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化学物質と環境円卓会議 関東地域フォーラム議事録

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■日時:平成14年3月19日(火)14:00~17:00
■場所:パシフィコ横浜5階小ホール
■出席者:(敬称略)
<ゲストスピーカー>
  小林 斉子 生活協同組合コープかながわ常任理事
  桑垣 美和子 桂川・相模川流域協議会代表幹事
  内山 新太郎 NEC事業支援部横浜支援部環境管理推進センター主任
  中山 清 ライオン株式会社品質保証部お客様相談室室長
  武 繁春 神奈川県環境農政部化学物質・フロン対策担当課長
  <学識経験者>
  原科 幸彦 東京工業大学 工学部教授
  安井 至 東京大学 生産技術研究所教授
  <市民>
  有田 芳子 全国消費者団体連絡会 事務局
  後藤 敏彦 環境監査研究会 代表幹事
  崎田 裕子 ジャーナリスト、環境カウンセラー
  角田 季美枝 バルディーズ研究会 運営委員
  中下 裕子 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 事務局長
  村田 幸雄 (財)世界自然保護基金ジャパン シニア・オフィサー
  山元 重基 日本生活協同組合連合会 環境事業推進室長
  <産業界>
  出光 保夫 日本石鹸洗剤工業会環境保全委員長(代理 吉村 孝一)
  河内 哲 日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員長(代理 岩本 公宏)
  瀬田 重敏 (社)日本化学工業協会広報委員長
  田中 康夫 日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員
  橋本 伸太郎 日本電機工業会環境政策委員会委員長
  <行政>
  岩尾 總一郎 環境省 総合環境政策局環境保健部長
  大森 昭彦 農林水産省 大臣官房技術総括審議官
  片桐 佳典 神奈川県環境科学センター 所長
  鶴田 康則 厚生労働省 大臣官房審議官(代理 吉田 淳)
  増田 優 経済産業省 製造産業局次長
   (欠席)  北野 大 淑徳大学国際コミュニケーション学部 教授
 仲村 巖 (社)日本自動車工業会 環境委員会副委員長
 小林珠江 日本チェーンストアー協会 環境問題小委員会委員
  司会(事務局)   安達一彦 環境省 総合環境政策局環境保健部環境安全課長
■資料:
○ゲストが使用した資料
小林資料 生活協同組合コープかながわ [PDF(104KB)]
桑垣資料 桂川・相模川流域協議会 [PDF(494KB)]
内山資料 NECの化学物質管理に関する取組み [PDF(1,487KB)]
中山資料 環境コミュニケーションとお客様相談 [PDF(543KB)]
武資料 神奈川における化学物質と環境に関する取り組み [PDF(114KB)]
○円卓会議メンバーが配布した資料
田中康夫 レスポンシブル・ケアと化学物質の安全 [PDF(114KB)]


■発言要旨

1. 発言要旨

(1)開会
安達 :開会挨拶

(2)化学物質と環境円卓会議の紹介
安達 :化学物質と環境円卓会議の趣旨について、化学物質は生活に欠かせないものである一方、環境を汚染してきた経緯がある。また、近年化学物質の環境リスクに対する国民の不安が高まっている。そこで、市民・産業界・行政が情報を共有し、相互理解を促進する場として円卓会議を設置した。これまでに2回開催し、各委員の考え方を共有し、リスクコミュニケーションについて議論を行ってきた。インターネットや地域フォーラムによって国民各界の意見・要望を集約し、対話を通じて情報の共有と相互理解を深め、会議での議論やそこで得られた共通認識を発信していく予定である。円卓会議での発言は、組織のコミットメントではないこと、メンバーは「さん」付けで呼ぶこととしている。

(円卓会議メンバー紹介:以後、原科さんが司会)

(3)神奈川県における市民・産業・行政の化学物質を環境に関する取り組みの発表

小林 :コープかながわの目的、活動について説明。神奈川県で作成したパンフレットを参考に化学物質とは何かといった紙芝居を作った。工場見学で現状を知るとか、行政と懇談を図っており、今後、事業者とも懇談を図りたい。事故がおきる前にコミュニケーションを重ねることが重要だと思う。

○生活協同組合コープかながわの取り組み
有田 :円卓会議に期待するものは何か。
小林 :一般市民には分かりやすく伝えることが第一である。分からない人がいることを前提に進めてほしい。
崎田 :紙芝居の反応はどうか。
小林 :最初は化学物質が難しいもののように捉えられていたが、身近なものであると分かったようだ。
角田 :リスク評価をもとに話し合っているというが、うまくいくポイントがあれば教えてほしい。
小林 :検討委員会の10人で十分話し合うが、その話を広める際に、一方的だったり届かないことがある。丁寧に積み重ねていくことが重要で、そうでないとコミュニケーションができない。
岩本 :事業者としても生活者の生の声が聞きたいので懇談会に参加したい。
原科 :フロアから意見があるか。
フロア:コープかながわの取り組みが店内で十分に広報されていない。一般会員を取り込んで議論していく観点が必要と思われる。
小林 :ご指摘の点はあると思う。

○桂川・相模川流域協議会の取り組み
桑垣 :桂川・相模川流域で1998年から市民、行政、事業者が対等の立場で活動し、ローカルアジェンダを取りまとめた。化学物質については、学習会、市民へのアンケートを行い、シンポジウムでは事業者を含めて議論ができた。また、鯉のメス化を指標とした環境ホルモン調査を市民を含めて行っている。
有田 :組織は全員で何名か。
桑垣 :地域協議会を含めると308名である。
崎田 :事業者とはどのような業種か。
桑垣 :約40社で、水道事業者や酒造など水に関係した事業者が多いが、リコーのような先進的に取り組んでいるところも参加している。
後藤 :会設立のきっかけは何か。
桑垣 :中流域ダムでアオコが発生し、神奈川県と山梨県で話し合いが行われてきた。
岩本 :環境ホルモンの市民の調査はぜひ続けてほしい。近年、動物や人間から出る女性ホルモンの影響も大きいと言われるのでそれも分析項目に入れてほしい。
桑垣 :実施しており、下水処理水が入るところではその影響が顕著であった。
有田 :洗剤メーカーはメンバーに入っているか。
桑垣 :メンバーにはないが、学習会、専門部会に来てもらって話を聞いている。
フロア:相模川河口底質でダイオキシン濃度が極めて高いが、どう取り組んでいるか。
桑垣 :松葉の調査で河口域のダイオキシン濃度が高かったので焼却炉排ガスによる影響も考えられる。
フロア:国民的コンセンサスを得ることが重要と考えるが、どうか。
桑垣 :三者で合意を得ることにポイントを置いている。当初は対立したがようやく連携できるようになった。シンポジウムは大きな実績になった。

○NEC横浜事業所の取り組み
内山 :公害防止、環境保全、環境マネジメント活動、環境経営と変遷をたどってきた。横浜事業所では、組織体制の整備、規定の整備、計画の整備と実施、管理システムの構築を図っている。事業所の環境サイトレポートを発行し、情報公開を図っている。
安井 :環境リスク削減において、リスクをどう評価しどれくらいなら削減しようとするのか。
内山 :環境会計で評価している。事業所では大きくリスク削減できるところは既にやってしまった。リスクの低いところは手の施しようがなくなっている。
片桐 :環境コミュニケーションの例はあるか。
内山 :横浜事業所では、市消費生活推進委員20-50名が毎月2回くる。毎年6月には事業所見学会を実施している。
フロア:環境負荷削減はLCAの観点で行っているか。
内山 :製品と事業所の環境負荷の面があり、製品の環境負荷削減は開発・生産部門でLCAを導入している。

○ライオンの取り組み
中山 :お客様相談窓口には毎年5万件の相談が寄せられる。人体への安全に関する問い合わせが最も多く環境に関するものも近年増えている。講習会、研修会への専門家の派遣、資料作成・配布といった活動を行っている。
角田 :相談窓口社員の教育にはどんなことに力を入れているか。
中山 :日々データが更新されるため、最新のデータを入手して研究者がコミュニケータに分かりやすく情報を提供している。
中下 :市民の提案で役立った事例はあるか。
中山 :提案は企画部へフィードバックしている。詰め替え商品や容器を薄くするなどが実施され、相談窓口は社内の圧力団体のようになっている。
有田 :洗剤の要らない洗濯機開発について洗濯機メーカーとのコミュニケーションはどう図られたか。
中山 :独自に製品を評価し、そのデータを基に話し合いを進めている。

○神奈川県の取り組み
武  :市民の不安感、ハイテク指針、一般事業所の化学物質環境安全管理指針、環境保全条例、PRTRなど化学物質管理の概要を説明。PRTR市民ガイドブックを見て、神奈川新聞が1面トップで記事を掲載した。しかし反応はなかった。記事が適切に書かれていたため混乱がなかったと思われる。市民と事業者の間に立ってコミュニケーションを行える人材育成を行っている。
後藤 :県よりも市町村の方が市民との接点が多い。市町村に適切な人材がいなければ対応できないのではないか。
武  :PRTRデータを市町村レベルに加工する作業などを県で行う。研修会、データの加工などについて連絡会を作って市町村職員の人材を育成したい。
フロア:市や区役所は、移動があって(信頼性が築きにくく)コミュニケーションを続けられない。育成された人材が増えるといい。
武  :保健所や環境科学センターには専門的に対応できるが、役所については研修を行い対応する。
村田 :人材育成とはどんなことを実施したか。何か問題はあったか。
武  :平成12年と13年に1回ずつ、カリキュラムや場所、日程の試行を行った。参加者アンケートでは、「活躍する場があるのか」、「2日間の研修では把握できない」という意見があった。事業者がこれらの人材育成中の人を受け入れる方法は考えられないか。

(4)円卓会議メンバー及びスピーカーからの要望・意見
原科 :各スピーカーから円卓会議への要望等を聞かせてほしい。
小林 :専門家でない人達とのコミュニケーションが強まることを期待する。情報は流しっぱなし、たくさん流してもダメで、知りたい人に的確に流すことが重要。
桑垣 :色々な角度から検討してほしい。化学物質対策の計画づくり、定期的な情報交換の場の設定、環境影響の未解明な部分への早期の取り組み、そこへ市民も参加するのがよい。
内山 :代替品が本当にリスクが低いのかなど評価が難しい。少量多品種化して評価がますます難しくなっている。
中山 :企業と市民をつなぐ役割を期待する。相談窓口は受け身であり、本円卓会議でコミュニケーションの促進を図ってほしい。自社製品の情報はあるがそれを翻訳してくれる人が欲しい。また、多くの企業データの収集を促進する役割を期待する。
武  :“PRTR対象化学物質とは何か”という基本的な議論をしてほしい。庁内リスクコミュニケーションのパンフレット作成を進めたが、食品添加物の部署や水道水の部署からは、取り上げてほしくないと言われる。どんな部署が作ることが適切か、基礎的議論が必要。PRTRについてはデータのチェックができない。企業に関する他の情報源との整合性からチェックできるようにすることが必要。
後藤 :PRTR事業者は中小企業が多く認知度が低い。これにどう対処するか。事業者の認識がなければリスクコミュニケーションはうまくいかない。
瀬田 :化学企業は昔とは異なる取り組みを行っているが市民には分かりにくい。分かりやすく説明してきたか反省している。専門用語を使わないことが難しく、誤解を避けようとすると細かく、専門的になる。表現力の問題がある。提案や苦情への対応が重要であると思う。
村田 :5月に米国のティオ・コルボーン氏が来日する。5月の第3回円卓会議でメンバーと意見交換できると良い。
原科 :5月の会議への提案として受け止める。
角田 :削減対策実施計画づくりの提案があった。リスク削減戦略の議論をするのが良いと思う。
田中 :レスポンシブル・ケア活動を行っている。リスクコミュニケーションに業界のOBを活用してはどうか。

(5)フォーラム参加者からの要望・意見
原科 :フロアからアンケートによる要望・意見が寄せられた。これを分担して紹介・回答していく。
安井 :「化学物質について教育がちゃんとしていないのがいけない」という意見が寄せられている。その通りで、学校のテストで塩ビを燃やすと何が発生するかという問題があり、そこではダイオキシンという記述が正解とされた。教員が真実を学んでほしい。「文部科学省との連携があるか」との質問については、これはない。
「専門家が地域で橋渡しをしてはどうか」というご意見があった。自分は目黒区でリサイクルの委員長を行っているが時間が必要。むしろキーパーソンをつかむべきである。
「化学物質を自然界を含めて全体で捉えるべき」という意見があった。LCAは製品に関するもので、全体を扱うものはない。モデルが難しく実態が把握できていない問題もある。特に素材産業からの情報提供が必要である。
「ドイツでは環境教育が盛んである。日本でも科目を作ってほしい。」との意見があった。
原科 :東京工業大学では環境安全論という講義を行っている。
フロア:国民レベルで、義務教育で環境を扱ってほしい。円卓会議で教育を議論してほしい。環境教育を受けないまま育った技術者が化学物質をどう考え扱うかが問題。
原科 :寄せられたシートでは、「市民の不安感を取り上げてほしい」、「円卓会議にマスメディアを入れてはどうか」、「会議が馴れ合いの印象がある」、「植物による環境モニタリング手法の確立を求める」、「省庁間の協調が求められる」などの意見があがっている。
武  :「行政の役割は情報提供だけか」という意見があったが、地域のリスクを減らすことが目的であり、施策として必要であれば規制対象に加える。
「PRTRを家庭で実施するとはどういうことか」については、化学物質は家の中にあるので、むやみに使うことをやめようということがある。
「風評被害にどう対処するか」という質問については、事実調査を行い数字の意味を伝えるようにすることが重要だと思う。
中山 :「消費後に廃棄されるものを含めてゼロエミッションを進めてはどうか」という意見について、すべてゼロにする訳にはいかないが、容器の詰め替えやコンパクト化が消費者に受け入れられてきている。また、「製品消費後のモニタリングをしているか」との意見があるが、すべてに対応することは難しく、製造する事業所についてはモニタリングを行っている。
「企業の環境政策をどのように伝えているか」については、環境報告書とホームページで対応している。
吉村 :石鹸洗剤工業会では河川・底質の調査を実施して、環境ホルモン濃度が下がっていることを確認している。
フロア:環境カウンセラーに企業OBなどがいるが、専門的すぎて市民へ説明できない。家庭へ帰って説明してみるなど、わかりやすく説明する方法を企業に考えてほしい。
原科 :本日の参加者は、いわゆるPRTR法の名前を知っている人はどれくらいか?内容を説明できる人はどれくらいか挙手願う。
(大多数)
原科 :本日は偏った集団といえそうである(笑)。「中小企業へPRTR法を伝えるために何をしているか」という質問が来ている。
事務局:中小企業へPRTRを伝えるにはツールが必要と考えられる。リスクは毒性と排出量をあわせて考える必要があるため、毒性等に関するデータベースを作り、使ってもらえるようにしたい。また、リスクコミュニケーション研修制度を平成14年度から作っていきたい。
フロア:中小企業総合事業団の支援で学習会をやったが経済産業省の所管法人の講師には、間違いが多かった。講師への教育が重要。
内山 :「化学物質管理をどのように行っているか」という質問については、当社では計算式が20以上あるが、大気への排出量の算出が難しい。「リスク削減対策によりコストが削減されたか」という質問があり、3割は利益が出たが、7割には出ていないといえる。
桑垣 :「住民、行政、事業者の集まりでは利害の衝突があると思うがどうか」という質問に対して、目的が一致していたこと、計画段階から市民が参画できたことが信頼関係を作るのに良かったと思う。市民が自ら参加しようと思うことが必要。
小林 :「化学企業とのコミュニケーションについて」聞かれているが、コープかながわの組織としてつき合いたい。「日常的な化学物質リスク削減とはどういうことか」という質問について、添加物の少ないものを選ぶなどの行動が考えられるが、ゼロにできないものもある。
事務局:「円卓会議は何をしてきたか」との質問が寄せられた。冒頭に説明したが、円卓会議ではインターネットや地域フォーラムを通じて広く意見を聴いてからプライオリティを付けて、今後、議論していく考えである。
原科 :本日のまとめは難しいが、たくさん意見をもらっているため、関西フォーラムとあわせてまとめたい。

