税をするといった形もありますので、そういった形も考えられるかもしれませんが、我々は上流課税を提案していますので、例えば化石燃料だけ上流で課税して、原子力と大規模水力発電だけ下流でかけるということもあり得るかと思いますし、逆に、ヨーロッパでは電力用の化石燃料には免税して、電力にそれをかけるといったような方法もあるかと思いますが、その点に関しては、まだ議論中です。
 ちなみに、原子力発電や大規模水力発電に火力発電と同等の課税を行うという範囲において 4300億円相当の税収が上りますので、これもまた他の対策に使えるわけです。
 補論の最後なんですが、財政の支出改革に関して述べさせていただきます。
 先ほど、我々は、地球温暖化対策予算が必要であると。しかし、炭素税収を地球温暖化対策予算には使わないということを選択したと申し上げましたけれども、やはり地球温暖化対策を早急に進めるためには、新たな地球温暖化予算が必要になってくるわけです。
 それは、ここに挙げさせていただきましたが、特に我々の炭素税の効果を積み上げた場合に考えましたのが、実際、炭素税が 6,000円ですと 6,000円以下の対策、非常に安い対策にもかかわらず、実際に行われていない、それが非常に我々消費者と企業が長期的な視野というのは持ち得ないというところで起きてくるという現象なんですけれども、安いにもかかわらず、あるいは長期的に得になるにもかかわらず進んでいない対策というものを後押しするための政策として、炭素税やこういった温暖化対策予算を使うということです。我々は社会的に非常に大きな負担になるような対策を押し進めていくというようなことではありません。
 我々の試算では、環境省の試算とかを使うと、約 3,720万トンの 6,000円以下の対策があると考えております。これは約11%に上ります。この11%の削減が進めば、大綱施策と合わせて、1990年の98%にまで削減できるという非常に信じられないような結果が出てしまうわけですけれども、そういったことを考えています。
 それとともに、しかし、若干燃料転換に関しては、コストが高いということと自然エネルギーに関して、風力発電や太陽熱等はコストが安いんですけれども、太陽光は高いと。しかし、こうした燃料転換や自然エネルギーといったものは、コストが高くても導入すべきではないかということで予算をつけた方がいいというふうに考えております。
 こうした予算をつけるのに、エネルギー関連の予算で、道路特定財源でも6兆円、エネルギー特別会計だと8兆円あるわけです。こういった予算の減額分の一部というものをちゃんと地球温暖化対策予算に回すということを考えております。
 あるいは、オプション2としまして、特に道路特定財源の中でも自動車重量税の国分というのは一般財源化すべきだということで小泉内閣は主張していますが、この分だけでも 7,000億円ありますので、この中から温暖化対策予算に回していくということも可能であると考えております。
 ちなみに、さまざまな試算をしているんですけれども、例えば 1,000億円ぐらいの地球温暖化対策予算の増額という場合には、もしかしたら炭素税の税収分から1兆 7,000億円全部を温暖化対策予算に回すというのは非常に問題が多いかと思いますけれども、 1,000億円ぐらいの温暖化対策予算にも回してもいいのではないかといったような議論は、我々の研究会でも議論しているところです。
 しかし、基本的には、炭素税収から温暖化対策予算を回すということではなく、削減すべき財政支出を削減をすると。それと同時に、ふやすべき支出をふやすという考え方に基づかなければいけないということです。
 最後に、6%の削減の全体像と炭素税の関係について述べさせていただきます。
 炭素税は、少なく見積もって2%程度の削減効果しかないということですけれども、我々の提案では、それととともに、イギリス型だと思いますが、場合によっては、企業独自に削減協定を結んだ場合に炭素税を軽減するといったようなことで、他の取り組みと合わせていくということです。イギリスが取り入れた排出量取引ということもあり得るかもしれないです。こういった炭素税という削減量がなかなか確定し切れない政策を違う政策と一体として提案することも1つあるかなと思って検討中です。
 そのほかに、やはり炭素税だけではなくて、石炭税やフロン税も重要でしょうし、財政支出改革というものもあわせていく、さらに、その他の政策で情報提供なんかも挙げられますけれども、炭素税は、上流課税にした場合には、ガソリンや電気に関しては、レシートに炭素税が幾らということを記入することは比較的簡単ではないかと思いますので、そういったことをすることによって消費者の意識を向上させていくことができると思いますので、そういった効果もあると思います。
 こういったさまざまな政策を組み合わせることによって、6%削減を実現していく。その中で、やはり炭素税は、基本的に税収中立であれば、社会的には非常に受け入れられやすい税ではないかと考えておりますので、早期にやれることはやるという考え方です。
 最後に、本提案の概要をまとめさせていただきます。
 我々は、早期実現を優先して制度設計をしております。そのため、2003年4月導入を目指しておりますので、炭素トンは 6,000円ぐらいの炭素税にしております。ねらいは、税の価格インセンティブによる小規模主体も含めたあらゆる主体のCO2 排出削減です。特に、雇用や低所得者へ配慮した制度設計ということで、税収中立を行うということです。
 さらに、産業の国際競争力の面から配慮する措置をとります。そして、それとは別に、CO2 排出削減をさらに担保するために努力した企業への軽減や緩和措置をすると。これは、我々もいつもNGOの中で非常に議論して、統一見解ではないんですけれども、検討中ということです。
 さらに、エネルギー課税の改革に関しましても、可能な限り実施します。その原則は、エネルギー諸税に関しては現行税率を下げないということと、最終的に一般財源化をするということです。
 これで本当に最後ですが、提案の全体の内容についてであります。
 炭素税は税率6,000円で、税収約1.7兆円、課税対象は化石燃料起源のCO2 です。この税収を雇用対策と低所得者対策として、企業と家庭に返すということです。炭素税以外の政策とのポリシーミックスを積極的に進めることによって、しっかりと6%削減を実現していくということです。それによって、先ほど連合の方もおっしゃっていましたけれども、地球温暖化の防止とともに、雇用拡大につながるような社会を実現していくということが我々の主張です。
 雑駁な説明ですけれども、またデータ的なところでは、先ほど申し上げましたが、もしご質問ありましたら、これからお答えします。
 本日は、本当にこういう機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。

○飯野委員長 早速ですけれども、ご質問ございましたら。
 まず横山委員、どうぞ。

○横山(裕)委員 2点お伺いいたします。
 特定財源にしないという理由として、特別会計が取得権益として不要な使途を継続させるということで、これまでの特定財源に対する不信感がかなりあるということで、その辺はよくわかるんです。
 一方で、これで得た税収を補助金に充てるとか技術開発に充てるかということになると、税金はかなり少なくてもかなりの効果を上げることができるわけです。それを先ほどのように別枠で、単に技術開発とかには通常の予算から充てればいいんだといっても、なかなかリンクすることが難しいと思うんですよね。その辺をどうお考えなのか。
 もう一点は、これも似ているんですけれども、原子力の問題で、今回のは全く二酸化炭素についてだけかけると。原子力と水力については、別にあるということになると、それも私は、こういう目的で炭素税を設けるといっておいて、原子力と水力は別というのも非常に現実性がないような気がするんですよね。そういう意味から言うと、炭素エネルギー税ということで、1つの制度として原子力、水力にもかけていくという方が現実性があるような気がするんですが、いかがでしょうか。

○説明者(足立) 非常に難しい議論でして、このあたりも我々も何度も喧々諤々で議論させていただきました。これは、決して逃げるわけではないんですけれども、今、我々の研究会からは気候ネットワークの方も来ていまして、一応今回は役割分担として、私が発表で、畑の方がメーンになって答えるということですので、一応私の方は補佐するという形で、済みませんが、畑の方から自己紹介と今の点に対してもお答えさせていただきます。

