第3章目次に戻る平成16年度(2004年度)版 「化学物質と環境」
「調査結果とその評価」先頭に戻る第3章 平成15年度モニタリング調査結果

<<[6]ヘプタクロル類 [8]マイレックス >>
 
[7]トキサフェン
   (2-endo,3-exo,5-endo,6-exo,8,8,10,10-オクタクロロボルナン (Parlar-26)
   2-endo,3-exo,5-endo,6-exo,8,8,9,10,10-ノナクロロボルナン (Parlar-50)
   2,2,5,5,8,9,9,10,10-ノナクロロボルナン (Parlar-62) )
  【平成15年度調査媒体:水質、底質、生物、大気】 
 
調査の経緯及び実施状況
 

 トキサフェンは、有機塩素系殺虫剤の一種である。日本では農薬登録されておらず、国内での製造・輸入実績はない。平成14年9月には化学物質審査規制法に基づく第1種特定化学物質に指定された。過去の本件調査においては、「化学物質環境調査(昭和49年度~平成13年度)」で昭和58年度に水質及び底質を調査しているが、継続的な調査は実施されていない。

 
調査結果
 

 平成15年度のモニタリング調査において、トキサフェンは水質、底質から検出されず、生物、大気から検出された。

 

 Parlar-26の測定結果は、水質で不検出、底質で不検出、貝類で nd~tr(39) pg/g-wet(幾何平均値 nd)、魚類で nd~810 pg/g-wet(同 tr(29) pg/g-wet)、鳥類で nd~2,500 pg/g-wet(同 110 pg/g-wet)、大気で温暖期 tr(0.17)~0.77 pg/m3 (同 0.31 pg/m3)、寒冷期 tr(0.091)~0.27 pg/m3 (同 tr(0.17) pg/m3)であった。

 

 Parlar-50の測定結果は、水質及び底質で不検出、貝類で nd~58 pg/g-wet(幾何平均値 tr(13) pg/g-wet)、魚類で nd~1,100 pg/g-wet(同 34 pg/g-wet)、鳥類で nd~3,000 pg/g-wet(同 110 pg/g-wet)、大気で温暖期 nd~tr(0.37) pg/m3 (同 nd)、寒冷期 不検出であった。

 

 Parlar-62の測定結果は、水質、底質及び貝類で不検出、魚類で nd~580 pg/g-wet(幾何平均値 nd)、鳥類で nd~530 pg/g-wet(同 tr(96) pg/g-wet)、大気で不検出であった。

 
評価
 

 全媒体において、平成15年度からモニタリングを開始したため検出状況の傾向は判断できないが、生物及び大気では広範な地点で検出が認められる。

 

 なお、鳥類では、盛岡市郊外(ムクドリ)で3物質とも不検出であったのに対し、蕪島(ウミネコ)で3物質とも全検体から高濃度で検出された。トキサフェンの 国内での製造・輸入実績がないことから、餌の種類、行動範囲に起因すると思われる。

 
 

 トキサフェンは、POPs条約の対象物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。

 
   ○ 平成15年度トキサフェン (2-endo,3-exo,5-endo,6-exo,8,8,10,10-オクタクロロボルナン(Parlar-26))の検出状況
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
nd nd nd nd nd nd nd 40 [20]   0/36 0/36
底質
(pg/g-dry)
nd nd nd nd nd nd nd 90 [30] 0/186 0/62
生物:貝類
(pg/g-wet)
nd nd tr(17) tr(17) tr(27) tr(34) tr(39) 45 [15] 11/30 3/6
生物:魚類
(pg/g-wet)
tr(29) tr(24) 71 95 120 460 810 45 [15] 44/70 11/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
110 650 1,600 1,700 1,700 2,500 2,500 45 [15] 5/10 1/2
大気
(pg/m3
温暖期 0.31 0.31 0.35 0.38 0.45 0.70 0.77 0.20 [0.066] 35/35 35/35
寒冷期 tr(0.17) tr(0.17) tr(0.19) 0.20 0.21 0.23 0.27 34/34 34/34
 
 ○ 平成15年度トキサフェン
   (2-endo,3-exo,5-endo,6-exo,8,8,9,10,10-ノナクロロボルナン(Parlar-50))の検出状況
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
nd nd nd nd nd nd nd 70 [30]   0/36 0/36
底質
(pg/g-dry)
nd nd nd nd nd nd nd 200 [50] 0/186 0/62
生物:貝類
(pg/g-wet)
tr(13) tr(12) tr(21) tr(32) 44 50 58 33 [11] 17/30 4/6
生物:魚類
(pg/g-wet)
34 34 81 110 160 550 1,100 33 [11] 55/70 14/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
110 850 1,900 2,100 2,100 3,000 3,000 33 [11] 5/10 1/2
大気
(pg/m3
温暖期 nd nd nd nd nd tr(0.27) tr(0.37) 0.81 [0.27] 2/35 2/35
寒冷期 nd nd nd nd nd nd nd 0/34 0/34
 
 ○ 平成15年度トキサフェン (2,2,5,5,8,9,9,10,10-ノナクロロボルナン(Parlar-62))の検出状況
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
nd nd nd nd nd nd nd 300 [90]   0/36 0/36
底質
(pg/g-dry)
nd nd nd nd nd nd nd 4,000[2,000] 0/186 0/62
生物:貝類
(pg/g-wet)
nd nd nd nd nd nd nd 120 [40] 0/30 0/6
生物:魚類
(pg/g-wet)
nd nd nd nd tr(92) 210 580 120 [40] 9/70 3/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
tr(96) 200 410 460 520 530 530 120 [40] 5/10 1/2
大気
(pg/m3
温暖期 nd nd nd nd nd nd nd 1.6 [0.52] 0/35 0/35
寒冷期 nd nd nd nd nd nd nd 0/34 0/34
 
  [8]マイレックスへ

目次へ戻る