(以上)



■議事録

1.開会

(事務局:安達) お待たせいたしました。時間ですので始めたいと思います。
 本日はお忙しい中、お集まりいただきまことにありがとうございます。私は事務局を務めています環境省環境安全課長の安達です。よろしくお願いします。
 これより「化学物質と環境円卓会議 関東フォーラム」を開催します。はじめに、この「化学物質円卓会議」の趣旨について簡単にご説明いたします。

2.化学物質と環境円卓会議の紹介

(事務局) 今日、私たちの身の回りには、プラスチック、合成洗剤、殺虫剤、あるいはハイテク機器など、数多くの製品が存在いたします。これらの製品にはさまざまな化学物質が使用されており、その点からいえば、化学物質は私たちの豊かにし、生活の質の維持・向上に欠かせないものとなっています。
 しかし一方、化学物質はものの製造・使用・廃棄の各段階、あるいは日常生活のさまざまな場面を通じて環境を汚染し、人の健康や生態系に有害な影響をもたらすこともあります。特に近年では、内分泌かく乱化学物質、いわゆる環境ホルモンといわれる新しいタイプの問題も提起されており、化学物質の環境リスクに対する国民の方々の不安も大きなものとなっていいます。
 こうした化学物質と環境の問題に対処するためには、社会の構成員である市民・産業・行政が情報を共有し、可能なかぎり共通の認識に立って環境リスクの低減のために行動していくことが重要であると考えます。このため市民・産業・行政の代表による化学物質の環境リスクに関する情報の共有および相互理解を促進する場として「化学物質と環境円卓会議」が設置されました。
 「化学物質と環境円卓会議」は、この問題に対処するため、各方面で化学物質と環境の問題に深くかかわっておられる方々に呼びかけをさせていただきましたところ、皆様の賛同が得られて設置された会議です。これまでにすでに2回の会議が開催されています。参加メンバーのご意見表明やリスクコミュニケーション手法の説明などが行われています。
 「化学物質と環境円卓会議」は、インターネットの活用や、今回ここで行っています関東地域フォーラムのような地域フォーラムの開催により、国民各界の意見・要望を集約し、これらの意見・要望を踏まえた対話を通じ、環境リスク低減に関する情報の共有と相互理解を深め、会議での議論や、そこで得られた共通認識を市民・産業・行政に発信していく予定にしています。
 この円卓会議は、従来の役所が開く会議と異なり、化学物質と環境問題のうち何を取り上げ、どう議論していくかということも会議のメンバーが決定することから始める新しいかたちの会議です。円卓会議で議論するテーマの選定にあたり、まず各地域での取り組みや意見・要望を集約することが必要と考えています。そこでこの関東地域フォーラムを開催する運びとなりました。
 このフォーラムでは、「化学物質と環境円卓会議」で何を議論してほしいか、地域の実情はどうなっているかについてご意見をいただく場であると考えています。この関東フォーラムにより集約された意見をもとに円卓会議で活発な議論がなされ、ゆくゆくは化学物質に関わる環境リスクコミュニケーションの促進、ひいては安全と安心なくらしの実現に貢献されることを期待しています。
 なお、議論をいっそう活発にするため、この会議での発言はそれぞれのメンバーの方々が所属する組織のコミットメントではないことにしています。また、会議のメンバーは、普段は「先生」などと呼ばれておられる方ですが、すべて「さん」づけで呼ぶことにしていますのでご承知おきください。
 それでは、この円卓会議のメンバーの方々をご紹介します。メンバーの方々は、お名前をお呼びしましたらその場で立ち上がってください。また、会場の方々には封筒の中に「化学物質と環境円卓会議」というパンフレットがありますので、ご参考にしてください。
 全国消費者団体連絡会事務局の有田芳子さん。環境監査研究会代表幹事の後藤敏彦さん。ジャーナリストで環境カウンセラーの崎田裕子さん。バルディーズ研究会副運営委員長の角田季美枝さん。ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長の中下裕子さん。(財)世界自然保護基金ジャパンのシニア・オフィサーの村田幸雄さん。日本生活協同組合連合会環境事業推進室長の山元重基さん。
 日本石鹸洗剤工業会環境保全委員長の出光保夫さんの代理で吉村孝一さん。日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員長の河内哲さんの代理で岩本公宏さん。(社)日本化学工業協会広報委員長の瀬田重敏さん。日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員の田中康夫さん。(社)日本自動車工業会環境委員会副委員長の仲村巖さんは本日ご欠席。日本電機工業会環境政策委員会委員長の橋本伸太郎さん。日本チェーンストアー協会環境問題小委員会委員の小林珠江さんはまだお見えになっていないようです。
 環境省環境保健部長の岩尾總一郎さん。農林水産省大臣官房技術総括審議官の大森昭彦さん。神奈川県環境科学センター所長の片桐佳典さん。厚生労働省大臣官房審議官の鶴田康則さんの代理で吉田淳さん。経済産業省製造産業局次長の増田優さん。
 この円卓会議のコーディネーターをお願いしています淑徳大学の北野大さんは本日ご欠席です。続いて東京工業大学工学部教授の原科幸彦さん。東京大学生産技術研究所教授の安井至さんです。
 最後に、フォーラムにお集まりいただいた皆様に事務局からお願いです。お手元の封筒の中に、円卓会議への要望・期待などをご記入いただくための用紙をお配りしています。途中の休憩時間に回収し、議題5の中でご紹介させていただきますので、ぜひ積極的にご記入ください。
 さて、円卓会議では、市民・産業・行政における話し合いを円滑に進めていくために学識経験者の方に司会進行役をお願いしております。本日は司会進行を原科さんにお引き受けいただいています。それでは、原科さん、よろしくお願いいたします。

3.神奈川県における市民・産業・行政の化学物質と環境に関する取り組みの発表

(司会:原科) ただいまご紹介をいただきました原科です。それでは早速、議題3に入ります。
 議題3は、お手元の議事次第にあるように「神奈川県における市民・産業・行政の化学物質と環境に関する取り組みの発表」です。
 まず、市民側から、生活協同組合コープかながわの小林さんに10分程度でお願いします。

<NGOの取り組み>


(小林) 皆様、こんにちは。コープかながわの小林と申します。よろしくお願いします。
 生協とは、消費者の権利を守るために消費者が出資金を出し合って組合員となり、お店・センターを運営し、自ら利用し、剰余金が出たらみんなで分け合う、非営利の消費者団体です。
 コープかながわは、組合員の普段のくらしに密着した運動と事業を広げ、健康なくらしと平和な社会を目指します。「組合員が主人公、組合員主権」、組織と業務は一体の考え方で事業と運動を進めています。組合員と職員の声で運動と事業を進めます。地域社会の中で期待されるコープを目指して連帯を広げます。組合員と職員がともによりよいくらしと社会をつくり、組合員と職員が互いに学び合い、育ち合っていきます。これをコープかながわの「目指すもの・大切にする考え方」としています。
 組合員数は2月20現在で103万5000人、供給高は2001年度実績見込で1300億円となっています。事業は、店舗事業・共同購入・個人配達事業・共済事業・福祉事業・住宅事業をしています。組合員活動は、委員会・平和・くらし家計・環境・福祉・健康・文化・国際などの活動や、趣味・特技を生かしたサークルなど、自主自発のたくさんの活動があります。
 コープの食の安全に取り組みと組合員の環境活動についてお話しします。コープの取扱商品の安全確保にあたっては、公的基準を満たすことはもちろんですが、それだけでは不十分と思われるものについてはコープの自主基準を設定しています。食品添加物・微生物・残留農薬・残留放射能の4つの食品にかかわる取扱自主基準があります。
 安全性評価の基本的な考えは、リスクアセスメントとADI(一日許容摂取量:Acceptable Daily Intake)を基本にしています。新しい化学的知見に基づき、検討委員会を設けて自主基準の評価を見直しています。検討委員会は、リスク評価をする専門家の方々、リスク管理をする事業責任者、決定の影響を受ける組合員の三者で十分な話し合いをし、合意形成をしながら答申を出します。それを理事会で決定し、内容を組合員にお知らせしていきます。
 今回、微生物自主基準の考えと食品添加物の使用基準を変更していますので、リスク・アセスメントの考え方について学びながら、基準の変更点について合意形成を図ります。この際、内容をわかりやすく説明することと、委員の方が入れ替わるために繰り返し学習の機会を設定することが大事になっています。コープは話し合いの組織ですので、このようにやりとりしながら、コミュニケーションを図りながら進めています。
 環境に関する組合員活動は、レジュメの2ページに簡単な図にしています。委員会組織として、市・区・町・村ごとの組合員委員会が42委員会で300名、中学校区ごとの地域委員会が475委員会で2800名、ほかにさまざまなグループ活動があります。環境グループは、66グループ350名がいろいろな自主活動を行っていいます。
 環境に関しては、組合員活動等で、NO2の測定、水道水の測定、川の水質調査、リサイクル活動では87年から始まった牛乳パックの回収やトレー・びん・缶・ペットボトル、ファイバーリサイクルなど、たくさんの地域のグループが活動をしています。
 ここ2~3年は、特に小学校ぐらいまでのお子さんのいる家庭が多いのですが、「エコ・ファミリー」を募集し、家族ぐるみで環境を考える活動を推進しています。2001年度は100家族が参加しています。
 組合員の活動と結びついたかたちで商品が生まれていますが、その1つにトイレットペーパーがあります。牛乳パックが入ったトイレットペーパーや共同購入のちらしなどが入ったトイレットペーパーを何種類か開発しています。リサイクルですから、回収しながら自分たちが商品を使っていく活動に結びついています。
 PRTR(環境汚染物質排出移動登録)については、神奈川県と東芝の方と懇談会を行ったり、神奈川県のパイロット事業関連のワークショップに参加しました。
 コープかながわでは、旭硝子の大歳さんに来ていただき、「PRTRってなに」という学習会を行いました。リスクアナリシス(分析)の考え方や化学物質の閾値について学び、アメリカの企業が地域住民の方々とコミュニケーションをどのように取っているかを見ました。参加した皆さんの大多数は、企業とコミュニケーションを図ることに好感を持ちました。「日本ではこういうふうにはいかないわね」というご意見が多かったと思いますが、海外の企業では、事故が起こったあとに地域住民とのコミュニケーションに取り組み、その積み重ねからある程度の理解が得られてきたという内容でした。
 私たち組合員の活動は、自分たちのくらしを考えていくことですので、さまざまな環境活動をしながら、廃棄物の削減や、化学物質のことを考えるのを活動の基本にしています。
 神奈川県のデータ活用委員会に参加しておりました。そこで「化学物質と賢くつきあう法」というパンフレットが作成され、ホームページにもイラスト入りで載るそうですが、私たちとしてはそれを活用しようと紙芝居を作りました。
 委員会活動については、市町村ごとに300名、中学校区ごとに2800名の方たちが必ず参加される委員会がありますので、そういう中で「化学物質ってなに」ということを紙芝居でわかりやすくお知らせしていきたいと思っています。環境グループの方たちにもこういう働きかけをしていきますが、私たち自身が努力して伝えられることは伝えていきたいと思います。
 これからの方向としては、工場のPRTRのデータを公表し、工場見学も受け入れているところもあるということなので、そういう工場にお伺いして現状を知るということや、県や市の行政の方々とはいろいろ懇談をしているので、その中で、事業者の方も含めたかたちでリスクコミュニケーションができていけばいいと思います。
 リスクコミュニケーションについては、事故が起こってから取り組むのではなく、その前の段階でいろいろ取り組み、お互いのところで理解していく積み重ねが大変必要なのではないかと思います。私たちもできるところで取り組みたいと思っています(拍手)。

(司会) どうもありがとうございました。早速ご質問をいただきたいと思いますが、まず円卓会議の皆さん、ご質問はございますでしょうか。有田さん、どうぞ。

(有田) 市民として円卓会議に期待するものを聞かせていただければと思います。

(小林) 一般の市民としては、わかりやすいことが第一だと思っています。情報を流すとき、難しいものをわかりやすくすることは大変難しい問題だと思いますが、私たちが考えるときに、生活に密着したとらえ方でさまざまなものをとらえれば非常にわかりやすくなっていくのではないかと思います。わからない人がいることを前提に物事を組み立てていただきたいと思います。あまり専門家の方々だけで進めていただきたくないという思いもありますので、よろしくお願いします。

(司会) ありがとうございました。今、期待することということでしたが、議題4にそういうことをお聞きする機会がありますので、後程さらに詳しく議論したいと思います。ほかにご質問はございますか。崎田さん、お願いいたします。

(崎田) 今、紙芝居を見せていただいたのですが、実際にやって、組合員の方たちからどのような質問、どのような反応が返ってくると、お感じでしょうか。

(小林) できたての紙芝居で、まだ少ししかやっていませんが、多くの人が化学物資を非常に難しいもののようにとらえていたのが、「もっと身近なところにあったんですね」という感じを持ったと思います。
 コープかながわでは添加物や農薬の話は始終話題に挙がるのですが、それも化学物質だということがあまり念頭になく、化学物質が別にあるもののように考えられていた。それがもっと身近なものにあることから気がつくという経過をたどっていると思います。

(司会) ありがとうございました。ほかにございますか。では順番に、角田さん。

(角田) お話の中で、リスク評価をもとに組合員と事業者で話し合うというご説明があったのですが、その中でリスクコミュニケーション的なことでお感じになっていること、こうしたらうまくいくのではないかとか、これだとうまくいかなかったという例があれば紹介していただきたいと思います。

(小林) 検討委員会のところでは10人ぐらいですから三者が十分に話し合えますが、その後、多くの方々にその考えを広めるときには、どうしても一方通行になりがちなところや行き届かないところがあります。情報を出すところもそうですが、ていねいに積み重ねを少しずつしていくという考え方で進めないといけないと思っています。それは非常に難しいことだと思いますが、それをしないとコミュニケーションができないのではないかと思います。