○説明者(畑) 済みません、ちょっと諸用があって途中から参りました。気候ネットワークの畑と申します。よろしくお願いいたします。
 今、横山委員から2点ご質問があったんですけれども、まず1点目については、基本的に、この税は本来のというか、価格インセンティブでCO2 削減を促す、そういうメカニズムを入れて経済という形で全体に入れていかなければいけない。そこのところをねらいにしていますので、まずかけると。こちらを重点に置いています。
 ですから、おっしゃるように、使途はもちろん重要ですし、それによって削減を図るということも必要なんですが、これはあくまでも今回の提案では2次的なものということで分けるようにしました。
 それで、確かに一番最後の補論のところで説明したような、別の何か今の特定財源等を見直して、それを温暖化対策に振り向けるというのが確かに担保できないんじゃないかと、こういうご指摘だったと思うんですが、それは、おっしゃるような問題はもちろんあると思います。
 ただ、財政全体として、やはりできるだけ特別会計、特定財源を減らして、温暖化対策といえども、一般の財源の中できちっと確保するような形にしていくというのが本来あるべき姿かなと思って、このような提案をしております。では、温暖化対策の予算をふやす具体的な手当は何かと言われると、そこは対策はないんですけれども、それはやはり今の予算の中できちんと国会で議論されて、そういうところが決まっていくというのが1点目です。
 それから、2点目のご指摘、電力というところの原子力という点ですけれども、これについては、実はまだそれほど私たちの中でも詰めた議論には至っていなくて、これは、必ずしも炭素税と別の税にするということに合意されているということではありません。炭素税という名前で全部原子力や大規模水力発電の部分もカバーしてしまってもいいのではないかという意見もあります。確かに、分けると複雑になりますので、その辺の制度設計については、またこれから少し考えたいと思っております。
 以上です。

○説明者(足立) 特定財源に関しましては、もし 1.7兆円になりますと、我々がちょっと危惧しましたのは、やはり 1.7兆円にこれまで道路予算とか原子力予算も温暖化対策予算になってしまうということで、非常にそういったものが入ってしまうのではないかということです。そういう意味では、ある程度少額の、例えば 1,000億円とかそれぐらいの額だったらいいだろうけれども、というところで、やはり全部を温暖化対策予算に回してしまうということは非常に大きな問題だったということです。
 ちょっとお時間をよろしいでしょうか。これはまだ全然我々の方でオーソライズされてないんですけれども、例えば6%削減を担保するための財政支出の試算例みたいなものなんですけれども、これは、先ほど申し上げた 6,000円以下の安い対策を実現するために、さまざまな財政支援が必要だと。これは、やはり財政措置だけではだめで、ある程度の緩い規制みたいなものがもし入るとしたら、 1,000億円強ぐらいあれば、ある程度対策は進むかなというところです。規制等が無理だったらある程度また財政支援がふえるんですけれども、この辺の政策のバランスになると思うんです。これは細かく説明している時間はないんですけれども、基本的に大体 1,000億円強ぐらいの温暖化対策予算が我々は必要かなといったようなことを1つの試算として出していまして、そういったものであれば、ある程度炭素税の中からつくることも可能かもしれないということもありますが、逆にそれぐらいであれば、財政支出をどこかで削減することは非常に可能ではないかなというところも考えていいかと思います。

○飯野委員長 飯田委員、どうぞ。

○飯田委員 私も横山さんと全く同意見で、まず炭素税研究会のお名前をエネルギー税研究会に直すことをお勧めします。これは皮肉で申しわけない。
 もう一つは、炭素トン当たり 6,000円だとガソリン1リットルについて4円と。普通の車はガソリンを大体 100リットル入れますね。そうすると、 400円プラスになるわけです。では 100リットルでどのくらい高速道路を走れるのか。高速道路料金は幾らかおわかりですか。恐らく 100リットルで高速道路を走ったら高速道路料だけでも1万円超えますよ。その中の 400円というのは、どの程度のインセンティブになるのか。それから、連合の方もおっしゃったけれども、ガソリンは安いです。炭素税でいけば当然安くなりますね。今より下げないにしても、ほかよりはずっと安い。しかも、これ川上にかけるとすると、これを転嫁するのは非常に難しいです。今でもガソリンの安売り競争をやっています。90円台もあります。 100円以上のもある。そういう人たちがどの程度抑制されるか。
 私の近くのことで申しわけないですが、駐車場にかつては5ナンバーがほとんどだった車が、今では3ナンバーですよ。車というのは、便利さだけではなくて、ファッションなんですね。ですから、より格好いい車、プリウスも売れていますけれども、より高い車も売れているんです。ですから、4円ぐらいの税金をかけて、果たして炭素税による削減効果があらわれるかどうかという疑問があります。いかがでしょうか。

○説明者(畑) ご指摘ありがとうございます。
 もちろん価格によるインセンティブ効果ということを考えれば、税率は高い方がいいのは当然で、 6,000円とか 3,000円とか、それぐらいあれば効果があわられるかどうかと、そういうご意見があるのはもちろん承知しています。
 ですから、本来、そういう面では環境への税として、炭素税1万円とか2万円、5万円とか。そういう提案をした方がいいのかもしれないんですけれども、それはそれで、今度負担が大き過ぎるという意見もまた出てくるということで、これは一種バランスを考えてこれぐらいの税率というのを提案をしています。
 おっしゃるインセンティブ効果が弱いのではないかということですけれども、それは、確かに 6,000円という税率ではそれほど強力ではないかもしれませんけれども、一定の効果はあるだろうと。それはさまざまな試算が出されていますし、前回、ここの検討会でも出されていた一応の初めの試算では 3,000円上乗せでも 830万トンの削減が可能だという試算もありますから、そういう面で、ある程度の効果はあるというふうに考えております。
 皆さんがおっしゃるような一般の人といいますか、そういうところについては確かに弱いのかもしれませんけれども、こういう税が導入されるということで、1つのアナウンスメント効果とかそういうので全体に少しずつ行き渡っていく。こういう税が入って、これからは節約しようかと、そういう意識に訴えていくと。そういう部分もあると思っています。ある程度効果が弱いということは承知の上で、 6,000円ぐらいの税率ということで提案していますが、効果が全くないということはあり得ませんので、それなりの意味はあるというふうに考えております。

○飯野委員長 天野委員、どうですか。

○天野委員 大変参考になるご報告をいただきまして、どうもありがとうございました。
 この中でいろいろご指摘になられたので、私も環境に対する効果とか雇用に対する効果、社会全体に対する税収負担を起こさない効果、いろいろなことを考えられて、もう一つ大変重要なのは、連合の方もおっしゃっていたけれども、やはり産業の国際競争力ですね。これもお考えにはなっていらっしゃるのですが、余り前面には出てこなくて、目下検討中というようなことだったと思いますが、ここで取り上げられている、例えば国境税調整、それから自主協定、そして排出取引、それから単純な減免と。このぐらいがあるかと思うんですが、私は最後のオプションは外した方がいいと思うんです。単純に減免をやりますと、最初に言いました環境効果がなくなってしまう。ですから、その減免で、その3つとも例えばご調査してられるように、自主協定とか排出協定と組み合わせるという全国的なものというのが必要だろうというふうに思います。やはり国際競争力は維持するけれども、環境効果はちゃんと持たせるという視点が大変大事だろうと思います。この辺は具体化して、一緒に組み合わせるのがいいんじゃないかというふうに私は思います。
 ヨーロッパでやっているから免税にしましょうというのは、私はやらない方がいいのではないかと思います。つまり、最初の環境効果をちゃんとやりますというのが崩れてしまうんですね。
 それから、もう一つ、国境税調整というのは、確かにWTOの関係もあって難しいというのはおっしゃるとおりなんですが、例えば現在、京都議定書の細目が詰まれば、これは国際的にも法的拘束力があるMEA、マルチラテラル・エンバイロメントの一種ですね。それがちゃんと成立するわけですから、そういうものが成立したときに、WTOが今までどおりの炭素税に対する国境税調整はだめだということを言い続けるとは私は思わないんです。
 ですから、情勢がかなり変わりますので、例えばオゾン層の協定ができたときに、米国が国境税調整をやりました。それがそのままいっているわけですから、単純な国境税調整ではなくて、そういった国際的な意味をバックにした国境税調整というのはこれから考えるべきだし、日本としてもそういう提案をすべきだしというふうな、今すぐにはできるかどうかはわかりませんけれども、そういう提案をしているんだと思います。
 それから、もう一つは、これは米国なんかでいろいろ計量的な研究もやっていますけれども、国境税調整というと、輸出税をどれだけ還付するか。輸入税に対してどれだけの税率でかけるかというのが大変ややこしくなるわけです。
 しかし、あらゆるものについて考えなくても、ごく限られた数の産業部門だけを計算の対象にして、そして、そこで具体的に使われている技術、国際的な標準技術というようなものを明確にして、それで計算をすると、そんなに大して手間がかからないという研究をやっている人もいるんです。そういうことも参考にされて、何かの提案をされるのがいいのではないかというふうに思います。

