[環境省]保健・化学物質対策トップページへ
平成14年度「化学物質と環境」概要版目次へ

2-3 平成13年度生物モニタリング結果の概要

 
    (1)調査目的 (3)調査結果
    (2)調査内容 (4)調査結果に対する評価

 
 (1) 調査目的
   化学物質による生物の汚染を系統的かつ定期的に測定すれば、人の健康や生態系に対して問題があると考えられる物質の環境中での挙動や汚染レベルの推移の把握など、多くの面で有効に利用し得るデータを得ることが可能となる。
本調査は、化学物質環境安全性総点検調査の一環として位置付けられており、生物を指標とした化学物質による環境汚染の経年監視を主な目的としている。
 
 (2) 調査内容
  1)  調査対象物質:
    「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質を中心とする18物質(有機スズ化合物2種を含む。表6)を対象物質として実施した。
  2)  対象生物及び対象地点:
    魚類7種、貝類2種及び鳥類2種について図5に示す全国21地点(延べ23生物種)を調査地点として実施した。(平成13年度は北海道日本海沖(アイナメ)及び松島湾(スズキ)を新規に対象生物とした。また、北海道釧路沖ではこれまでのシロザケに替えてウサギアイナメを対象生物とした。)
 
 (3) 調査結果
    調査結果を表6に示す。
 
 (4) 調査結果に対する評価
  調査対象物質ごとに調査結果表6をとりまとめると次のとおりである。
なお、有機スズ化合物の調査結果については、「4 平成13年度有機スズ化合物に関する環境調査結果の概要」の項を参照されたい。
 
   
・PCB・DDT類及びその誘導体
・ヘキサクロロベンゼン(HCB)・クロルデン類
・ドリン類(ディルドリン) ・ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)類(α-HCH、β-HCH)
【1】 PCB
1)  PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、難分解性で、生物に蓄積しやすくかつ慢性毒性を有するため、昭和49年6月に、「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定されており、環境中の濃度レベルを追跡することは、種々の観点から重要と考えられる。本調査においては、昭和53年度からPCBを調査対象物質として選定し、モニタリングを実施している。
 
2)  PCBは魚類、貝類及び鳥類から検出されており、魚類からの検出範囲は0.01~0.40μg/g-wet、検出頻度は72検体中35検体、地点別検出頻度は15地点中7地点であった。貝類からの検出範囲は、0.04~0.07μg/g-wet、検出頻度は30検体中10検体、地点別検出頻度は6地点中2地点であった。鳥類からの検出範囲は0.03~0.17μg/g-wet、検出頻度は10検体中5検体、地点別検出頻度は2地点中1地点であった。
 
3)  PCBは、昭和47年度までに製造、輸入及び開放系用途の使用が中止され、平成4年7月に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づく特別管理産業廃棄物に指定されているが、なお延べ10地点から検出されている。平成13年度の調査結果は、PCBが依然として広範な地点の環境中に残留していることを示している。
  PCBは、POPs条約に掲げられている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続しその消長を追跡する必要がある。また、PCBの分解処理が始まっており、この効果・影響の監視も視野に入れる必要がある。なお、PCBは平成14年度の本調査におけるモニタリング調査物質(水質、底質、生物及び大気)である。
 
       ○ PCB検出状況
   
  検出頻度 検出範囲
(検出/検体)
検出限界
(検出数/検体数) (検出地点数/測定地点数) (μg/g-wet) (μg/g-wet)
魚類 平成13年度 49% (35/72) 47% ( 7/15) 0.01~0.40 0.01
平成12年度 51% (36/70) 57% ( 8/14) 0.01~0.95 0.01
平成11年度 57% (40/70) 64% ( 9/14) 0.01~0.78 0.01
貝類 平成13年度 33% (10/30) 33% ( 2/6) 0.04~0.07 0.01
平成12年度 33% (10/30) 33% ( 2/8) 0.02~0.04 0.01
平成11年度 43% (13/30) 50% ( 3/6) 0.01~0.05 0.01
鳥類 平成13年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/2) 0.03~0.17 0.01
平成12年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/2) 0.01~0.02 0.01
平成11年度 70% ( 7/10) 100% ( 2/2) 0.01~0.02 0.01