(司会) ありがとうございました。それでは、岩本さん、お願いいたします。

(岩本) JRCC(日本レスポンシブル・ケア協議会:Japan Responsible Care Council)を代表して来ました岩本でございます。先程、事業者を含む方々とぜひコミュニケーションをしていきたいというご指摘がございました。私ども素材産業は末端の消費者とお話をすることが非常に下手でしたが、最近、RC活動の中で積極的にそういった人々と対話をしていこうと思っています。何もわかってくれと言うつもりはなくて、むしろ皆様方がどういう心配を感じられているのか生の声を吸い上げたいと思っていますので、ぜひお願いしたいと思います。喜んで参加させていただきます。

(小林) ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

(司会) 事業者の方から積極的なご発言をいただきました。円卓会議のメンバー以外の今日お集まりの方でご質問がございましたらお1人ぐらいどうぞ。

(Q1:会場の傍聴者からの発言1) 一般消費者として、あるいは生活者として疑問を投げかけたいと思います。私も生協のポイントカードを持って買い物をときどきする人間ですが、お店の中に、環境や化学物質についてどういった取り組みをしているかがほとんど出ていない。冬の毛布が安くなったとかイチゴがいくら安いということばかりです。
 要するに、こういう問題について組合の役員だけが議論して、一般組合員をどう取り込んでいくかという観点がないような気がしいます。今後、それをどのようにして進めていくのか。問題点として認識していただけたらと思います。

(司会) ありがとうございました。今の点で、もしクイックアンサーができれば。

(小林) ありがとうございます。ご指摘のところは確かにあると思いますので、今後そういう意味では強めていくことと、組合員の方からも大きく声を出していきたいと思っています。

(司会) ありがとうございました。それでは、小林さんの発表をこれで終わります。次に、桂川・相模川流域協議会の桑垣さんにお願いいたします。


(桑垣) 桂川・相模川流域協議会の桑垣です。よろしくお願いいたします。
(以下OHP併用)

 桂川・相模川は、山中湖を水源にして山梨県・神奈川県を流れて相模湾に注ぐ1本の川です。山梨県では「桂川」と呼んでいます。
 その川の流域の環境保全を進めるために桂川・相模川流域協議会が発足したのが98年の1月です。その枠組みは、市民・事業者・行政の三者がそろっていること。もう1つは、県境を越えて行っている活動であること。そして三者が対等に活動していこうと、いろいろな事業等にも取り組んでいます。
 山梨県・神奈川県が桂川・相模川流域環境保全の行動を推進する事業を行い、その結果として山梨県・神奈川県の流域協議会が発足しました。そのときには当時の環境庁から助成もいただきました。
 「アジェンダ」は、10年前、地球サミットで世界でアジェンダをつくりましょうと採択されたもので、その流域版としてローカル・アジェンダの策定も進めました。

 これが流域協議会組織図です。協議会は、三者が対等性を保つために、この組織も流域協議会発足前から市民・事業者・行政の三者で考えて作りました。
 専門部会でアジェンダづくりを進めてきました。それぞれが部会を持ち、そこで幹事を出し合い、その幹事会で話を進めています。
 地域協議会は山梨県・神奈川県で1つずつ立ち上がっていますが、アジェンダをつくったときにそこで推進することを考えて発足させました。



 流域協議会の主な活動内容は、メインがローカル・アジェンダの策定で、策定にこぎつけたのが今年度6月の総会でした。
 そのほか、ホームページの開設、会報誌などの発行もあります。そうした取り組みを流域シンポジウム等々でお知らせしたり、環境調査もしています。クリーンキャンペーンは、流域で活動している市民団体・市民・自治体の方たちがしている今までのクリーンキャンペーンの後方支援のかたちで取り組んでいます。上下流交流事業は、山梨・神奈川の人たちが集まり、環境保全を進めるための連携を深めるかたちで、上流側に植林に行ったり、下流側で地引き網等々をしています。

 そうした事業を進める中で「アジェンダ21桂川・相模川」を策定いたしました。基本理念として、「私たちは桂川・相模川の将来像を『清く豊かに川は流れる』とイメージします」という出だしから始まり、桂川・相模川の恵みを受ける私たちだけでなく、生物との共有財産と位置づけています。
 6つのテーマに基づいて行動指針・行動計画をつくっています。(1)良好な森づくりを進めます。(2)多様な生物との共生を基本とします。(3)水質・水量の保全を進めます。(4)散乱ごみや不法投棄のない地域づくりを進めます。(5)開発事業や公共事業においても環境の視点を重視していきます。(6)市民・事業者・行政が連携して取り組んでいきます。

 流域協議会で合意した行動指針・行動計画の中で、化学物質に関する行動指針・行動計画だけを抜き出してあります。
 「水量・水質の保全を進めます」の中で、課題としては、多様な化学物質による汚染、農薬汚染水の流入、家庭排水の複雑化、多量に消費され川に排出される洗剤があります。行動指針としては、化学物質対策に取り組みます、事業活動における負荷の低減を図ります、洗剤対策を進めます。行動計画としては、化学物質の適正管理、肥料や農薬を削減する環境保全型農業の普及を図ります、石けんなどを使い洗剤の使用量を減らします。
 「多様な生物との共生を基本とします」の中では、生物への影響についても化学物質等々の配慮を行いますと合意しています。

 化学物質に関する具体的な取り組みとして学習会を開催いたしました。また、石けんメーカーの方と洗剤メーカーの方に来てていただいて、市民・事業者・行政を交えたところでお話をいただきました。
 石けん・洗剤に関するアンケートを流域協議会の会員と消費者の方たちに実施しました。アンケートの回収率は約50%ですが、流域環境保全を念頭に会員になっている方たちが中心でしたので、石けんの使用率が約17%でした。

 シンポジウムを開催しました。「桂川・相模川の水をきれいにするために」と、石けん・洗剤メーカーの方や学識経験者の方たちにもおいでいただき、桂川漁協の方、コープやまなしの方、自治体の方にも入っていただいて、三者で知識を深めるとともに、合成洗剤・石けんについて話し合いを持ちました。それは下の写真で、上の写真は寒川町で前年度実施したシンポジウムの様子です。

 そのほか、化学物質に関する取り組みとして、コイのメス化を指標とした環境ホルモン調査を実施しました。これはクリーンキャンペーン等、ごみだけでなく、内分泌かく乱化学物質などの今注目される環境問題にも、市民の方たちに関心を深めていただこうと市民参加型環境調査としました。
 今回の調査は、1999年に6地点で行いました。上流側の山中湖は山梨県の環境科学研究所、そして下流側の湘南銀河大橋は横浜国立大学浦野・亀屋研究室が独自に調査しました。そこも含めて、共有したかたちで市民も一緒になってまとめを行いました。
 今回の調査では、多くの専門機関の協力を得ました。山梨県の環境科学研究所、水産技術センター、そのほかには桂川漁協があります。
 山梨県では県の事業として実施しましたが、神奈川県の場合はそういうかたちではなく、専門研究機関として井口泰泉先生にアドバイスをいただきながら、横浜国立大学の亀屋研究室にビテロジェニンの測定をお願いして、神奈川県薬剤師会や環境科学センターにもご協力をいただき、いろいろな専門研究機関と共同で実施することができました。そして今年度は1地点のみ、相模湖の上流、上野原町で実施しています。それは山梨県の事業として位置づけ、やはり市民参加型で協議会のメンバーが加わってしています。

 コイのメスの血にビテロジェニンというたんぱく質があるのですが、オスには見られないので、コイの血を採り、それを測定することでコイのメス化の調査ができます。市民も参加して、下の写真は見本を見せてもらっているところで、血液を採取することも慣れればできるようになります。

 これはコイの精巣の写真です。上が正常なもの、下が異常な精巣で、精子ができない状態のコイが見つかっています。

 もう予定時間が来てしまったので、化学物質に関する情報教育と相互理解については後程提案させていただきます。こういったことを提案していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

(司会) ありがとうございました。お手元の資料の6ページに最後の図がありますのでご覧いただきたいと思いますが、質問をお願います。有田さん、どうぞ。

(有田) 3ページの組織図の中で、幹事会は「市民9名・6事業者・行政9機関」と書いてあるのですが、地域協議会のメンバーの方も入れると大体どれぐらいの方たちで活動されているのでしょうか。

(桑垣) 全体の会員数は308名で、その中に山梨県・神奈川県、それから流域の自治体が25です。そして国土交通省京浜工事事務所も会員となっています。事業者は40ぐらいで残りが市民です。市民団体も市民、1票と1つに数えています。

(司会) ほかにご質問はございますか。崎田さん、どうぞ。

(崎田) いろいろお話をありがとうございました。事業者が約40名というお話で、どういうタイプの事業者の方が参加しているのか教えていただけますか。

(桑垣) 主に水道事業者の方が多いです。あとは水に関連する、例えばお酒を造っている事業者の方や、リコーのように環境に先進的に取り組まれている企業もいらっしゃいます。

(司会) よろしいですか。では後藤さん、どうぞ。

(後藤) 聞き漏らしたのですが、こうした協議会をつくる何かきっかけや事件があったのでしょうか。

(桑垣) 桂川・相模川の中流域にある相模湖ダム・津久井ダムでアオコが発生し始めたのが昭和40年代末で、山梨・神奈川の連携はそのあたりから行政内部で話し合われてきたそうです。そういった課題を解決するために4年前にようやく協議会が発足できました。

(司会) では岩本さん。

(岩本) 市民の方で環境ホルモンの調査をされていることは非常にすばらしいと思います。ぜひ続けていっていただきたいと思うのですが、すでにおやりになっているかもしれませんが1つコメントをさせていただきたいと思います。
 今、こうした魚のメス化の中では動物や人間から排出される女性ホルモンが非常に大きな影響を持つのではないかといわれています。特にイギリスあたりの報告を見ても、人口の多いところはどうもそちらの影響の方が大きいのではないかということもありますので、正確な事実をつかんでいただく意味で、ぜひそういったことも分析項目の中に入れていただけたらと思いますので、お願いいたします。

(桑垣) 湘南銀河大橋、寒川取水堰より下流で行ったところによりますと、それは横浜国大のまとめですが、下水処理水が入ってきて、その影響が著しかったという結果が得られています。
 ただ、濃度のことになりますと、確かに化学物質といい切れない側面もビテロジェニンの測定の場合はあると思います。ただ、下水処理水が高濃度で入ってくるとそういう影響も出ているそうです。

(司会) ありがとうございました。メンバーの方では、今、有田さんが手を挙げられました。メンバー以外の方もフロアから手が上がりましたね。では順番にいきます。

(有田) 私もその立ち上げに参加したことがあったので懐かしく聞いていました。もちろん石けんは生分解性がいいことはよくわかっているのですが、例えば事業者の中には合成洗剤を作っているメーカーの方もシンポジウムではお呼びになって意見を聞かれていると思うのですが、日常的にリスクコミュニケーションのようなかたちで協議会の中で意見交換をしている場所はあるのですか。

(桑垣) 石けんメーカーの方は会員として入っていただいていますが、洗剤メーカーの方はまだ入っていただいていません。シンポジウムで花王株式会社と株式会社エスケー化学に来ていただいてお話を伺っただけで、恒常的な話し合いの場所としては専門部会がありますが、今のところは恒常的なものはありません。

(司会) ありがとうございました。それではフロアの方、お願いします。

(Q2) 藤沢から来ました宮地といいます。引地川のダイオキシンのことにかかわって2年間いろいろしてきました。その中で、県の課長さんから、相模川の流域協議会があるとのお話を伺っており、今日はぜひそのお話を聞きたいと思ってまいりました。
 ところが、引地川が一番ひどいと思ったら、一昨年度の県の調査で、実は相模川の河口の方がダイオキシン類の値が高くて20ピコグラム(20pg-TEQ/l)でした。相模川沿岸全体の調査の平均値の5倍、要するに相模川沿岸で一番高いのが相模川河口底質のダイオキシン類の値なのです。そういった問題も視野に入れて取り組みをされているかどうかを聞きたいと思います。
それから、藤沢でも石けんのことを長くしている仲間がいて、なかなか進まないのが実態です。そういう状況の中で、化学物質問題は、環境保全型の社会、循環型の社会をつくっていくという国民的なコンセンサスを得ていく大事な仕事ではないかと思うわけですが、国民合意を得るとき基本的な概念をどこに置くかが非常に重要ではないかと思うのですが、皆さん方はどこに置かれているかお尋ねしたいのです。

(桑垣) 桂川・相模川の底質でダイオキシン濃度が高かった件で、私は直接かかわっていないのですが、マツバ(松葉)の調査を実施したところがあり、そこでの結果を見ると、桂川・相模川流域の周りのマツバに含まれるダイオキシン類の濃度が高くなっています。
 川はどうしてもそういった汚染を大きく受けるのだということを新聞発表を見せていただいて感じたところです。大気にも含まれているものが雨になって落ちていくわけですから、そういう可能性がすごく高い。あと、上流側では、流域人口が桂川は21万人しかございません。そうすると山とか谷地(やとち)が多いわけですが、いろいろな廃棄物等々が捨てられるようなこともあると思います。神奈川の上流も状況としては同じではないかと思います。
 後半の質問ですが、桂川・相模川流域協議会の場合は、基本的に、市民だけ、事業者だけ、行政だけではなくて、三者でいかに合意を得るかが重要なポイントになっています。
 この協議会を発足させるときに市民が参加したのですが、市民にとっては、利用されるだけではないかしらという思いも強くあった中で、4年間、その前の3年間の事業も含めて、話し合いを重ねる中で、連携して進めていきましょうということで行動指針・行動計画も合意できました。
 やはりベースになるのは、対立するような意見の人たちが集まってそこで話し合いを重ね、共通の目的・理念・指針等々を合意しながら進めていくことが、これから将来重要なことになるのではないかと思います。そういった意味では洗剤メーカーの方たちとシンポジウムでお話し合いができたことが1つの前例になるのではないかと思っています。

(司会) どうもありがとうございました。予定時間を若干オーバーしましたので、次に産業界からお話をいただきます。お2人にお願いしていますが、まずNECの内山さんにお願いいたします。

<企業の取り組み>


(内山) NECの内山です。よろしくお願いします。今日は「NECの化学物質管理に関する取組み」についてご説明をしたいと思います。
(以下OHP併用)

 まず、「NECの環境活動の推移」を若干ご説明したいと思います。1970年代から現代まで、NECの環境管理活動を4つの大きなテーマで進めてまいりました。
 70年代は、公害は絶対に出さないというのがNECの掲げていたところで、このときに環境管理の専門部署を本社に設置し、それからNEC各事業場と生産を担当している会社を監査する制度を設けています。
 次に、70年代後半から80年代は廃棄物ゼロ運動。これはNECグループ全部で取り組んでいます。これに合わせてリサイクルシステムの構築ということで、この時代は環境保全の時代。
 80年代後半、90年代は、皆さんもよくご存じのISOが最初に来るのですが、まずNECの環境のトップのポリシーとして環境憲章を制定しています。そのあとにNEC本体の一部、それから生産を担当している一部から順番に環境ISOの導入を行い、いわゆる環境マネジメント活動の時代。
 2000年に入り、環境経営を旗印に今進めているところです。大きなところでは環境配慮型製品の開発で、これに一部関係してくるのがリスク・ミニマム化で、化学物質の削減および代替化を現在進めているところです。