○説明者(畑) 大変貴重なご意見をありがとうございます。
 実は、私たちの議論の中ではその分を多分一番ぐらいに時間をかけているんですが、具体化していないので余り書けないということがあって、5ページの一番上のところに、国境調整を行う場合の制度設計の試案というのを小さな字で4行ぐらい説明をしているんですが、こういうようなことを議論するに際してはかなり時間をかけております。
 やはり、今おっしゃったように、京都議定書を発効させるというようなことを考えれば、WTOの調整とかも変わってくると思いますし、合理的という点では、国際競争力の配慮という点で国境での調整が一番効果的だと思っていますので、できるだけそれを追求しようということで私ども考えています。
 それから、行政コストの面でもいろいろ税関の仕組み等、それから税務署の仕組みで、現在の輸出入に対してのいろいろな諸税の扱いを考えると、それほど難しくないんじゃないかというふうに考えています。
 ここでは、炭素税率の早見表みたいなものをつくって、それに基づいて全部一律で払い戻しと輸入品のみなし課税を行うと。これは、現在、輸出入の際に、消費税とか石油税とか実際に同じことを行っていますので、それに1つふえるだけですから、それほど行政コストか事業予算はふえることはないんじゃないかということで、かなり突っ込んだ議論をしております。
 では、この早見表はどういうふうにつくるか。今、全品目でなくてもいいのではないかというようなご意見をいただきましたが、その辺もまだ議論が必要だなというふうに考えております。その辺、これからも進めたいと思っております。
 それから、おっしゃるとおり、何もなしに軽減するというのは一番よくないと。それは環境NGOは当然そういうふうに考えていますので、そういう制度設計にはしないというような方向で検討をしていきたいと思っております。
 どうもありがとうございました。

○安原委員 全体として非常に工夫された案になっていると思います。税収中立ということで、できるだけ合意が得られやすいようにするという点は非常に重要だと思うんです。そしてまた、中小企業とか低所得者対策ということを考えるということも重要だと思うんですが、その結果として、ここのご説明にありますように、個人向けには国民健康保険、それから企業向けには雇用保険の保険料負担の軽減という形を提案されておりますが、社会保障全体としてこれから高齢化がどんどん進んでいけば、全体として保険料負担なりあるいは国庫負担なりがふえていく。それをどう給付とバランスをとるかというのが大問題になっているわけでございますが、国民健康保険について言えば、もう既に国庫負担が5割入っているんです。それで、保険料負担は5割ということで、国民皆保険制度でやっているわけです。もうぎりぎりのところへ行っている状態にありますから、これ以上保険料を減らして国庫負担をふやすという形をとると、社会保険方式でなくなるという基本的な問題にぶつかるわけです。ですから、こういうやり方が受け皿の方で整合性がとれるのかどうか、もう一回よくチェックしていただく方がいいんじゃないかと。
 それから、例えば雇用保険にしましても、今は確かにどんどん失業者がふえる状態にはなっておりますけれども、それでも国際的に見れば異常に高いということではなくて、この雇用保険の保険料が国庫負担で調整しなければならないほどの水準にあるかというと、そうではないと思うんです。社会保険として、本来の形でやっていくことができる状態だと思うんです。ヨーロッパの例なんかを参考にされてこの案が出てきているんじゃないかと思うんですけれども、ヨーロッパの場合は、本当にぎりぎり社会保険料負担が高くなって、これ以上上げられない、どうするかというぎりぎりの選択として、あの手法が使われたと思うんです。ちょっと日本の状況とヨーロッパの状況、あるいは制度の違い等もありますので、そういう税収中立を考える場合の対象となる制度あるいは税制がどれがいいのかどうか、さらなる検討をしていただくのがいいんじゃないかと思います。これは感想です。

○説明者(畑) ご指摘ありがとうございます。
 おっしゃるとおりで、ここで私たちは社会保険制度をこうしようとか、そういうところにはなるべく踏み込まないつもりですし、例えば、特別の視点ですが、直間比率はどうするか、大きな政府はどうかとかいろいろあるわけですけれども、そういうところになるべく踏み込まないで、踏み込み出すときりがありませんので、踏み込まないで炭素税とそれにかかわるところだけの制度設計をしようと。一応そういうつもりでやっているんですが、確かにこの使途のところで社会保険料を軽減するということになると、ここの部分に少し深く入ってしまわざるを得ないと、おっしゃるような問題が出てくると思います。その辺は、もう少し勉強しようと。
 ただ、ここで余り詳しく書いていないんですが、なぜこういうのを選択したかというと、確かに結果としてヨーロッパ型になっているんですが、企業についても中小企業とかにできるだけ広く行き渡るというふうに考えました。というのは、最近、非常に零細の企業では健康保険とか年金とかがなくて雇用保険と労災だけと、そういうところもあるわけです。そういうことを考えますと、雇用保険料や労災保険料はすべての企業に行き渡るということを考えています。
 個人向けに国民健康保険にしたのは、農家とか自営業とか個人の人というのは、みんな国民健康保険に入っているわけで、会社に勤めていませんから雇用保険料は払っていないわけですね。ですから、雇用保険と国民健康保険ならば、一応基本的にあらゆる人をカバーできるかなと。そういう発想でもともと考えています。
 もう少し今後検討を重ねたいと思います。

○飯野委員長 それでは、最後に竹内委員、どうぞ。

○竹内委員 ありがとうございました。
 1つは意見で、1つは質問なんですけれども、私の意見としても、社会保険料と環境税をリンクするというのは、提案としては私は余り賛成ではなく、むしろ税収中立というのをここに持ってくることは非常に逆効果というか、本来、環境税というのは、税収中立でできるわけがないわけで、やはり社会コストが上がっていくわけだから、社会コストが上がった分は環境税として税収が増税になるということは、そこを踏み込めなければ、本来の意味で、大衆の危機感というかそういうものを巻き込めないので、税収中立は要らないというのが私の意見で、むしろ、さっきおっしゃったインセンティブ、つまり研究開発とか技術開発へのインセンティブをどうやったら引き出せるかの方に見えない効果を期待するというか、そこを考えますと、この提案のエッセンスは、ガソリン税の1トン 6,000円で、具体的にガソリン1リットル当たり約4円と、このエッセンスに帰着しているんですが、先ほどおっしゃったエネルギー全体の流れをどう変えるのかと。これは、ガソリンだけではなくて、さっきおっしゃった分散的な発電の方法とか、ほかにも電力、ガス、その他エネルギー関係の体制は今極端に言えば一方通行の供給体制になっているわけで、それを最終的な消費者に近いところで、どうやって制御装置を組み込んでいくかというような形が必要だと思うんです。
 そこへのインセンティブとこのエッセンスはどうもつながらないので、これは質問なんですけれども、私の考え方が違っているのかもしれないんですが、簡単にお答えいただけるとありがたいです。

○説明者(畑) ありがとうございます。ご質問の方なんですが、もし私の理解が違っていたらあれですが、私たちの提案はあくまでも地球温暖化防止で、それで二酸化炭素の排出を減らすということですから、その二酸化炭素の排出のもとになっている化石燃料の消費を抑制・削減していく方向にもっていきたいという、そのためのこの税ということですから、そういう意味で価格インセンティブによる排出削減ということを掲げています。
 ですから、このエネルギー全体の流れという、おっしゃった点については、当然化石燃料といいますか、化石エネルギーをできるだけ減らして、自然エネルギー等、そういった環境負荷の低いものに流用をしていく、そのための一つのツールというか、そういうことで出たものです。
 ですから、エネルギーの方向としては、当然再生可能エネルギー等をふやしていく、核燃料は減らしていくということで考えた政策、そういう趣旨であります。そういうことでよろしいでしょうか。
 あと、税収中立と増税の部分については、これは例えば世論調査などでも、こういう炭素税とかの税収は、温暖化対策に使うという方が受けがいいというのは承知をしているんですけれども、一方で、現在の構造改革とか言われていますけれども、政府の税収が全体としてふえる、要するに国全体で増税になるのはけしからんという、そういう意見もやはりかなり多いと思います。
 その辺のバランスだと思うんですが、これはやはりさっきもちょっと申し上げたように、大きな政府、小さな政府と、そういうところまでなるべく踏み込まないとすれば、とりあえず現状維持で、政府全体としての税収がふえもしないし、減りもしないというところで、まとめているという形になります。

