目次へ戻る平成14年(2002年)版 「化学物質と環境」
第1部 平成13年度化学物質環境調査結果の概要

第4章 環境調査結果の評価

[化学物質環境調査(水系)]

◎印は検出された物質
 
  [1]ニトロベンゼン   [8]2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
    (ジブチルヒドロキシトルエン)
    [2]p-クロロニトロベンゼン   [9]2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール
    [3]クロロタロニル
   (テトラクロルイソフタロニトリル)
[10]2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール
    [4]ピリダフェンチオン   [11]ポリ塩化ナフタレン
    [5]ブタクロール    [12]長鎖塩素化パラフィン類
  [6]エチレンオキシド
    [7]2,6-ジ--ブチルフェノール  
 
   [化学物質環境調査(大気系)]
   [参考文献(水系)一覧]
     
 
 水質、底質および魚類についての平成13年度の調査結果の概要は、次のとおりである。なお、調査媒体および調査地点は、それぞれの化学物質について、調査の必要性が高い媒体、地点を選んでいる。
 本調査では、試料採取はほとんどが9~11月に行われ、環境試料の分析は主として調査地点を管轄する地方公共団体の公害等試験研究機関で行った。試料の性状や、利用可能な測定装置が異なることから各機関での検出限界は必ずしも同一となっていないが、ここでは調査全体を評価する立場から、同一化学物質に対しては[参考5]に示す方法により1つの検出限界を設定している。
 今回の調査結果、21物質(群)中14物質(群)(ニトロベンゼン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ポリ塩化ナフタレン類(1塩化~8塩化ナフタレン及び総和)、長鎖塩素化パラフィン類(塩素化率40%及び70%))が、いずれかの調査媒体から検出された。調査結果に対する評価を物質(群)別に示せば、次のとおりである。
 
[1] ニトロベンゼン
 今回の調査の結果、ニトロベンゼンは、水質からは49地点中2地点、147検体中5検体、底質からは48地点中3地点、144検体中6検体検出された。検出範囲は、水質で0.046~0.51μg/L、底質で1.4~2.3 ng/g-dryであった(統一検出限界値:水質0.037μg/L、底質1.4 ng/g-dry)。
 以上の調査結果によれば、ニトロベンゼンは、水質及び底質から一定程度検出されているが、検出頻度が低い。今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における水系の環境調査の必要はないと考えられる。なお、本物質は平成14年度の本調査における初期環境調査の対象物質(大気等)である。
 
   ○ ニトロベンゼンの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  昭和51年度 39% (27/70) 52% (14/27) 0.1~1.4 μg/L  
昭和52年度 19% (22/115)   0.13~3.8 μg/L  
平成 3 年度 1% (1/153) 2% (1/51) 0.17 μg/L 0.15 μg/L
平成13年度 3% (5/147) 4% (2/49) 0.046~0.51 μg/L 0.037 μg/L
底質  昭和51年度 32% (15/47) 43% (9/21) 5.0~1900 ng/g-dry  
昭和52年度 16% (19/117)   9~1500 ng/g-dry  
平成 3 年度 1% (2/162) 2% (1/54) 47~70 ng/g-dry 23 ng/g-dry
平成13年度 4% (6/144) 6% (3/48) 1.4~2.3 ng/g-dry 1.4 ng/g-dry
 
  【 参考:ニトロベンゼン 】
  製造方法 : ベンゼンを混酸(硝酸と硫酸の混合物)でニトロ化して製造1)
  用途1)  :
     染料・香料中間物(アニリン、ベンジジン、キノリン、アゾベンゼン)、毒ガス(アダムサイトの原料)、
     酸化剤、溶剤(硝酸繊維素)、塵埃防止剤
  生産量  :平成12年 146,363 t1)
  環境への主な放出源
     化学工業:大気への排出量230 kg/年、公共用水域への排出量1,800 kg/年(取扱量82,272,136
     kg/年)1)
代謝
 二つの主要代謝経路がある。アニリンに還元され、水酸化によりアミノフェノールになる系と、ニトロベンゼンが直接水酸化され、ニトロフェノールを形成し、その後にアミノフェノーとなる系がある3)。脂溶性が高く、皮膚から容易に吸収され、吸収率の高い場合には2 mg/m2/hrと算定されている4)。ウサギに14C-ニトロベンゼンを投与すると、投与量の約55%が代謝物として2日以内に尿中に排泄される。その20%はニトロ化合物で、35%はアミノ化合物である。呼気中に不変化のニトロベンゼンが投与量の約0.5%、14CO2が約1%排泄される5)。尿中代謝物はp-アミノフェノール(31%)、m-アミノフェノール(4%)、o-アミノフェノール(3%)、アニリン(0.3%)、o-ニトロフェノール(0.1%)、m-ニトロフェノール(9%)、p-ニトロフェノール(9%)、4-ニトロカテコール(0.7%)、ニトロキノール(0.1%)およびp-ニトロフェノールメルカプツール酸(0.3%)である4)。フェノールはグルクロン酸または硫酸抱合体である5)
 Fisher-344ラットとCDラットにニトロベンゼンを経口投与した実験では尿中代謝物はp-ハイドロキシアセタニリド、p-ニトロフェノール、m-ニトロフェノールであるが、Fisher-344ラットでは硫酸抱合体でCDラットでは硫酸抱合体とグルクロン酸抱合体の両方である。B6C3F1マウスではm-ニトロフェノールのグルクロン酸抱合体が検出されない以外はCDラットと同様である3-3)。尿中代謝物の濃度は経口投与後12~24時間に最大となる6)。ニトロベンゼンはヘモグロビンとの親和性が強く、その代謝物はメトヘモグロビンを形成する。ニトロベンゼンの負荷量を知るにはメトヘモグロビンよりもヘモグロビン結合レベルの方がよい7)
 尿中p-ニトロフェノールから見た生物学的半減期はヒト1回曝露の場合60時間、自殺例では84時間であった8)
  毒性
     
  LD50(ラット、経皮)  2,100 mg/kg 9)
LD50(ラット、腹腔)  640 mg/kg 10)
LD50(ラット、皮下)  800 mg/kg 10)
LD50(イヌ、 静脈内) 150 mg/kg 10)
     
 液体ニトロベンゼンは眼、皮膚に炎症を来たし、蒸気は炎症のほか、中枢神経に作用し、視力障害を起こす。感作作用あり11)
 ヒトが1 g服用すると死に到ると考えられる。服用数時間後から吐気、虚脱、強烈な頭痛、チアノーゼを伴うメトヘモグロビン血症、溶血性貧血、嘔吐、痙攣、昏睡を経て数時間後に死に到る12)
ヒト急性中毒は神経および肝臓の障害がある13)。低濃度長期曝露では赤血球にハインツ小体が見られる14)
亜慢性毒性としては、0.7 mL/kg/dayをウサギに23週間投与した結果、骨髄と脾臓に巨核球の増加と副腎の退行性変化が見られる10)。ラットに0.8 mg/m3を100日間吸入させると、筋力の抑制、血中コリンエステラ-ゼの上昇、メトヘモグロビンの形成、血中総ヘモグロビン量の低下を生じる15)
B6C3F1雌雄マウスに0、5、25および50 ppm、F334雌雄ラットに0、1、5または25 ppmのニトロベンゼンを2年間吸入させたところ、生存率に影響は見られず、体重に関しては中濃度のみ低下が見られた16)
    許容濃度:
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 1 5 2B
 
  アメリカ(ACGIH)
    時間荷重平均値 1 ―― A3
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― 3B
  IARC 2B
 IRIS毒性データ:経口標準容量(Oral RfD) 0.0005mg/kg/day
  EPA Region III RBC Table:魚許容濃度 0.68mg/kg(Noncarcinogenic effects)
  刺激性:不詳
  反復投与毒性:不詳
  発がん性:
 