 環境経営に向けた取り組みについては、まず皆様に製品のご提供の場面では、今も申し上げましたが、環境に配慮した製品開発になります。これについては省エネルギー、それから部品の中の化学物質も関係あるかもしれませんが、有害物質の削減、併せて3R設計を盛り込んで皆様のところに製品を提供しています。
 製品を作る生産の場面ですが、これについても同じように環境リスクミニマム、これには生産の工程をいろいろ変えていかなければいけないので生産の革新等々をしてきました。また、製品の寿命を迎えたそのあとの回収・リサイクルの場面を新しいビジネスモデルのかたちで取り込んで、これを経営の土台にしていきたいということです。

 NECが持続可能な経営をしていくためには、まず自らが環境負荷をできるだけ減らしていく。リスクも同じように減らしていく。その結果、コストも削減でき、それをお客様や地域の方々に製品を提供していく、さらに環境コミュニケーションを取りながらお互いに持続可能な社会にしていくということがコンセプトです。

 次に、今、NECのお話をしたのですが、今般、この会議が横浜市で開かれることと、横浜市さんからご照会がありましたので、今回は化学物質に関しては横浜事業場の取り組みについてご紹介をしたいと思います。
 横浜事業場の今までの化学物質管理には2つの要求事項がありました。1つは、横浜市が早くから化学物質に関していろいろな取り組みを活発にしていて、横浜事業場としてもそれに対応していく必要があったこと。
 もう1つは、NECの化学物質の活動の中に排出抑制とリスクの低減との2つの場面があります。排出抑制の方は、皆さんご存じのように使用量を極力減らしていく、使ったものは回収して再利用する、それに必要な設備の改善。そしてリスク低減の方では、環境負荷の低いものにできるだけ代替化していくという要求事項がありました。

 それに合わせて、現在までに仕組み・組織等々を整備してきたわけです。組織体制に関しては、地区環境管理総括責任者がトップになり末端までの組織体制。それから化学物質に関するところでは各種委員会があり、事前評価委員会と事前評価部会の2つによる事前審査体制で組織体制を形成しています。
 規程類の整備の面では、先程の委員会も含め、責任体制・事前評価の仕組み、地区で登録していないものについては購入してはいけないという仕組み等、合わせて15の規程を整備しています。
 それから、化学物質取扱者の方たちに対する教育、緊急時の措置対策訓練、手順書の策定・見直し。いわゆる手順書はまちがっていませんかというところで、中期計画・年度計画の中で項目の洗い出しをして改善をしていくことを進めています。
 MSDS(化学物質等安全データシート)の整備、取扱量の把握、排出量・移動量の把握の場面、データ面については管理システムをつくっています。

(司会) 恐縮ですが、もう10分たってしまったので、あとは簡単にお願いいたします。

 目的ですが、化学物質のデータを一元管理しよう、情報の検索をみんなで見られるようにしようということがあります。併せて、事業場としてのリスク低減・管理工程での削減の結果が出ればということが目的です。

 エコ・コミュニケーションシステムという環境に関するシステムを構築しています。これは横浜事業場をネットワークで結び、パスワードとIDを取ればすべて加入できます。

 どのような機能があるかということで、今回は化学物質なので化学物質管理、それから事業場、各事業部・各職場で著しい環境状況かどうかの判断をするシステム、それからいろいろの環境データをこちらに入れて一元管理することでいろいろ機能を持っています。

 これは一例で、MSDSの画面の例、法規制を検索したときの例、こちらは使用量を入力する場面です。

 結果は、各行政へのデータの提出がありますので、これについては分析・把握・蓄積を行い、併せてNECとしてデータの蓄積のために本社への報告、所属している電気・電子5団体(経団連)等への報告、社内的なデータの提供をしています。

 実は今年の3月までが今のお話ですが、来月からは本社に一本化して「環境経営情報システム」という、NEC全国のデータを1か所に集めて一元管理しようということで、NECのイントラネット上で行います。
 例えば横浜のデータを入れ、加工したデータをいただいてそれを利用する。ここの中に化学物質の管理があるのですが、これは横浜のシステムを移植することで来月から運用を開始します。

 情報提供では、いわゆる環境報告書、「サイト・アニュアルレポート」で情報のご提供をしています。

 NECとしては、同じようにアニュアルレポート(年報)、環境報告書でご提供しています。

 インターネットのホームページでもご提供しています。

(司会) ありがとうございました。時間をかなりオーバーしてしまいましたので、質問時間が足りなくなりますから早速質問に入りたいと思います。いかがでしょうか。では安井さん、どうぞ。

(安井) 安井でございます。環境リスクの削減をおやりになっていろいろと企業側も大変だと思いますが、環境リスクをどのようにして評価し、どのぐらいの大きさのリスクならば削減しようといった定量的な考え方はどのようにお持ちなのでしょうか。

(内山) 本社の方で最終的に環境会計という評価する仕組みがございます。

(安井) 金銭的には環境会計ですが、非常に小さくなってきたリスクをさらに削減しようとすると大変なことになりますね。ですから、どちらかといいますと比較的大きなリスクから削減すべきだろうと思っているのですが。

(内山) 先程の環境影響評価でもご説明しましたが、電気業界、横浜事業場もリスクが大きいところは影響評価をしてリスクを低減してきました。その結果、基準が下がってしまうと、次のものをしようとしたときに、実際はだれから見ても「本当にやっていいの?」というところまで落ちてしまったのです。影響を評価して、ほかのものが下がって、それがたまたま下にあったものが上に来た。そういうリスクの評価をしているわけですが、実は評価する場面でも下の方の評価の話になってしまい、現在は本当に手の施しようがないというのが正直なところです。そこまでいっています。

(司会) ほかにご質問はございますか。片桐さん、どうぞ。

(片桐) 12ページの中に「環境コミュニケーション」というかたちで、「NEC」と「お客様・社会」というのがあるのですが、実際に実践したような例は何かありますか。

(内山) 横浜事業所の話をさせていただきますと、明日もいらっしゃるのですが、例えば横浜市の消費生活推進委員の方、例えば中区・西区とか、地元の都筑区とか、20~50名単位ぐらいで月2件ぐらいお見えになっています。直接的な化学物質のコミュニケーションではありませんが、このようなお話もしますので、その中でコミュニケーションを取っています。また、6月の横浜市の環境月間では当社の事業場の工場を解放しますので、横浜市に申し込んでいただいた方には、事業場に来ていただき、その方でもこういうかたちでご説明をしてお互いのコミュニケーションを図るということで活動はしています。

(司会) 来られた場合にそのようなイベントのもとにコミュニケーションを図っておられるということです。
 フロアの方でどなたかいらっしゃいますか。

(Q3) 化学産業サイドとしてお伺いしたいのですが、「環境負荷削減」が何か所にあります。特に12ページの環境負荷削減は、例えばLCA(Life Cycle Assessment)も含めて考えていらっしゃるのですか。具体的にどういうことをしているか教えていただきたいと思います。

(内山) 今おっしゃったLCAについては、環境に配慮した製品を作る開発の場面で、環境負荷の低減ということで、LCAを新機種の製品について1件1件実施して、そういう削減をしています。
 それから、事業場側、工場側の負荷がいろいろありますが、生産面で工程・生産革新をして環境負荷の評価をして減らしていく、という2通りの方法があります。

(司会) ありがとうございました。もう1人いらしたのですが、時間がありませんので、恐縮ですが次の方に交代いたします。どうもありがとうございました。
 続きまして、ライオンの中山さんにお願いいたします。


(中山) ライオン株式会社お客様相談室の中山と申します。よろしくお願いいたします。
(以下OHP併用)

 私はお客様相談室ということで、本日は皆様のお話と若干視点が変わって、企業側の環境コミュニケーション、環境問題に関して生活者の皆様と企業のコミュニケーションについて、当社としてどういう事例があるかという概略をご報告いたします。
 お客様相談室が実は企業にとっては生活者の皆様と業務として日々コミュニケーションを取る唯一の場所です。そういうわけで当社のお客様相談室の場合には年間約5万件ぐらいのご相談を受け付けています。

 当社の製品は、ほとんど日常生活の中で日々身近にお使いいただく製品ばかりでございます。そういうわけで皆さんのご関心も、また我々の論点も、1つは人体に対する安全性、もう1つは近年環境に対する安全性、この辺をいかに充実させていくかが当社にとっても非常に重要な課題になっています。

 そうした視点で、お客様・生活者の皆様から直接お客様相談室に約5万件のご相談を承っています。その中で、安全・環境というかたちで集計すると、昨年約3500件ございました。
 ただ、昨年の場合は例の狂牛病の問題で若干突出したということがございます。その部分を引きますと約2800件ぐらいが安全と環境にかかわるご相談でした。
 その中で、当社の場合は「バファリン」という解熱・鎮痛剤、いわゆる医薬品部門があり、特に医薬品の安全性、他の薬と併用しても大丈夫かとか、あるいは妊娠されている方がこの薬を飲んでも大丈夫だろうかというお問い合わせが結構ございます。
 これを差し引きますと、いわゆる日常雑貨の部分で安全と環境に関するご相談を約1600件お受けいたしました。その中から、本日は特に環境ということで、人体に対する安全の部分をはずし、環境に関するお問い合わせを集計したのがこの円グラフです。
 昨年1年間の実績として436件、約440件のご相談を承っています。そのご相談内容は、当社製品の場合には、基本的には中身とその中身を入れる容器の2つから製品が成り立っていますので、中身に対するお問い合わせと、中身を入れる容器とそれを包む包装材料に対するお問い合わせに大別されます。
 約440件のうちの半分強が成分・内容物です。成分は具体的な商品の中身を構成する一成分、内容物は中身の製品全体ととらえてください、それにかかわるお問い合わせが約半分強ありました。
 容器・包装に関するものは全体の約4分の1ぐらいの比率です。
 数年前から年間の環境にかかわる活動を報告書のかたちでまとめて環境報告書を発行しています。こういうかたちで毎年発行させていただいているのですが、こういう環境報告書を送付してほしいというご要望が大体13%、約50~60件いただいています。
 特に、容器・包装にかかわるお問い合わせは、その大部分は実際にお使いの製品の今持っておられる容器が、ごみとしてどういうかたちで捨てればいいのか、あるいは分別上どこに捨てるのだろうかといった問い合わせが多くあります。

 本日の話題になっています河川や環境に対する影響として、成分・内容物がどれほど大きいかということで、次に環境とかかわる成分・内容物に関するお問い合わせだけを集計したのが次の円グラフです。
 これが全体としては234件ございました。その内訳を見てみますと、一番多かったのは当社のメインの商品の洗剤、あるいはその洗剤の中に使っている界面活性剤、それと排水、廃棄した場合の環境への影響、特に河川等の排水系での影響はどうかといったお問い合わせが一番多くて、これが約4分の1を占めています。
 その次に多いのは、「製品成分の安全情報」というかたちでまとめたお問い合わせです。具体的にはPRTR法の施行に伴って、主に当社品をお使いいただく企業の方から、この商品に関する安全情報がほしいという要望が昨年あたりから増えて、この比率が少し高くなっている状況です。
 「環境ホルモン」は、これも化粧品の全成分表示のかたちで、現在、化粧品については全成分を表示しています。それに伴って個別の成分の安全性、環境ホルモンとのかかわりについてお尋ねになるケースが出てまいりました。
 大体こういうかたちで環境に関するお問い合わせを受けたのが昨年の状況でした。経年のデータは示しておりませんが、従来、私どもの方では人体に対する安全のお問い合わせが圧倒的だったのが、ここ数年、環境に関するお問い合わせが増える傾向にあるというのが事実でございます。

 最後に、これは厳密にはコミュニケーションとは言えないかもしれませんが、当社の方から発信をしている情報についてご紹介をさせていただきます。
 1つは、これはコミュニケーションです。これは当社の家庭科学研究所という部門が中心になり、講習会・研修会に講師として派遣させていただき、そこで講演をさせていただくということで、昨年の実績としては7回実施いたしました。1つは、東京都のご要請があって、小学校の先生が中心だったと聞いていますが、学校の先生の研修会で「環境教育・企業の役割」という講演をさせていただいています。あとは資料の配布ということで、人体安全性および環境にかかわる資料を何種類かご用意しています。
 「水環境のサイエンス」「容器包装と環境対応」、あるいはもう少し全般を拾い上げたような「エコライフ情報」という冊子を作成し、配布させていただいています。
 もう1つは、製品をお使いいただく上で広く知っていただきたい情報、生活科学シリーズ、これは「安全性と環境」というかたちで、ほとんどは公的機関で作成されたデータですが、活性剤の生分解性のデータなどを取りまとめた基礎編、データ編のような資料もご用意させていただき、昨年の実績としまして7000部配布いたしました。
 当社の日々のお客様相談でいただく環境に関するご相談の状況と、お客様に発信する情報の概略についてご報告させていただきました。

(司会) どうもありがとうございました。ほぼ時間で終わらせていただきました。それではご質問をお願いいたします。では角田さん、どうぞ。

(角田) どうもお話をありがとうございました。私は消費生活アドバイザーの資格を持っていますので、今の話はすごく興味があって質問したいことがいっぱいあるのですが、1つだけにさせていただきます。
 相談を受ける社員に対して、環境や化学物質のリスクコミュニケーションに関して教育されていると思うのですが、そこで一番力を置いて教えておられることはどのようなことかを教えていただけますか。

(中山) 特に環境問題に関しては、日々データが更新されるといいますか、新しいデータが出てくるのが実情だと思います。私どもが一番気をつけているのは、最新のデータをできるだけ早く入手します。ただ、お客様相談室のメンバーは必ずしも全員研究者ではありませんし、ある意味では営業の方もいますので、それを研究所の方からわかりやすく説明をして、自分なりにそしゃくをするところに一番力点を置いています。

(司会) 中下さんどうぞ。

(中下) 中下です。たくさんご相談があるようですが、そういった相談を受けられて、その結果として、製品を作られるときに役に立ったとか、そういう具体例がありましたらお聞かせいただきたいと思うのですが。

(中山) 環境に絞らせていただきますと、ごみの減量がここ数年来非常に多くご相談、あるいは意見提案も含めまして、先程お示ししたとおり多く受けます。
 私どもとしましては、そういう声を抽出して社内の企画部門にフィードバックいたします。企画部門にフィードバックするようなかたちで、それを次の新製品の企画などに取り入れています。現在私どもでしていますのは、詰替用のボトル、あるいは本体ボトルを含めて、樹脂の量をいかに減らしていくかに皆様からいただいた声を活用させていただいています。
 逆に言うと、私どもは社内の企画部門にとっては一種の圧力団体的な働きを果たしているかと自負はしています。ですから正直に言えば、結構嫌われている部門です(笑)