○説明者(足立) 竹内さんのおっしゃられたところは、本当に大きな議論になりまして、やはり基本的に我々は環境NGOなので、増税でいいという方がほとんどだったんじゃないかと思うんですよね、私も含めまして。
 ただ、それで、結局そういったところでなかなか環境税が実現してこなかったというのが日本の状況かなというところで、やはり一番が2003年とか、早期に導入するというところを我々は優先しようということで、こういった提案になっているんですが。
 やはり実際には、おっしゃることも非常によくわかりますし、ただ、長期的な観点に立った場合には、税収をある程度増税にして、全部減税に回さないとか、そういったことはやはり我々の方でも大体一致したような感じかなと思っておりますけれども。

○飯野委員長 失礼しました。鳥井委員、どうぞ最後にご質問ありましたら。

○鳥井委員 こういうことを考えるときに、やはり例えば産業構造がどう変化していくのかというようなことを本当は考えたいわけですよね。その点、どのくらい考えられたのか、それから、どのくらいそういうことを議論するべきなのかということですね。その点、ちょっとお聞きしたい。
 もう1点申し上げたいんですが、原子力は環境に悪くて、太陽や風力は環境にいいと。これはそう簡単には、我々が思い込むほど簡単では実はないと思うので、そこのところはよくきちんと、トータルの環境負荷ということをお考えいただいた方がいいように思います。

○説明者(畑) ありがとうございます。答えやすい方からあれですが、原子力については、やはり私たちは放射能というものが最大の環境負荷であるということは、環境NGOとしては思っていますので、それを優先するというか、優遇するような制度というのはやはり考えがたいと。太陽光がエネルギー効率がいいかという問題ももちろんあると思いますけれども、エネルギー効率という点だけじゃなくて、やはり放射能を漏れさせないという、それは非常に巨大な環境負荷だというふうに考えていますので、やはりそれは許容できいないというのが、これが環境NGOの基本的なスタンスだというふうにご理解いただければ。
 それから、産業構造については、もちろんいわゆる持続可能な開発とか、そういう面で、できるだけ環境負荷の低い社会になる方向に進んでいくべきということで、私たちもこういう手法で提案をしていますけれども。
 じゃ、具体的にそこで、今の産業構造がどういうふうに変わっていくかとか、その辺のイメージまでというのは、この研究会ではまだそれほど突っ込んだ議論はしていないというのが現状です。確かにご指摘のようなことは重要だと思います。今後議論したいというふうに思います。

○説明者(足立) ありがとうございます。太陽光と風力でも環境負荷は絶対あるわけですよね。そういう意味では、どのエネルギーを選択するかというところで、最後は何かを選択しなきゃいけないということで、我々は自然エネルギーを選択しようと。
 ただ、現状ですべて自然エネルギーで賄うことはできないわけですから、やはり急激に原子力を全部シャットダウンしようということは、我々は、できないかなと思っています。
 それと、産業構造に関してなんですけれども、できたら、その産業構造の転換みたいなところも出したいと思っているんですけれども、我々の基本的な方針として、ある程度ちゃんとやった企業は、どこでも得になるというようなところもある程度出して、じゃないと、ばたばたつぶれていってしまうという話では非常にまずいので、そういったところのバランスで、ミクロの積み上げの方では、どの産業もある程度ちゃんとやれば、しっかりと持ちこたえていけるというような形で出したいなというような議論もありますし、もう一つは、先ほどのマクロのシミュレーションモデルでも、CO2 削減効果だけじゃなくて、ちゃんと産業、GDPとか、あと雇用効果等もちゃんとやらないといけないなということで、しっかりと今後ともやっていきたいと思います。
 以上です。

○飯野委員長 どうもありがとうございます。
 大変具体的な提案をしていただいたので、議論をしていたら、本当に1日かかってもし切れないと思いますけれども、次の議題もありますので、きょうのヒアリングはこれくらいにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。
 本日のヒアリングはこれくらいにいたしまして、次回は経済団体等からのヒアリングを予定しております。
 それでは、残りの時間を使いまして、次の議題にまいりたいと思います。
 前回、温暖化対策税にかかる制度面の論点のたたき台について、非常に活発な議論をいただきました。この意見を踏まえた上で、きょう、たたき台のバージョン2を事務局に用意していただきましたので、その変更点を中心に説明を受け、その後、まだ余り議論されていない部分も含めてご議論いただければと思います。
 それでは、説明をお願いいたします。