調査対象物質一覧 先頭

 
【2】 ヘキサクロロベンゼン(HCB)
1)  HCBは、難分解性で、生物に蓄積しやすくかつ慢性毒性を有するため、昭和54年8月に、「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定されており、環境中の濃度レベルを追跡することは、種々の観点から重要と考えられる。本調査においては、昭和53年度からHCBを調査対象物質として選定し、モニタリングを実施している。
 
2)  HCBの検出状況は魚類、鳥類から検出されており、魚類からの検出範囲は0.001~0.002μg/g-wet、検出頻度は72検体中2検体、地点別検出頻度は15地点中2地点であった。鳥類からの検出範囲は0.002~0.006μg/g-wet、検出頻度は10検体中5検体、地点別検出頻度は2地点中1地点であった。
 
3)  HCBは、検出濃度レベルが低く、検出状況は概ね横ばいの傾向にある。また、非意図的生成が知られているものの、既に実質的に生産、使用が中止されていることに考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくものと期待される。HCBは、POPs条約に掲げられている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。なお、HCBは平成14年度の本調査におけるモニタリング調査対象物質(水質、底質、生物及び大気)である。
 
       ○ HCB検出状況
   
  検出頻度 検出範囲
(検出/検体)
検出限界
(検出数/検体数) (検出地点数/測定地点数) (μg/g-wet) (μg/g-wet)
魚類 平成13年度  3% ( 2/72) 13% ( 2/15) 0.001~0.002 0.001
平成12年度 10% ( 7/69) 21% ( 3/14) 0.001~0.002 0.001
平成10年度 11% ( 8/70) 14% ( 2/14)      0.001 0.001
貝類 平成13年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
鳥類 平成13年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.002~0.006 0.001
平成12年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.001~0.002 0.001
平成10年度 30% ( 3/10) 50% ( 1/ 2)      0.001 0.001

調査対象物質一覧 先頭

 
【3】 ドリン類(ディルドリン)
1) ディルドリンは、ドリン系の殺虫剤である。ドリン系の農薬としての使用は、昭和30年代がピークであったと言われ、昭和46年以降実質的に生産、使用が中止されたが、ディルドリンはその後も白蟻防除剤として使われていた。しかし、昭和56年10月、「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定され、農薬としての規制と併せて、その使用が全面的に中止されることとなった。本調査においては、昭和53年度から調査対象物質として選定し、モニタリングを行っている。
 
2)  ディルドリンは、魚類、貝類及び鳥類から検出されており、魚類からの検出範囲は0.001~0.003μg/g-wet、検出頻度は72検体中8検体、地点別検出頻度は15地点中5地点であった。貝類からの検出範囲は0.002~0.071μg/g-wet、検出頻度は30検体中10検体、地点別検出頻度は6地点中2地点であった。鳥類からの検出範囲は0.001~0.005μg/g-wet、検出頻度は10検体中8検体、地点別検出頻度は2地点中2地点であった。
 
3) ディルドリンは、近年、検出頻度、検出レベルとも横ばい状態にあると考えられる。ディルドリンは、POPs条約に掲げられている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。なお、ドリン類(アルドリン、ディルドリン及びエンドリン)は平成14年度の本調査におけるモニタリング調査対象物質(水質、底質、生物及び大気)である。
 
       ○ ドリン類(ディルドリン)検出状況
 
  検出頻度 検出範囲
(検出検体)
検出限界
(検出数/検体数) (検出地点数
/測定地点数)
(μg/g-wet) (μg/g-wet)
ディルドリン 魚類 平成13年度 11% ( 8/72) 33% ( 5/15) 0.001~0.003 0.001
平成12年度 14% (10/70) 14% ( 2/14) 0.001~0.004 0.001
平成10年度  9% ( 6/70) 14% ( 2/14) 0.001~0.002 0.001
貝類 平成13年度 33% (10/30) 33% ( 2/ 6) 0.002~0.071 0.001
平成12年度 17% ( 5/30) 17% ( 1/ 6) 0.038~ 0.16 0.001
平成10年度 27% ( 8/30) 33% ( 2/ 6) 0.001~0.055 0.001
鳥類 平成13年度 80% ( 8/10) 100%( 2/ 2) 0.001~0.005 0.001
平成12年度 20% ( 2/10) 50% ( 1/ 2) 0.001~0.002 0.001
平成10年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2)      0.001 0.001