(司会) ほかにございますか。では有田さん。

(有田) お客様相談室のところではないかもしれないのですが、例えば家電メーカーが洗剤がいらない洗濯機を出したときに、コミュニケーションはどうされていますか。

(中山) メーカーとのコミュニケーションですね。当社の場合は、研究部門の中に家電メーカーがお出しになった当社製品とかかわる製品を評価する部門がございます。そういったところでまず評価をさせていただいて、その評価結果につきましては、基本的には本社の企画部門を通じてメーカーと、当社のデータをお示ししながらご相談させていただく。大抵はアンダーのかたちでご相談をさせていただくのが最初のルートになるかと思います。
 昨年の問題は少し別のかたちで大きくクローズアップされたのですが。あれは特殊といっては語弊があるのですが、非常に大きな問題だったのです。

(司会) 昨年の問題とはどういうことですか。

(中山) 洗剤ゼロコースの洗濯機、洗剤を使わなくても衣類がきれいになるという洗濯機が出ましたので、かなり大きく新聞にも取り上げられまして結構話題になった話です。ここで当社の見解を申し上げるわけにいかないのですが、評価は致しました。

(有田) すごく怒っていらしたと。

(中山) 新聞で取り上げられたのがかえって我々としては困っておりまして、決して怒っているわけではなくて、データを正直に評価してほしいと。当社が取ったデータはこうで、お互いに条件等が違えば結果も違ってくるので、その辺を正直に話し合いましょうというのが基本のスタンスだったと思いますが。

(司会) ありがとうございました。もう1人お願いしなければいけないので、この辺で次の方にお願いいたします。どうもありがとうございました。
 それでは、次に行政の方、神奈川県の武さん、お願いいたします。

<行政の取り組み>


(武) こんにちは。神奈川県の武でございます。行政の取り組みということでご紹介させていただきます。
(以下OHP併用)

 最初に、これは、今日フロアにも来ていらっしゃいますが、大島先生の資料を使わせていただきました。申し訳ございません。
 化学物質について、市民の方はいろいろ不安をお持ちである。例えば自分では避けられないものが多い。直接、事業所で扱っている化学物質については、身の回りで排出されても、そのこと自体は直接自分に利益をもたらさない。発がん性の問題とか環境ホルモンとか、とても怖いものがある。あるいは企業から、もっと言えば行政も含めて、きちんとした情報がない。あっても公表されていないのではと。これは、食品の分野、いろいろな分野も含めて、こういう投げかけがされていると私どもも認識しています。

 これまで神奈川県では、こういった化学物質についての取り組みを平成2年度ごろから行ってきています。これは横浜市、あるいは川崎市についても同様ですが、先端産業事業分野でたくさんの種類の、あるいは有害性がはっきりしていない化学物質の取り扱いがあるということで、漠然とした不安を地域の方々が持っている。これに対して県の指針では、立地段階から(地域の方々を)いろいろコミットさせていただく取り組みを進めてきて、現在も実施しています。

 その他一般の事業所でも多くの化学物質が取り扱われています。県・市それぞれ地域の事情もあり、若干の内容の違いはありますが、いろいろな指導をさせてきていただいています。

 一般事業所に対する取り組みとしては、条例を制定して取り組んでいます。これは1つには行政の指導では不明確で透明性があまりないのではないか、また国の行政手続法の制定などもあり、私ども神奈川県では平成10年、川崎市もその後平成12年、そして現在横浜市でも、条例における取り組みを進めています。

 もう1つが、国の法律の動きです。PRTR法と呼ばれていますが、(この法律が)今度の4月から進められていくということで、法律と条例が両輪になり、事業者あるいは県民の方と取り組んでいくことになります。

 県・市は、この法律の施行に向けて、国・環境省のパイロット事業に参加して事業者から排出量の模擬的な届出をいただいています。
 データが環境省でまとめられ、その冊子を神奈川新聞が見て、1月11日付の1面トップにこのような記事が載りました。「川崎・湘南地域が全国で排出量No.1・No.2」。これは量をその排出地域の面積で割ったものです。狭い地域の中でたくさんの化学物質が排出されている。これは私どもも当初から予想してきたことではありますが、まさしくそういうデータが出ているということで、この新聞の反響を恐れたのですが、実はこれ自体については1件もお問い合わせも来ておりません。神奈川新聞の購読数の関係なのかもしれませんが、内容がきちんとしているからなのかと思います。
 確かに、記事ではきちんと書かれており、排出量が多い意味はイコール危険だということではありませんと。これはPRTR制度で報告された量を面積で割ったものであって、個々の物質の毒性が違うから、単純に足し合わせることがリスクではありませんということが頭書きに入っています。こういうきちんとしたデータの出し方、説明のされ方が、混乱を招かなかったのかとも考えています。

 今後こういったデータが世の中に出ていくということで、いろいろ対応策を検討しています。この間、環境省から3年間の事業委託を受けて検討してきました。今日メンバーの小林さんや角田さん、大島さん等にいろいろアドバイスもいただいています。
 事業者は、当然このデータを活用して管理活動に反映していただきたい。また、その結果得られたデータから、「我が社はこれだけ努力しているのだ」というアピールをどんどんしていただきたい。逆に言えば、取り組みが進んでいない事業所はアピールのしようもない。それは努力していただきたい。
 それから、地域の住民の方には、データを示してリスクのコミュニケーションを図っていただく。地域の住民から(後ろ)指を指されるよりは、先に自らお話をしていただくことがよりよいコミュニケーションにつながるのではないかと考えています。

 市民の方には、こういったデータに関心を持っていただき、身の回りの環境、化学物質が1つのきっかけになって環境問題全般に関心を持っていただければありがたいと思いますし、仲間とそういう活動をして行政への働きかけもあろうかと思います。事業者への働きかけもあるかもしれません。そして家庭の中でもできることはしていただきたい。

 最後に、行政は、先程の3年間の事業でいろいろ貴重な意見をいただいてきました。これは冊子にして環境省から全国の自治体に配布していただけると聞いています。そういった中で、私どもとしては少しでも地域のリスクを減らしていくために、まずどこからどのような物質が出ているかを正確に把握をしたい、その上で環境調査を行い、市民の立場に立って情報提供する。
 事業者と市民の方のコミュニケーションについては、間に立ってきっちりと情報の橋渡しをする人が市民の間から生まれることが望ましい。もちろん行政としての役割もあるかと思いますが、あまり行政がしゃしゃり出るのではなく、行政はきちっとした情報を整理・加工して提供するとか場の設定をするあたりで役割を担っていくのかと考えています。時間が10分ということですのでこの程度にいたします。

(司会) ご協力をありがとうございます。ちょうど10分で終わっていただきました。それではご質問をお願いいたします。後藤さん、どうぞ。

(後藤) 日本の場合には行政で橋渡しをする必要性があるかと思います。県では、地方自治体と違って住民との接点が少ないと思うのですが、一方、市町村では行政は人的にほとんど対応できない状況があると思います。そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

(武) 情報として、今回のPRTR制度でいえば、県へ国から情報が提供されてくる。都道府県単位の情報と今聞いていますので、これをまず市町村レベルに加工する作業は私どもがしたい。
 その上で、市町村ごとのデータを市町村へ提供します。市町村の立場でそのデータの意味を理解する、あるいは市民への伝え方については、県が職員の養成・育成という意味で研修会を、データの加工の仕方・提供の仕方については市町村との連絡会のようなものをつくりながら、議論をしていきたいと考えています。

(司会) ほかにご質問はございますか。ではフロアからどうぞ。

(Q4) アレルギーを考える母の会の園部と申します。今の情報の橋渡しということに関連するのですが、私は市区役所や市役所の環境衛生に携わる方にお願することが多いのですが、役所の中のローテーションがあり、せっかく去年まで一緒にいろいろかかわってくださって、認識が深まってくると異動してしまって、新年度にはその方がいなくなってしまうということが今までありました。育成された方が継続して市民とのコミュニケーションなどを積み重ねていくことが、より共感度も深くなり、また問題意識も高くなっていくと思うのです。この人材育成された方々が、継続してより長く担当していただけたらありがたいと願っています。

(司会) この点はいかがですか。

(武) それぞれの自治体、あるいはセクションごとに事情があって、例えば私のように技術系の職員として入った者は一定の範囲の職場の中でしか動かない。ところが、役所の場合は一般的にはいろいろのセクションを渡り歩くといいますか、そういうことが通例です。
 専門的な部分については、例えば私どもでいえば環境科学センターという研究の場、あるいは保健所では技術系の専門的な立場の職員がいます。
 一方、日常的に市民の方に直接接する場合にはそれほど高い専門性を求めるのは正直言って酷です。異動のつどそういう研修をしています。

(司会) では村田さんから順番にいきましょう。

(村田) 村田です。リスクコミュニケーションができる市民の育成ということを強調されていたと理解していますが、もう少し具体的に、どのようなことを神奈川県としてしてきたのか、あるいはしようとしているのか。お話しいただければと思います。
 それから、その人材育成上、もうすでに試みられているのであれば、その過程でどういった問題がありそうか、お気づきの点がありましたら併せてお聞かせください。

(武) 今まで12年度と13年度、2か年で各1回ずつ、こういう情報の橋渡しができる方の養成をするために、どのようなカリキュラムが考えられるのか、あるいはどういった場所を使ってどういった日程でと、トライアル(試行)を行いました。
 その過程の中でアンケートを取ってみましたが、行政がそういう養成をしていくことは必要であるが、実際に活躍できる場面があるのかどうか。2日間のコースでしたが、2日間ではなかなか全体を把握しきれていないという回答をいただいています。
 何日もかけて手とり足とりともいきませんが、その方たちが実際に活動できる場面、そのためには、先程事業者側からも受け入れてくれるという心強い話がありましたが、事業者側が積極的にリスクコミュニケーションを求めて打ってでるときに、また養成中の方も含めて一緒に参加して勉強していく、そういうトライアルをしていくことがよろしいのかとは思っています。

(司会) それでは休憩に入りたいと思いますが、最後にお手をお挙げになった田中さん、お願いいたします。

(田中) 人材育成をする中で、具体的にどのようなグループから選んだり、どういう人になるのかを少しお聞きしたかったのですが。

(武) 実際に今年は県のたよりを使って公募して20名の方を募集したのですが、80名ぐらいの応募がありました。2日間のうちの1日は室内の研修でしたので全員参加していただき、2日目には、工場の現場を見ながら少数でディスカッションするため20名に絞らせていただきました。参加した方の3分の1ぐらいは女性で、女性の方が関心をお持ちであると実感しました。
 あと60代を過ぎた、第2の人生で、ボランティア活動をしてみたいという方が半分ぐらいでした。こういう方々に今後も呼びかけていきたいと思っています。
 その体制としては、行政がいいのか、あるいは環境科学センターという研究機関の中でも人材育成のカリキュラムを持っていますので、そういったところでするのがいいのかということも今後検討していくことにしています。

(司会) ありがとうございました。それでは前半の部分ですが、議題の3のところをこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

<休憩>


(司会) それでは、4時5分を若干過ぎましたので再開させていただきます。まず壇上にスピーカーの皆さん、5名の方、ご登壇願います。
 後半は議題の4番と5番です。4番は円卓会議メンバーおよびスピーカーからの円卓会議の今後の議論に対する要望・意見を伺います。5番目はフォーラム参加者、今日お集まりの皆さんから同じように要望・意見をいただきます。両方まとめて一緒でもよろしいのですが、少し整理をした方がいいと思いますので、まず、円卓会議メンバーおよびスピーカーの方からご要望やご意見をいただきたいと思います。

4.円卓会議メンバーおよびスピーカーからの要望・意見

(司会) それでは、スピーカー5名の皆さんに、円卓会議に対する期待や取り上げてほしい課題がございましたら簡単にご意見をいただきたいと思います。それぞれ2~3分程度でお話しいただければありがたいのですが、まず市民の立場からご発表をいただいた小林さん、期待とか今後に対する意見はございますか。

(小林) 先程も申し上げましたが、本当に専門的でない地域の人たちを対象にしたコミュニケーションが充実することを非常に期待しております。
 一般的には「化学物質って何なんだろう」と思う方の方がたくさんいらっしゃるわけですから、そういう方にわかりやすい情報のあり方、発信していただきたいと思います。
 ただ、よく市民側から、とにかく情報を流せ流せということがあると思いますが、流しっぱなしにするとか、たくさん流してもだめなこともあります。これはコープかながわのような組織でも、ただお知らせすればいいということではないと思います。いつも課題になることですが、知りたい方に的確に流すことが一番重要だと思うので、そういう意味でも考えて進めていただきたいと思います。

(司会) どうもありがとうございました。それでは桑垣さん、お願いいたします。

(桑垣) 私はこの円卓会議に非常に期待をしています。こういった市民・事業者・行政の入った会議は大変重要だと思いますので、ぜひいろいろな角度から化学物質について検討して進めていただきたいことがあります。
 その提案としまして、いくつか用意してありますのでお願いいたします。
 1つは、化学物質を削減するための実施計画づくり、行政の中で実施計画というとかなり厳しいということであれば、実施のための計画づくりでも結構です。そういったことを具体的に進めていただきたい。PRTR法が実施されますと、事業所に関してはかなりクリアになってくると思うのですが、今は家庭内にもかなり化学物質が知らないうちに入ってきて自然に使ってしまっていることがあります。さまざまなコマーシャルで宣伝されていますから、主婦としてはそういうことがわからないという部分もありますので、ぜひそういった家庭での対策を進めていただきたいと思います。そのためには、例えば流域協議会の紹介をさせていただきましたが、流域ごとでアジェンダづくりをして、三者が含まれたかたちで合意を得ていくやり方が、自分の経験では望ましいのではないかと思っています。
 それから、恒常的な話し合いの場づくりとして、情報公開をしていただきたいと思うのですが、文書でいただいても市民はなかなか理解ができません。そうしたときにはぜひ話し合いの場を設けていただいて、ていねいな説明をいただくことと、学習会的に情報を公開していただけると市民の理解が進むのではないかと思っています。
 それから、一番難しい問題として、化学物質が生物に与える影響が未解明な部分が非常に多いということはもうすでにわかっていることですが、何年もかけて生物の影響は調査しなくてはいけませんから、なるべく早くそれに積極的に取りかかっていただきたい。
 そして、グレーゾーンと言っていいのかよくわからないのですが、本当に影響があるのかないのかということがわかるまで対策をしないでおくと、後になってこれは影響が大きかったとわかることがありますので、そうした未解明なものに対してどういう対策を取るのか、そのあたりのお話をぜひしていただきたい。あとはそれについて市民もきちんと参加して生物調査等を実施していただけると具体的にわかりやすいと思います。