○三好環境経済課長 それでは、資料3に基づきまして、若干お時間をいただきまして、ご説明をいたします。
 今、委員長の方からご紹介ございました、前回たたき台をお示ししたわけでございますけれども、これまでの議論の中で、論点の整理の仕方あるいは項目の立て方についてのご意見でありますとか、あるいは各項目につきましてのコメント、あるいはその場合に具体的なご意見をいろいろいただいたわけでございまして、それをできるだけこの論点整理の形で反映をさせていただきました。
 大きな項目の立て方の変更点といたしましては、まず1番目に「税の目的について」という項目が立っているわけでございますけれども、これが先日の議論の中では、課税原則との関係で正面から問題点としてございましたので、まず税の目的ということをどういうふうに位置づけていくかということを1番目に掲げたわけでございます。
 税の制度以下につきましては、項目の立て方は同じでございます。
 それで、内容に入らせていただきます。まず1番目の「税の目的について」ということでございますが、これ今申し上げました、従来の課税原則であります、まず税収確保目的、公平・中立・簡素というものと、汚染者負担原則、いわゆるPPPというものをどのように関連づけていくのかということで、そういう問題提起がございました。ご議論の中では、環境保全やCO2 排出削減という政策目標を達成するために税制を活用することは十分考えられるのではないか。あるいは、PPP原則を新たな課税原則とするという課題にもチャレンジする価値があるのではないかというようなご意見をいただいたように考えておりまして、そのように整理をいたしております。
 続きまして、税の制度でございます。制度のオプションを設計していく際に検討が必要な項目ということで立てさせていただいておりまして、基本的に前回を踏襲いたしておりますが、(1)から、ちょっとページがたくさんにわたって恐縮ですけれども、3ページまでの(4)までで整理をいたしました。この基本的な立て方は同じでございます。
 課税段階ということでは、前回もご議論がございました化石燃料等の流通の上流課税という考え方と、それからできるだけ下流に近い形と、いろいろあるわけでございますけれども、その場合に、だれを税負担者として想定し、納税義務者はどう考えるかという問題がございます。
 幾つかご意見ございまして、まず簡素という観点からは上流課税が望ましいのではないかというコメントが出されまして、その場合、今のヒアリングの中のやりとりでもございましたわけですが、転嫁の問題でありますとか、あるいはそれに絡みまして、PPPの原則との関係をどういうふうに考えるかという問題があろうかというふうに考えております。
 それから、それのちょうど裏返しになるわけでございますけれども、下流できめ細かく課税するということであれば、その税負担は転嫁され、対応策もとられるということでございますが、その場合のきめ細かな課税段階の設定というのがそもそも可能かということがございます。
 2ページ目にまいりまして、さらに、これはちょうど裏腹でございますけれども、簡素という観点からは、どういうふうに評価できるだろうかという問題がございます。また、さらにご議論の中では、税という政策手法というのが、行政側が十分な情報を持たない場合でも、価格のメカニズムを通じて効率的にCO2 削減効果が得られるということと、きめ細かく対応策があるところに設定していくということについての問題点でありますとか、あるいはきめ細かさの程度によりますけれども、その公平性、これは先ほどの公平という原則との関係でございますけれども、公平性との観点ということが指摘されるのではということでございます。
 それから、これも今のヒアリングの中でご議論がありましたが、PPPという観点から、あるいは化石燃料の最終消費者である個々の排出者に課税するということもあり得るわけでございますけれども、これは前回のご議論では、執行上非常に難しいのではないかというご指摘があったわけでございます。
 それから、最後は電力についてでございまして、これにつきましては、今化石燃料の上流または下流ということで区分をさせていただいておりますけれども、エネルギー転換ということでは、燃料消費というのは下流部分なんですが、その政策そのものがエネルギー転換であるということでありますので、電力を供給しているということで、いわゆる化石燃料のような上流、または下流という区分にはなりにくいということで、ここに[1]から[2]、済みません、[2]が2つございますが[3]の誤りでございまして、そのあたり、双方に課税するのか、片方を非課税にするのかという問題点があろうかと思います。それから、現在議論されております電力自由化との関連をどう考えるかという論点もございます。
 それから、課税対象でございます。これは実は前回お示ししたものとそれほど変わっておりません。前回では余り議論いただけなかった部分でございます。今のヒアリングの中でもございました炭素含有量に応じて化石燃料に包括的に課税する、あるいは個別燃料ごとに課税を検討していくというもの、それから石炭の問題、石油関連の問題、天然ガスの問題、それから電力につきましては、ただいまご説明したことと同じことを簡単にまとめて書いてございます。
 その他制度に直接かかわる論点といたしまして、課税標準・税率をどのように設定するかという問題の立て方は同じでございます。前回、従量税いう考え方と従価税という考え方、いろいろ具体的に考えてはどうかということでございましたので、ここにはこのような形でまとめさせていただいております。従量税とする場合に、炭素含有量に応じた税率設定とするか、燃料種別ごとに設定するかという問題、それから従価税について、そのような考え方があるかどうかということでございます。それから、全国一律の国税または地方税をどのように考えるかということがございます。
 それから、その他ということで特に書いてございませんけれども、これも今ご議論ございました還付とか、減免ということについて、そのやり方、方式をどのように考えていくかということは、この論点にかかわるものかなというふうに考えているところでございます。
 それから、3ページ目(4)でございます。「既存税制との関係整理」ということで、以上(1)から(3)の論点について、既存税制がどうなっているかを踏まえて検討することが必要であるということで、ここは例といたしまして、先日ご説明いたしました諸外国の例で、このあたりをどういうふうに対応しているかということを場合分けいたしまして、お示しをしているところでございます。内容につきましては、前回ご説明したものでございます。
 それから、3番の「税による効果・影響に関する評価について」ということで、実はこれは先ほど来のご説明の中にも入っているわけでございますけれども、前回のご意見の中で、評価ということは、どういう原則あるいは項目に照らして評価しているのかということを明示的にやるべきであるというご指摘がございまして、その中で(1)といたしまして、従来から課税原則と言われて整理されているものからの評価と、それから4ページの冒頭の(2)といたしまして、この温暖化対策税という政策目的の観点からの評価ということで、明示的に整理をしてみました。
 それで、お戻りいただきまして、3ページの(1)課税原則の観点からの評価ということでございますが、これは公平・中立・簡素ということでございますので、それぞれ[1]、[2]、[3]として、公平・中立・簡素という観点を明示いたしまして、これまでご議論をいただいております水平的公平、垂直的公平という、従来の課税原則における公平とともに、CO2 の排出責任という観点からの公平でありますとか、あるいは将来世代との関係での世代間の公平という問題があるのではないかということでございます。
 それから、中立につきましては、ここに書いてあります経済あるいは、今もご議論ございました国際競争力への影響をどういうふうに考えるか。
 それから簡素でございます。ここは特に、簡素は簡素ということなのでございますけれども、この資料の中で申し上げれば、上流の方が簡素であるということであるとか、あるいは排出者に課税していくということがそもそも可能であろうか、簡素という観点からも可能であろうかというような問題があろうかと思っております。
 4ページでございますけれども、CO2 排出削減という政策目的の観点からの評価ということで、幾つかその効率的という観点からの評価を入れております。この場合、前回のご議論では、対策コストということ、それから税の執行面に伴うコストと、双方考慮に入れるべきではないかということがございました。
 それから、最後の4番目の○につきましては、税の制度のところで掲げておりますものの再掲でございます。
 それから、4番目でございますけれども、「導入による諸影響への対応について」ということで、以上3の評価を踏まえて、諸影響を緩和するにはどのような方策があるか、これも今ご議論がございました幾つかの税の減免による対応のものでありますとか、あるいは税収中立とするか否か、国境税での調整というのをどういうふうに考えるか、財政的措置ということを挙げております。
 それから、これも今ご議論ございました影響緩和措置を講じるという場合に、元来の目的でありましたCO2 排出削減効果が失われてしまわないような工夫が必要ではないかというご指摘が前回あったので、このような形で整理をいたしております。
 それから逆に、これも今ご議論ございました環境への配慮ということで、温暖化対策という観点でということになりますけれども、再生可能エネルギーのものでありますとか、あるいは公共交通機関という温暖化対策となるようなものについて、何らかの対応が必要ではないかというのをここに掲げているところでございます。
 最後に、「その他の論点」といたしまして、他の温暖化施策との組み合わせというのが、前回、前々回とご議論をされております。税というものにつきまして、独立の施策として導入するということも考えられる一方で、政策パッケージという議論もあるわけでございまして、それを税の制度を検討する場合に、ほかの施策と組み合わせて考えるべきではないかということで、これはあくまでも例でございますけれども、[1]から[4]ということでお示しをしたものでございます。
 最後、その他のその他ということで、それ以外のもの、なかなかうまく整理できなかったものが入っております。税収中立とするかどうかと、それから税収の使途についてどう考えるかという論点であります。それに関連いたしまして、収入と使途は一たん切り離して議論すべきではないかというご指摘がございました。
 それから、なかなか大きな制度を伴うものですので、導入に関しては、段階的なアプローチが必要ではないかという、アプローチについてのご指摘もございましたので、それをここに整理をさせていただいております。
 以上、簡単でございますけれども、説明といたします。

○飯野委員長 どうもありがとうございました。せっかくこのたたき台をまたつくっていただきましたので、一応このたたき台に従って議論をいただきたいと思います。最後にまとめた議論ができたらと思いますが。
 まず、その「税の目的について」というこの項目についてでございますけれども、何かご意見ございましたら、どうぞ天野委員。

○天野委員 ありがとうございます。
 これは大変重要な点で、あとの2以下に全部関連してくると思いますが。まず中立という従来の課税原則があって、これはもともと税というのは税収を確保することが目的であるということで、それ以外の目的を排除しているわけですね。ですから、税収を上げるために、経済活動に対して影響を与えることを最初から考えないという原則があるわけですが、そのPPPというのはもともと影響を与えるような政策なわけですから、この中立という考え方とは真っ向から対立するんですね。
 ですから私は、この中立というのは、PPPをもし認めるのであれば、修正された中立性というふうな考え方がいるかと思うんですね。つまり外部性のような市場の失敗がないような状態が考えられる中立性ということに限って、外部性があるような場合には、それを修正するような構造に影響を与えるものはPPPの原則で認めるという形で、追加の原則を私は入れなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。それなしに両方入れますと、矛盾をする原則を並べるということになるので、そういう考え方がいいのではないかと、このように思います。
 それからもう一つは、汚染者負担原則(PPP)とこう書いてあるんですけれども、汚染者負担原則の中身がかなり複数の内容を含んだものになっておりまして、少なくとも私が見る限りでは重要な点が2つあって、1つは、先ほどの外部性を内部化するための原則という意味ですね。もう一つは、既に生じた私的財産権の損害等に対する責任を負うというふうに、責任原則といいますか。ですから、内部化原則と責任原則と、この2つが含まれることが多いわけですね。
 ただし、ここで以下に考えるような温暖化対策でとり得ることを考えるときには、内部化原則で汚染者負担であるということを考えているわけでありまして、必ずしも法的な責任を問うというところまでは入れないのが普通だと思うんですね。欧州なんかははっきりそういうことを言っております。
 ですから、汚染者負担原則の理解をここできちんとして、それで税の課税原則に踏み込んで、従来の中立という考え方、それから一番最初にありますけれども、税収確保目的、これもそれ以外の目的があるという形ですね。そういうことを含めて汚染者負担原則を考えるということが必要になってくるかと思います。これを入れますと、従来型の中立性の考え方が修正されますので、今言いました内部化原則としての汚染者負担原則というものは、当然経済社会の構造を変えて、構造を変えることがいかに有効であるかという判断が入ってくるわけですね。
 ですから、その簡素というのと、有効性というのとが、お互いにディレンマみたいになる可能性が出てくる。ですから、そういうことを考えた上で、従来の課税原則を変えるんだということを鮮明にしておかないと、あとで議論が混乱すると私は思います。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 諸富委員、どうぞ。