調査対象物質一覧 先頭

 
【4】 DDT類及びその誘導体
1)  DDTは、ヘキサクロロシクロヘキサンやドリン類と共に多用された殺虫剤である。農薬としての使用は、昭和46年以降中止されている。また、昭和56年10月には、ドリン類と併せて「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定された。DDTには芳香環に置換している塩素の位置によっていくつかの異性体があるが、本調査においては、DDTの有効成分であるp,p′-DDTのほか、o,p′-DDTを、また、DDTの環境中での分解産物であるp,p′-DDD、o,p′-DDD、p,p′-DDE、o,p′-DDEの4種の誘導体も含めて、昭和53年度から調査対象物質として選定しモニタリングを実施している。(p,p′-DDDは毎年度、他の5種は平成10,12,13年度実施)
 
2)  p,p′-DDTは魚類、貝類及び鳥類から検出されており、魚類からの検出範囲は0.001~0.036μg/g-wet、検出頻度は72検体中23検体、地点別検出頻度は15地点中6地点であった。貝類からの検出範囲は0.001μg/g-wet、検出頻度は30検体中5検体、地点別検出頻度は6地点中1地点であった。鳥類からの検出範囲は0.001~0.002μg/g-wet、検出頻度は10検体中3検体、地点別検出頻度は2地点中2地点であった。
 
3) 各物質の検出範囲はこれまでと比べ大きな差異はなく、これまでと同様に鳥類からのp,p′-DDEは他のDDT類に比べて高い濃度及び頻度で検出された。
p,p'-DDTは、低いレベルながら広範囲に環境中に残留している。p,p'-DDTは、POPs条約に掲げられている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。なお、DDT類は平成14年度の本調査におけるモニタリング調査対象物質(水質、底質、生物及び大気)である。
 