 ヒト、動物ともに発がん性の十分な証拠はない。IARCはGroup 2Bに分類している17)
雌雄格70匹(63日齢)のB6C3F1マウスに0、5、25または50 ppm(0、25、125または250 mg/m3)のニトロベンゼンを1日6時間、1週間に5日、24ヶ月吸入させた。24ヶ月後の生存率は雄60%、雌45%であった。肺胞-細気管支の腫瘍は吸入雄マウスで多く(肺胞-細気管支腺腫とがん:対照9/68、低濃度曝露21/67、中濃度曝露21/65、高濃度曝露23/66)、肺胞-細気管支過形成も中濃度と高濃度曝露群で高率に見られた。甲状腺濾胞細胞の腺腫も吸入雄マウスで高率であった(対照0/65、低濃度曝露4/65、中濃度曝露1/65、高濃度曝露7/64)であった。甲状腺濾胞細胞の過形成は中および高濃度曝露群で高率に見られた。肝細胞腫瘍は雌曝露群で高率であった(対照6/51、低濃度曝露5/61、中濃度曝露5/64、高濃度曝露13/62)。しかし、腫瘍とがんを足し合わせると差はなかった。乳腺がんは高濃度曝露で有意に高率であった(対照0/48、高濃度群5/60)18)
 変異原性
F344ラットにニトロベンゼン50 ppmを1日6時間、29日間に21日曝露してもSCE(姉妹染色分体交換頻度)も染色体異常試験も陰性であった19)Salmonella typhimuriunを使用した変異原性試験も陰性であった19)
 生殖毒性
 
50 ppmニトロベンゼンを曝露したラットでは睾丸の退化が見られたが、マウスでは見られなかった20)。ラットに0、1、10または40 ppm吸入させると、1と10 ppm群では生殖毒性は観察されないが、40 ppm群ではF0とF1世代の雄の生殖器官の変化、すなわち、睾丸と精巣上体重量の低下、輸精管の萎縮、精母細胞の退化、巨大合抱体層の存在など生殖指数の低下が観察された21)。出産前の胚の発達は曝露後遅延が生じた22)
胎児と母獣への毒性:ニトロベンゼン蒸気を0、1、10または40 ppmを妊娠ラットの妊娠6日から15日の間、1日6時間曝露し、妊娠21日目に解剖した。仔の骨格および内臓の奇形、仔の雌雄の比、親の回復、体重、臓器重量について観察した。結果として仔の発達には影響はなく、10と40 ppm曝露群の親では脾臓重量(相対および絶対重量)の増加が認められた23)
 分解性:難分解(化審法)(3.3%分解、BOD)24)
 濃縮性:低濃縮(化審法)(BCF:3.1~4.8)24)
 生態影響:
 
クロレラ(Chlorella pyrenoidosa、緑藻)  72 h-EC50(増殖阻害) 28mg/L 25)
72 h-NOEC(増殖阻害) 9.2mg/L 25)
セレナストルム(Selenastrum capricornutum)  96 h-EC50(増殖阻害)  35mg/L 26)
96 h-NOEC(増殖阻害) 3.2mg/L 26)
96 h-EC50(増殖阻害)  21mg/L 27)
オオミジンコ(Daphnia magna)  48 h-LC50      62mg/L 28)
48 h-LC50  27mg/L 29)
24 h-EC50(遊泳阻害) 60mg/L 30)
21 d-NOEC     2.6mg/L 30)
エビの一種(Americamysis bahia 96 h-LC50      6.7mg/L 26)
ファットヘッドミノー(Pimephales promelas 96 h-LC50   39mg/L 31)
ヒメダカ(Oryzias latipes 24 h-LC50 24mg/L 32)
48 h-LC50   20mg/L 32)
ブルーギル(Lepomis macrochirus 96 h-LC50     43mg/L 33)
 
   規制・基準
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[化審]第2条指定化学物質1)
[消防]第2条危険物第4種第3石油類非水溶性液体(2,000L)1)
消防法34)
危険物の規制に関する政令34)
[毒劇]第2条別表第2劇物1)
毒物及び劇物取締法34)
毒物及び劇物取締法施行令34)
毒物及び劇物取締法施行規則34)
[労働安全]施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
[海洋]
施行令別表第1有害液体物質(B類)1)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令34)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行規則第30条の2の3の物質を定める告示34)
[船舶]危規則第3条危険物等級6.1毒物(P)(正6.1容器特級2)1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示34)
[航空]施行規則第194条危険物毒物(M特級2)1)
航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示 1)
[港則]施行規則第12条危険物(毒物)1)
港則法施行規則の危険物の種類を定める告示34)
[道路]施行令第19条の13(車両の通行の制限)
[外為]輸出貿易管理令34)
輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表34)
[鉄道]鉄道運転規則第2条第1項第4号の危険品を定める告示34)
[バーゼル]特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物34)
[労働基準]労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物等34)
労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定34)
 
 [2] p-クロロニトロベンゼン 
 
 今回の調査の結果、p-クロロニトロベンゼンは、水質(50地点、150検体)、底質(48地点、144検体)から不検出であった。(統一検出限界値:水質0.087μg/L、底質2.2 ng/g-dry)。
 以上の調査結果によれば、p-クロロニトロベンゼンは、水質及び底質ともに不検出であり、今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における水系の環境調査の必要はないと考えられる。なお、本物質は平成14年度の本調査における初期環境調査の対象物質(生物)である。
 
   ○ p-クロロニトロベンゼンの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  昭和53年度 0% (0/ 24)   不検出 0.05~0.075 μg/L
平成 3年度 0% (0/156)   不検出 0.3 μg/L
平成13年度 0% (0/150) 0% (0/ 50) 不検出 0.087 μg/L
底質  昭和53年度 0% (0/ 15)   不検出 2~2.5 ng/g-dry
平成 3年度 0% (0/162)   不検出 40 ng/g-dry
平成13年度 0% (0/144) 0% (0/ 48) 不検出 2.2 ng/g-dry
 
  【 参考:p-クロロニトロベンゼン 】
製造方法 : クロロベンゼンを硝酸でニトロ化して製造1)
    用途1) :
アゾ染料、硫化染料の中間物であるp-フェニレンジアミン、p-ニトロアニリン(ファストレッドGGベース)、p-アニシジン、2-クロロ-p-アニシジン(ファストレッドRベース)、3-ニトロ-p-アニシジン(ファストボルドーGPベース)、p-アミノフェノール、p-クロロアニリン、2,5-ジアミノニトロベンゼン等の原料
生産量:平成12年 15,000 t(推定)
環境への主な放出源
化学工業:大気への排出量117 kg/年、公共用水域への排出量150 kg/年(取扱量17,005,382 kg/年)2)
  代謝
 
体内で代謝され、尿中には主としてニトロクロロフェノールのグルクロン酸または硫酸抱合体とニトロベンゼンのN-アセチルシステイン抱合体として排泄される。その他にアミノクロロフェノールおよびそのN-アセチル化物も少量が尿中に排泄される36)
ヒトの急性中毒の場合、尿中に8種の代謝物となって排泄される。すなわち、p-クロロニトロベンゼンの熱分解によりN-アセチル-S-(4-ニトロフェニル)-システイン、p-クロロアニリン、2-クロロ-5-ニトロフェノールおよびp-クロロホルムアニリドがこの順に多く、その他、少量の2-アミノ-5-クロロフェノールと2,4-ジクロロアニリン、微量のp-クロロアセトアニリドと4-クロロ-2-ハイドロキシアセトアニリドである。p-クロロニトロベンゼンそのものは尿中には排泄されない37)
ラットに100 mg/kgを腹腔内投与後、8~24時間の尿中に8種の代謝物と微量のp-クロロニトロベンゼンが排泄された。代謝物はp-クロロアニリン、2,4-ジクロロアニリン、p-ニトロフェノール、2-クロロ-5-ニトロフェノール、2-アミノ-5-クロロフェノール、p-クロロホルムアニリド、4-クロロ-2-ヒドロキシアセトアニリド、p-クロロアセトアニリドである37)
毒性
     