○諸富委員 同じく税の目的についてですが、これまで確かに税源調達、財源調達目的でなければ租税の構成要件をなさないということで、これまでやってきたと思うんですが、それは実は狭い税の考え方ではないかというふうに考えております。
 私は税法の専門家ではないんですが、しかし、税というのはそもそも財源調達目的と、それから実は政策目的の両者が組み合わさったようなケースというのは、多々これまで歴史的にもあったわけですし、アメリカでは例えばニューディール政策をやっていた頃に留保利潤税というものが入っておりましたが、これは完全な政策目的でしたし、日本でも租税特別措置という形で政策的な考慮をしてきたわけです。さらに地価税、これは前回水野先生が若干言及されましたが、地価税というのは、地価を下げるということを政策目的にした政策課税だと思います。地価が下がっていけば税収が減っていく、そういう税であったわけですから、導入のときに政策課税の当否をめぐる議論がなされたんじゃないのかと思います。ですから、これまで日本にも歴史的に政策課税の実績があるし、そういう議論が行われてきたという経緯があると思います。
 それから、前回非常に重要であったのは、水野先生が、これも触れられた点ですが、ドイツの憲法裁判所において、財源調達目的のみによって、租税の構成要件を構成するということで必ずしもなくてよいという判断が下された。つまり純粋に政策目的で租税を入れてもいいんだという判断が下されたということであります。これは今後影響を与えてくるのではないかと思います。この背後には恐らく、水野先生の解説を後で聞いたんですが、欧州委員会、EUのレベル、それからOECDのレベルでそういう議論が背景にずっとございまして、さらにその背景には、国連でもそういう議論がいろいろあって、政策目的を今後は積極的に使っていくというようなことを認めていこうではないかという議論の流れが背景にある。その点を踏まえていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○鳥井委員 私は、今まで随分省エネルギーやろうよという話に参加してきたんですけれども、本当にうまくいかないもので、結局民生と運輸だけが残っちゃったんですね。なぜうまくいかないのかと考えてみると、ほとんど行政側が政策手段を持っていないんですよね。ただ笛吹くだけで何もできないのが現実で、もしうまく税が使えれば、そういうところへ働きかける行政手段をつくることができるかもしれないという感じがするので、そういう視点が、ここへ税の目的について書くのがいいかどうかというのはよくわかりませんが、なんかそういう意識は必要だという感じは強くしますが。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 ほかに。安原委員、どうぞ。

○安原委員 前回、横山委員がちょっと言及されたことと絡むんですが、この整理では、いわゆる先ほど来議論になりました炭素税なのか、あるいは炭素税プラスエネルギー税なのか、あるいはエネルギー税なのか、いろいろこの組み合わせがあると思うんですね。EUなんかは、指令案では炭素税プラスエネルギー税で、国によってはいろいろあると思うんです。それがまた既存税制とどう調整していくかということとも絡むと思うんですが、既存税制は主としてエネルギー課税だと思うんです。
 だから、この限られた委員会で議論をする場合に、既存税制まで含めて、いろいろ調整を考えながらすっきりとした形にできれば一番望ましいわけですけれども、なかなか物理的には、あるいは政治的な絡みもございますから、非常に難しいのではないかという感じがいたします。
 したがって、整理の仕方としての一つとして、炭素税プラスエネルギー税として検討するやり方があって、既存税制はエネルギー税の性格を持っていますから、これはどう調整されるか、いろいろ政治的な動きもあって、別途検討が行われるということを期待して、炭素税に重点を置いてとりあえずは整理をしてみるということが、割と議論を進めやすくするのではないかなという感じがするんですが、いかがなものかということで、一応問題提起でございます。
 それからもう一つ、ここの2ページの(3)のその他の国税か、地方税かというところがございますが、これはどちらかということになっているんですけれども、温暖化対策というのは国全体のマターでございますから、国税になり得るとは思うんですが、具体的な対策はそれぞれ地方で相当やっていただく必要がある。その場合には、ある程度財源はいるわけでございますから、税としては国税であっても、その一部の税収について、一定の基準で地方の方に交付していくというような組み合わせの手法はあると思うんですね。それも一つの検討課題ではないかなという感じがいたします。
 以上です。

○飯野委員長 済みません、時間もありますので、次2番目に移りたいと思います。
 次、税の制度についてという、どの段階で税金を課していくのか、課税対象をどうするのか。それから今、安原委員が言われましたように国税なのか、地方税なのか、あるいは既存税制との関係をどう整理していくのかという大変な問題が全部並んでいるんですけれども、この点について何かご意見ございましたら。
 天野委員、どうぞ。

○天野委員 何カ所かにきめ細かくというのがしきりに出ているんですが、これは私は程度問題だと思うんですね。つまりきめ細かくというと、細かくやらなきゃいかぬようにとれるんですけれども、これはある意味で簡素という原則と、合致しないということを、そういう主張を含んでいるように思うんですが。
 しかし、そんなに細かく分けなくても、大きなくくりで課税をするということも可能なわけですから、どの範囲でやるかということを議論すればいいので、それは税の簡素化との関連で決めることだというふうに私は理解しています。
 それから、さっき上流、下流というのも、これも一番上流と一番下流というふうな極端な分け方のようにとれるんですけれども、もともと考えられているのは大口排出主体ですね。コントロールしやすい数が少ない大口排出主体がどこにいるかということで考えていると思うんです。ですから、必ずしも文字どおり上流からを考えるということではなくて、例えばエネルギー転換主体というのは数が限られていますので、これを対象にできるんじゃないか、そういうふうな配慮でされていると思うんですね。
 ですから、今電力が出てきましたけれども、エネルギー転換部分というのは消費者であり、供給者であるという。ですから、最終消費者なんていう言葉を使うから混乱が起こるわけであって、大口の排出主体であるというとらえ方をすれば、そこを課税対象にするという議論はできると思うんですね。
 ですから問題は、そういう大口を探していったときに、そこから外れる主体、非常に多数の主体が外れてしまうわけですが、その主体とのバランスをどうとるかという議論でないかと私は思うわけですね。それから必ずしも上流か、下流かという議論ではなくて、あるいはきめ細かく、あるいは大まかにという議論でもないと、私はそういうふうに理解しております。
 それから、どうしてそういうふうなとらえ方をするかというと、これは先ほど申しましたように、効果ができるだけ出やすいというか、後ろの方に「排出者責任」というのが出てきますけれども、この責任者というのはいろいろな意味があって、ここで考えるべき責任というのは、意思決定の責任なんですね。排出をふやすような意思決定をするか、あるいはできるだけそれを抑えて、同じ削減目標を達成できるような意思決定をするか。その意思決定の主体を対象にするというのが、実効性を上げる一つの考え方だと思うんですね。
 ですから、形式的にかけても、その主体が反応しないようなところにかけても余り意味がないわけですから、的確に反応して、それで排出削減できるような、そして、しかも数の少ないところを課税対象に選ぶというのが基本的な考え方ではないかと思うんですね。
 ですから、2(3)の「その他制度に直接かかわる論点」というようなところがありますけれども、そこでも例えば、従量税にすれば非常にわかりやすいというか、意思決定者にとっては非常にわかりやすい税制になる。これはもちろんインフレなんかも調整しなきゃいけないんですけれども、ほかの、例えば排出量取引制度なんかが並行して入ってきても、そういうものに比べて、この課税制度がわかりやすい制度になる。それで完成と、そのような配慮ができるんじゃないかというふうに思います。
 ほかにもあるかと思いますが、大体そのぐらいです。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 それでは、諸富委員、どうぞ。