(司会) ありがとうございました。それでは産業界から、内山さん、お願いいたします。

(内山) 化学物質という1つの側面をとらえて、地域の方々・行政の方々、それから皆さんという場面に参加して説明をお聞きしたのは初めてでした。
 事業環境がこれだけ構造的に悪くなってしまいますと新たな対策というのはなかなかできない。(化学物質を)使う事業者の立場としますと、「これは無害に近い」とかいうデータを見ますと、例えば極端な話、全部の物質を足してみると300%になってしまうことが実際あるわけです。
 代替物質が地球にやさしいとか環境負荷が低いとかいろいろいいますが、本当に低いのかどうか、その評価はなかなか難しい。
 最近、PRTR法ができて、確かにMSDSである程度成分は細かく分かるようになってきたのですが、グレーゾーンのところはなかなか教えてくれない。(その化学物質を)使った場合、地域の方々にどうなるという評価が難しい。量は少なく、品種は多い、そしてグレーゾーンが多いとなると、実態は難しいというのが今経験しているところです。

(司会) ありがとうございました。現場の状況をお話しいただきました。それでは中山さん、お願いいたします。

(中山) 環境円卓会議の役割の1つに企業と市民の間をつなぐ役割が入っていたと思います。企業の側から見ますと、それなりに資料をお配りしたり、あるいはお客様からのご相談をお受けしたりしてコミュニケーションを図っているつもりですが、私の所属するお客様相談の立場から言いますと、あくまで我々の立場は受動的で、お客様の方からアクセスを取っていただけないかぎりコミュニケーションが図れないところもあります。そうした意味で、こういう会議で企業とお客様の間のコーディネート役割をさらにいっそう進めていただきたいというのが1点、希望です。
 もう1つ、こういう環境問題、あるいは安全問題にかかわることに関して、それぞれの企業は、それなりに自分たちが売っている製品に関しては深く突っ込んだ研究はしています。ただ、それだけに逆にかえって発信情報があまり専門的になりすぎる傾向があります。先程から、教育という話も出ておりましたが、私どもが持っているデータを翻訳していただくといいますか、そういう機能もご要望したいということが2つ目です。
 3つ目としましては、各企業が持っているデータは非常に範囲が狭いと思います。1つの問題があった場合に、それに関わるいろいろな企業が集まってそれぞれの視点からデータを集めるかたちの進め方も期待したいと考えています。

(司会) ありがとうございました。それでは行政から、武さん、お願いいたします。

(武) 私どもはこのPRTRへの対応を検討する中で、検討委員会で「化学物質ってそもそも何ですか」という議論がありました。
 私どもも情報を出すにあたって、化学物質とはこういうものですよ、あるいは、今回情報をお出しする範囲はこういう範囲の化学物質ですよときっちり説明しないといけない。例えばPRTR法一つ取っても、すべての化学物質を扱っているわけではない、あるいは規制対象物質ですら入っていないものもある。こういうことから、「化学物質」のとらえ方について議論いただきたい。
 ちなみに私どもとしては、1つのトライアルですが、パンフレットを作って、化学物質は大体こういったもので、どこに問題があって、どこへ行ったらその化学物質のうちのこの部分の情報が手に入るというものを作りたいと考えています。そのような議論の中で、そもそも化学物質とは何だろうな。それが1つございました。
 それから、パンフレットを作るときに感じたのは、行政が作るとどうしても、庁内でいろいろなセクションと連絡調整を取る際、食品添加物を担当しているセクションは「食品添加物までこんなところに入れるな、その問題までことを荒立てる必要はないじゃないか」とか、水道水を供給している立場からいえば「水道水に化学物質が入っているということをあまり大げさに言ってくれるな」とか、もし書くのであればそこに「水道水はこういう基準があって」といわれる。
 ですから、どういうセクションで作ったらいいのか。そういうことも含めて、化学物質の基本的なところを国民の皆様に理解していただく。PRTRデータをいう前の基礎的な部分が1つの議論として必要かと思っています。
 もう1つ、自治体の立場からは、今度4月から6月にかけて事業所からデータの報告をいただいて環境省へつなぐわけですが、今の制度では、いただくデータについて中身のチェックのしようがない。排出量の数字を受けるだけとなっています。環境省は数字については黙って受け取ってくださいというお話ですが、私どもとしては、1つの工夫として、提出される事業所は、ほかの法律、あるいは条例の許認可を取っており、それなりのデータ、情報のある事業所が多いということもあり、あなたの事業所でこういう作業をしておられるのであればこういう溶剤の取り扱いがあるのではないですか、こういう働きかけ、投げかけをしたうえで受け取っていきたい。
 その過程において、きちっと把握がされていないのだとすれば、それは環境省へ伝えていくと考えていますが、そもそも制度としてこれから走り始めるばかりとはいうものの、将来を見据えればデータがきちっと正確に把握して登録されることを求める、そういう制度のあり方も議論をしていただきたいと考えています。

(司会) ありがとうございました。5名の方にそれぞれ具体的な期待、今後どういうことをお願いしたいかという意見をいただきました。
 さらに、この円卓会議のメンバーの皆さんにもそれぞれいろいろなお考えがあると思いますので、メンバーの方もどうぞご発言をいただきたいと思います。いかがでしょうか。では後藤さん、どうぞ。

(後藤) 私は市民側の委員として出ていますので、円卓会議で特に行政の方と企業の方に要望です。化学物質を必ずしもPRTRに限るわけではないのですが、この法律を作るときに、一番最初の届出先は国だったと思うのですが、それが国会の議論で県になったのですが、私どもが市民案を作ったときには市町村に届出としました。
 今日ご発表されたような大企業は情報提供もコミュニケーションにもいろいろ努力されているのはよくわかっています。ところが数は中小企業が圧倒的に多い。現実に、環境省のアンケートで、神奈川県の場合はパイロット事業に携わったこともあって比較的知名度が高いと思うのですが、全国的には中小企業の中でPRTR法の認識度がきわめて低いというアンケート調査も出ています。
 やはりここは行政と企業の方にお願いしながら、行政の場合、先程の神奈川県の場合は勉強会をしたり教育の機会を持ったりということですが、市町村の方と協力して中小企業への知名度を深めていただく必要がある。情報提供をするのに、事業者の方がもう少し認識をして、自分のところのものがどういうものが出ているのかということを認識しないと、実際に何かあったときのコミュニケーションは必ずうまくいかないだろうと思っています。
 企業の方も、当時、通産省の方のシンポジウム等での議論では、産業団体やいろいろなルートを通じて徹底的に国内に普及させるというご発言もあって、事実努力はされているとは思うのですが、結果としては必ずしも知名度が深まっていないのもまた事実であります。
 特に大企業は、グリーン購入とか、取引先へのいろいろな環境への取り組みを要請されているように、個別企業としては努力いただきたい。業界団体としてはやはり知名度を深めて、中小企業の方々が認識を高めて、コミュニケーションに情報提供をして備えられるようなかたちにしないと、現実に問題が起きたときにはコミュニケーションは非常にトラブルを起こす可能性が高いのではないかと考えています。

(司会) ありがとうございました。ほかにございますか。瀬田さん、どうぞ。

(瀬田) 瀬田でございます。先程からいろいろお話を聞かせていただき皆様方の思いが大変伝わって非常によかったです。例えば最初の小林さんのお話で「わかりやすく」というお話がございました。
 我々化学企業は、過去何十年も前の化学企業と今の化学企業では全く違う努力をしていると私は思っています。現実に私自身もこういったメンバーの中に入るに際して、自分で自分の周りのことを調べてみましたが、非常な努力をしている。ただ、その努力が周りになかなかわかりにくい。一方、一般の市民の皆様方にわかりやすいお話をしてきたかというと、それは自分たちでも反省するところが非常にあるということを第1回目の円卓会議のときに申し上げました。
 では、わかりにくいものをわかりやすくするには、化学は結構難しいのです。1つは、いろいろな専門用語を使わなければいけない。使わないで説明すること自身の難しさ。2つ目は、誤解を避けるために一生懸命言おうとするとどうして専門的になる。これは崎田さんから前からもご指摘を受けました。
 それから、自分の世界のことを一生懸命話しても、外の方にわかりやすく説明することはそれなりに非常に難しい。最後に表現力の問題だと思うのです。
 そういったことを我々としてはこれからも最大限努力をして、わかりやすい言葉で表現していきたいと思いますが、それはある意味で双方向というか、それではわからないということがすぐに返ってくると我々もすぐ言葉を変えることができる。コミュニケーションはそういうことでつながらせていただくとありがたいということがあります。
 もう1つは、これは武さんや中山さんのところにも来ると思うのですが、いろいろな問い合わせ、市民の皆様方がいろいろなところから接触してくる。その内容を分けてみると、1つは問い合わせ、それから提案と苦情、3つぐらいあると思います。
 一番大切なのは、問い合わせはわかる範囲でお答えできると思うですが、提案や苦情を自分の血肉にして取り入れていくことが、私どもは過去にもそういう努力をしてきたつもりですが、いっそうさらにこういう時代でもありますし、ますますいろいろな化学物質がわかりにくくなっている時代でもありますので、そのような努力をしていきたい。そこにも双方向が必要なわけで、私どもも努力いたしますので、ぜひ皆様方にもご協力をお願いしたいと思います。この2点を申し上げます。

(司会) どうもありがとうございました。企業側も積極的にご発言をいただきました。ほかにご意見はございませんか。村田さん、どうぞ。

(村田) 先程、桑垣さんの方からのご要望の中に、化学物質が生物にどういう影響を与えるのか未解明な部分があって、それがきちんとわかるまで手をこまねいてもらっても困るというご意見が出ました。その前にも環境ホルモンのお話が出たのですが、実は次回、この円卓会議が5月に予定されていますが。

(司会) 地域フォーラムが4月19日で、円卓会議は5月ですね。

(村田) もしかすると、『奪われし未来』の著者のお1人のテオ・コルボーンさんがこの時期においでになるので、環境ホルモンに関して最近どういう動きがあるのかということを、この円卓会議のメンバーと意見交換ができるような場がもし設けられたらいいと思っています。まだスケジュール等を確認してみないとわかりませんけれども。

(司会) 今ご提案のあった5月の円卓会議というのは、先程の22名のメンバーで議論する場ですが、その場にできたら5月のタイミングならコルボーンさんがいらっしゃるので意見交換をしたい。そういうご提案もありました。
 ほかにございますか。円卓会議のメンバーの皆さん、もうお1人ぐらい、いらしたらどうぞ。2人。では角田さんから順番に。

(角田) 角田です。桑垣さんの最初の提案で、化学物質リスク削減の実施計画づくりをおっしゃったと思うのですが、これについて円卓会議がどこまで議論できるかわからないのですが、せっかく国の行政もいろいろ入っていて、事業者と市民もいるので、どのようなリスク削減の戦略が国として持てるのか、といった議論をする場が日本にはそうないと思いますので、議論した結論をたぶんそのまま生かせないとは思うのですが、議論をする場があってもいいのかなと思いましたので、その点だけ申し述べたいと思います。

(司会) 戦略ですね。どういう戦略を取ったらいいか議論をしたい。それではもう1人、田中さんですね。お願いいたします。

(田中) 私どももレスポンシブル・ケア活動ということで、市民の意見を伺うようなコミュニケーションをしています。今日出席いただいている方のグループからも出席はいただいていますが、いわゆる一般市民からの意見を聞くとなると非常に苦労しているわけです。桑垣さんは非常に努力をされてうまくしていらっしゃると思っていますし、我々もぜひそういった点の工夫を聞かせていただきたいと思っています。
 今日、「レスポンシブル・ケア」というパンフレットを配っていますのでぜひ後で見ていただきたいのですが、化学産業の国際的な環境安全の自主活動で、社長が実施を宣言し、方針と目標を決めて環境負荷を継続的に減らしていこうという活動です。化学物質の安全、環境保全、保安防災、労働安全、衛生、コミュニケーション、その5つの柱で活動しておりまして、最後に申しましたコミュニケーションという柱でいろいろ参考にさせていただけるようなことがありましたらお知らせいただきたいと思います。
 もう1つは、先程、武さんにご質問を申し上げたのですが、コミュニケーションをしていく間に、中に立つ人がいるということを我々も考えています。例えばそのようなところに、ぜひ我々のOBをいろいろ活用していただける方法があるのではないか。例えば、お前は化学物質のことを少し説明してみろと言われて説明して、こういう質問をしたらどうだとか、いろいろなやり方で、コミュニケーターといいますか、仲立ちをする人の教育にもなると思いますし、我々自身のコミュニケーションのやり方の勉強にもなると思います。
 先程、瀬田が申しましたように、わかりやすくというのは大変難しくて苦労しているところではありますが、その辺につきましてもヒントとなるようなものがありましたら教えてください。

(司会) どうもありがとうございました。ほぼ30分ほどご意見をいただきましたのでこれで議題4は終わらせていただきます。

5.フォーラム参加者からの要望・意見

(司会) 続きまして、議題5となりますが、同じような趣旨ですが、次はこのフォーラムにご参加の皆さん、フロアの皆さんから順次ご意見をいただきたいと思います。手を挙げていただくと時間がかかりそうですので、あらかじめ皆さんからご意見を書いたものをいただいていますので、まずご意見をご紹介させていただきます。
 それでは、安井先生の分野に絡んだご質問とご意見からご紹介とレスポンスをお願いします。

(安井) 文部科学省がらみの「トップ30」ということで、呼び出しが来て帰らなければいけなくなりました。
 今、3つのご質問をいただいています。
 まず丸川さんという学生さんからです。
 化学物質の環境対策は行政・産業・市民が一体とならなければいけない。市民の部分はNGO・NPOに限られているが、本当は学校教育、大学教育がもっときちっとしなければいけないのではないか。
 まさにそのとおりだと思います。いろいろな笑い話があって、小学校のテストに「塩ビを燃やすと何が出ますか」という問題が出て、どうも「ダイオキシン」と書くと正解らしい。普通はそうは書かないのではないかと思うのですが、そういう話もあって、私自身、初等・中等教育あたりの先生方にもっと本当のところをきちっと学んでいただきたいと思っているのですが、実際、非常にお忙しいようで、なかなかその辺はどうしたらいいのかわからない。
 文部省などと連携はありますか、との質問ですが、文部省は何も考えていないと思います。そのようなことを申し上げるしかないかと思います。むしろ、丸川さんにもしいい案があれば教えていただきたいぐらいです。
 もう1つ、これもお名前を申し上げていいのですね。北さんという方からですが、大学や企業の化学の研究者が、個人として自分の住んでいる地域で何か橋渡しをするような方法がいいのではないか。私もそう思います。そういった事例はないでしょうかということです。
 これはなかなか難しいのですが、私自身も最近、地域ときちっとしようと、私が住んでいる目黒区で、いわゆる工業地帯と違って普通の意味での化学物質とはあまりかかわりがないのですが、ごみとか家庭用日用品を対象に、区と協力して、私自身、ごみの減量審議会の会長とかいろいろなことをやらせていただいていますが、かなり暇がないとできないという感じがします。ですから、どこかで適当なキーパーソンを見つけて、それにおいかぶせるしかないのかという気はしています。
 3番目ですが、これは内野さんという方からですが、「化学物質と環境円卓会議」への要望ということで、化学物質は自然界のものもあるし人工物もある。それが製造されて輸送され廃棄され、水や大気に入ったりいろいろなことがあるけれども、そういったものを全体的なところからとらえたらどうだろうかというご提案のように思います。本当はもう少し長いのです。
 まさにそのとおりですが、実際に今、環境のこういったことをする手法としてライフサイクルアセスメント(LCA)があるのですが、これは製品を中心とした考え方で、その製品を作る過程で出た何かが環境に入って、最終的に人の健康に影響を与えるとか与えないとかで、全部を取り扱う方法論は実を言いますとまだないのです。
 モデル化が難しいのと、実態がわからないためです。実際はそれをやらなければいけないことは私も十分理解をしていて、ここ2年間ぐらいでやろうという気はしているのですが、それには企業側からの情報の提示、特に組立産業は比較的わかりやすいのですが、素材産業からの情報開示がないとできないという感じがしています。このあたりは何とか少し格好ぐらいつけてみたいと思っているしだいです。以上です。