       ○ DDT類及びその誘導体
 
  検出頻度 検出範囲
(検出検体)
検出限界
(検出数/検体数) (検出地点数
/測定地点数)
(μg/g-wet) (μg/g-wet)
p,p′-DDT 魚類 平成13年度 32% (23/72) 40% ( 6/15) 0.001~0.036 0.001
平成12年度 23% (16/69) 36% ( 5/14) 0.001~0.018 0.001
平成11年度 21% (15/70) 43% ( 6/14) 0.001~0.026 0.001
貝類 平成13年度 17% ( 5/30) 17% ( 1/ 6)      0.001 0.001
平成12年度 13% ( 4/30) 17% ( 1/ 6)      0.001 0.001
平成11年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
鳥類 平成13年度 30% ( 3/10) 100% ( 2/ 2) 0.001~0.002 0.001
平成12年度 20% ( 2/10) 50% ( 1/ 2)      0.001 0.001
平成11年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.001~0.002 0.001
o,p′-DDT 魚類 平成13年度 14% (10/72) 27% ( 4/15) 0.001~0.003 0.001
平成12年度 10% ( 7/69) 14% ( 2/14) 0.001~0.005 0.001
平成10年度  3% ( 2/70)  7% ( 1/14)      0.001 0.001
貝類 平成13年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
鳥類 平成13年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
p,p′-DDE 魚類 平成13年度 69% (50/72) 87% (13/15) 0.001~0.031 0.001
平成12年度 72% (50/69) 86% (12/14) 0.001~0.048 0.001
平成11年度 66% (46/70) 93% (13/14) 0.001~0.016 0.001
貝類 平成13年度 33% (10/30) 33% ( 2/ 6) 0.003~0.007 0.001
平成12年度 47% (14/30) 50% ( 3/ 6) 0.001~0.003 0.001
平成11年度 50% (15/30) 50% ( 3/ 6) 0.001~0.008 0.001
鳥類 平成13年度 100% (10/10) 100% ( 2/ 2) 0.019~0.20 0.001
平成12年度 100% (10/10) 100% ( 2/ 2) 0.01~0.13 0.001
平成11年度 100% (10/10) 100% ( 2/ 2) 0.007~0.13 0.001
o,p′-DDE 魚類 平成13年度 8% ( 6/72) 13% ( 2/15) 0.001~0.009 0.001
平成12年度  7% ( 5/69)  7% ( 1/14) 0.002~0.006 0.001
平成10年度 11% ( 8/70) 14% ( 2/14) 0.001~0.002 0.001
貝類 平成13年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
鳥類 平成13年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
p,p′-DDD 魚類 平成13年度 40% (29/72) 40% ( 6/15) 0.001~0.007 0.001
平成12年度 46% (32/69) 50% ( 7/14) 0.001~0.010 0.001
平成11年度 37% (26/70) 43% ( 6/14) 0.001~0.009 0.001
貝類 平成13年度 50% (15/30) 50% ( 3/ 6) 0.001~0.003 0.001
平成12年度 10% ( 3/30) 17% ( 1/ 6)      0.001 0.001
平成11年度 17% ( 5/30) 17% ( 1/ 6) 0.001~0.002 0.001
鳥類 平成13年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.001~0.003 0.001
平成12年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.001~0.002 0.001
平成11年度 10% ( 1/10) 50% ( 1/ 2)      0.002 0.001
o,p′-DDD 魚類 平成13年度  1% ( 1/72)  7% ( 1/15)      0.001 0.001
平成12年度 13% ( 9/69) 14% ( 2/14) 0.001~0.003 0.001
平成10年度  9% ( 6/70) 14% ( 2/14) 0.001~0.003 0.001
貝類 平成13年度 17% ( 5/30) 17% ( 1/ 6)      0.001 0.001
平成12年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
鳥類 平成13年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001

調査対象物質一覧 先頭

 
【5】 クロルデン類
1)  クロルデン類は、昭和57年度に実施された精密環境調査の結果、広範囲にわたる地点の底質及び魚類から検出されたため、昭和58年度から新たに調査対象物質として加えられたものである。我が国においては、木材(一次加工)用及び合板用に用いられ、白蟻防除のために家屋等に使用されていたが、難分解性等の性状を有するため、昭和61年9月、「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定された。工業的に生産されたクロルデン類の組成は多岐にわたるが、本調査では、クロルデン類8物質(ヘプタクロル、γ-クロルディーン、ヘプタクロルエポキシド、trans-クロルデン、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、オキシクロルデン)を調査対象物質とした昭和57年度精密環境調査において特に検出頻度が高かった5物質(trans-クロルデン、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、オキシクロルデン)を調査対象物質として選定している。
 
2)  trans-クロルデンは魚類及び貝類から検出され、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル及びオキシクロルデンは、魚類、貝類及び鳥類から検出された。魚類における物質別の検出範囲は0.001~0.013μg/g-wet、クロルデン類全体では0.001~0.043μg/g-wet、検出頻度は72検体中42検体、地点別検出頻度は15地点中10地点であった。貝類における物質別の検出範囲は0.001~0.016μg/g-wet、クロルデン類全体では0.008~0.021μg/g-wet、検出頻度は30検体中15検体、地点別検出頻度は6地点中3地点であった。鳥類はtrans-クロルデンのみが不検出で、物質別の検出範囲は0.001~0.016μg/g-wet、クロルデン類全体では0.001~0.025μg/g-wet、検出頻度は10検体中8検体、地点別検出頻度は2地点中2地点であった。
 
3)  クロルデン類は、比較的近年まで使用されてきており、検出頻度も依然として高い。また、trans-クロルデン、cis-クロルデン、ヘプタクロルはPOPs条約に掲げられている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。なお、クロルデン類5物質(trans-クロルデン、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、オキシクロルデン)及びヘプタクロルは平成14年度の本調査におけるモニタリング調査対象物質(水質、底質、生物及び大気)である。
 