○諸富委員 今の天野先生のご意見に関して、私もほとんど同意いたしますので、その点については議論をさし控えます。
 ほかに、下流か上流かということを考える場合に、若干ご考慮いただきたい判断基準ないしは論点といたしまして、他の政策手段と組み合わせる場合に、どの段階で課税するのがいいのかという論点があると思います。国内制度のポリシーミックスに関しては、国内制度小委員会の方でご議論いただいているということで、ここでは主として税を中心に議論するということのようなんですが、しかし実際には、税と税以外の政策手段の関係は密接に絡み合ってくる論点だと思います。
 その場合に、例えば非常にエネルギー集約的な産業に対して税の減免を考慮するケース、それから場合によっては、排出量取り引きと税の組み合わせになるようなケース。こういうケースにおいて上流がいいのか、下流がいいのかというような論点が考えられると思います。
 例えば、排出量取り引きなんかの場合には、非常に多数の主体が参加してくれる方がありがたいわけですから、そういう場合には下流で税金をかけて、そこで税の減免をしながら排出量取り引きをやってもらう。この場合には、非常に多数の主体が入ってくることになります。これを余りにも上流にしちゃうと、少ない主体で排出量取り引きをやらざるを得なくなってしまう。それは望ましいのかどうかという問題が出てきます。
 それからさらに、上流で課税を一たんしておきまして、下流で減免というふうになりますと、これは非常に行政的に難しいのではないか。つまりヨーロッパのようにインボイス制度がちゃんと付加価値税の制度として入っていまして、上流にどれかけたかということが下流までずっと追っていける。下流でしっかりとその税額を還付できるという仕組みが、制度的に担保されていればいいんですが、そうでない日本の今の消費税の制度設計においては、こういう仕組みを実行するのは難しいと思います。つまり上流で税をかけて下流で還付は難しいのではないかということも考慮せざるを得ないと思います。
 そういう場合に、他の政策手段とのポリシーミックスを考えた場合に、上流がいいのか、下流がいいのか、この点もぜひ論点として入れていただきたいと思います。
 以上です。

○飯野委員長 ありがとうございました。
 鳥井委員、どうぞ。

○鳥井委員 例えば、エネルギーには随分いろいろ税がかかっているわけですね。それで僕らがエネルギーを使うのやめようと思っているかというと、全然そんなことないわけですね。なぜかというと、我々が払っているというのがよくわからないからなんですね。電気でもそうです。そこは、多分取りやすいところに税金をかけて、それから取るという発想をしますと、今のやり方と同じことになって、エネルギーにかかっている税が少しふえる。さっき飯田さんも言われましたけれども、それでガソリン使うのを減らすかといったら、減らすわけがないんですね。やはり払っているということを実感するというシステムにしないとだめで、それは確かに行政的に考えるとコストは高くなるかもしれないけれども、こういう社会のライフスタイルその他を生かしていかなくちゃいけない、そういう時代には、多少行政的に大変かもしれないけれども、そういう制度を社会の中に導入するということが実は意味があるんだと思うんですね。そこを突破口を開くというような姿勢でやはり考えていただかないと、取りやすいところから取るというのでは、ほかの税と全く同じで、そういう税制ならやらない方がいいぐらいだというふうに私は思う。やはり自分で払いたいと、自分でガソリン入れるとき、これ税金ですって払わなくちゃ、それは効果ないですよ。

○飯野委員長 ありがとうございました。
 そのほか。急ぐようで申しわけありません。それでは、3の「税による効果・影響に関する評価」。この辺は今までのことと結構関係していると思いますが、何か。
 和気委員、どうぞ。

○和気委員 評価をするときに考慮していただきたいというか、しなきゃいけないかなと思うのは、エネルギーというものを全体としてどれだけ減らすかという、いわゆる省エネの次元と、それからエネルギーのもとのいわゆるエネルギーの転換、ソースをどう変えるかと、いわゆる代替の問題と、それから全体を見通してどのぐらいコントロールするかという、これはおのずと政策手段も、あるいは効果も違ってくるだろうと思います。
 そこで、例えばエネルギーの転換については、新エネルギーについて、ある電力事業体に対しては何%の再生燃料を使わなきゃいけないとかというような、多分これから導入に向かって具体的な姿に入ってくるだろうと思います。
 ですから、先ほどのポリシーミックスのお話じゃないですけれども、エネルギー転換について、どれだけ税制が非常に効果的なのか、そして、さらにグロースのエネルギーの消費量を抑えるという形で税制がどのぐらい寄与するかというところも、大きく分けてこの2つの観点で、やはり見ておかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思います。
 それから、先ほど申し上げ忘れたんですけれども、非常に子供っぽい意見で申しわけないんですけれども、実は私は国際経済をずっとベースでやってまいりまして、いわゆるアンチダンピングタックス、いわゆるダンピング防止税というのが、WTOの中ではある程度認められているわけです。もし地球温暖化防止税という、つまり対策税ではなくて、地球温暖化防止税というような言い方をしちゃいますと、広くある種世界の地球規模で温暖化を防止するというアンチグローバルウォーミングタックスみたいなものが、ある種共通のフレームワークで、将来何年先かわかりませんが、出てくるかもしれないと思いながら、そのアンチダンピング税のことがいつもよぎるんですね。余りこれを使い過ぎると、今度は非関税障壁になりますので、またWTOの問題ではあるんですが。
 やはり、対策税という言葉がいつもちょっと気になっていて、言い方、ほかにいいものがないのかと思いながら、いわゆる英語で言うとどういうふうに言ったらいいんだろうかとか、そんなことをちょっと思いながら、余談で申しわけないんですけれども、追加させていただきます。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 そのほか、浅野先生、どうぞ。

○浅野委員 評価の部分は、これはなかなか難しいなと思いながら見ているんですけれども、他のところでやっている制度の小委員会とか、部会の議論との関係もあるわけですけれども、現在インベントリーが相当時間がたって出てくるものですが、それで最終的にはエネルギーの供給、転換部門での構成まで全部把握できて、それを前提にしてCO2 排出量と言ってはいるんですけれども、そのことと、実際に現在施策の制度をどうするかと、対策どうするかとか、大綱でどうだこうだという議論をやっているときに、そこのところ必ずしもつながっていなくて、要は省エネをしましょうねみたいな話が割合前面で出ているわけでしょう。
 そうすると、さっきの炭素税なのか、エネルギー税なのかという話が先に出てしまうのね。どうしてもそれはエネルギー税でいきましょう、その方が大綱とのリンケージがうまくいきますよみたいな話になってしまって、うまくいかないので。それは評価の議論、ここはここでパッケージで議論すればいいんでしょうけれども、どうも全体の動きの中で、もしこっち側から炭素税でいきましょうという話を全面に出していくなら、そのつなぎをきちっと考えて、議論をここでも用意しておかないと、話が全部パッケージをつなぐときに混乱が起こってしまうと、混乱が起こったとき困るのは私の立場ですから、余り混乱しないようにしていただきたいなということです。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 天野委員。

○天野委員 ちょっと今の浅野委員のお話で、炭素税か、エネルギー税かという方面、もう一つあると思うんですね。炭素税/エネルギー、炭素含有量にこれだけかけて、エネルギーにこれだけかけると。
 ですから、多分皆さん考えているのは、炭素税か、あるいは炭素税/エネルギーなんでね。エネルギー税だけというのは余りないんじゃないかと思うので、その点はちょっと……

○浅野委員 そうなると、向こうの方の議論もちゃんとそのつもりで議論していかなきゃいけないですね。これは当然インベントリーなところで、そこに落ち着くようになっているんですけれども、なかなか距離があるわけです。