(司会) どうもありがとうございました。もし何か加えて今の件でありましたらどうぞ。フロアからどうぞ。

(Q5) 先程、意見を紹介していただいた丸川と申します。私の方から提案があればというお話でしたが、私は今、ドイツで環境科学部に所属して勉強しています。ドイツは環境教育で非常に有名なところですが、科目の中に環境教育というか、「環境」という科目を、理科や算数と同じように入れていただきたいと思います。

(司会) では少し紹介します。私は東京工業大学ですが、東京工業大学では3年前に「環境安全論」というコースを始めました。学部の学生が1200人いますが、全員を対象に実施しています。1学年で10クラスぐらいあるので、教官10名ぐらいで担当していて、私もその一部をしています。
 東工大は理工系が多いのですが、そういったメンバーと、私は社会科学の方ですが、環境計画や住民参加の問題、そういった立場から、リスクに対してどう考えるかという講義をしています。前期5クラス、後期5クラスという感じですからえらいしんどいのですが、そういうことで一応教官全部では10人ぐらいが共同で担当しています。
 1年生に入ってすぐの講義ですので少しは効果があります。前期と後期を比較すると、前期はまじめに聞いているのですが、後期の学生はだんだん大学に慣れてまじめさが減ります。わずか半年の違いで、これは私どもだけでなくて全学的な対応が必要な問題ですが。ほかの分野も、学生自体が変わってきますので、大学教育のあり方自体も考えなければいけないと思いますが、そういった試みを今続けています。

(Q2) 今のことに関連して。

(司会) どうぞ。

(Q2) 環境は大学教育ではなくて義務教育、国民的レベルの問題でしょう。今いろいろ発言を聞いていても、専門的な人たちとのコミュニケーションが大事だとか、一般家庭への対策が問題だとか、あるいは市民にわかりやすい話ができたかという問題がこれからの大きな課題になるわけです。
 そのときに、義務教育の段階でどのようにしてそういうことをするかという問題があります。実は来年度の4月から始まる授業にも、環境科を作るかどうかの議論が文部省の中でもされたのですが結果的にできなかったのです。そのかわり総合学習の場で取り上げるということになったのですが、今の例のように、小学校1年生で「塩ビを燃やしたらダイオキシンができる」、そういったことは自分の頭で考えて、できるわけがないのに、そういう問題を総合学習でしてしまうのです。教え込みはいけないと言っておきながら、そういう教え込まなければいけない。教育課程がばらばらにされているのです。
 そういう問題があるので、一度、円卓会議の中で教育の問題をきちんと取り上げて欲しいと私は意見を書きました。基本的な科学上の概念、先程、桑垣さんに質問したのも、「市民合意のコンセプト」と言ったのですが、それは教育の場における科学上の基本概念が何なのかということすら明確になっていない。
 そして、義務教育の現場でいうと、「生態系」という言葉が教科書からは消えてしまいました。そういう教科書で育った子どもたちがどんどん出てくる中でいったい国民的なコンセンサスが生まれるでしょうかという問題を抱えています。大きな問題だと思いますので、日にちを改めたときに基本的な議論をしていただきたいと思います。
 卒業した子どもたちが企業人になっても、きちんとした基本概念を持っていませんから、いわれたことはするけれども、自分の頭できちんとした環境管理の計画を作るようにはならないのです。今はそういう状態だと思います。その辺の問題は大問題、21世紀の大問題を抱えていますので、教育問題をぜひ一度議論してほしいと思っています。時間があれば教科書のコピー、OHPを持ってきていますのでご紹介したいのですが、時間がないと思いますのでまたの機会にいたします。

(司会) ありがとうございました。義務教育問題は、おっしゃるとおり、それは当然のことと言えば当然やらなければいけないことで、大学段階でもしているということです。そういう意味で大学教育は遅れていますから。
 特に理工系の大学の場合には、実際にテクノロジーといいますか、技術者を生産するわけですから、技術者自身がそういった意識を持たなければいけないということで、各段階で必要というのはおっしゃるとおりです。そういった議論をぜひしたいと思います。ほかにございますか。

(Q7) 内野と申します。私がそこに書きましたのは、まさに化学物質を扱う技術者自身がいかに化学物質を扱うか。それが非常に今問われていると私は思うのです。
 なぜ私はそれを書いたかといいますと、私は労働衛生を担当してきそういう実態に触れているわけです。化学物質を扱っている研究者自身ががいろいろな発信している現状に触れているわけです。
 ですから、そういう人たちがどういうふうに化学物質をこれから考えているか。そこから考えながら、この円卓会議も進めていかなければいけないと思います。そういう意味で、環境科を、子どもの義務教育の中で、化学物質をいかに扱うかということをきちっと教えていかないといけないと私は思います。

(司会) おっしゃるとおりですね。ですから、国民の年齢階層、いろいろな段階でこういった教育をしなければいけないということだと思いますが、時間がもうずいぶんなくなってしまいましたので、皆様からいただいたご要望がたくさんございます。とてもすべてはご紹介できませんが、いくつかこちらで整理したものがございますので、まずこれをご紹介したいと思います。お名前を読み上げていい方とそうでない方がいらっしゃるようですが、順番に申し上げます。安井先生はこれで退席します。

<安井さん退場>


(司会) それでは、まず秋山さんから、これは要望ですが、武さんの資料にもありました市民の不安感ですね。きちんとした情報がない、あっても公表されていないのではということについて、この円卓会議の中で議論をしてほしいと思います。そのために効果的なコミュニケーションの進め方、あるいは市民・産業・行政が何をするべきか。今よりも前進してもらいたいということです。それから、円卓会議のメンバーにマスメディアの方を入れるのも1つの手段ではないかと提案しますということです。
 お2人目ですが、これは武茂さんです。2点ございます。1つは、スピーカーの皆さんと関連組織・関係企業との質疑が中心で、これは批判ですが、慣れ合いの印象が深いということの批判です。そういうことはないと思いますが、そうだとしたらコミュニケーションがまずかったということですね。2番目、スピーカーは一般傍聴者に話しかけて反応を受け止めて答えていく姿勢が大切だということでございます。それから質問が2つ来ていますが、これは後でしましょう。
 3人目の方は荻野さんです。3点あります。1つは、市民が異変を感じる環境の有害性について、多面的で掘り下げた研究調査ができるような化学分析や分析顕微鏡等を備えた、市民の意思で使える開放的研究室の設置をしてほしい。市民が自ら研究できるような施設です。2番目は、汚染物質存在は現在では化学分析では把握しえないものが多いので、植物等による環境モニタリング手法の開発と普及を急いでほしい。3番目は、すでに発生した被害でも早期に有害物の発生源を推定して除去できるように、化学物質被害に適した疫学調査方法の研究と普及実施を急いでほしい。調査研究に関する要望をいただいています。
 次の方はイエス・ノーを記してありませんのでお名前は申し上げませんが、要望です。期待することを3つ書いておられます。
 1つは、身近な問題として取り組む工夫は望ましい方向と思う。2番目は、河川環境の改善を目標とする場合に、化学物質への注目と同時に、化学物質以外の汚濁発生源への配慮・取り組みを期待する。3番目は、化学物質、環境問題対策に関する省庁間の整合性。これはいつもいわれることですが、そういったことに対する協調体制の形成に向けた意見交換等を行ってもらいたいというご意見です。
 要望としてはそういったものを今いただいています。
 それぞれのスピーカーの方にいろいろご質問をいただいたようですので、順にそういったご質問の内容等をご紹介いただきましょうか。よろしいですか。

(武) それでは私から。2ついただいておりまして、1つは栗原さんから。行政の取り組みとして情報提供だけですかという投げかけです。
 私どもとしては、基本的には今回のPRTRの届出をきっちり事業者の方からお受けして、その中身もできるだけ正確度の高い情報を出していただく。届出の漏れがないように。
 こういう取り組みをして、そのデータを使って加工し皆様方にお伝えして、最終的にはこれは地域のリスクを減らしていくことが目的ですから、例えば神奈川県の地域で特段高い濃度の物質が排出される恐れがあるものについては、施策として、1つは例えば条例の中で規制物質に加えるとか、あるいはその前段で国自身が全国的な動向を見て規制を加えるということであれば、それに沿った対応をする。こういうことで基本的な行政としての役割を担っていきたいと思います。
 もう1つのご質問が、匿名の方から、PRTRを家庭で進めるとはどういうことですかと。OHPの中で市民の方の取り組みの最後に「家庭でできる取り組みを実行する」と書きました。家庭の中でもPRTR対象物質を含めて化学物質がたくさん取り扱われています。その情報自体は私どもがきちんとお伝えしていく義務があると思っていますが、そういう物質についてむやみに使わないような生活のあり方、生活を進めていただければ、そういう意味で書きました。
 風評被害はどのように防ぐかというご質問があります。正直言って、風評被害は簡単に止められないからこそ問題になっています。私どもとしては、ダイオキシン類の調査発表をしたり、いわゆる環境ホルモンと疑われる化学物質の発表をしたりしています。これまでの基本的な姿勢としては、数字そのものの持つ意味として、では本県の濃度は日本国内で、あるいは他の地域と比べて高いのかどうか。もし高いのだとすれば、今後どういうことを我々行政がしていくのかという対策を含めて情報をお伝えしていく。その姿勢で臨んでいますが、それがすべてかどうかは正直言って私自身も自信がないところです。とにかく食品問題を含めて、身の回りには物があふれていますので、何かあればそれは社会から排除される可能性がどうしても高いということだと思います。特段の答えにならなくて申し訳ございません。

(司会) では順番にお願いしましょうか。では中山さん、お願いいたします。

(中山) 4ついただきました。2つが匿名で、1つは、ライオンの製品は使い終わればすべてごみになるが、それを大量販売しているところがコープであり、生産者と販売者で消費者に対する、ゼロエミッションに対する対策等のコミュニケーションはあるのか。また、今後どのような施策を考えておられるのか知りたいというご質問をいただきました。
 これは非常に難しい問題ですが、ゼロエミッションという意味ではお答えにならないかと思いますが、生産者である当社としては、詰替用とか、あるいは環境に配慮したごみを削減できるボトル、コンパクト化することにより絶対的な使用量を下げるというご提案をして、それが販売の方にも受け入れられ、最終的には消費者の方にも受け入れられて、少しずつ進歩している。それがご質問のゼロエミッションということで言えば、まだまだ不十分というご指摘は受けるかと思いますが、現状ではそういうところかと思います。今後の施策については、申し訳ございませんが、私はわかりません。これは保留させてください。
 2つ目の匿名の方で、企業サイドは環境保全に対応して、製品消費にあたり環境モニタリングを実践してこれまでに把握した例を知りたい。また、生活者に対して環境保全の要請策をどのように公開していますかというご質問をいただきました。
 最初の、製品消費にあたっての環境モニタリングというご質問に関していえば、当社のいわゆる家庭用消耗品の場合、消費者までお渡しした段階でのモニタリングというかたちで調べた実績は私の知るかぎりはございません。
 ただ、これまでの例としては、生産する工場、あるいは各地の工場を総合した当社全部の生産現場で、例えば排水系の排出量のチェックや、排水系に魚を飼うというかたちで、生産現場ではどうなっているかという把握はしています。ただ、その先、実際にお売りした製品ということになりますと、どこまで配布されてそれをどのように追いかければよいかという手立てが現状ではなくて、もしご質問の意味が最終末端でということであれば、私の知るかぎりはそこまで把握した例はないと思います。
 後半の、環境保全の要請策をどのように公開しているかについては、ご質問の意味が少しわからないのですが、当社の活動結果につきましては、先程ご報告いたしましたように、1つは環境報告書というかたちで1年間の活動結果を公表しています。その環境報告書の内容についてはホームページにも全く同じものを掲載していますので、お答えになっているかどうかわかりませんが、そういうかたちで公開はさせていただいています。
 3つ目は北様からいただきました。大学や企業の化学の研究者が、個人として自分の住んでいる地域において橋渡しの役をするケースが理想と思いますが、そのような事例はないのでしょうかというご質問をいただきました。
 これは正直申し上げて、私のところで事例としては把握しておりません。ただ、現実に企業での自分の役割と、それから地域のボランティアの活動としてこういうことをされている方は当社にいらっしゃるかもしれません。ただ、その辺を把握しておりません。というのは、もしボランティアで活動されているとすれば、それは公式には企業の中では情報としては流れてこないということもございますので、この辺は残念ながらございません。のちほど持ち帰り調べて、そういうことがあれば、これはどうすればいいのでしょう。事務局を通じてお答えすればよろしいのでしょうか。

(司会) では補足でお願いします。

(吉村) 花王の吉村と申します。石鹸洗剤工業会を代表して来ています。先程の2つ目の質問でモニタリングのご質問があったのですが、質問の方の趣旨がどういうことかわかりませんが、石鹸洗剤工業会、それから花王とかライオン各社で、洗剤を排出したあとの河川中流や河川底質にどれくらい界面活性剤が残留しているかという継続的な調査を1990年ぐらいからトライアルでずっとしており、定点観測という意味では1995年ぐらいからしています。それで経年的に減少傾向にあるということを確認しています。
 それから、昨年、安全性関係のデータの情報を全部取りまとめて、現状がリスク評価で見たらどうなのか、環境中に存在している量といろいろな毒性が報告されている値との間でかなり大きな開きがあるということで、リスクは非常に低いという報告書を出しています。少し補足ということで説明させていただきました。

(司会) ありがとうございました。

(中山) あと、稲垣さまから、相談の中身でお尋ねをいただきました。相談を受け付けている人間は何人ですかということで、当社の場合は13人です。電話が90%です。お尋ねのメールは約2%という状況です。
 それから、相談員の教育というかたちで何日ぐらいかけておられるかというご質問で、これは製品知識、あるいはパソコンの入力、この辺に集中的に3日間、そのあとマンツーマンで1人教師役を付けて、電話対応で3週間を取っています。
 それから、毎年、新製品の発売時期に新製品の数に合わせて大体2時間ずつぐらいの勉強会を15~20回開催しているというのが実情でございます。