   LD50(ラット、経口)     530 mg/kg 36)
 LD50(ウサギ、経皮)   >3,040 mg/kg 36)
  ヒトに対する毒性は極めて強い。吸入または皮膚吸収で死に到ることがある。腐食作用あり。眼や皮膚にやけどを生じる39)
許容濃度:
     
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― 3B
  IARC     3
 EPA Region III RBC Table:魚許容濃度 0.18mg/kg(carcinogenic effects)
 刺激性:不詳
 反復投与毒性:不詳
 発がん性:
 ヒトに対するクロロニトロベンゼンの発がん性の証明は不十分である。IARCはGroup 3に分類している40)
 変異原性 : 不詳
 分解性:難分解(化審法)(0~25.6%分解、BOD)
 濃縮性:低濃縮(化審法)(BCF:5.8~20.9)
 生態影響:
 
クロレラ(Chlorella pyrenoidosa、緑藻) 96 h-EC50(増殖阻害) 4.9 mg/L 42)
セネデスムス(Scenedesmus subspicatus、緑藻) 48 h-EC50(増殖阻害)  8 mg/L 43)
オオミジンコ(Daphnia magna 48 h-LC50      6.7 mg/L 28)
48 h-LC50      8.9 mg/L 28)
24 h-EC50(遊泳阻害) 15 mg/L 44)
21 d-NOEC     0.2 mg/L 44)
淡水エビの一種(Penaeus chinensis 96 h-LC50      2.1 mg/L 45)
グッピー(Poecillia reticulata 96 h-LC50      6.6 mg/L 42)
ゼブラフィッシ(Brachydanio rerio 48 h-LC50      15 mg/L 46)
96 h-LC50 15 mg/L 46)
 
    規制・基準
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[化審]第2条指定化学物質
[労働安全]施行令別表第3特定化学物質等(第2類物質)1)
施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
労働安全衛生法施行令34)
労働安全衛生規則34)
特定化学物質等障害予防規則34)
作業環境評価基準34)
作業環境測定基準34)
特定化学物質等障害予防規則の規定に基づき労働大臣が定める性能34)
労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく労働大臣が定める化学物質34)
第57条の5変異原性が認められた既存化学物質
[船舶]危規則第3条危険物特級6.1毒物(正6.1容器特級2)1)
[航空]施行規則第194条危険物毒物(M特級2)1)
[外為]輸出貿易管理令別表第二(輸出の承認)
輸入貿易管理令第4条第1項第2号(2号承認)
[バーゼル]第2条第1項第1号イ
[労働基準]労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定34)
 
 
 [3] クロロタロニル(テトラクロルイソフタロニトリル)
     
 今回の調査の結果、クロロタロニルは、水質(17地点、51検体)で不検出であった(統一検出限界値:水質0.010μg/L)。
 以上の調査結果によれば、クロロタロニルは、水質及び底質ともに不検出であり、今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における水系の環境調査の必要はないと考えられる。
 
     ○ クロロタロニルの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質 昭和52年度 0% (0/ 3) 0% (0/ 1) 不検出 10 μg/L
平成 3年度 0% (0/57) 0% (0/19) 不検出 0.13 μg/L
平成13年度 0% (0/51) 0% (0/17 不検出 0.010 μg/L
底質 昭和52年度 0% (0/ 3) 0% (0/ 1) 不検出 100 ng/g-dry
平成 3年度 0% (0/30) 0% (0/10) 不検出 50 ng/g-dry
魚類 平成 3年度 0% (0/30) 0% (0/10) 不検出 40 ng/g-wet
 
 【 参考:クロロタロニル 】
 製造方法
     m-キシレンをアンモニアと空気とでアンモニオキシディジョンしてイソフタロニトリルを得た後、塩素化して製造47),2-1)
  用途 : 殺菌剤(野菜、果樹などの園芸作用の病害防除)1)
  生産量:
     平成12農薬年度:原体3,574.5 t、粉剤951.1 t(40%)、粉剤180.5 t(10%)、
                水和剤891.0 t(40%)、水和剤49.6 t(フロアブル)、くん煙剤9.9 t(28%)、
                くん煙剤2.1 t(顆粒)
                輸出:1,701.0 t(原体)、1,163.0 t(製剤)1)
  環境への主な放出源
    農業用途
    繊維工業:環境への排出量データなし(取扱量1,098 kg/年)2)
  代謝 :
   グルタチオン-S-トランスフェラ-ゼの作用によるグルタチオン抱合体の形成が解毒の機構であることがナマズを使ったin vitro 実験で明らかにされた48)
 毒性 :
 
  LD50(ラット、経口)    >10 kg/kg 49)
LD50(ラット、腹腔)     2.5 mg/kg 49)
LD50(ラット、経皮)  >10,000 mg/kg 50)
LD50(ウサギ、経皮)  >10,000 mg/kg 51)
日本人農夫88人にパッチテストを行ったところ、10~28%がクロロタロニルまたは他の殺虫剤に反応し、35人が急性皮膚炎を発症した。その他数人が光過敏症を示した40)
1%クロロタロニル含有飼料を長期にわたってラットに食べさせると、運動失調、頻呼吸、鼻出血、皮膚炎、血尿、過敏症、膣出血を惹起する49)
ウサギの眼に100 mg/kgを一回与えると、眼の刺激、角膜白濁の原因となる51)
    許容濃度( 2002年):
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― 3B
  IARC     2B
    IRIS毒性データ:経口標準容量(Oral RfD) 0.015mg/kg/day
    刺激性:未詳
    反復投与毒性 : 不詳
    変異原性:
Salmonella/microsomeテストで陰性3-6)Salmonella typhimurium strains TA98またはTA100株に対する染色体異常テストでクロロタロニル(純度75%)1,500 mg/Lまで陰性40)
    発がん性:
ヒトでは十分な証拠はないが、動物実験では証明されている。IARCはGroup 2Bに分類している52)
    生殖毒性:
3世代にわたる混餌食で飼育して観察した結果、0.15%以下では生殖、成長、副腎および消化器機能への影響はないが、0.15%で生殖能への影響が現われる53)
    分解性・濃縮性:濃縮性が無い又は低いと判断される物質(通産省公報公表内容、1978.12.16)
    生態影響:
セレナストルム(Selenastrum capricornutum
              (緑藻)
120 h-EC50(増殖阻害) 0.19 mg/L 56)
72 h-EC50(増殖阻害) 0.17 mg/L 57)
オオミジンコ(Daphnia magna)  48 h-LC50     0.13 mg/L 58)
48 h-EC50(IMM) 0.07 mg/L 56)
48 h-LC50(IMM) 0.097 mg/L 58)
エビの一種(Paratya australiensis 96 h-LC50      0.016 mg/L 59)
ナマズ(Ictalurus punctatus 24 h-LC50     0.062 mg/L 59)
96 h-LC50     0.052 mg/L 60)
ニジマス(Oncorhynchus mykis 96 h-LC50     0.011 mg/L 61)
96 h-LC50     0.011 mg/L 62)
(注)IMM;遊泳阻害
有機塩素系殺菌剤。藻類、甲殻類、魚類すべてに対し、報告されている毒性値は高い。
規制・基準
  [PRTR] 第2条第1種指定化学物質1)
  [化審]  第2条指定化学物質1)
  [食品]  食品、添加物等の規格基準
 