○天野委員 ただ、例えば英国で排出量取引とクライミット・チェンジ・レヴィーと両方導入しましたけれども、あそこではインベントリーとは別に、それぞれの主体にGHGの排出量を報告させているわけですね。そのためのガイドラインというのを特別につくって、これは多分インベントリーと関係はありますけれども、そういうことがやはり非常にいいなというふうに思います。
 3番のところなんですけれども、ここには公平性・中立性・簡素と載っておりますけれども、私はもう一つ、これは一番最後に書いてあるところがあるんですが、特定の主体に対して、短期集中的に非常に大きな打撃を与えるようなことは避けるべきだと。それが私は公平性になるのか、中立性の中の産業の国際競争力への影響に入るのか、その辺はよくわかりませんけれども。そういうある程度将来の計画も立てられ、それに対して対応の余裕があって、計画が明確的につくれると、そういう制度をこのどこかに入れておく必要があるかなと。いろいろな公平・中立のどこに入るのかわかりませんけれども、ぜひそれはやはり重要なことではないかというふうに思います。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 済みません、きょう一通りご意見を全部伺いたいので、次は4番について、何かご意見ありましたら。
 天野委員、どうぞ。

○天野委員 きょうのヒアリングにもありましたけれども、税収中立性の議論と、それから税制度そのものの議論とは切り離した方がいいんじゃないかということが下の方に書いてあるんですね--失礼しました、5番ですね。
 私は、これは多分税収をどういうふうに使うかとか、税率をどう下げるというようなことを考え出すと、こういう切り離すという議論ができるのかなというふうに思いますね。ですから最初から切り離して議論するんだというふうにしてしまいますと、後でやはり必要なようだなということになる心配があると思いますので、なぜこれをどうしても切り離さなくてはいけないのかという理由がよくわからない。

○三好環境経済課長 この点につきましては、冒頭申し上げましたけれども、前回あるいは前々回に出たものを、余り十分整理できていないかもしれませんが、ご意見として出たものをできるだけ取り込むようにしたということで、実際にこういうご意見がございましたものですから、むしろすぐ上の○とは矛盾するのではないかと思いながら、2つ○を並べて書いてあるということでございます。こう決めたということではございません。

○飯野委員長 済みません、4番について何かご意見ございますでしょうか。
 諸富委員、どうぞ。

○諸富委員 先ほど天野委員から、特定の主体に集中的に税負担がかかるのを避けるという観点を一つの考え方として入れるべきではないかというお話がございました。
 それで、その方法として、やはり国境税調整か、それとも税の減免、単なる税の減免ではなくて、それは協定とセットであるとか、そういう考え方が出てくるかと思いますが、国境税調整で対応するのか、それとも税の減免ということで対応するのかについて本格的に検討していかなければいけないというふうに思います。とりわけ、その国境税調整についてはいろいろ難しい点がある。実際、税務行政上の問題、それからWTO上の問題というのがある。
 ところが、先ほどの天野先生のご意見ですと、そういうものは乗り越えていける可能性が出てくるんじゃないかというご意見がございました。私も非常に難しい問題であって、国境税調整は選択肢から除外せざるを得ないのではないかというふうに考えていたんですが、選択肢の一つとして検討していく、ないしは今すぐ見通せる数年の範囲内では無理かもしれないけれども、将来的には方針が変わっていくということを考慮に入れた上で、日本としても逆にWTOに対してこういうものを可能にするような制度設計をすべきではないかというふうに言っていくという可能性もあると思います。そういった点を、今後比較・検討していく必要があると思います。
 以上です。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 そのほか、天野委員、どうぞ。

○天野委員 4番のいろいろな諸影響の緩和というのはこのとおりだと思います。私が先ほど申しました短期集中的に大きな打撃を加えないというのは、むしろ漸進的に制度を導入するとか、それから制度が始まったときに、何年になったらどういうことが起こり、何年になったらどういうことが起こりというスケジュールが割合よく見えている制度をつくると、こういうふうな趣旨で申しましたので、もちろん緩和措置は緩和措置として必要ですけれども、それとは別途やはりさまざまな配慮が必要で、それによっていろいろな主体が計画をして、計画的に削減をするという措置がとりやすくなるのではないかというふうに思っています。ちょっと補足です。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 そのほか、鳥井委員、どうぞ。

○鳥井委員 エネルギーというのは、きちんと供給されないと国は成り立たないわけで、そういう意味ではエネルギーセキュリティーというのは極めて大事なことなんですが、環境税を導入すると、エネルギーセキュリティーに何か影響があるかどうかというのは、私ちょっとよくわからないんですが、そこの問題は、その配慮の事項として考える必要はないでしょうか。これを考えるべきだと、ここに入れるべきだという議論かどうかちょっとよくわからないところがあるんですけれども、エネルギーセキュリティーという概念が非常に大事なことだけはたしかなんですね。そこになんか非常に大きなインパクトを与えてしまうと、それは大変困ったことになると思うので、そこに与えるかどうかはちょっとよくわからないですね。高くても買ってくれるじゃないかという気もするので、よくわからないんですが。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 それでは、5番目のその他の論点のところですけれども、何かご意見ございますでしょうか。
 諸富委員、どうぞ。

○諸富委員 他の温暖化対策との組み合わせについては、いろいろな組み合わせが1から4まであるということで、論点として今後も議論していかなきゃいけないと思います。
 それで、2のその他の方で、導入に関しては段階的なアプローチが必要ということについても詳しく検討していく必要があるのでないかと思っております。これは天野先生がまさにおっしゃったことなんですが。
 とりわけ税金についても、こういうことができるのかどうか、つまり税率の段階的な引き上げというものが可能なのかどうか。日本の税金で、これまでスケジュールを書いて、何年には税率がこうなるという制度設計をしたことはなかったんじゃないかと思いますが。いきなり最適だと思われる税率をぽんと導入すると、確かに経済的なインパクトが大きいところがございますから、調整期間を設けて、何年度には当初ねらっていた税率に上げる、それまでは低いところから始めて段階的に引き上げていく、こういうことができるのかどうかということを検討する必要があると思うんです。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 どうぞ、森田先生。

○森田先生 今の段階的なアプローチについては、きょう炭素税研究会から、非常に長期的な制度を定期的に見直すという、非常に柔軟な形で運用する必要がある、すなわちかなり制度を取り巻く不確実な要因が多過ぎるということで、政策パッケージで臨む場合には、炭素税等、排出量取り引き等のかかわりによってどのぐらい--炭素税によって、どのぐらいの削減を見込まなきゃいけないかというようなことも含め、政策的に不確実な問題であるし、鳥井さんがおっしゃられるように、エネルギーセキュリティーからも何らかの
問題が起きるかもわからない。そうした場合に、その中長期的に柔軟に運営することと、天野先生とか、諸富さんがおっしゃるように、非常に確実なスケジュールを明示して、長期的にインセンティブを与えていくということは、かなりトレード・オフを起こしてしまう。ここのところをどう制度設計するかという長期的な運営方法については、ひとつ検討に加えておいた方がいいんじゃないかなというふうに思います。

○飯野委員長 ありがとうございます。
 そのほか、よろしいでしょうか。
 ちょうど予定した時間になりましたので、まだここで言い足りなかったこともあるかと思いますので、ここできょう出た議論と、それから皆様まだ言い足りなかったことを事務局の方へお伝えいただきまして、次回それをまとめた形でまた議論していただきたいと思います。できれば、質問事項あるいはご主張は文書でお願いできたらいいんですけれども、それが無理でしたら、Eメールあるいは電話でも結構ですので、できれば来週いっぱいまでに事務局にお伝えいただければ、次回の22日の会合にそれをまとめて、皆様にお示ししたいというふうに思っております。

○事務局 次回は13日でございまして、22日は次々回でございます。

○飯野委員長 次々回ですね。第5回の22日の会合で、それを皆様にお配りして、またご検討いただくわけです。
 次回は、11月13日火曜日、2時から5時まで。場所は東条インペリアルパレスでございます。ここではございません。それで、ヒアリングをお願いするわけですけれども、一応経団連、それから全国法人会総連合、それから生協、トラック協会を予定しております。ですから、ぜひまたご出席いただきたいと思います。
 ほかに何かご発言ございませんでしょうか。
 土屋委員、どうぞ。

○土屋委員 先ほどから出ております国境税課税のお話なんですけれども、調整する税というのは、例えば自動車がアメリカに輸出される。自動車をつくるに当たって、いろいろなエネルギーを消費していると。エネルギー消費に含まれている温暖化対策税を自動車を輸出するときに調整するという意味での国境税調整なんでしょうか、おっしゃっておられるのは。

○飯野委員長 そのほかございませんでしょうか。
 特になければ、閉会したいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。

午後12時30分閉会


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