       ○ クロルデン類検出状況
 
  検出頻度 検出範囲
(検出検体)
検出限界
(検出数
 /検体数)
(検出地点数
/測定地点数)
(μg/g-wet) (μg/g-wet)
trans-クロルデン 魚類 平成13年度 24% (17/72) 33% ( 5/15) 0.001~0.004 0.001
平成12年度 20% (14/69) 29% ( 4/14) 0.001~0.021 0.001
平成11年度 20% (14/70) 21% ( 3/14) 0.001~0.007 0.001
貝類 平成13年度 50% (15/30) 50% ( 3/ 6) 0.001~0.003 0.001
平成12年度 67% (20/30) 67% ( 4/ 6) 0.001~0.005 0.001
平成11年度 33% (10/30) 33% ( 2/ 6) 0.001~0.003 0.001
鳥類 平成13年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成11年度  0% ( 0/10)  0% ( 1/ 2)      不検出 0.001
cis-クロルデン 魚類 平成13年度 43% (31/72) 47% ( 7/15) 0.001~0.011 0.001
平成12年度 38% (26/69) 50% ( 7/14) 0.001~0.010 0.001
平成11年度 29% (20/70) 36% ( 5/14) 0.001~0.009 0.001
貝類 平成13年度 50% (15/30) 50% ( 3/6) 0.002~0.016 0.001
平成12年度 50% (15/30) 50% ( 3/6) 0.001~0.025 0.001
平成11年度 50% (15/30) 50% ( 3/6) 0.001~0.019 0.001
鳥類 平成13年度 10% ( 1/10) 50% ( 1/ 2)      0.001 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成11年度  0% ( 0/10)  0% ( 1/ 2)      不検出 0.001
trans-ノナクロル 魚類 平成13年度 53% (38/72) 60% ( 9/15) 0.001~0.013 0.001
平成12年度 52% (36/69) 64% ( 9/14) 0.001~0.013 0.001
平成11年度 44% (31/70) 50% ( 7/14) 0.001~0.006 0.001
貝類 平成13年度 37% (11/30) 50% ( 3/ 6) 0.001~0.004 0.001
平成12年度 47% (14/30) 50% ( 3/ 6) 0.001~0.002 0.001
平成11年度 50% (15/30) 50% ( 3/ 6) 0.001~0.002 0.001
鳥類 平成13年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.002~0.016 0.001
平成12年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.01~0.002 0.001
平成11年度 20% ( 2/10) 50% ( 1/ 2)      0.001 0.001
cis-ノナクロル 魚類 平成13年度 38% (27/72) 53% ( 8/ 15) 0.001~0.007 0.001
平成12年度 28% (19/69) 36% ( 5/14) 0.001~0.006 0.001
平成11年度 21% (15/70) 21% ( 3/14) 0.002~0.011 0.001
貝類 平成13年度 33% (10/30) 33% ( 2/ 6) 0.001~0.002 0.001
平成12年度  3% ( 1/30) 17% ( 1/ 6)      0.001 0.001
平成11年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
鳥類 平成13年度 30% ( 3/10) 50% ( 1/ 2) 0.001~0.003 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成11年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
オキシクロルデン 魚類 平成13年度 10% ( 7/72) 33% ( 5/15) 0.001~0.007 0.001
平成12年度  7% ( 5/69) 14% ( 2/14) 0.001~0.002 0.001
平成11年度  0% ( 0/70)  0% ( 0/14)      不検出 0.001
貝類 平成13年度 17% ( 5/30) 17% ( 1/ 6) 0.001~0.003 0.001
平成12年度 17% ( 5/30) 17% ( 1/ 6) 0.004~0.006 0.001
平成11年度 17% ( 5/30) 17% ( 1/ 6) 0.002~0.003 0.001
鳥類 平成13年度 70% ( 7/10) 100%( 2/ 2) 0.001~0.005 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成11年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
クロルデン類計 魚類 平成13年度 58% (42/72) 67% (10/15) 0.001~0.043 0.001
平成12年度 55% (38/69) 71% (10/14) 0.001~0.034 0.001
平成11年度 46% (32/70) 57% ( 8/14) 0.001~0.027 0.001
貝類 平成13年度 50% (15/30) 50% ( 3/ 6) 0.008~0.021 0.001
平成12年度 67% (20/30) 67% ( 4/ 6) 0.002~0.037 0.001
平成11年度 50% (15/30) 50% ( 3/ 6) 0.002~0.027 0.001
鳥類 平成13年度 80% ( 8/10) 100% ( 2/ 2) 0.001~0.025 0.001
平成12年度 50% ( 5/10) 50% ( 1/ 2) 0.001~0.002 0.001
平成11年度 20% ( 2/10) 50% ( 1/ 2)      0.001 0.001