 
 [4] ピリダフェンチオン
 
 今回の調査の結果、ピリダフェンチオンは、水質(17地点、51検体)、底質(17地点、51検体)、魚類(16地点、48検体)いずれにおいても不検出であった(統一検出限界値:水質0.11μg/L、底質11ng/g-dry、魚類6.9ng/g-wet)。
 以上の調査結果によれば、ピリダフェンチオンは水質及び底質ともに不検出であるが、関連情報から見て、検出下限値が十分ではないため、検出感度の向上に努め、再度初期環境調査の候補物質とする必要がある。
 
  ○ ピリダフェンチオンの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  平成13年度 0% (0/51) 0% ((0/17) 不検出 0.11 μg/L
底質  平成13年度 0% (0/51) 0% (0/17) 不検出 11 ng/g-dry
魚類  平成13年度 0% (0/48)  0% (0/16)  不検出  6.9 ng/g-wet 
 
  【 参考:ピリダフェンチオン 】
製造方法 :  
O,O-ジエチルチオリン酸クロリドと6-ヒドロキシ-2-フェニル-3(2H)-ピリダジノンとの縮合により製造63)
用途 : 殺虫剤、国内では水稲用に使用されている。63)
生産量64)
平成12農薬年度:原体105.6 t、粉剤DL 161.4 t、水和剤 22.4 t、
         水和物フロアブ 14.6 t、乳剤 44.5 kL、粒剤 50.3 t(5%)
輸出:61.0 t(原体)、7.0 t(製剤)
環境への主な放出源
      農業用途
      化学工業:環境への排出量データなし(取扱量152,921 kg/年)35)
代謝 : 不詳
毒性 :
 
 LD50(ラット、経口) 424 mg/kg 65)
 LD50(ラット、経皮) 2,100 mg/kg 66)
 LD50(ラット、皮下)     305 mg/kg 67)
 LD50(ラット、吸入) 105 mg/kg 67)
 LD50(マウス、経口)     237 mg/kg 68)
 LD50(マウス、経皮)     660 mg/kg 67)
 LD50(マウス、皮下)     237 mg/kg 67)3-3)
 LD50(マウス、腹腔)     64 mg/kg 69)
 LD50(イヌ、経口)   >120,000 mg/kg 67)
 LD50(イヌ、経皮)  >200,000 mg/kg 67)
 LD50(ウサギ、経口)   4,800 mg/kg 67)
 LD50(ウサギ、経皮)  >2,000 mg/kg 67)
 LD50(モルモット、経口)     513 mg/kg 68)
許容濃度:
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― 0.2 ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
 刺激性:不詳
反復投与毒性 : 不詳
発がん性 : 不詳
変異原性 : 不詳
分解性・濃縮性:不詳
生態影響:
 
ヌカエビ(Paratya compressa improvisa 96 h-LC50   0.003 mg/L 70)
カエル(Bufo bufo 72 h-LC50   7.3 mg/L 71)
ニジマス(Oncorhynchus mykis 96 h-LC50   7.5 mg/L 72)
タナゴ(Acheilognathus mariokae 48 h-LC50   13 mg/L 73)
ティラピア(Tilapia nilotica 96 h-LC50   6.4 mg/L 74)
 
有機燐系殺虫剤。甲殻類に対する毒性は極めて高く河川水中の濃度でヌカエビに致死的な影響をもたらしたことが報告されている70)
規制・基準
  [PRTR]  第2条第1種指定化学物質1)
  [労働安全]施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
  [港則]  施行規則第12条危険物(引火性液体類)
  [外為]  輸出貿易管理令34)
         輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または
         船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表34)
  [バーゼル]特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物34)
  [農薬]  農薬取締法第3条第1項第4号から第7号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準第1号イ
         の環境庁長官の定める基準
 
 
 [5] ブタクロール 
 今回の調査の結果、ブタクロールは、水質(17地点、51検体)、底質(17地点、51検体)、魚類(16地点、48検体)でいずれにおいても不検出であった(統一検出限界値:水質0.11μg/L、底質1.6ng/g-dry、魚類1.5ng/g-wet)。
 以上の調査結果によれば、ブタクロールは水質及び底質ともに不検出であるが、関連情報から見て、検出下限値が十分ではないため、検出感度の向上に努め、再度初期環境調査の候補物質とする必要がある。
 
  ○ ブタクロールの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  平成6年度 0% (0/39) 0% (0/13) 不検出 0.02 μg/L
平成13年度 0% (0/51) 0% (0/17) 不検出 0.11 μg/L
底質 平成6年度 0% (0/39) 0% (0/13) 不検出 4.4 ng/g-dry
平成13年度 0% (0/51) 0% (0/17) 不検出 1.6 ng/g-dry
魚類 平成6年度  0% (0/39) 0% (0/13) 不検出 2 ng/g-wet
平成13年度 0% (0/48) 0% (0/16) 不検出 1.5 ng/g-wet
 
  【 参考:ブタクロール 】
製造方法 :
2,6-ジエチルアニリンとホルムアルデヒドとの反応で合成されたアゾメチンを、クロロアセチルクロリドと反応させた後、さらにブタノールと反応させて製造75)
用途
農業用除草剤(アセトアニリド系の非ホルモン型土壌処理、除草剤で水田雑草の防除を対象とし、幼芽、幼根に吸収され殺草作用を発揮)76)
生産量 : 平成7農薬年度:粒剤 2 t 76)
環境への主な放出源 : 農業用途
代謝
ラット肝臓と腎臓のS9mix、ミクロソーム、可溶性画分を使った実験で、ブタクロールはかなりの量が肝臓でグルタチオン抱合体となる。腎臓ではグルタチオン抱合化は弱く、グルタチオン抱合体をメルカプツール酸塩に変える。肝臓ではメルカプツール酸塩は形成されない。アセチル-CoAの存在下でブタクロールアセチルシステイン抱合体となる77)。可溶性画分の酵素活性は性差がないが、その他の画分では雌性の酵素活性の方が高い77)
毒性
     
  LD50(ラット、経口)  2,000 mg/kg 78)79)
LD50(ウサギ、経皮)  >13,000 mg/kg 79)
ヒトに対する毒性は不詳
100、300および1,000 ppm混餌をラットとイヌに2年間与えた結果、慢性症状は認められなかった79)
細胞毒性はラット気管上皮由来の細胞(RTE)に対してはパラコートより強いが、ハムスター卵巣細胞(CHO)に対してはパラコートの方が強い81)
許容濃度:
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
刺激性:不詳
反復投与毒性 : 不詳
発がん性 : 不詳
変異原性
RTEおよびCHO培養細胞による Sister Chromatid Exchange(SCE)試験は陰性81)。CHO細胞による染色体異常試験ではS9mixの無添加で陽性82)
分解性・濃縮性:不詳
生態影響:
セレナストルム(Selenastrum capricornutum
              (緑藻)
72 h-EC50
 (増殖阻害)
0.0012 mg/L 83)
 
ウキクサの一種(Lemna perpusilla NR-(増殖阻害) 1~19 mg/L 84)
オオミジンコ(Daphnia magna 96 h-LC50   1.1 mg/L 85)
ミジンコの一種(Ceriodaphnia dubia
 
48 h-LC50  3.0 mg/L 86)
7d-MATC(繁殖) 0.76 mg/L 86)
海産エビの一種(Americamysis bahia 96 h-LC50    0.23 mg/L 87)
オタマジャクシ(Bufo bufo japonicus 96 h-LC50   1.8 mg/L 71)
ティラピア(Tilapia nilotica 48 h-LC50   0.88 mg/L 88)
ファットヘッドミノー(Fathead minnow 96 h-LC50   0.28 mg/L 85)
カダヤシ(Gambusia affinis 48 h-LC50   0.9 mg/L 89)
コイの一種(Ctenopharyngodon idella 48 h-LC50   0.24 mg/L 88)
コイの一種(Cyprinus carpiomirror 48 h-LC50   0.1 mg/L 89)
コイの一種(Hypophalmichthys nobilis 48 h-LC50   0.58 mg/L 88)
 
