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平成17年度(2005年度)「化学物質と環境」(詳細版)
第3章 平成16年度モニタリング調査結果(詳細版)

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  [2] HCB(ヘキサクロロベンゼン) 【平成16年度調査媒体:水質、底質、生物、大気】
 
 ・ 調査の経緯及び実施状況
 HCBは、難分解性で、生物に蓄積しやすくかつ慢性毒性を有するため、昭和54年8月に、化学物質審査規制法に基づく第1種特定化学物質に指定されており、環境中の濃度レベルを追跡することは、種々の観点から重要と考えられる。
 平成13年度までの本件調査においては、「生物モニタリング」で昭和53年度から平成8年度までの毎年と平成10、12、13年度に生物媒体(貝類、魚類、鳥類)について調査を実施し、「水質・底質モニタリング」で水質は昭和61年度から平成10年度まで、底質は昭和61年度から平成13年度の全期間に亘って調査を実施している。平成14年度以降は、本調査において水質・底質・生物(貝類、魚類、鳥類)・大気の調査を実施している。
 
 環境省内の他調査としては、「内分泌撹乱化学物質に係る環境実態調査」6) において平成10年度以降調査を実施しているほか、「海洋環境モニタリング調査」(地球環境局環境保全対策課)7) において沿岸200海里以内の水質、底質、水生生物(貝類、魚類)の調査を平成7年度から平成9年度まで実施している。
 
環境省内の他調査の結果
 
 ・ 調査結果
 平成16年度のモニタリング調査において、HCBは全ての媒体から検出された。
 HCBの測定結果は、水質で定量下限値 30 pg/L、検出下限値 8 pg/Lにおいて tr(11)~180 pg/L(幾何平均値 30 pg/L)、底質で定量下限値 7 pg/g-dry、検出下限値 3 pg/g-dryにおいて tr(6)~25,000 pg/g-dry(同 130 pg/g-dry)、生物媒体では定量下限値 14 pg/g-wet、検出下限値 4.6 pg/g-wetにおいて、貝類で14~80 pg/g-wet(同 30 pg/g-wet)、魚類で26~1,800 pg/g-wet(同 220 pg/g-wet)、鳥類で410~2,200 pg/g-wet(同 970 pg/g-wet)、大気で定量下限値 1.1 pg/m3、検出下限値 0.37 pg/m3において温暖期 47~430 pg/m3 (同 130 pg/m3)、寒冷期 51~390 pg/m3 (同 98 pg/m3)であった。
 
 ・ 評価
 水質は、昭和61年度から平成10年度までは、ほとんどが検出下限値(10,000 pg/L程度)未満であった。平成16年度は全地点・全検体から検出された。平成14年度以降、全地点・全検体から検出されており、広範な地点で残留が認められる。
HCB 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
14 36 28 1,400 9.8 0.6 [0.2] 114/114 38/38
15 29 24 340 11 5 [2] 36/36 36/36
16 30 tr(29) 180 tr(11) 30 [8] 38/38 38/38
 
 底質は、調査開始当初の昭和61年度から平成13年度までの残留状況は減少傾向にあった。平成16年度は全地点・全検体から検出された。平成14年度以降、全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
HCB 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
底質
(pg/g-dry)
14 210 200 19,000 7.6 0.9 [0.3] 189/189 63/63
15 140 120 42,000 5.0 4 [2] 186/186 62/62
16 130 100 25,000 tr(6) 7 [3] 188/189 63/63
 
 貝類は、調査開始当初の昭和53年度から平成13年度まで検出下限値(1,000 pg/g-wet)未満が継続しており、全調査期間を通じての残留状況の傾向の判断は困難である。平成16年度は全地点・全検体から検出された。平成14年度以降、全地点・全検体から検出されており、広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、調査開始当初の昭和53年度から59年度にかけての残留状況は減少傾向にあり、平成13年度は検出下限値(1,000 pg/g-wet)未満の値が多かった。平成16年度は全地点・全検体から検出された。平成14年度以降、調査地点及び生物種が変更されており、また検出下限値が平成13年度以前に比べて1/1,000程度に下がっていることから検出数が大幅に増えており、検出頻度や検出数による近年の残留状況の傾向の判断は困難であるが、平成14年度以降、全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあるものの、依然として残留が認められる。
HCB 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
貝類
(pg/g-wet)
14 23 22 330 2.4 0.18 [0.06] 38/38 8/8
15 44 27 660 tr(21) 23 [7.5] 30/30 6/6
16 30 31 80 14 14 [4.6] 31/31 7/7
魚類
(pg/g-wet)
14 140 180 910 19 0.18 [0.06] 70/70 14/14
15 170 170 1,500 28 23 [7.5] 70/70 14/14
16 220 210 1,800 26 14 [4.6] 70/70 14/14
鳥類
(pg/g-wet)
14 1,000 1,200 1,600 560 0.18 [0.06] 10/10 2/2
15 1,700 2,000 4,700 790 23 [7.5] 10/10 2/2
16 970 1,300 2,200 410 14 [4.6] 10/10 2/2
 
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始している。平成16年度の温暖期は平成15年度の温暖期と同レベルの濃度、寒冷期は平成14年度、及び平成15年度の寒冷期と同レベルの濃度であった。また、平成15年度と同様に、温暖期の方が寒冷期より濃度が高く、調査時期、気象条件等による差が見られた。平成14年度以降、全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
HCB 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
大気
(pg/m3)
14 99 93 3,000 57 0.9 [0.3] 102/102 34/34
15 温暖期 150 130 430 81 2.3 [0.78] 35/35 35/35
15 寒冷期 94 90 320 64 34/34 34/34
16 温暖期 130 130 430 47 1.1 [0.37] 37/37 37/37
16 寒冷期 98 89 390 51 37/37 37/37
 平成14年度 H14.10.15~H14.11.22
 平成15年度 温暖期:H15.8.25~10.11、寒冷期:H15.11.4~12.18
 平成16年度 温暖期:H16.8.30~10.19、寒冷期:H16.11.1~12.13
 
 HCBはPOPs条約に掲げられている物質であり、広範囲に存在しており、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。
 
○ 平成16年度HCBの検出状況 (経年変化図)
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
30 tr(29) 36 62 77 140 180 30 [8] 38/38 38/38
底質
(pg/g-dry)
130 88 340 610 1,200 2,300 25,000 7 [3] 189/189 63/63
生物:貝類
(pg/g-wet)
30 31 38 45 52 76 80 14 [4.6] 31/31 7/7
生物:魚類
(pg/g-wet)
220 210 530 640 830 1,700 1,800 14 [4.6] 70/70 14/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
970 1,300 2,000 2,000 2,200 2,200 2,200 14 [4.6] 10/10 2/2
大気
(pg/m3)
温暖期 130 130 140 150 190 250 430 1.1 [0.37] 37/37 37/37
寒冷期 98 89 100 120 170 200 390 37/37 37/37
 
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