調査対象物質一覧 先頭

 
【6】 ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)類(α-HCH、β-HCH)
1) HCH類は過去に農薬として使用されていたが、昭和46年以降使用が中止されている。
 HCH類には多くの異性体が存在するが、本調査においてはα、β、γ、δの4種の異性体を調査対象物質として選定し、平成13年度はα、βの2種の異性体を対象にモニタリングを実施した。
 
2)  α-HCHは魚類から、β-HCHは魚類、貝類及び鳥類から検出された。
 α-HCHの魚類からの検出範囲は、0.001~0.002μg/g-wet、検出頻度は72検体中5検体、地点別検出頻度は15地点中2地点であった。
 β-HCHの魚類、貝類及び鳥類から検出され、魚類からの検出範囲は0.001~0.002μg/g-wet、検出頻度は72検体中11検体、地点別検出頻度は15地点中3地点であった。貝類からの検出範囲は0.002μg/g-wet、検出頻度は30検体中5検体、地点別検出頻度は6地点中1地点であった。鳥類からの検出範囲は0.002~0.01μg/g-wet検出頻度は10検体中10検体、地点別検出頻度は2地点中2地点であった。
 
3)  γ体以外のHCH異性体は残留性の高い物質といわれている。HCH類は、POPs条約の候補物質となる可能性があり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。なお、HCH類は平成14年度の本調査におけるモニタリング調査対象物質(底質及び生物)である。
       ○ HCH類(α-HCH、β-HCH)検出状況
 
  検出頻度 検出範囲
(検出検体)
検出限界
(検出数
 /検体数)
(検出地点数
/測定地点数)
μg/g-wet μg/g-wet
α-HCH 魚類 平成13年度  7% ( 5/72) 13% ( 2/15) 0.001~0.002 0.001
平成12年度  1% ( 1/69)  7% ( 1/14)      0.001 0.001
平成10年度 11% ( 8/70) 14% ( 2/14) 0.001~0.002 0.001
貝類 平成13年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成10年度 10% ( 3/30) 17% ( 1/ 6)      0.001 0.001
鳥類 平成13年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成12年度  0% ( 0/10)  0% ( 0/ 2)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/10)  0% ( 1/ 2)      不検出 0.001
β-HCH 魚類 平成13年度 29% (11/72) 20% ( 3/15) 0.001~0.002 0.001
平成12年度 10% ( 7/69) 14% ( 2/14) 0.001~0.003 0.001
平成10年度 14% (10/70) 14% ( 2/14) 0.001~0.003 0.001
貝類 平成13年度 17% ( 5/30) 16% ( 1/ 6)      0.002 0.001
平成12年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
平成10年度  0% ( 0/30)  0% ( 0/ 6)      不検出 0.001
鳥類 平成12年度 100% (10/10) 100% ( 2/ 2) 0.002~0.01 0.001
平成12年度 100% (10/10) 100% ( 2/ 2) 0.002~0.008 0.001
平成10年度 100% (10/10) 100% ( 2/ 2) 0.001~0.002 0.001

調査対象物質一覧 先頭

 

平成14年度「化学物質と環境」概要版目次へ