除草剤なので、当然ながら藻類に対する影響は強いが魚類に対しても除草剤の中では毒性が強い方である。河川水中で、単独あるいは他の1~数種除草剤との相加的な影響で、試験生物であるセレナストルムの増殖を著しく抑制した調査結果がある83)
  規制・基準 :
 
[港則] 施行規則第12条危険物(引火性液体類)
[農薬]農薬取締法第3条第1項第4号から第7号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準第4号の環境庁長官の定める基準
[食品]食品、添加物等の規格基準
 
 
 [6] エチレンオキシド
 今回の調査の結果、エチレンオキシドは、水質(9地点、27検体)、底質(9地点、27検体)、魚類(8地点、24検体)のいずれからも検出されなかった(検出限界値:水質0.098μg/L、底質2.1ng/g-dry、魚類1.9ng/g-wet)。
 以上の調査結果によれば、エチレンオキシドは、水質及び底質ともに不検出であり、今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における水系の環境調査の必要はないと考えられる。
 
○ エチレンオキシドの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  昭和55年度 0% (0/36) 0% (0/12) 不検出  0.2~5 μg/L
平成13年度 0% (0/27) 0% (0/9) 不検出 0.098 μg/L
底質 昭和55年度 0% (0/12) 0% (0/4) 不検出  1~3 ng/g-dry
平成13年度 0% (0/27) 0% (0/9) 不検出 2.1 ng/g-dry
魚類 平成13年度 0% (0/24) 0% (0/8) 不検出 1.9 ng/g-wet
 
【 参考:エチレンオキシド 】
製造方法1)
    ・ エチレンクロロヒドリンを加水分解後、中和させて製造
    ・ エチレンを空気または酸素と接触反応させて製造
用途  :
有機合成原料(エチレングリコール、エタノールアミン、アルキルエーテルなど)、界面活性剤、有機合成顔料、くん蒸、消毒殺菌剤1)
生産量・輸入量1) :
平成12年生産:989,534 t
輸出:11,045 kg、輸入:16,629 kg
環境への主な放出源
繊維工業:大気への排出量400 kg/年(取扱量546 kg/年)2)
パルプ・紙・紙加工品製造業:大気への排出量3,000 kg/年、公共用水域への排出量1,300 kg/年                (取扱量4,300 kg/年)2)
化学工業:大気への排出量10,813 kg/年、公共用水域への排出量1,200 kg/年
     (取扱量 119,397,415kg/年)2)
精密機械器具製造業:大気への排出量8,300 kg/年、公共用水域への排出量4,700 kg/年
          (取扱量 26,973 kg/年)2)
代謝:
吸収されたエチレンオキシド(EO)は加水分解を受けて、エチレングリコールとなる90)。EO水溶液を20 mg/kgまたは60 mg/kgをラット、マウスおよびウサギに静脈内投与した場合も 暴露チャンバーで200 ppmを吸入させた場合も尿中代謝産物は量の配分に違いはあるが、同じ化学物質であった。すなわち2-ハイドロキシエチルメルカプツール酸、N-アセチル-S-カルボキシ-メチル-L-システイン、S-(2-ハイドロキシメチル)-L-システイン、S-カルボキシメチル-L-システインおよびエチレングリコールである91)
毒性:
   LD50(ラット、経口)    330 mg/kg 92)
 LD50(モルモット、経口)    270 mg/kg 92)
 LC50(ラット、吸入4時間)   1,462 ppm 92)
 LC50(マウス、吸入4時間)    836 ppm 92)
 LC50(イヌ、吸入4時間)    973 ppm 92)
ヒトに対する10年間無影響量は5~10 ppmと考えられる。250 ppm(450 mg/m3)60分の暴露で重篤な症状を呈する93)。眼、呼吸気道、皮膚に炎症を起こす。EOの吸入は吐気、嘔吐、神経障害の原因となる。その他、結膜炎、呼吸困難、咳、めまい、下腹部痛、副収縮調律、不整脈、肺浮腫、麻痺などもEO暴露で生ずる93)
マウスに0、10、50、100、250 ppmを含有する空気を1日5時間、1週間に5日、10週間吸入させたところ、臨床上有意な病理学的知見は250 ppm群にのみ観察された。その知見とは赤血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビンの低下、睾丸と脾臓重量の低下、および肝臓重量の増加である。しかし、肝、睾丸、骨髄、脳、脾の組織学的な異常は観察されなかった94)
許容濃度(2002年):
 
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 1 1.8 1
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 1 ―― A2
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― 2
  IARC     1
EPA Region III RBC Table:魚許容濃度 0.0032mg/kg(carcinogenic effects)
刺激性:不詳
反復投与毒性:不詳
発がん性、変異原性、生殖毒性:
発がん性はヒトにおける証明は限られているが、動物においては十分証明されている。EOは、(i)染色体異常の頻度が用量に依存して増加する、および末梢リンパ球および暴露労働者の骨髄細胞の姉妹染色分体交換(SCE)を増加させる、(ii)ヒトおよび実験動物のリンパと造血系に悪性腫瘍を発生させる。(iii)暴露者のヘモグロビンアダクトの濃度依存的な増加を誘発する、および暴露げっ歯類のDNAとヘモグロビンアダクトの濃度依存的な増加を誘発する、(iv)暴露げっ歯類の生殖細胞の遺伝子変異と遺伝子転移を誘発する、(v)すべての系統発生レベルにおける強い変異誘発因子であり、染色体異常因子である、ということからEOはヒトに対して発がん性ありとし、IARCはGroup 1に分類している95)
分解性 : 良分解(化審法)(107%分解、BOD)24)
濃縮性 :不詳
生態影響:
オオミジンコ(Daphnia magna 24 h-LC50 270 mg/L 99)
48 h-LC50 137 mg/L 99)
アルテミア(Artemia sp. 24 h-LC50 350 mg/L 99)
ファットヘッドミノー(Pimephales promelas 24 h-LC50 90 mg/L 99)
48 h-LC50 89 mg/L 99)
96 h-LC50 84 mg/L 99)
キンギョ(Carassius auratus 24 h-LC50 90 mg/L 100)
規制・基準 :
[PRTR]第2条第1種指定化学物質1)
[消防]第9条の2貯蔵等の届出を要する物質政令別表第2省令第2条(エチレンオキシド及びこれを含有する製剤)(200kg)1)
危険物の規制に関する政令別表第一及び同令別表第二の自治省令で定める物質及び数量を指定する省令34)
[毒劇] 第2条別表第2劇物(製剤を含む)1)
毒物及び劇物指定令34)
[高圧]第2条(液化ガス)1)
一般高圧ガス保安規則第2条(可燃性ガス、毒性ガス)1)
一般高圧ガス保安規則34)
コンビナート等保安規則34)
容器保安規則34)
製造設備の位置、構造及び設備並びに製造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示34)
[労働安全]施行令別表第1危険物(可燃性のガス)1)
施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
労働安全衛生法施行令34)
労働安全衛生規則34)
[海洋]施行令別表第1有害液体物質(C類)(酸化エチレンと酸化プロピレンと混合物、酸化エチレンの濃度が30重量%以下のもの)1)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令34)
[船舶]危規則第3条危険物等級2.3高圧ガス(正2.3副2.1)〔UN1040,3300のもの〕1)
危規則第3条危険物等級2.1(正2.1)〔UN1041のもの〕1)
危規則第3条危険物等級2.2高圧ガス(正2.2)〔UN1952,3070,3297, 3298,3299のもの〕1)
危規則第3条危険物等級3.1引火性液体類(正3.1副6.1容器等級1)〔UN2983のもの〕1)
船舶による危険物の運送基準等を定める告示34)
[航空]施行規則第194条危険物高圧ガス(FD)〔UN1040,3300のもの〕1)
施行規則第194条危険物高圧ガス(D)〔UN1041のもの〕1)
施行規則第194条危険物高圧ガス(E)〔UN1952,3070,3297,3298, 3299のもの〕1)
施行規則第194条危険物引火性液体(GM等級1)〔UN2983のもの〕1)
航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示34)
[港則]施行規則第12条危険物(高圧ガス)〔UN1040,3300のもの〕1)
施行規則第12条危険物(引火性液体類)〔UN2983のもの〕1)
港則法施行規則の危険物の種類を定める告示34)
[家内]家内労働法施行規則34)
[水質]水質汚濁防止法施行令34)
[道路]日本道路公団・首都高速道路公団・神戸市道路公社・愛知県道路公社公示34)
危険物を積載する車両の水底トンネル及びこれに類するトンネルの通行の禁止又は制限の公示34)
[労働基準]労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物等34)
労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定34)
 