(司会) ありがとうございました。5時を過ぎてしまいましたのでコンパクトにお願いいたします。

(瀬田) 今の、産業界と学会の化学の研究者が橋渡しの役割をした例はないかということですが、実は私の友人で同じ化学者ですが、事業部長、あるいは研究所長をした男で、すでに定年になりましたが、この人が目黒区に住んでいて、目黒区から環境問題に関する委員の募集があって、それに応募したけれども結局それは断られたということがありました。
 逆に言うと、そういうことをしている人が十分いるということかもしれませんし、またもう一つ逆に言うと、そういうことをしようとするとしかるべき経歴がないとできないということもあろうかと思います。少なくともそういうことを聞いたことがあります。

(司会) 市民の中で専門家が多いですよね。ですから、そういった方々の力をいかに活用するかが大事なところだと思います。どうぞ。

(Q8) 私は環境カウンセラーをしています。神奈川県には環境カウンセラー協議会が組織されていて、約100名近くの人たちがいるわけです。この中には3分の2ぐらいが企業出身者、事業出身者です。NECやライオンのOBの方、それから現役の方も入っています。
 ここで企業の人たちにお願いしたいのは、どうしても専門的になりすぎた経験しか持っていないものですから市民になかなか説明ができないのです。我々は実体験を通してその辺のレベルアップを図っています。
 ぜひ企業に勤められている方に対する教育の中で、市民にどう会話できるか。これらの訓練を、家庭に帰ったときに自分の奥さんに説明して本当に自分の言っていることが通じるのか。あるいは地域で活動するとか。そういったことを身につけないかぎり、せっかく知識がありながら、いざ市民の前に行くとなかなか説明ができない。これはぜひ企業の中で考えていただきたいと思います。私ももともと技術屋ですから、そこら辺は非常に苦労しながら一応話ができるように今してはいますが、よろしくお願いしたいと思います。

(司会)  ありがとうございました。企業人になる段階からそういった教育を受けておかなければだめだと。先程の東工大の例は、まさにそういう企業人になる前に大学でしななければ、もっと若い義務教育でしなければいけない。そういうことですよね。生涯していかなければいけない。
 時間がもうオーバーしてしまいましたので、申し訳ないのですが、あと10分程度でよろしいですか。まずその前に先程のご質問を、時間がありませんから1つだけ。
 例えばPRTR法の内容について、残念ながらこのご質問ではご存じないということです。では出席者の皆さんの中でどれくらいの方が知っているか。挙手でチェックしてみてください。PRTR法をどの程度ご存じでしょうか。手を挙げていただけますか。みんな知っていますね。名前は知っている。では内容は。かなり知っておられますね。そういう方が集まっているからこれが一般的な意見になりませんから、大変偏った集団ということです(笑)
 それでは、PRTR法は私も授業で毎年教えていますので、そういう人が増えることを期待していますが、その前に資金・人材不足、特に中小企業の問題が先程ございました。そこで、これに対してどのようなサポートをするべきか。
 環境省が事務局をしておられますので、できたら環境省から、こうした中小企業対策にはどのようなことをお考えになるか。まだ明確には言えないかもしれませんが、何かご意見はございますか。これからの問題だと思います。

(事務局) 環境省でございます。中小企業対象ということに限定したわけではございませんが、リスクコミュニケーション、あるいはPRTRを推進するにあたっていろいろなツールが必要だと思っています。例えば、排出される化学物質の毒性はどういうものがあるのか。排出量だけではリスクはわかりませんので、排出量と毒性を2つ掛け合わせてこれから判断をしていく必要があるわけですが、その化学物質に対する毒性についてよくわからないということがございます。それに対してはデータベースなどを作り、インターネット上で自由に情報を取っていただけるような、そのような体制も組んでいます。
 それからリスクコミュニケーション、情報をうまく橋渡しできる人材の育成が非常に課題だろうと思っています。研修制度を14年度から立ち上げたいと思っておりまして、リスクコミュニケーションについても取り組みを進めていきたいと思っています。

(司会) ありがとうございました。環境省も具体的にそういう活動を始めておられるということですが。今、フロアから手が挙がりました。どうぞお願いいたします。

(Q9) 私は産業界にずっといた者ですが、先般、中小企業総合事業団の支援のもとに都道府県レベルで経済産業省傘下の所管法人の方が説明されましたが、わずか1時間程度の中で30近いまちがいがありました。その中で十いくつはっきり指摘しました。彼らはいいといっていたのですが、最後にごめんなさいと全部なりました。その程度のことしかレクチャーがないということです。
 私どもは、セミナーをしてくれる団体がありましてセミナーをしました。大手化学工業からも来られました。4桁の方にセミナーをしました。だけどPRTRはほとんどわかっていないというのが現状でした。だから、実情は本当にわかった方とわからない現場の人が非常に多いということを認識しないといけないのではないかと思います。化学工業出身の方もおられましたが、やはりよくわかっていない感じでした。
 そういう状態で、説明者がわからない。中小企業総合事業団が各都道府県で説明会をしましたが、そのレベルだということをよくご認識いただきたいと思います。
 私どもはその中小企業の方に一生懸命指導していますが、そういう状態だということを、よろしくお願いします。

(司会) よくわからないということはわかりました。おっしゃるとおりですね。本当にきちっと伝えていかないといけないので。
 それでは、質問をいただいていますので順番にお願いしたいと思います。では内山さん、簡単に。全部では時間がきついかもしれませんのでポイントだけお願いいたします。

(内山) 4件いただいていますが、では2件ほど。NECの製品はほとんどが海外生産であると思うが、日本国内での生産と同様な環境配慮で生産されているか。
 実は国内生産が大部分で、NECが海外生産をしていたらもっと利益がいっぱい出ているはずなのです。例えばパソコンは今10%が海外で90%は国内です。あまりにひどいので来年度は70%は海外に移すと社長が言っておりました。まず環境配慮ですが、一応国内、事業部制を取っていますので、そこで評価をしてから海外展開しますので、国内とは同じようにしています。
 それから木本さんです。貴社の化学物質の管理についてPRTRの管理が難しいと思いますがというご質問です。おっしゃるとおりです。NECでは、ある程度の計算式を二十いくつ持っていて、それを全部あてはめていくのですが、一番難しいのは大気です。大気のところは排出量を算出するのが難しい。製品、それから再資源化、廃棄物、水、こちらの方はそれなりに容易にデータが取れているのと、たまたまかなりの経験を持っている生産技術者がまだNECの中にいるということで、今助かっているところです。
 もう1件、名前は大島さんです。排出抑制・リスク低減をされてコスト削減がありましたかということですが、正直に言うと、7割強は利益が出ています。残りの3割は逆に出ていません。あとは海外、海外は私の方でわからないのでこれは保留にさせてください。

(司会) あとで、もしわかれば事務局にお伝えください。ありがとうございました。続きまして、桑垣さん、お願いいたします。

(桑垣) 私は、今回のようなテーマについて、世の中をよくしていくためには桂川・相模川流域協議会のような、住民と事業者と行政が一体になって進めるやり方が望ましいと考えていますが、一方、それぞれの利益が衝突することも予想される。何かよい案があるのか。また、実際によかった例があれは教えていただきたいということでした。
 流域協議会は、まさに最初のころは利害の衝突というイメージがすごく強くありました。ただ、その中で大きな目標として、流域の環境保全を進めるというきちんとした目標を持って三者が集まっていました。
 もう1つは、市民が計画の当初からかかわったのです。アジェンダを作るときに、これは市民が作った市民案ですが、最初の実施を考えるときに、基本的に市民が同じ場で始めていたというところ、それがすごくお互いの信頼関係を得る土壌をつくったのではないかと私は思います。
 行政や事業者の方が、何かこういうことをしたいために途中で市民を参加させても、そこではなかなか市民がやる気にはならないと思います。市民がどこまで自分たちが推進していこうかと思えるか思えないかが、これから重要なポイントになると思います。流域協議会はそういった点が成功した例だと思います。山梨県・神奈川県はすばらしい取り組みをしたと市民は思っています。
 もう1つ質問があるのですが、時間が長くなるので(省略させていただきます)。すみません、今の質問をいただいた方は長井さんという方です。

(司会) 小林さん、お願いいたします。

(小林) それでは、山本さんからご質問をいただきました。2人にいただいていますが、私の方から答えさせていただきます。
 化学企業や業界と今後どのような内容の向上を望まれますか。化学物質のリスク削減について、日常生活の中でどういったイメージができるでしょうかということです。
 初めのご質問はどちらかというと生協という組織としてできることかと思います。私たちの組織は103万の組合員がいますので、どちらかといえば普通の方々を対象にする学習会のようなものをまず最初に組み立てていきながら自主的な活動を促すというスタンスでいます。
 最初に紙芝居で学んだうえで交流をしていかないとだめかなという気もいたしますが、そのうえでお話し合いをさせていただきたいと思います。工場見学なども組み込みながら、自分たちの周りにある化学物質のことを考えるという立場でいろいろ教えていただきたいと思います。
 それから、化学物質のリスク削減ですが、日常的にということですが、私自身としては、添加物のできるだけ少ないもの、農薬の削減されたもの、それから抗菌剤はほどほどにしようとか、そういったとらえ方で削減を図っています。ゼロにするという部分でいえば、できないものもできるものもありますので、それをいろいろ知りながら取り組まないといけないと思いますが、今はそういう削減生活をしていると思います。
 ご質問にはないのですが、コープかながわは事業活動と組合員活動という、事業と運動を2つしていますので、組織の中で事業活動と組合員とリスクコミュニケーションを絶えず図っていかないといけない組織です。事業活動としては環境報告書を出したりISO14001に取り組んだり、商品でいえば、先程も言いましたように添加物の少ないものを作るとか、環境に配慮した商品の開発等、いろいろしていますので、組合員の意識が向上すればするほどそういう要求が多くなってくると思います。そうはいっても、関心の高い方とそうでない方がいますので、その辺のバランスは事業的に取らざるをえないということもあると思います。

(司会) ありがとうございました。もう予定時間を20分過ぎましたので、そろそろこれでまとめさせていただきたいと思いますが、せっかくの機会ですので、フロアの皆さん、何かありましたらお1人かお2人。ラストチャンスです。もしございましたら。よろしいですか。それではお2人の順番で簡単にお願いいたします。

(Q10) できましたら、この仕組みの中で別に円卓会議が行われて議論が行われている。私は知らなかったものですから、そこで議論されたことを、今日フォーラムに来るような場合に、事前に読んでくる、あるいは参加登録をした傍聴者にそういう記録を送ってくる、どういう議論をしてきたかということを踏まえて、それを深めるかたちで問題点を整理していくことが必要ではないかと思います。
 例えばNECの内山さんの発言の中で、いろいろ管理をして、ところがコストがかかってしまったということがありました。私の取り方がまちがっていれば違うのですが。そういうことで大きな企業では非常に進んでいることがわかったのですが、一般家庭ではだめだ。むしろ一般家庭の問題をどうするかという問題をきちっと絞って焦点を絞り議論をするとか。
 あるいは企業でも中小企業がうまくいかない、研修でしてもその講師がまちがえる、そういう状態ではこの不況下でなかなかコストのかかる環境削減をやらない。では、そういうものは市場メカニズムの中でどのようにするかという問題で、大企業のした経験を生かして、そしてかかった費用を公的に負担をするということで税金を安くするとか、していない企業からPRTRでわかってきたら、そういうところにその分をかけるということとか、そういうことを国民的に議論をしていく場をつくっていく必要があると思います。
 議論を深めていく必要があるので、とにかく円卓会議の記録をみんなが読んでくる。私は次から読んできたいと思うのですが、インターネットで見るだけでなくて、とにかくそういう手立てをしてフォーラムとの関係で深めていくことが必要ではないかと思います。

(司会) 今回のフォーラムと次回のフォーラムは、あくまでも皆さんにできるだけインプットしていただきたいということであります。インプットのために必要な情報がありますね。それはそれなりの対応をしているはずですが、いかがでしょうか。ご紹介いただいたらいいですね。

(事務局) 今、事務局へのご意見かと思います。実はそれ以外にも事務局の方へいくつかご意見をいただいています。
 1つは、山本さんから、これまで円卓会議は何をしてきたのか、それを教えて欲しい。もう1つ、鶴見さんから、今後この円卓会議で何をしていくのかというご質問が来ています。
 冒頭、私の説明が悪かったのかと思いますが、この円卓会議の進め方自身が全く初めてのことで、過去2回この円卓会議を開いています。過去2回は、この円卓会議をどう進めていこうか。特に、どういうテーマを選んでいくかの準備をしていました。今回のこの関東フォーラム、それから関西で行いますフォーラム、さらにインターネットを通じていろいろなご意見を伺って、その結果、テーマを定めたところでおっしゃるような深い議論をしていこうという、まだ途上でございます。
 それ以外にも、あて先を明記されずに多くのご意見がございます。こういったご意見等も踏まえて、今後その中から円卓会議でテーマの優先順位を決め、そのテーマについて深く議論をしていくという手順になっていくかと考えています。

(Q11) 議事録は公開しておられるのですか。

(事務局) 議事録につきましては、環境省のホームページですべて公開しています。

(司会) 大変積極的なご発言をありがとうございました。もうひとかたいらっしゃいましたね。では簡単にお願いいたします。

(Q12) 簡単にさせていただきます。先程、予防原則の話がありましたが、予防原則もしっかりしていただきたい。それと、レスポンシブル・ケアを出されましたが、国際的なものと、例えばアメリカのものと日本のものとは全く違う、似て非なものだということを皆さんはよく覚えておいていただきたい。私も著書で書きましたが、日本のものとアメリカのものは違います。アメリカは開示性がきわめて高いです。日本のPRTRのときにも後藤先生などが主張されましたが、開示性が非常に重要だと思いますので、そういうところもご検討をしていただきたいと思います。

(司会) どうもありがとうございました。情報公開、情報開示、大変大事な点を最後にご指摘いただきました。
 それから、このフォーラムは何度も積み重ねていきますので、できるだけ情報提供を環境省に頑張ってしていただいて、そしてたくさんの方からの意見をいただいて、さらに議論を深めていただきたいと思います。
 それでは、これでそろそろ閉じさせていただきますが、今日は、私はそういう意味ではたくさんご意見をいただきましたので、この段階で今簡単にまとめることはできないと思います。むしろ今回と次回、関西フォーラムがございますので、両方でいただいた意見をまとめる。例えばそのためには我が東京工大先輩、川喜田二郎先生のKJ法がありますので、KJ法を使っていろいろな意見をいただいたものを整理していく。そういう作業をしたうえで議論を進めたいと思います。

6.閉会

(司会) 今日はたくさんご意見をいただきまして大変ありがたく思っています。今日ご紹介できなかったものもまだありますので、そういったものを今後この円卓会議を進めるための貴重な情報として活用させていただきたいと思っています。
 時間が25分ほど超過してしまいましたが、ほとんどの方はお残りいただきまして、ご協力を本当にありがとうございました。スピーカーの皆さん、どうもありがとうございました。これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。