 
[7] 2,6-ジ-t-ブチルフェノール 
 
 今回の調査の結果、2,6-ジ-t-ブチルフェノールは、水質(53地点、159検体)では検出されず、底質からは51地点中4地点、153検体中12検体から検出された。底質の検出範囲は2.4~14ng/g-dryであった。(統一検出限界値:水質0.17μg/L、底質1.9ng/g-dry)。
 以上の調査結果によれば、2,6-ジ-t-ブチルフェノールは、水質から不検出であるが、底質から検出されている。検出頻度が低いが、有害性等の関連情報が少ないので、その収集に努める必要がある。
 
○ 2,6-ジ-t-ブチルフェノールの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  平成 8年度 0% (0/33) 0% (0/11) 不検出  0.3 μg/L
平成13年度 0% (0/159) 0% (0/53) 不検出  0.17 μg/L
底質  平成 8年度 0% (0/33) 0% (0/11) 不検出  71 μg/L
平成 13年度 8% (12/153) 8% (4/51) 2.4~14 ng/g-dry 1.9 ng/g-dry
 
  【 参考:2,6-ジ-t-ブチルフェノール 】
製造方法:
イソブチレンにフェノール触媒を加え反応させた後、蒸留精製して製造1)
用途:
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の原料として利用、海外では殺虫剤の原料や医薬品の原料としても利用1)
生産量:平成12年 4,300 t(推定)1)
環境への主な放出源:不詳
代謝:ヒトにおける代謝は未詳
毒性:
    LD50(マウス、経口)     2,995 mg/kg 101)
マウスのin vivo実験では肝臓のP-450、アニリンヒドロキシラーゼ、過酸化酵素、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、エポキシドヒドラターゼが上昇する102)。ラットおよびマウスで、血中コリンエステラーゼが上昇する101)
許容濃度:
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
刺激性:不詳
反復投与毒性:不詳
発がん性:不詳
変異原性:不詳
分解性・濃縮性:不詳
生態影響:不詳
規制・基準:
  [消防]  第9条の3条政令別表第4指定可燃物熱性個体類(3,000kg)1)
  [船舶]  危規則第3条危険物等級8腐食性物質(P)(正8容器等級1~3)1)
  [航空]  施行規則第194条危険物腐食性物質(Q等級1~3)1)
  [港則]  施行規則第12条危険物(腐食性物質)(等級3のものを除く)1)
 
 
 [8] 2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)
 
 今回の調査の結果、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールは、水質からは52地点中10地点、156検体中 26検体、底質からは53地点中15地点、159検体中36検体から検出された。(統一検出限界値:水質0.050μg/L、底質6.4ng/g-dry)。
 以上の調査結果によれば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールは、水質及び底質から検出されているが、検出頻度が低い。今回の調査結果からは特に問題を示唆する結果は得られておらず、当面、本調査における水系の環境調査の必要はないと考えられる。
 
  ○ 2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  昭和51年度 0% (0/68) 0% 不検出  0.4~5 μg/L
昭和52年度 0% (0/117) 0% (0/39) 不検出  0.1~5 μg/L
平成 8 年度 0% (0/33) 0% (0/11) 不検出  0.3 μg/L
平成13年度 17%(26/156) 19%(10/52) 0.060~1.6 μg/L 0.050 μg/L
底質  昭和51年度 15% (10/68)   66~1690 ng/g-dry 10~40 ng/g-dry
昭和52年度 15% (17/117) 18% (7/39) 8~220 ng/g-dry 8~60 ng/g-dry
平成 8 年度 3% (1/33) 9% (1/11) 103 ng/g-dry 90 ng/g-dry
平成13年度 23% (36/159) 28%(15/53) 6.8~77 ng/g-dry 6.4 ng/g-dry
 
【 参考:2,6-ジ--ブチル-4-メチルフェノール 】
製造方法:p-クレゾールとイソブチレンを反応させた後、精製して製造103)
用途:
食品添加物、飼料添加物、石油製品、合成ゴム、プラスチック、動物性・植物性オイル、石けん等の酸化防止剤、塗料とインクの中の皮張り防止剤104)
生産量・輸入量:不詳
環境への主な放出源:
食品・飼料の製造・消費、ゴム・プラスチックの製造・使用、界面活性剤の使用
代謝:
ヒトの主代謝物はグルクロン酸抱合体である。抱合体の母体は4-カルボキシ-2-(1-メチルエチル)-6-(1-フォルミル-1-メチルエチル)-フェノール105)、または3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸とそのエステルのグルクロン酸塩106) である。ラットの主代謝物は後者のグルクロン酸抱合体である106)
14Cラベルした2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールをマウスに胃内投与すると2時間以内に放射活性の80~90%が尿中に排泄され、糞便中排泄は1%以下である107)
毒性:
   LD50(ラット、経口)      890 mg/kg 108)
 LD50(マウス、経口)     1,040 mg/kg 108)
 LD50(モルモット、経口)   10,700 mg/kg 108)
    ヒトに対する毒性の報告はない。
許容濃度(2002年):
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     3
刺激性:不詳
反復投与毒性:不詳
発がん性:
 ヒトにおける陽性を示唆する報告はない。動物実験においても陰性の報告が多い中で、陽性を示す報告もある。本物質25 mg/kgを摂取するような食餌を2世代に与えたマウスの実験で、肝細胞腺腫とがんを生じた。雄性が雌性より発生率が高い109)
本物質に抗がん作用、抗変異原作用ありとする報告がある。すなわち解毒に関与するP450とtype II結合酵素系を効果的に誘発する110)。標的臓器に多様な作用をもつある種の発がん物質と同時に本物質を投与すると、発がん作用が抑制される。抗酸化物ががんの解毒酵素を高め、フリーラジカル捕獲剤として作用する110)
IARCはGroup 3に分類している111)
変異原性:不詳
分解性:難分解(化審法)(1.9~4.5%分解、BOD)112)
濃縮性:中程度濃縮(化審法)(BCF:230~2,500)112)
生態影響:
ゾウリムシ(Tetrahymena pyriformis 24 h-EC50(増殖阻害)  1.7 mg/L 113)
オオミジンコ(Daphnia magna 48 h-EC50(遊泳阻害) 1.44 mg/L 114)
メダカ(Oryzias latipes)  24 h-LC50        5.3 mg/L 115)
48 h-LC50       5.35 mg/L 115)
規制・基準:
[消防]第9条の3政令別表第4指定可燃物可燃性個体(3,000kg)1)
[労働安全]施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕1)
[食品]食品衛生法施行規則34)
食品、添加物等の規格基準34)
[飼料]飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令34)
[薬事]化粧品原料基準34)
 
 
 [9] 2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール
 
 今回の調査の結果、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノールは、水質(51地点153検体)から検出されず、底質からは53地点中1地点、159検体中2検体から検出された。底質の検出範囲は9.3~14ng/g-dryであった(統一検出限界値:水質0.020μg/L、底質7.0ng/g-dry)。
 以上の調査結果によれば、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノールは、水質から不検出であり、1地点の底質から検出されているのみである。しかし、本物質は生分解性が低く生物濃縮性も大きいとされ、「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定されていることから、モニタリング調査の候補物質とする必要がある。なお、本物質は平成14年度の本調査における初期環境調査の対象物質(生物等)である。
 
  ○ 2,4,6-トリ-t-ブチルフェノールの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  昭和59年度 0% (0/30) 0% (0/10) 不検出  0.04~0.08 μg/L
平成13年度 0% (0/153) 0% (0/51) 不検出  0.020 μg/L
底質  昭和59年度 10% (3/30) 10% (1/10) 2.3~8.2 ng/g-dry  0.4~1.9 ng/g-dry
平成13年度 1% (3/30) 2% (1/53) 9.3~14 ng/g-dry 7.0 ng/g-dry
 
【 参考:2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール 】
 
製造方法:p-エチルフェノールにイソブチレンを反応させて製造1)
用途:ゴム・プラスチック製品の老化防止剤
生産量・輸入量:不詳
環境への主な放出源:ゴム・プラスチックの製造・使用
代謝:
 本物質260 mg/kgをラットに1回経口投与すると、15~60分後に血中濃度は最大となる。血中の生物学的半減期は18.2分と11.8時間の2成分ある。臓器中で本物質の濃度が最大となるのは肝で2~3時間、腎で2~6時間、脾で1.5~2.5時間、精巣上体脂肪組織では24時間以上である。本物質およびその代謝物は尿には排泄されない。糞便中には本物質そのものではなく、代謝物が排泄される。代謝物は2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシラジカル(分子量261)と考えられる。この代謝物は胆汁中にも検出される116)
毒性:
 LD50(ラット、経口)  1,670 mg/kg 117)
本物質から生じるフェノキシラジカルは細胞毒性があるが、詳細は不明である118)
慢性毒性実験として、本物質を0、30、100、300、1,000 ppm含有飼料をラットに24ヶ月与え続けたところ、小赤血球性の貧血、肝機能関連の生化学的指標の変化(血清リン脂質とコレステロールの上昇)、肝細胞の巣状壊死(30 ppm群を除く)が認められ、これらの所見は雄より雌で顕著であった119)
許容濃度:
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
刺激性:不詳
反復投与毒性:不詳
発がん性:不詳
変異原性:不詳
分解性・濃縮性54)55)
     分解性が良好でなく、かつ濃縮性が大きいと判断される化学物質(通産省公報公表内容、
     1982.12.28)
生態影響:
ファットヘッドミノー(Pimephales promelas 96 h-LC50     0.061 mg/L 120)
規制・基準:
    [化審]  第2条第1種特定化学物質
    [外為]  輸入貿易管理令第4条第1項第1号輸入割当等品目/非自由化品目
     輸入貿易管理令第4条第1項第3号
 
 
  [10] 2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール
 
 今回の調査の結果、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノールは、水質からは51地点中2地点、153検体中5検体から検出され、底質からは53地点中4地点、159検体中8検体で検出された。検出範囲は水質0.063~0.21μg/L、底質3.5~74ng/g-dryであった(統一検出限界値:水質0.055μg/L、底質3.3ng/g-dry)。
 以上の調査結果によれば、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノールは、水質及び底質から検出されている。検出頻度は低いが、有害性等の関連情報が少ないので、その収集に努める必要がある。
 
  ○ 2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノールの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  昭和59年度 0%(0/30) 0%(0/10) 不検出 0.06~0.3μg/L
平成13年度 3%(5/153) 4%(2/51) 0.063~0.21μg/L 0.055μg/L
底質 昭和59年度 7% (2/30) 10% (1/10) 3.6~4.8ng/g-dry 0.6~7.1ng/g-dry
平成13年度 5%(8/159) 8%(4/53) 3.5~74ng/g-dry 3.3ng/g-dry
 
【 参考:2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール 】
製造方法 : p-エチルフェノールにイソブチレンを反応させて製造76)
用途 : ゴム用老化防止剤、ポリオレフィンの酸化防止剤76)
生産量・輸入量:平成8年 約1,000 t 76)
環境への主な放出源 : ゴム等の製造・使用
代謝 : 不詳
毒性:不詳
許容濃度:
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
   ドイツ(MAK) ―― ―― ――
   IARC     ――
 反復投与毒性 : 不詳
 催奇形性:不詳
 発がん性:不詳
 変異原性:不詳
 分解性・濃縮性54)55)
  蓄積性が無い又は低いと判断される物質(通産省公報公表内容、1990.12.28)
 生態影響:不詳
 規制・基準 : なし
 
 
[11] ポリ塩化ナフタレン
   今回の調査の結果、ポリ塩化ナフタレンは、水質からは8地点中5地点、24検体中12検体から検出され、底質からは8地点中8地点、24検体中24検体で検出された。検出範囲は水質0.0052~0.094ng/L、底質 0.020~4.1 ng/g-dryであった(統一検出限界値:水質0.0040~0.020ng/L、底質0.0008~0.005ng/g-dry)。
 以上の調査結果によれば、ポリ塩化ナフタレンは、水質及び底質から検出され、検出頻度が高い。さらに、本物質は生分解性が低く生物濃縮性も大きいとされ、「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定されていることから、モニタリング調査の候補物質とする必要がある。なお、本物質は平成14年度の本調査における暴露量調査の対象物質(大気等)である。
  ○ ポリ塩化ナフタレンの検出状況
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質  昭和51年度 3% (4/143)    100~450ng/L 20~2000ng/L
昭和53年度 4%  (3/75)   8~40ng/L 10~1000ng/L
平成13年度 50% (12/24) 62% (5/8) 0.0052~0.094ng/L 0.0040~0.020ng/L
底質  昭和51年度 17% (23/138)   5~670ng/g-dry 4~200ng/g-dry
昭和53年度 20% (15/75)   20~1000ng/g-dry 5~50ng/g-dry
平成13年度  100% (24/24)  100% (8/8)  0.020~4.1ng/g-dry 0.0005~0.005ng/g-dry
魚類  昭和51年度 3% (1/39)   350ng/g-wet 1ng/g-wet
昭和53年度  14% (9/63)   2~130 ng/g-wet 4~25 ng/g-wet
 
【 参考:ポリ塩化ナフタレン 】
製造方法 : ナフタレンを塩素化させて製造121)
用途 : PCB代用品、特殊な高沸点溶剤121)
生産量・輸入量:
 n=3以上の塩素化合物は化学物質審査規制法の第一種特定化学物質であり、現在、製造・輸入量無し121)
 環境への主な放出源 : 不詳
代謝 :
 未成熟ラットにヘキサクロロナフタレンを与えると、肝ミクロソーム系の代謝酵素を誘導する122)。マウスに1 mgのジクロロナフタレンまたはオクタクロロナフタレンをオリーブオイルに溶かして与えると、塩素化ナフタレンは脂肪組織が最高値を示す。生物学的半減期はオクタクロロナフタレンの方が長い123)
毒性 :
 1,4-ジクロロナフタレンと2,4-ジクロロ-1-ナフトールはラット肝がん細胞のin vitro assayでエトキシレソルフィンO-デエチラーゼ(EROD)活性を有意に誘導する。ヘキサクロロナフタレンは10-3 Mで、ペンタクロロナフタレンは10-7から10-3 Mでこの作用を発現する。モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-クロロナフタレンの作用は弱い124)
Halowax(およその配分比;テトラクロロナフタレン20%、ペンタ-およびヘキサクロロナフタレン各40%)、HxCN-mix(1,2,3,5,6,7-ヘキサクロロナフタレンと1,2,3,4,6,7-ヘキサクロロナフタレン各50%)およびHpCN(1,2,3,4,5,6,7-ヘプタクロロナフタレン)を鶏卵とあひる卵の空気孔から7日齢胚に曝露した。HalowaxとHxCN-mixは胚致死効果と肝EROD誘導効果があった。ERODに対するED50はHalowaxが0.2 mg/kg・egg、HxCN-mixが0.06 mg/kg・egg であった。鶏胚のLD50はHxCN-mixが3.0 mg/kg、同じ投与量でHalowaxの場合は4/12の致死率であった125)
許容濃度:
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     ――
刺激性 : 不詳
反復投与毒性 : 不詳
発がん性:不詳
変異原性:不詳
催奇形性 : 不詳
分解性・濃縮性54)55)
   分解性が良好でなく、かつ濃縮性が大きいと判断される物質(通産省公報公表内容、1975.08.27)
生態影響 : 不詳
規制・基準:
[化審]第2条第1種特定化学物質(塩素数が3以上のもの)
[外為]輸出貿易管理令別表第二(輸出の承認)(塩素数が3以上のもの)
輸入貿易管理令第4条第1項第1号輸入割当等品目/非自由化品目(塩素数が3以上のもの)
輸入貿易管理令第4条第1項第3号(塩素数が3以上のもの)
[バーゼル]経済協力開発機構の回収作業が行われる廃棄物の国境を越える移動の規制に関する理事会決定に基づき我が国が規制を行うことが必要な物を定める命令1)
[労働基準]第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号疾病化学物質
 
 
 [12] 長鎖塩素化パラフィン類
 
 今回の調査の結果、40%塩素化パラフィン、70%塩素化パラフィンともに水質からは7地点中1地点、21検体中2検体で検出され、底質からは40%塩素化パラフィンが7地点中6地点、21検体中17検体、70%塩素化パラフィンが7地点中6地点、21検体中16検体で検出された。検出範囲は40%塩素化パラフィン類が水質0.49~0.77ng/L、底質42~2000ng/g-dry、70%塩素化パラフィン類が水質0.46~0.83ng/L、底質11~390ng/g-dryであった(統一検出限界値:水質0.28μg/L(40%)、0.14μg/L(70%)、底質38ng/g-dry(40%)、11ng/g-dry(70%))。
 以上の調査結果によれば、長鎖塩素化パラフィン類は、水質及び底質から検出され、底質の検出頻度が高い。有害性等の関連情報から、環境リスク評価を行う化学物質の候補とする必要がある。
 
 ○ 長鎖塩素化パラフィン類の検出状況(40%:塩素化率40%、70%:塩素化率70%)
  検出頻度 検出範囲 検出限界
(検体) (地点)
水質 昭和54年度 0% (0/51) 0% (0/17) 不検出 10 μg/L
昭和55年度 0% (0/120) 0% (0/40) 不検出 10 μg/L
平成13年度(40%) 10% (2/21) 14%  (1/7) 0.49~0.77 μg/L 0.28 μg/L
平成13年度(70%) 10% (2/21)  14% (1/7)  0.46~0.83 μg/L 0.14 μg/L
底質 昭和54年度 47%(24/51) 65%(11/17) 600~10000ng/g-dry 500 ng/g-dry
昭和55年度 26% (31/120) 32% (13/40) 500~8500ng/g-dry 500 ng/g-dry
平成13年度(40%) 81%(17/21) 86%( 6/7) 42~2000 ng/g-dry 38 ng/g-dry
平成13年度(70%) 76% (16/21) 86% ( 6/7) 11~390 ng/g-dry 11 ng/g-dry
 
  【 参考:塩素化パラフィン類 】
 
 製造方法 :
  溶融固形パラフィンまたは固形パラフィンの四塩化炭素溶液に塩素ガスを反応させて製造126)
  n-パラフィンを塩素化させて製造126)
 用途 :
  船舶の防火塗料、帆布や天幕などのクロス防水兼防火加工剤、防火ペイント用、ビニル樹脂の可塑剤、合成樹脂および、ゴムなどの不燃化ラッカーエナメル、路面ペイント、印刷インキ、潤滑油(極圧潤滑油)、添加剤、パーマネント乳液、ニトロセルロース系塗料の可塑剤126)
 生産量・輸入量:不詳
 環境への主な放出源 : 塗料・インク等の製造・使用
 代謝 : 不詳
 毒性 :
  ヒトの経口致死量は15 g/kg以上と考えられる127)。本物質が皮膚に接触した例で、炎症も感作も認めなかった128)
  ニジマスにクロロワックス500Cを10 ppm含有する餌を82日間食べさせた。塩素化パラフィン残留物は組織中に1.1 ppmであった。毒性は観察されなかった129)
 許容濃度:
   
  ppm mg/m3 発がん分類  
日本産業衛生学会 ―― ―― ――
  アメリカ(ACGIH)      
    時間荷重平均値 ―― ―― ――
    短時間暴露限界 ―― ――  
  ドイツ(MAK) ―― ―― ――
  IARC     2B
 反復投与毒性 : 不詳
 発がん性 :
  C12塩素化率60%(平均)の市販品は動物実験で発がん性が証明されている。すなわち雌雄F344/Nラットと雌雄B6C3F1マウスに1日1回、1週間に5日、2年間にわたって、1日当たり0、312又は625 mg/kgをコーンオイルに懸濁させ胃内投与した。雌雄ラットに肝細胞腫瘍、雄ラットの腎尿細管にアデノーマとアデノカルチノーマ(混合)、雌ラットの甲状腺の小胞細胞のアデノーマとカルチノーマ(混合)が認められた。雌雄マウスにおいては肝細胞性アデノーマとカルチノーマ(混合)と雌マウスの甲状腺小胞細胞のアデノーマとカルチノーマが認められた130)

  C23塩素化率43%(平均)の市販品は動物実験で発がん性があるであろうとされている。
  IARCはC12塩素化率60%(平均)の市販品をGroup 2Bに分類している131)
 変異原性:
  クロロワックス500Cを0、33、100、333、1,000、3,333および10,000μg/plateの濃度で4種のSalmonella typhimurium strain(TA98、TA100、TA1535 およびTA1537株)についてアルコールで誘発したラットまたはハムスターの肝S9mixの存在下および非存在下でテストした結果は陰性であった132)
 分解性・濃縮性:不詳
 生態影響
ブルーギル(Lepomis macrochirus 24 h-LC50     > 300 mg/L 133)
ニジマス(Oncorhynchus mykiss 24 h-LC50     > 300 mg/L 133)
96 h-LC50     > 300 mg/L 134)
 
魚の急性毒性値は多数見られるが、上記のようにいずれも300 mg/L以上の値であり、確定値は報告されていない。環境中で非現実的な濃度以上であり、魚を用いた毒性値で見る限り水生生物に対する毒性はないといえよう。
規制・基準:
  [海洋]  施行令別表第1有害液体物質(A類)(炭素数が10から13までのものおよびその混合物)1)
  [船舶]  危規則第3条危険物等級9有害性物質(PP)(正P容器等級3)1
  [租税]  租税特別措置法施行令34)
  [地方税] 地方税法施行規則34)

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